先日顧問先の工場で、下請け企業の社員が顧問先の社員にけがを負わせる事故がありました。それほど大きな事故ではなかったのですが、労災申請についていくつか質問があり、その中にこの事故で労災保険を申請した場合メリット制に影響するか否かという質問がありました。
この事故は下請け企業の社員が第三者となるため、第三者行為災害ということになります。第三者行為災害について労災給付が行われた場合は、給付の主体である国が加害者である第三者に対して要した費用を請求できるという求償権の行使が認められています。この求償が行われた場合は、国の給付に要した費用は補てんされることになり、労災申請をした元請企業のメリット制による労災保険率の上昇はないということになるわけです。
ただしこの求償権の行使はなかなか難しいもので、通達で以下のように取り扱いが定められています。
1)同一事業に雇用される同僚労働者相互の加害行為による災害、2)同一事業の事業主を異にする労働者相互の加害行為による災害(昭和44.3.30基発148号)、3)同一作業場で作業を行なう使用者を異にする労働者相互の加害行為による災害について求償権の行使が全面的に差し控えられている
4)事業主の下請人の加害行為による災害の場合については求償の一部が差し控えられる(昭和40.9.30基発643号)
5)雇用主以外との間に使用関係が生れる、派遣労働者の派遣先に対する国の求償についても、派遣企業の故意又は、重大な過失の場合に限り、保険給付の30%相当額を限度として求償権を行使する(昭和61.6.30基発383)
今回の件は、上記通達の3)に該当するので求償権は行使されないのではないかと顧問先に回答した上で労働局に問い合わせたところ、この通達は徴収法の請負事業の一括が行われる建設業を対象にしたものなので(ちょっと目からウロコでした)製造業については全面的に該当させるわけでもなくケースによりけりなのですとの回答でした。
結局、その後顧問先の担当者が管轄の監督署に行き事情を説明したところ、やはり上記通達ににより求償権の行使は行わない(=メリット制で保険料率が増加する可能性が高い)ということになりました。この求償については、その後調べたところによると日本の場合まず「第三者」の範囲が明確ではなく基準にあいまいさがあるようです。今後、様々な雇用形態の労働者が混在して働く状況はますます多くなるでしょうから、この第三者行為災害については的確な基準が定められる必要があり、研究してみたいテーマでもあります。
昨日は、今年事務指定講習を受ける合格者で勉強会をしました。私がヤフオクで手に入れたオーバーヘッドプロジェクターを使って書式を見ながら失敗談などを話したり、企業で実務をしている同期の合格者も参加して知識を披露してくれて充実した時間になりました。事務指定講習の問題文はよく見るとさりげない一文に結構意味があったりして、なかなか面白いものなのです。通信教育だけで解説がないのはちょっともったいないなといつも思います。
明後日の26日はOURSセミナーです。頑張ります。