OURSブログ

社会保険労務士としての日々の業務を行う中で、考えたこと、感じたこと、伝えたいことを綴る代表コラム。

改正高年齢者雇用安定法対応について

2013-02-25 01:02:09 | 法改正

高年法の改正により、4月から65歳までの高年齢者雇用確保措置は原則希望者全員対象となります。ベビーブーマーの世代が多かった企業の定年退職者は確かに減少傾向で、退職者向け説明会も年4回程度行っていたものが1回になったケースもありますが、まだまだ定年退職者はかなり多く控えているという企業もたくさんあります。その場合どのような仕事をしてもらうかなどなかなか企業も悩みが尽きません。「2012 年人事・労務に関するトップ・マネジメント調査結果(日本経済団体連合会調査)」の概要(2012.10.25)に、高年齢者雇用安定法の改正にともない必要となる対応(複数回答)として以下が載っていました。

① 高齢従業員の貢献度を定期的に評価し、処遇へ反映する(44.2%)

② スキル・経験を活用できる業務には限りがあるため、提供可能な社内業務に従事させる(43.6%)

③ 半日勤務や週2~3日勤務などによる高齢従業員のワークシェアリングを実施する(41.0%)

④ 高齢従業員の処遇(賃金など)を引き下げる(30.0%)

⑤ 若手とペアを組んで仕事をさせ、後進の育成・技能伝承の機会を設ける(25.8%)

⑥ 60歳到達前・到達時に社外への再就職を支援する(24.1%)

⑦ 60歳到達前・到達時のグループ企業への出向・転籍機会を増やす(22.7%)

⑧ 新規採用数を抑制する(16.9%)

⑨ 60歳到達前の従業員の処遇を引き下げる(13.3%)

⑩ 業務がないため、従来アウトソーシングしていた業務を内製化したうえで従事させる(11.7%)

⑪ 特段の対応はしない(9.4%)

⑫ 高齢従業員の勤務地エリアを拡大する(8.9%)

⑬ その他(7.2%)

40%を超える3つの中の2つ(②と③)は労働時間が少なそうです。あまり目新しい対応はないですが①のように60歳以上の社員にも評価制度を適用して行く方向にはいくと思われ、定年前とは異なる評価制度を適用することになるだろうと考えられます。定年退職後の再雇用者向け評価シートなど準備しておくのは良いかもしれません。

先日東京会のボーリング大会が後楽園であったため、久しぶりに水道橋に行きました。打ち上げの後、水道橋の駅に向かう道や駅から見える道が思いがけず懐かしく、不覚にも涙がホロリときそうな感じでした。TACの採点チームに入ってから講師になりその間の本拠地はずっと水道橋でした。ずいぶん長い間水道橋日曜クラスを担当して、毎週毎週日曜日の朝に講義でここに来ましたし、教材ミーティングに行く時も必ずこの改札を通っていましたから。当時の受講生の顔も目に浮かぶくらい懐かしくて。駅構内はリニューアルされて変わっていましたが駅周辺はあまり変わっていませんでした。時は流れて行ってしまうものですね。今この時々を大切にしながら生きていきましょう。

ここのところ時間を取られがちだった案件が先週末にある程度めどがつき、改正対応について今週は少し時間がとれそうです。今年はどうしても3月中旬から新規に受託頂く企業に対する簡易な労務監査とアウトソースの手順等の分かりやすいメニュー化を図りたいと思っています。考えるとワクワクしてきます。毎年思うように出来上がらないでバラバラになっている気がするので今年こそ!


勤務延長制度と再雇用制度

2013-02-17 21:29:18 | 労務管理

継続雇用制度の類型としては「勤務延長制度」と「再雇用制度」の2種類があります。

再雇用制度は、定年等一定年齢で退職させたのちに再び雇用する制度であるのに対して、勤務延長制度は、一定年齢で退職させることなく引き続き雇用する制度です。

平成24年就労条件総合調査によると、一律定年制を定めている企業のうち、制度別にみると、「勤務延長制度のみ」の企業割合は11.4%、「再雇用制度のみ」の企業割合は71.6%、「両制度併用」の企業割合は9.1%(同10.7%)となっており、圧倒的に再雇用制度の導入率が高いことになります。
また、既に廃止されている雇用管理調査の平成15年版によると、「勤務延長制度(両制度併用を含む。)」の企業は企業規模の小さい企業に多く、「再雇用制度(両制度併用を含む。)」の企業は企業規模が大きい企業に多くなっている、とされています。 

4月からの高年齢者等雇用安定法の改正により、原則希望者全員が65歳までの高年齢者雇用確保措置の対象となり、継続雇用制度の基準は年金の支給開始年齢に合わせた経過措置のみで設定できるということになりました。前回平成18年度の改正の高年齢者雇用確保措置の導入の際も、そのうち65歳までの完全雇用が義務化されるのであれば、65歳に定年を延長してしまうのはどうかというご相談が特に規模的に小さな企業でありました。定年延長は60歳の定年年齢が65歳に延長されるため、継続雇用制度のように60歳時点で処遇が変わるわけではなく、一般的に年齢とともに上昇してきた賃金ををのまま維持して65歳を迎えることになり、企業としてはかなり賃金負担が大きいものです。従って規模が小さければ65歳まで雇用するにしても人数的に限られますから、それほど賃金負担が大きくならずできることです。大きな企業では、60歳時点の賃金をそのまま65歳まで維持することは対象人数が多いだけに大きな負担になるため、60歳で定年してもらい処遇を変えて65歳まで雇用を確保するということになるわけです。継続雇用制度か定年延長かのポイントはそこにあります。

継続雇用制度の中では、60歳定年の際一回退職して再雇用する再雇用制度がこれまで中心だったと思います。処遇も大きく変えることが可能であるため企業にとっては使い勝手の良い制度であったと思います。それに比べて定年退職するわけではないため処遇の思い切った変更ができない勤務延長制度の利用率は低かったと思います。しかし今回の改正で勤務延長制度の利用も検討してみてもよいような気がしてきました。いっきょに定年延長にしてしまうより、色々なケースに柔軟に対応できるような気がするのです。

60歳から65歳の働き方は多様です。これまでと同じ仕事をこなせる体力がある人とない人の差が出てきます。就業意欲も年金が支給されるとだいぶ変化が出てくるようです。それを考えると60歳時点で定年退職する人、再雇用制度で処遇が大きく変わり(働き方も変わり)65歳まで働く人、勤務延長制度で処遇が変わらず65歳まで働く人というそれぞれがあってよいかと思います。企業にとって必要な技術を持った人は処遇を変えず勤務延長制度で働いてもらうことを試してみてもよいような気がするのです。

勤務延長制度は、いったいどこから来た考え方なのか調べてみたところ、国家公務員法に以下のように定められていました。

(定年による退職の特例)
第八十一条の三  任命権者は、定年に達した職員が前条第一項の規定により退職すべきこととなる場合において、その職員の職務の特殊性又はその職員の職務の遂行上の特別の事情からみてその退職により公務の運営に著しい支障が生ずると認められる十分な理由があるときは、同項の規定にかかわらず、その職員に係る定年退職日の翌日から起算して一年を超えない範囲内で期限を定め、その職員を当該職務に従事させるため引き続いて勤務させることができる。

(勤務延長の概要より)

1 目的
勤務延長とは、定年退職予定者の職務の特殊性又は職務遂行上の特別の事情からみて、当該職員の退職により公務の運営に著しい支障が生ずると認められる十分な理由があるときに、定年による退職の特例として、当該職員を定年退職日以降も当該日に従事している当該職務に従事させるため引き続いて勤務させる制度

2 要件
勤務延長を行うことができる場合
(1) 職務が高度の専門的な知識、熟達した技能又は豊富な経験を必要とするものであるため、後任を容易に得ることができないとき
例定年退職予定者がいわゆる名人芸的技能等を要する職務に従事しているため、その者の後継者が直ちに得られない場合 等

3 期限
(1) 勤務延長の期限は、その職員に係る定年退職日の翌日から起算して1年以内で任命権者が定める。
(2) 勤務延長の期限が到来する場合において、勤務延長の事由が引き続き存すると認められる十分な理由があるときは、人事院の承認を得て、1年以内で期限を延長することができる。
(3) 最長でも3年間(60歳定年の場合であれば63歳まで)と期限が限定されている。

勤務延長制度の使い方が、上記で少し見えてきたような気がします(追記:63歳までは65歳までにする必要があります)。

元トリンプの社長である吉越浩一郎氏の考え方はとても参考にしています。テレビで早朝会議の風景を見たこともありますが著書の「デッドライン仕事術」には会議については「物事を話し合う場」ではなく、「物事を決める場だ」とあります。また、そんなことまで会議で話し合う必要があるのかということについても「取り上げるべきかどうかを検討する暇があったら取り上げて片付けた方が早い」とあります。テレビでも見たスピード感をOURSでも見習いたいと考えています。


グレードごとに要求される能力

2013-02-10 22:36:03 | 労務管理

 OURSでは毎年2,3件の人事制度(賃金制度・評価制度)の改定を受託しています。賃金制度ではシミュレーションをする必要もあり、マンパワーも必要なので、担当者だけではなくバックアッププロジェクトを組んで取り組みます。

賃金制度や評価制度を作るときに必要なのがグレード(等級)ごとの要件です。グレードごとにどのような能力を発揮して仕事をしていくべきなのか、どのような役割を要求されているのかを明確にする必要があるわけです。

中央職業能力開発協会の出している職業能力評価基準[活用事例集]では以下のような事例が出ています。

レベル1・・・指示・助言を踏まえて定例的業務を確実に遂行するために必要な能力水準。
レベル2・・・グループやチームの中心メンバーとして、創意工夫を凝らして自主的な判断、改善、提案を行い ながら業務を遂行するために必要な能力水準。
レベル3・・・中小規模組織の責任者もしくは高度専門職・熟練者として、上位方針を踏まえて管理運営、計画作成、業務遂行、問題解決等を行い、企業利益を創出する業務を遂行するために必要な能力水準。
レベル4・・・大規模組織の責任者もしくは最高度の専門職・熟練者として、広範かつ統合的な判断及
び意思決定を行い、企業利益を先導・創造する業務を遂行するために必要な能力水準。

 一番最初は定型業務をきちんとミスなくできるか、その次は自分の担当業務をこなすのはもちろんのこと改善したり新たな提案ができるか、さらにその次は自分の担当業務に精通するだけではなく一定の組織の利益を出すための問題解決や部下の管理ができるか、その上は組織全体の方向性などの意思決定や利益を新たに作り出せるかなど段階を追って業務は縦に拡大していくというイメージです。

だいたい2と3の間のハードルが高い、管理職になるかならないかというところのハードルが高いように感じます。部下に対する対応というのは本当に難しいと思いますので、そのあたりがハードルの高さに影響していると思います。あとは3になると業務に対する全体感、利益とサービスのバランス感覚、人に任せることができるか、組織が要求していることを下につなげるか、など要素が色々増えてくるということも難しさにつながります。

しかし年齢と経験を重ねて行くうち3の役割をどうしても要求される場面が出てくると思いますが、それではその人の能力はかえって生かせなくなるということであれば組織はスペシャリスト(専門職)のコースを用意して、管理的な業務から解放し専門的な仕事を追求してもらうことになります。

グレード1や2の時代は評判が今一つだった大企業の社員が、上位グレードに行くにしたがって能力を発揮して役員になったというケースもあります。先輩なのですが、その方は人に任せるのが得意で、下のグレードの時はいつも人に仕事を押し付けて自分は暇そうにしているということで評判が今一つだったそうです。人間はなかなか変わらないものですが、要求される内容が変わってくることにより評価が変わることもあるというわけですね。しかしやはり通常はそのグレードごとに要求されることを一歩一歩達成して上に上がっていくのだと思います。その時肝心なのは自分に要求されているのは何かということを素早く知り、それに合わせて仕事をして行くことができるかどうかということではないかと思います。専門職として深く追求することも面白いことだと思いますが、上に上がっていくことにより見えてくるものが違ってくるというのもまた魅力があることと思います。

週末金曜日はOURSセミナーでした。今回のテーマは法改正でしたが主に「労働契約法と高年齢者雇用安定法」の実務対応に時間を費やしました。秋頃から色々な顧問先企業やグループ会社さんなどでディスカッション形式で説明させて頂いたおかげである程度の事例を持つことができていましたので、テーマが多く時間通り終わることができるかどうか心配でしたがギリギリきっちりで終了できました。ホッとしたあと今週末は3連休ということでのんびり過ごすことができそうです。このところ兆しを感じる日もありますが、早く春になるとよいですね。 


無期転換社員の労働条件

2013-02-03 23:17:14 | 法改正

 先週末は4月に改正される労働契約法と高年齢者雇用安定法のセミナーを2つさせて頂きました。その準備やお話をしている中で、またセミナー後ご質問を受ける中で色々と勉強になりました。だんだん勉強していくうちに、労働契約法の改正のポイントは無期転換社員の労働条件についてではないかと思えるようになってきました。

今回の労働契約法の改正の一番のポイントは、「有期労働契約が5年を超えて反復更新された場合は、労働者の申し込みにより、無期労働契約に転換させる仕組みを導入する」という、無期労働契約への転換だろうと思います。ただし、これは平成25年4月1日の施行日以降に新たに結んだ契約や又は更新した契約からカウントを開始するため、実際に無期転換する社員の発生は約5年後ということになります。ただ、そうはいってもそれまでに無期転換させる社員をどのように選んでいくか等を考えた場合、ここ2年くらいでその仕組みや労働条件などを決めておく必要があります。

考えをたどってみると、無期転換する場合の労働条件は、「従前と同じ」又は「無期になることにより転勤はあり得る」などの条件を別段の定めとするなど多少の負荷をかけることはあっても、従前より労働条件を良くするということについてはなかなか難しいことではないかと思います。

無期労働契約の労働条件(職務、勤務地、賃金、労働時間など)は、別段の定めがない限り、直前の有期労働契約と同一となります。(労働契約法18条)・・・当初、無期転換する場合、原則として従前の有期労働契約と同一の内容にしておくのが無難ではないかということしか考えていませんでした。

②①の原則に対して、無期労働契約の労働条件は、別段の定めをすることにより、変更可能です。「別段の定め」とは 、労働協約、就業規則、個々の労働契約(無期転換に当たり労働条件を変更することについての労働者と使用者との個別の合意)が該当します。(労働契約法18条)・・・ただ「別段の定め」は可能であると法律で規定されたわけですから、このあたりをどうしていくかが企業ごとの事情が出てくるところだろうということは推測されます。

無期転換した場合の労働条件については、無期転換前と異なる労働条件を適用する必要がある場合には、労働協約、就業規則、個々の労働契約で定めておくことが必要です。(労働契約法のあらましより)・・・従来期間の定めのない労働契約を締結している正社員と期間の定めのある有期契約社員の2本建てであったところが、無期転換社員という存在ができたことにより、その中間に位置する社員が発生することになります。無期転換前と異なる労働条件にするのであれば、確かに行き違いのないように無期転換社員規程を作成して、正社員就業規則・無期転換社員規程・有期契約社員規程の3本建てにする必要があると思います。

しかし、同じ期間の定めのない無期契約であるからと言って、労働条件を正社員に合せることまで求められているわけではありません。とすると無期転換社員規程を作成するとして、無期転換したからと言ってやはり労働条件を特に良くしようと考える必要はないのだなということになります。

同一の使用者と労働契約を締結している、有期契約労働者と無期契約労働者との間で、期間の定めがあることにより不合理に労働条件を相違させることを禁止する(労働契約法20条)ことが規定されました。…この改正労働契約法の3つ目のポイントである「無期と有期の不合理な労働条件の相違があることの禁止」を考えた時、有期契約社員から無期転換した社員の労働条件を従前より良くしてしまった場合、有期と無期に相違が生まれ、もし同じ仕事・同じ異動の範囲(法律の規定では①職務の内容②当該職務の内容および配置の変更の範囲となります)のままであると、20条に抵触することになると考えられます。

上記の点を踏まえて無期転換社員規程を決めていく必要があるわけですが、2月4日付の労働新聞に弁護士の安西先生が書いておられる通り、今後の無期雇用社員の存在をある意味逆手にとってどのように活用していくか、というところは確かに考えどころかもしれません。

まだ2月ですが春のような暖かい週末でした。OURSはひどい風邪やインフルエンザやノロウィルスで交代でスタッフがお休みというここ2週間が続きましたが、これで少しみんな元気に出て来てくれるでしょうか。幸い私はできるだけうがいと手の消毒に励んでいるせいか、特に風邪もひかず過ごしています。特に支部長になってからは夜も何かと出ることが多く、あまり真面目にいつも食事を作っていないのですが、スープだけは好きなので、いつも野菜を入れて作っておくのが唯一の救いです。先週辰巳芳子先生の「いのちを支えるスープ」という本を購入して、簡単そうなものから作ってみたのですが、これがまたなかなか流石に美味しいのです。風邪をひきそうな時も、このスープを飲めば元気になれそうな気がします。