OURSブログ

社会保険労務士としての日々の業務を行う中で、考えたこと、感じたこと、伝えたいことを綴る代表コラム。

同一労働同一賃金ガイドライン案

2016-12-26 00:42:45 | 法改正

12月20日にとうとう「同一労働同一賃金ガイドライン案」が出ました。ネットでは、首相官邸のhpにある「第5回働き方改革実現会議」の資料3でみることができます。

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/hatarakikata/dai5/gijisidai.html

まだざっとしか目を通すことができていませんが、具体的な事例が載っておりキーワードを押さえつつ整理してみると見えてくるものがあるような気がしています。項目としては、基本給、手当、福利厚生とその他に分かれています。

基本給は、「労働者の職業経験・能力に応じて支給」「労働者の業績・成果に応じて支給」「労働者の勤続年数に応じて支給」等に対する事例が載っており、また手当については11項目とかなり力を入れて事例を載せている感じがします。

ちょっと気になるのが、前文に書かれている「もとより賃金等の処遇は労使によって決定されることが基本である。」とあり、また「今後、各企業が職務や能力等の内容の明確化と、それに基づく公正な評価を推進し、それに則った賃金制度を、労使の話し合いにより、可能な限り速やかに構築していくこと」と書かれており、賃金等の処遇などを労使の話し合いによって決めるように書かれているところです。労働組合のように個々の利益ではなく社員全体の利益を使用者と交渉する、また社員の意見を取り込むというのであればこれまでもありましたが、賃金等の処遇を労使によって決定するというのはやや難しいような気がしています。

福利厚生の部分について書かれている「病気休職」については、以前セミナーで講師を務めたときにご質問を受けた際に「契約期間満了で休職期間を終了することになります。」とお答えしたことが以下の通り間違っていなかったとちょっと嬉しく感じました(その時行政では異なる回答であったというご質問でしたので)。

(3)福利厚生④病気休職

無期雇用パートタイム労働者には、無期雇用フルタイム労働者と同一の付与をしなければならない。また、有期雇用労働者にも、労働契約の残存期間を踏まえて、付与をしなければならない。

<問題とならない例>

・A社においては、契約期間が1年である有期雇用労働者であるXに対し、病気休職の期間は契約期間の終了日までとしている。

ともあれ年末年始と年明けのBBクラブの勉強会で研究等をして、OURSセミナーでは少し私なりの発信をしてみたいと思っています。

先日社労士会でここのところ毎週行っている法学研修を受講する前の短い時間に水町先生にご挨拶をする機会がありました。その際に同一労働同一賃金ガイドラインについてのお話を少し伺うことができたのですが、このガイドラインを元に実際の運用をする場合に出てくる質問についてコールセンターを作り対応することが必要で、その部分で社労士に期待しているということでした。

東商が行っている健康経営アドバイザーもそうですが、社労士の役割・人的資源が非常に評価されていると感じる機会が多いです。これらの期待に応えられるように社労士全体のレベルアップや個人の専門性の研鑽をしっかり行っていくことが大事だと思っています。


勤務インターバル制度について

2016-12-18 23:28:20 | 労働法

勤務インターバル制度を導入する企業に助成金が支給されることになりました。日刊工業新聞2016年12月7日(一部抜粋)

新設する助成金制度「職場意識改善助成金(勤務間インターバル導入コース=仮称)」は導入にかかる費用の4分の3を助成し、上限は50万円を予定する。具体的な助成対象として、就業規則などの作成や変更にかかる費用、職場意識を改善するための研修費用を想定する。さらに労務管理用機器の導入・更新費用なども含める計画だ。
2016年度中に申請の受け付けを開始し、17年度から申請の承認を開始する計画だ。政府は働き方改革と生産性の向上に取り組むことを柱とした「一億総活躍社会」の実現を重点課題と位置付けている。

勤務インターバルは以前から耳にしてはいたのですがどのような制度なのかあいまいなままでしたので少し調べてみました。

「勤務間インターバル制度」とは、「就労日における労働の終了から次の労働の開始までの間に、『一定の休息時間』を付与することを義務付ける規制」ということで、『一定の休息時間』については11時間とされています。「24時間につき最低連続11時間の休息時間をとる仕組み」ということになりますが、情報労連が2009年から取り組んでいたということで、情報労連のパンフレットのP3の図が分かりやすいです。

 http://www.joho.or.jp/wp/wp-content/uploads/downloads/2016/03/acb4d518d03ccb04fa6e26f22b1419d4.pdf

要するに、勤務と次の日の勤務の間に11時間休息時間を置くということは、長時間労働になった場合、勤務終了から11時間が経過するまで次の日の勤務の頭の時間数の労働を免除する、ということになりますね。

勤務インターバル制は、元々EU労働時間指令の中の一つということで、1日の休息時間として以下の通り定められています。

「1日の休息時間」:24時間につき最低連続11時間の休息時間を求めている。ということは、1日につき休憩時間を含めた拘束時間の上限は原則として13時間ということになります。

その他EU労働時間指令はいくつかの内容を求めているのですが、一番特徴的なのは「週労働時間」は7日につき、時間外労働を含め、平均して、48時間を超えないことを求めている、という点です。日本では週法定労働時間は40時間と定められているわけですが、36協定を締結すれば40時間を超えて時間外労働を行うことが可能であり、時間外労働の割増賃金の支払いがその代償措置となっています。それに対してEUの労働時間指令は、時間外労働を含めて週48時間ということで、この時間数を超えることは許されないとのことです。48時間を超えた場合の割増賃金が定められているということもないようです。

週48時間上限についてはかなりハードルが高いように思いますので、日本の企業への導入は先になりそうですが、勤務インターバルはこれまで労働時間管理がなかなか難しかった夜間も含む変則的な勤務の業種については、上手く使うことができれば効果はあるかもしれないというイメージができました。

いよいよクリスマスが近づいてきました。子供が小さかった頃はツリーを飾ったりもしたのですが、今は最小限ドアにリースをかけて、ライトが点滅する小さなツリーを出して飾るくらいです。

社労士会の法学研修で、同一労働同一賃金の中間報告が年内には出るというお話を聞きましたので、それまでにいろいろ片付けておき、年末年始はじっくり勉強したいと思っているのですが、育児介護休業規程の改定など年内に終わらせたい仕事がまだ終わっておらず少し焦ります。今週が勝負ですね。


改正がん対策基本法

2016-12-11 22:54:08 | 法改正

「がん対策基本法」が改正され、「企業はがん患者の雇用の継続等に配慮するように務めるもの」とされました。あまりこれまで「がん対策基本法」については取り上げられることは少なかったかと思いますが、この改正により社労士が取り組んでいる「がん患者の就労支援」についても益々広がっていくものと考えています。

社労士の役割としては、病院のケースワーカーさんなどと一緒に患者さんの相談に乗る場面で、健康保険法の傷病手当金の知識や就業規則の休職規定等を読み取ってどのように就労を継続するかというアドバイスするということになります。東京会ではこの夏に社会貢献委員会の中に「がん患者就労支援部会」を立ち上げて、東京会も病院から依頼があった場合は相談ができる社労士を派遣しつつ、会員や支部への情報共有の場の提供や能力担保研修を行なう等バックアップ体制を開始しました。私も担当副会長としてかかわっているのですが加速度的に色々なことが進んでおり、ついていくのが大変です。部会では、病院対応と企業対応に分かれてそれぞれに社労士の活動を周知し、社労士が相談対応のメンバーに入ることを目指しています。この法改正はまさに追い風になると思います。

時事通信ニュース(改正がん対策基本法が成立=患者雇用継続に努力義務)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20161209-00000091-jij-pol

がん対策基本法改正案(新旧対照)
http://www.cancer-reg.sakura.ne.jp/revision/pdf/160422_2.pdf

事業主の責務を定めた条文は以下の通りです。

(事業主の責務)
第八条 事業主は、がん患者の雇用の継続等に配慮するよう努めるとともに、国及び地方公共団体が講ずるがん対策に協力するよう努めるものとする。

第58回がん対策推進協議会(資料)のP9就労支援の取組のがん診療連携拠点病院の部分にある「今すぐに仕事を辞める必要はない」と伝える取組には、「就労に関する知識を有する専門家(社会保険労務士等)と連携した相談対応」とあります。

http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10904750-Kenkoukyoku-Gantaisakukenkouzoushinka/0000129851.pdf

社労士として有意義な仕事だと思いますし、職域拡大に繋がるよう頑張っていきたいと思います。

今日は都庁で行われている「教育支援コーディネータ・フォーラム」にこれまた東京会の社会貢献委員会の学校教育部会が出展したので見学に行ってきました。これまで委員の方たちが熱心に作り上げたパワーポイントの授業用のレジュメなどを見てもらいながら教育支援コーディネーターの方に取組んでいる学校教育の内容を知ってもらうという目的です。このコーディネーターの方たちが学校に対して社労士の行う学校教育を推薦してくれれば依頼が来るという仕組みです。

フォーラムは大混雑で会場は熱気むんむんでした。本当に社労士の役割の広がりには驚くばかりですが、政府の目指すところとマッチしていると感じることが多く、これを機に社労士の知名度がもっと上がってくれると良いと思っています。そのためには何といっても社労士1人1人がなかなか凄いと思ってもらうことが大事だと思いますので、日々の研鑽を社労士全体で行っていくことが肝要と思っています。

 


2016高年齢者雇用状況

2016-12-05 00:22:29 | 労務管理

最近気になるのが定年年齢65歳の時代が来るのかという点です。平成10年に60歳定年義務化が施行されてから大分時間が経っていますし、高年齢雇用確保措置で雇用が義務付けられている65歳を超えている方たちも元気で働けそうな方は多く、65歳定年と70歳雇用確保措置でも違和感がなくなってきているのではないかと考える人は増えていると思います。

しかし65歳定年となると延長された5年間に支払う賃金の負担は企業にとっては重くなるため、その場合は若い世代の賃金を下げることにより調整せざるを得ない可能性もあり、そう簡単に法改正はできない問題だと思います。

少し調べてみましたが、特に65歳定年義務化まで審議されているということは今のところ見たらなかったのですが、公務員については2011年に人事院から意見提出があったようです。

平成28 年「高年齢者の雇用状況」集計結果(厚生労働省)を見ると
http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11703000-Shokugyouanteikyokukoureishougaikoyoutaisakubu-Koureishakoyoutaisakuka/0000141160.pdf
1 定年制の廃止および65歳以上定年企業の状況
定年制の廃止および65歳以上定年企業は計28,541社(対前年差1,472社増加)、割合は18.7%(同0.5ポイント増加)
このうち、(1)定年制の廃止企業は4,064社(同154社増加)、割合は2.7%(同0.1ポイント増加)、(2)65歳以上定年企業は   2,477社(同1,318社増加)、割合は16.0%(同0.5ポイント増加)

 【65歳以上定年企業】
 企業規模別に見ると
 中小企業では23,187社(同1,192社増加)、16.9%(同0.4ポイント増加)
 大企業では1,290社(同126社増加)、8.2%(同0.7ポイント増加)
また、定年年齢別に見ると
 65歳定年企業は22,764社(同1,181社増加)、14.9%(0.4ポイント増加)
 66歳以上定年企業は1,713社(同137社増加)、1.1%(同変動なし)

3 70歳以上まで働ける企業の状況 

70歳以上まで働ける企業は32,478社(同2,527社増加)、割合は21.2%(同1.1ポイント増加)
中小企業では30,275社(同2,281社増加)、22.1%(同1.1ポイント増加)
大企業では2,203社(同246社増加)、13.9%(同1.2ポイント増加)

東京労働局職業安定部職業対策課の平成28 年「高年齢者の雇用状況」(都内26,818 社)を取りまとめた結果もだいたい似たような数字になっています。
65 歳以上定年企業は、 4,015 社(同 219 社増加 )、報告した全ての企業に占める割合は 、 15.0 %(同 0.4 ポイント増加 )

企業規模別に見ると、
ア 中小企業では 3,555社(同 178 社増加 )、16.3 %(同 0.3 ポイント増加 )、
イ 大企業では 460社(同 41 社増加 )、9.2 %(同 0.6 ポイント増加 )

また、 定年齢別に見ると
ア 65 歳定年の企業は 、3,837 社(同 200 社増加)、 14. 3%(同 0. 3ポイント増加)
イ 66 ~69 歳定年の企業は、 20 社(同 3社増加)、0.1%(同変動なし)、
ウ 70 歳以上定年の企業は、 158 社(同 16 社増加)、 0.6 %(同 0.1 ポイント増加 )
 
(4) 70 歳以上まで働ける企業の状況
企業規模別に見ると、
①中小企業では 3, 743 社(同 272 社増加 )、 17.2 %(同 0. 8ポイント増加 )、
②大企業では 535 社(同 55 社増加) 10.7 %(同 0. 8ポイント増加)
http://tokyo-roudoukyoku.jsite.mhlw.go.jp/var/rev0/0143/6373/20161028124155.pdf

やっと時間を見つけて小淵沢の家に行って冬じまいをしてきました。この頃かなり太陽光パネルが家近辺にも増えてきた関係からか木を伐採しているのをよく見かけて心配だったのですが、うちの周りもだいぶ森がスカスカになっていました。しかも冬で葉が落ちたためなのか、朝起きてベランダに出てみたところ木の隙間から南アルプスと八ヶ岳が見えることに気が付きました。まわりの森の木が低かったときは八ヶ岳が見えたらしいということは聞いていましたが本当だったんだなと感激しました。短い時間でしたがリフレッシュできました。ということで年末までにしっかり仕事を片付けようと思います。