OURSブログ

社会保険労務士としての日々の業務を行う中で、考えたこと、感じたこと、伝えたいことを綴る代表コラム。

106万円のかべ

2023-03-26 22:18:19 | 社会保険

106万円のかべについてのご質問があるということで簡単なレジュメを作りました。130万円のかべは配偶者の被扶養から外れるかどうかというハードルで昔から良く話題に上ってきましたが、106万円のかべは昨年10月の社会保険の適用拡大で被保険者の総数が常時100人超規模の企業に勤務する以下の要件に該当する場合に被保険者の資格取得が義務付けられてから注目を浴びるようになりました。なお100人超の規模要件は令和6年10月からは50人超となります。
【要件】
 ①週の所定労働時間が20時間以上であること
 ②雇用期間が2か月超見込まれること
 ③賃金の月額が88,000円(年106万円)以上であること
 ④学生でないこと 

上記要件の中で週所定労働時間20時間以上については、通達とQ&Aに記載があります。

まず、就業規則や雇用契約書等で定められた所定労働時間が週 20 時間以上であるかどうかを判断します。その上で20時間未満と判断されたが業務の都合等により、実際の労働時間が連続する2月において週20時間以上となった場合で、引き続き同様の状態が続いている又は続くことが見込まれる場合は、実際の労働時間が週20時間以上となった月の3月目の初日に被保険者の資格を取得します。要するに週20時間以上の勤務が「恒常的な状況」となれば資格取得が必要ということです。(Q&A問32)

週20時間について毎月確認する必要がありこれは人数的に多い会社ではシステムで対応するしかないかと思います。中小企業では実効性が確保できるかどうか心配なところです。

なお、資格取得する場合は、被保険者としての判断の際の8.8万円には含まなかった割増賃金等や通勤手当・家族手当等については、通常の資格取得と同様、含んで報酬月額を算定することも注意が必要です。

なお8.8万円については、原則として、資格取得後に雇用契約等が見直され、月額賃金が 8.8 万円を下回ることが明らかになった場合等を除き、被保険者資格を喪失することはありません。そのため、毎月確認する必要はありませんが、雇用契約等に変更はなく、常態的に 8.8 万円を下回る状況が続くことが確認できる場合は、実態を踏まえた上で資格喪失することとなるということです。(Q&A問45)

短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大Q&A集(その2) (令和4年 10 月施行分) 
https://www.nenkin.go.jp/oshirase/topics/2021/0219.files/QA0410.pdf

今週はやはりWBCで盛り上がりました。特に準決勝は祝日だったためじっくりを観戦することができて久しぶりに野球観戦で気分が盛り上がりました。社労士になる前は高校野球を予選会からみたり、プロ野球も近鉄が好きで、その後渋谷区に住むようになってからは小学生の息子と親子で神宮に招待されたりした関係でヤクルトを応援したりしていたのですが、最近はほとんど野球を見ておらず、今回アラ!こんなに面白かったかと改めて実感した次第です。今後、応援するとしたらやはり時々ご招待いただく楽天かな~。  


コロナ5類移行 会社の対応

2023-03-19 22:50:55 | 労務管理

コロナウイルス感染症が連休明け(5月8日)に現在の感染症法上の位置付け2類から5類へ変更されることになりました。5類に分類される疾患は、インフルエンザ、風しん、麻しんなどがあり、入院の措置や就業制限があった2類のような制限はかからなくなります。5類移行によりどのような変化があるのか、いくつかの新聞に整理されていました。(以下2023.1.27日経新聞参考)

・感染者の待機   原則7日間→なし
・濃厚接触者の待機 原則5日間→なし
・緊急事態宣言   発令可能→発令不可
・医療費      公費負担→公費を段階的に縮小
・診療       発熱外来→一般の医療機関へ段階的に拡大
・マスク      屋内で推奨→原則制限なし

5類になり自宅待機の制限がなくなった場合に会社の対応をどうするかは検討しておく必要があると思います。これまでの2類であれば感染症法による感染者の待機期間が定められていたため、会社が自宅待機を命じたとしても休業手当の支払い義務はありませんでした。しかし5類になり感染者の待機制限がなくなると、会社が自宅待機を命じた場合、原則として休業手当の支払いが必要になります。濃厚接触者についても同様のことが言えます。

ただし、5類になったからといっていきなり感染者の出社を認めるのは会社としても、周りの従業員にとっても不安があるのではないかと思います。医療体制の見直しも徐々に新たな体制に取り組んでいくようです。
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/novel_coronavirus/th_siryou/sankou_r050310.pdf

会社の対応としてヒントになるのはインフルエンザに罹った際の対応だと思います。就業規則の出社禁止の条文には「伝染性の疾患にかかった場合」という規定がされていることが多く、この規定を根拠にインフルエンザは出社を禁じていると思われます。

インフルエンザの場合、出社禁止については「発症後5日経過+解熱後2日経過まで出勤停止」としているケースが多いのではないかと思いますが、これは学校保健安全法施行規則第19条イを参考にしていると思われます。これまでインフルエンザに罹った際は年休(推奨)で対応することが基本であれば、5類に位置づけられたコロナ感染症も同様の対応を原則とすることになると思います。

ちなみにワクチン接種については、令和5年度も自己負担なしで接種することができるそうです。65歳以上の高齢者や基礎疾患を有する人、医療従事者は春から夏に1回目と秋から冬に2回目の接種が推奨されており、それ以外の人については1回接種のイメージのようです。
https://www.mhlw.go.jp/content/001068244.pdf

ワクチン接種についてはそもそも強制ではなく任意だったのですが、会社でワクチン休暇制度を設けてきた場合にどのように対応するかも併せて決めておくほうが良いと考えます。インフルエンザの予防接種については休暇制度がないという場合は、ワクチン休暇の廃止も検討することになると思います。

ここのところなかなか体調がすっきりと戻らず、週末のお天気の良い日も自宅で自粛で過ごしています。締め切りが近づいている原稿の執筆を一つ一つ丁寧に取り組めるのは有難いのですが、いつも元気なだけに、健康の大切さを実感しているところです。


アルバイトの年休付与日数について

2023-03-12 23:13:47 | 労働基準法

アルバイトやパートの年休については色々な論点があると思いますが、今回は比例付与の日数の決め方について書いてみたいと思います。

まず週所定労働日数4日以下の勤務の場合は通常の付与ではなく比例付与になります。比例付与は、週所定労働日数と勤続年数に応じて付与日数が決まりまが、「週所定労働日数」はどのように判断したらよいかということになります。アルバイト勤務は特にシフトの場合希望を取り入れている場合が多くあり、契約時や契約更新時の契約書に記載された所定労働日数通りに勤務できない場合も比較的多くあり得ると思います。

しかし、比例付与の日数を決める際は、原則としては実績ではなく契約書上決められた所定労働日数で決めます。以下のリーフP8を見ると、下方の枠内説明に「原則として付与日において予定されている今後1年間の所定労働日数に応じた日数」とされています。通常、契約書に所定労働日数が記載されていればそれが今後1年間の所定労働日数となります。
https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/kantoku/dl/090501-1_0003.pdf
フルタイムの勤務の場合に、例えば欠勤が少しあり9割出勤した場合、8割の要件は満たしていますので、年休は勤続年数に応じて通常通り付与されます。その考え方と同様、比例付与の場合も8割出勤の要件を課した場合、8割の要件を満たしていなければ翌年度の付与はゼロになりますが、8割以上であれば、所定労働日数に満たなくても、契約した所定労働日数が前年と同じであれば翌年度の付与日数が減ることはありません。

ただし、例外として所定労働日数が不明な場合は実績で日数を決めるということになります。上記リーフの説明でも「予定されている所定労働日数を算出しがたい場合には、基準日直前の実績を考慮して所定労働日数を算出することとして差し支えない」とされています。
例えば、週4日勤務と契約書にありながら週2日しかシフト勤務をしていなかった場合で、次の契約も一応週4日勤務とした場合でどの程度勤務できるかは不明というときにまで、週4日の日数を付与するのは不合理だからです。

勤務日数が厳格ではないアルバイト勤務の場合は、8割要件に満たなければ前出の通り付与日数ゼロでもよいですが、「予定の所定労働日数を算出しがたい」として実績で付与日数を決めるという方法も合理的であると感じます。

この1週間は声が出にくくなり、ほとんどの予定をキャンセルまたは延期にして、珍しく金曜日は仕事もお休みして家で寝込んでいました。家で寝込むのは本当にここ何年もなかったことなので、週末も含めてかなりゆっくり休んだ感じです。その間にコロナで自粛期間にはよく観ていたネットフリックスのシリーズものを見始めたり、読みたい本も読んだりして久しぶりにゆっくりしました。いよいよ明日から仕事と締め切りが迫ってきた執筆を再開しますが、無理は禁物ですね。


異次元の少子化対策

2023-03-05 21:33:05 | 雑感

「異次元の少子化対策に挑戦する」と岸田文雄首相が1月4日の年頭記者会見で発表しました。異次元とはどのくらい異次元なのかという点が気になっていますが、今のところ聞こえてくるのは児童手当の所得制限撤廃の話や高等教育無償化の話が多いような気がします。とにかくこの少子化は何とか食い止めて少しずつ上向きにしていかないと本当に日本の未来がどうなってしまうのか心配でなりません。

内閣官房のHPに「こども政策の強化に関する関係府省会議」のページがあります。令和5年1月19日の第1回目の会議から2月20日まで3回にわたり開催されているようです。開催にあたり、1月6日に総理指示が示されていますが、異次元という雰囲気は正直感じません。
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/kodomo_seisaku_kyouka/dai1/siryou1.pdf

武見敬三参院議員がGLOBE+という朝日新聞(2023.2.28)の記事で述べられている「フランスは、子どもの数が増えるほど所得税率を下げる税制や、結婚していない母子家庭への支援、海外からの移民受け入れなどに取り組みました。」とあります。日本では「外国人が増えるのは嫌だ」「未婚のまま、子どもを産むのは倫理的に問題がある」といった声があり、急激な少子化政策の導入は社会的なあつれきを生むということで少子化対策が遅れたということなのですが、フランスのようなことができれば異次元という感じはすると思います。

異次元とまではいかないかもしれませんが、労務行政さんの昨年の改正育児介護休業の書籍の執筆の際も感じたのですが、社労士としての仕事をする中でこういう改正をしてもらいたいと感じることがありますので、以下記しておこうと思います。

①育児休業期間中の100%以上の所得の補償

育児休業については労働者の労務提供義務が消滅することをいいますが、雇用保険法では出生時育児休業は定期的な労務提供、また原則の育児休業は臨時的な労務提供を認めています。ただ賃金が支払われると育児休業給付金が減額される仕組みとなっています。この点を改正して、育児休業期間中の一定の労働を認め、育児休業給付金に影響なく賃金を受けることができると良いと思います。育児休業給付金に影響することなく賃金が上乗せされても良いと思うのですが、少なくとも給付金と賃金の合計が賃金日額の100%までは減額されない仕組みにして欲しいと願います。併せて育児休業については他の休業の概念とは異なり一定の労務提供を認めるものとしてもらいたいです。

②1歳から2歳までの緩い職場復帰

現在1歳までが育児休業の原則の期間ですが、1歳から2歳までを育児休業に準ずる期間として、ある意味リハビリ勤務的な期間とするのはどうかと思うのです。少しずつフルタイムに戻していく経過措置のようなイメージです。現状も保育所には入れなければ2歳までであり、2歳までの育児休業も受入れられやすくなっているような気がします。ただ、仕事から1年以上2年も離れて子育て中心の生活をしているとなかなか仕事に戻りにくいということもあると思います。そうだとすると、1歳から2歳までは育児休業中であり、かつ復帰を見据えて働く期間でもあると割り切っても良いのではないかと思います。1歳まで育児休業を取っていて、2週間程度の慣らし期間であとは通常勤務というのは、子供の発熱などでなかなか思うようにいかず、肩身の狭い思いをしつつの勤務になります。そういうことから子供を産むことを控えてしまうのであれば、たった1年程度の短い期間のことなので残念だと思います。ただし、親である社員もかなり準備周到に計画的に会社が納得できる使い方をしてもらわなければなりませんが。

③小学校入学前後の6か月間の短時間勤務制度

小学校に入学させるとだいたい3か月から6か月程度で色々なことが落ち着いてくると思います。ただ入学前後は親もこれまでとはまたステージが変わり不安もある時期でもあります。その前後は少し勤務を減らして子供を見守ってあげれば親子とも安定して新たなステージに向かえるのではないでしょうか。

現在3歳までの短時間勤務制度ですが小学校入学前後も取得できると良いのではないかと思うのです。また現在の短時間勤務制度は6時間を必ず含めることとされ平成22年の改正当時それまで4時間の短時間勤務制度を持っていた会社も6時間にしてしまったという印象があります。これは短時間勤務制度でもある程度収入が確保できるように定められたものですが、6時間より短い短時間勤務が少なくなったという問題を生み出しました。もう少し短時間勤務制度も柔軟性が必要かと思います。

ここ数日花粉症がひどいです。かなり早くから飲み薬を飲んでいたのですが、今日は朝起きたらのどが腫れまくっていてびっくりしました。今年はひどいと聞いていたのですが、実感しています。