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OURSブログ

社会保険労務士としての日々の業務を行う中で、考えたこと、感じたこと、伝えたいことを綴る代表コラム。

2025年を目途女性役員少なくとも1人

2023-05-28 22:10:23 | 雑感

政府は東証プライム市場に上場する企業に、2025年をめどに女性役員を少なくとも1人登用するよう促す目標を設ける調整に入った。罰則のない努力義務にするということが5月21日の日経新聞に載りました。内閣府の男女共同参画に関する有識者会議が近く、女性役員数の目標設定を東証上場規則へ反映すべきだとの提言をまとめ、政府は6月にまとめる女性活躍・男女共同参画の重点方針(女性版骨太の方針)に盛り込む方針ということです。

4月27日の男女共同参画会議でも、岸田首相は東商プライム市場に上場する各企業での女性役員の割合について「2030年までに30%以上とすることを目指す。」と明言しています。

そもそも2013年4月に安倍総理が経済界に対して「役員に1人は女性を登用していただきたい」との要請を行い、結果2012年から2022年の10年間で上場企業の女性役員数は5.8倍に増えたものの、割合としては2022年7月で9.1%と諸外国に比べて低い水準になっています。

ちなみにOECDの2022年の統計では、諸外国の女性役員割合は、フランス45.2%、イタリア42.6%、イギリス40.9%、ドイツ37.2%、カナダ35.5%、スウェーデン35.2%、アメリカ31.3%です。日本は15.5%、日本より低い割合なのは中国14.8%、韓国12.8%となっています。

女性役員がいないプライム市場上場企業も男女共同参画局のHPで発表されています。

以前何かの会合で女性弁護士さんが「社外取締役の依頼が困るくらい来る」というお話をされていて、まだキャリアが短くても弁護士さんにはそういう依頼が結構来るのだなと思ったことがあります。ちなみに日弁連のHPにあるのですが、各弁護士会では社外役員候補者の名簿を提供しており、第一弁護士会の名簿の登載の条件を簡単にいうと「社外役員となることを希望し、5年以上の登録年数、指定研修の履修、賠償保険への履修、過去3年以内に懲戒処分を受けていないこと、その他不適当と認める理由がないこと」としています。

人的資本という考え方が注目され、働き方の施策も各企業特徴が出せるようになる中、社会保険労務士も社外取締役として企業に有用な役割を果たせるものと思います。社外取締役も顧問契約と同じく、やはり信頼関係のある人を紹介を中心に選ぶケースが多いのかもしれないとは思いますが、社労士会も弁護士会のように外部に向けての女性活躍に取り組むことで、女性に限らず社労士全体の価値を高めることができるのではないかと考えます。

本当に気持ちの良い季節になりました。歩くことが大切ということで週末はできるだけ歩くことにしていますが、1万歩程度歩くと3年前に転んで足首にひびが入った箇所はいまだ固くなり違和感を感じます。時が経てば戻るのでしょうか。

ここのところ新規のご依頼を沢山頂いた関係で毎日忙しくしています。ただそれらのお仕事とは別に今是非取り組んでみようと思っているのが、沢山世の中に出ている働き方の施策(メニュー)の中で顧問先企業に合った施策を提案して、特に採用と定着に対して魅力ある企業になって頂くということなのです。色々研究して提案書を作るつもりでおり、ワクワクしているのですがなかなか手がつかない状況です。どうしても週末に仕事をすることになりがちなので、平日集中して就業規則改定や労務DDの作業に取り組む日を作ることを決意し、時間をGoogleカレンダーに入れてしまい予定を入れないという方法をとることにしました。どうなることやら・・・です。


留学費用の返還について

2023-05-21 23:04:45 | 労働基準法

社員が留学した場合に、その修学や研究の費用を使用者が貸与し、その条件として一定期間勤務しなかった場合には費用を返還させるという契約についてはよく聞くところです。この点留意しなければならないのは「損害賠償額予定の契約」に該当すると労基法上賠償額予定等の禁止に抵触しないかどうかという点です。

コンメンタールには次の通り示されています。「費用の援助が純然たる貸借契約として定められたもの、すなわち、その一般的返還方法が労働契約の履行不履行と無関係に定められ、単に労働した場合には返還義務を免除することが定められているに過ぎないと認められる場合には、本条に抵触しないと解されよう。」

労基法上の「賠償額予定等の禁止」の規定は、労働者の退職の自由が制限されることなく、労働者の身柄が金銭の貸付によって拘束されることがないよう定められたものであり、上記のような留学費用の貸付等の実態が立法趣旨に反しないものであれば問題はないということだと考えます。

裁判例として有名なものは、長谷工コーポレーション事件(東京地判平成9.5.26)があります。事件の概要としては以下の通りです。

企業が費用を出して海外留学に行かせた従業員について、帰国後一定期間を経過せずに退職した場合に留学費用の返還を義務づける旨の契約は、一定期間勤務した場合に返還を免除する旨の特約付きの金銭消費貸借契約であり、労働契約の不履行について違約金の定めまたは損害賠償額の予定を禁止する労働基準法16条には違反しない。

このケースは、会社の留学制度に基づいて海外留学を行ったのであり、業務命令によるものではない点に注意が必要です。留学制度への応募も任意であり、留学先も本人の意思を尊重して選ぶことができるケースです。従って、「留学費用返還債務は労働契約の不履行によって生じるものではなく、労基法16条が禁止する違約金の定め、損害賠償額の予定には該当せず」という判断になっています。

一方海外留学が業務命令による場合には、企業がその費用を負担すべきことから費用の返済の規定は労基法16条違反とされた事例、富士重工業事件(東京地判平成10.3.17)があります。

海外企業研修員が研修終了後5年以内に退職する場合、会社が負担した費用の全額又は一部を返済させることがある旨の規則が労働基準法16条に違反して無効であり、これを知らずに締結した分割返済契約は錯誤により無効である。

土曜日は女性社労士の歴史ある勉強会である「二土会」の公開講座に参加しました。テーマが「女性活躍推進法に基づく男女の賃金の差異の情報公表について」というもので、厚労省の雇用環境・均等局雇用機会均等課の石津課長の講義でした。テーマも勉強しておきたいものでしたが、連合会の国際化特別推進委員会の委員をしている際の担当課長で、会議の説明に事務所に来られた際に印象的なお話をされていたので楽しみにしていました。期待にたがわず、法の成立の流れから、ポイント、有価証券報告書への記載、女活法の一般事業主行動計画策定の構造など深いお話しで1時間半があっという間でした。それにしてもやはりリアルの研修は良いものだと改めて感じました。


1日の空白もなく資格喪失した場合の育児休業給付

2023-05-14 22:32:25 | 労働法

昨年4月と10月に改正された育児介護休業法ですが、その改正を機に実務の取扱いが変化したり、同じ届出の際に行政で異なる対応があったりと、まだ落ち着かない部分があると感じるのが正直なところです。その中で業務取扱要領にもしっかり記載されている取扱いの変更がありましたので、標題の件を取り上げておきたいと思います。

10月の改正前は1日の空白もなく資格喪失をした場合の育児休業給付の受給資格はそのまま継続とされていました。改正後は「1日の空白もなく被保険者資格を取得し、引き続き本体育児休業を取得する場合は、喪失に係る事業所の育児休業と、取得に係る育児休業とを分割して取得したものとして取り扱うこと。・・・したがって、喪失に係る事業所において、既に育児休業を2回取得していた場合、取得に係る事業所において取得する本体育児休業は3回目の取得となり、(育児休業給付の)対象本体育児休業とはならない(行政手引59691)」と示されました。ただし、再度の育児休業を取得することができる特別の事情がある場合は除くともされています。

1歳到達前の再度の育児休業の特別の事情はかなり選択肢があり特別の事情に該当すれば3回目の育児休業給付金の対象になり得ますが、留意が必要です。また、この扱いは1歳到達後も同様なようです。1歳到達後の特別の事情はかなり限られ、該当しなければ延長期間中に1日も空白なく喪失と取得をした場合に育児休業給付金の受給ができない状況が発生することになり特に注意が必要です。すなわち1歳到達後の特別の事情は再度の育児休業を取得する直前の育児休業が「産前産後休業、新たな育児休業、介護休業が始まったことにより終了したものであること」とされており該当するケースはかなりレアケースではないかと考えます。

問題になるのはM&Aなどにより企業の吸収合併が行われ1歳到達後の育休延長期間中に転籍となり本人の意思にかかわらず雇用保険を資格喪失と取得をした場合に、特別の事情に該当せず、育児休業給付が打ち切られてしまうということです。社労士仲間でその話が出たところによると、育児休業終了を待ってもらってから転籍としてもらい手続を行うなどの工夫をしているということです。

従来から社員に不利になる可能性を消すために、できるだけ吸収合併の場合は喪失及び取得の手続ではなく「新旧実態証明」により合併前後の事業主を同一と認定してもらうという手続きを行うことにしていましたが、今後ますますその方法が有効と考えています。

改正前は1歳到達後の再度の育児休業を取得できる特別の事情は明確ではなかったため、1歳到達後の再度の育児休業の事由が明確になったことの影響もあるかと思いますが、細かい改正部分で実態に沿った手続きができないことがあることも事実です。業務取扱要領該当ページは89頁です。

業務取扱要領(育児休業給付部分)
https://www.mhlw.go.jp/content/001082072.pdf

連休には沖縄に旅行に行きリフレッシュすることができました。今日読んだ本によると、脳は何歳からでも成長するということで、脳の様々な領域をバランスよく使うことが大切だということです。そういう意味では仕事ばかりしているのも良くないなあと思い、コロナの制限も解けてきましたのでこれからはマメに旅行に行きたいです。

その本によると「めんどくさい」と感じることをすることが脳を育てるそうです。また、著者は医師なのですが病院で診療をした後論文を読むのは脳の異なる領域を使うことになるので疲労していない部分を使うことになりむしろ捗るそうです。確かに事務所で仕事をした後で、ひとりお茶をしながら原稿などを読むことが多いのですが思いのほか集中できて捗るのはそのせいかと納得しました。新たなことを取組んでみることも脳を育てることになるようなので、何か始めてみようと、その気になっています。