OURSブログ

社会保険労務士としての日々の業務を行う中で、考えたこと、感じたこと、伝えたいことを綴る代表コラム。

大学院のこと

2021-08-29 23:25:49 | 雑感

大学院に昨年春までの2年間通ったことについては、その時のブログにも何度も書いたのですが少し時が経った今、振り返っておこうと思います。

ちょうど事務所も安定してきて、TACの講師も辞めて、社労士会での支部長等のお役目も終わり色々なことが一段落したため、思い切って社会保障を勉強できる早稲田大学大学院法学研究科に入学しました。ゼミの社会人入学の同級生は7名で、私が最年長でしたが1歳年下のやはり社労士も一緒で、あとは厚労省、金融庁、新聞社系列会社、市役所、一般企業と様々な職業を持つメンバーでした。よく皆で土曜日のお昼に大学界隈のお店や学食で、また先生が主催してくださる懇親会等の飲み会で授業、レポートの提出について、修士論文のこと、あとお互いの仕事のことなども話ながら仲良くさせてもらいました。

授業は1年目に単位をたくさん取ってしまい2年目は修士論文にできるだけ専念しようという計画で、1年目は平日の昼の授業も2つだけ取り、予習のため読まなければならない資料も膨大だったので、図書館にこもり過ごしていました。取得しなければならない単位は30単位で、1年目は平日3日、土曜日の午前中と週4日学校に通っており、26単位取得したのですが、レポートもひっきりなしにある上に節目ごとに修士論文の進捗を発表しなければならず、かなり忙しくしていたと思います。2年目はゼミ以外はほとんど修士論文にかかりきりで、夏ごろまではひたすらテーマに沿ってコツコツと文献や判例を調べていき、夏から書き出しあっという間に秋が過ぎ年明け提出、何とか修士論文が通った直後からコロナが拡大し、修了式(卒業式)は中止となりました。指導教授の菊池先生が修士論文が通ったお祝いということで開いてくださったイタリアンレストランの食事会が修了式代わりになりました。

2年間、もちろん事務所の仕事もあり、社労士会の海外出張もその間3度あり国内出張もかなりひっきりなしにあり、更に息子の結婚、セミナーも普通にこなしており、考えてみると良くこなせたなあと、最近はコロナでこもりがちで行動量が減っていることもあり我ながら感心します。

なぜこの年齢になってから大学院に通うことにしたかというと、これは開業して間もなくのころから先輩社労士の先生に勧められて、心の奥底ではいつか行きたいと考えていたからです。社会保障を選んだのは、普段の仕事の中ではほとんど労働法関係に接しているわけなのですが、TAC時代長く厚生年金保険法を担当し最初苦手だった年金が面白くなって社会保障をもっと勉強したいという気持ちが強かったからです。しかし大学院での社会保障の勉強は、やはり想像以上に範囲が広く、成年後見、児童福祉、介護保険などは知識が乏しく書籍を読んでもなかなか難解に感じ、又法哲学に至ってはロマンのない私にとってはお手上げといった感じでした。面白かったのはやはり医療と年金で、特に医療は複雑でとても面白く、今でも最も興味がある分野です。修士論文のテーマは労災保険の特別加入で、これは修論に引き続き小論文を書く予定にしていたのですが昨年はコロナで図書館が閉鎖となり、今年は仕事での執筆のご依頼が重なっており焦らず行くことにしました。また時間ができたら、温めたテーマをもう少し集中して研究した上で小論文を書いてみたいと考えています。

早稲田を選んだのは、社会人入学制度があり、テーマが社会保障であったということもあるのですが、スポーツが強いということも魅力でした。もともとわが母校の成蹊大学は、駅伝もラグビーもほとんどのスポーツで出場すらなかったり、あまり強くなかったりするので、もっと自分の学校を応援して盛り上がりたいなあというのが永年の夢でもありました。しかし大学院に通っているときは応援どころではなく、その点はちょっと残念でした。

大学院に行った後変わったこととしては、しょっちゅうレポート提出や発表のレジュメ作りがあるので、書くことについての抵抗感が薄まったということはあると思います。さらに、卒業して2年経ち、最近思うのは読む本が変わったと思うのです。興味がわくとそのテーマで次々と読みたいものが出てきてアマゾンですぐ購入してしまいます。お蔭でますます夜更かしになってしまうのですが、今読んでいるのは戦略思考について深堀したくて「失敗の本質―日本軍の組織論的研究」でなぜ太平洋戦争に突入したのかという本はここのところ連続3冊目です。以前は手が出ない種類の本もどんどんつながってくると興味がわいて読んでいる感じです。そういう意味では大学院に行って視野が広まり楽しみが増えた感じです。大学院に行ったことは一つの財産になったと感じており、本当に幸せなことだったなとも思っています。

 保護者と間違われた入学式


精神障害の労災補償

2021-08-22 20:19:58 | 労働保険

最近メンタル疾患で労災申請をしたいという社員からの申し出があり、どうすればよいかというご相談が多くあります。以前より数的には多くなったように思います。実際に申請に至る場合もあれば、まずは労働基準監督署の窓口に相談に行ってもらい労災申請はしないという本人の結論に至ることもあります。以前労災申請をしたとしても認定される件数は10%から20%くらいと聞いたことがあり、実際のところどうなのか令和2年度過労死等の労災補償状況」が厚労省から発表されているので今回調べてみました。

精神障害の労災補償状況を見てみると、令和2年度は請求件数2051件(決定件数1906件)のうち支給決定件数608件で、認定率31.9%(支給決定件数÷決定件数)と聞いていたより高い率で認定されています。ちなみに令和元年度の認定件数は32.1%、平成30年度の認定件数は31.8%ということで、おおむね3割が支給決定されているようです。

色々とみていくと、支給決定件数の多い業種としては「医療福祉(社会保険・社会福祉、介護事業)」と「医療福祉(医療業)」が圧倒的といってよく、職種としては「専門的・技術的職業従事者」の支給決定件数が多くなっています。また年代別には、40~49歳、30~39歳、20~29歳の順に多くなっています。

労災認定されるかどうかの判断の大きな要素となる「出来事」については、支給決定件数のうち多い順に①上司等からのパワハラ、②悲惨な事故や災害の体験・目撃、③同僚からの暴行又はいじめ・嫌がらせ、④仕事の内容・仕事量の(大きな)変化を生じさせる出来事があった、となっています。

ただ決定件数を見ると、上司からのパワハラ180件より上司とのトラブル388件が多くなっています。決定件数とは、請求があった件数から取り下げ等があったものを控除した件数ですので、労災申請を行った実質の件数といえます。要するに認定されるかどうかは別として、精神障害の原因は「上司のパワハラや上司とのトラブル」という訴えが非常に多く占めているということがわかります。ちなみに令和2年度の、上司とのトラブルの決定件数388件に対して支給決定件数は14件ということで認定率は3.6%と想像以上に少ないと感じました。

この統計を見ているとだいたいの労災申請の認定状況が見えてくることがわかりましたので、今後も毎年追って傾向等を把握しておきたいと思いました。

https://www.mhlw.go.jp/content/11402000/000796022.pd

8月も後半に入りましたがまだまだ暑いものの、吹いてくる風は若干秋めいた感じがすることがあります。今日は年1回の社労士試験ということで、事務所からも10名弱の受験生が頑張ったと思います。受験生の皆様お疲れさまでした。まずはゆっくり休んで久しぶりの解放感を味わってください。合格していればこれからが本番、残念な結果であっても決してあきらめないこと、これだけは忘れないでもらえればと思います。


有期契約社員の育児休業等の取得率について

2021-08-09 22:40:46 | 産前産後・育児・介護休業

 来年4月1日から、有期雇用労働者の育児休業および介護休業の取得要件が緩和され「引き続き雇用された期間が1年以上である者」が削除されることになりました。従って有期雇用労働者が法律の定めにより育児休業等の申し出が拒まれるケースは「子が1歳6か月到達までに更新後の契約も含んだ労働契約が満了することが決まっている者」のみとなります。

 今回の有期雇用労働者の申し出の要件が緩和された背景には、いわゆる正社員に比べて有期雇用労働者の育児休業取得割合が低いためであろうと思い、どの程度低い取得率であるか調べてみました。

 平成 30年10月1日から令和元年9月30日までの1年間に在職中に出産した女性のうち、令和2年10月1日までに育児休業を開始した者(育児休業の申出をしている者を含む。)の割合は 81.6%、同期間に配偶者が出産した男性のうち、令和2年10月1日までに育児休業を開始した者の割合は 12.65%です。それに対し、同期間内に出産した有期雇用労働者の育児休業取得率は 62.5%で、同期間内において配偶者が出産した有期雇用労働者の育児休業取得率は11.81%となっており、特に女性は有期雇用の場合かなり育児休業の取得率が低くなっています。

 ただし、有期雇用労働者が入社1年未満の場合の申し出が拒めるとする法律の規定は削除されますが、引き続き労使協定により「入社1年未満の労働者」について適用除外とすることが可能である法律の規定は残ります。すなわち正社員と有期雇用労働者ともに入社1年未満の場合は同じ規定により適用除外と定めることが可能となり、これまで有期雇用契約の場合重複感があった部分についてはすっきりすることになります。

「令和2年度雇用均等基本調査」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/71-r02/03.pdf

オリンピックが無事に終わり何となくホッとしました。コロナがなければもっともっと楽しめたのだろうと思いますが、テレビで見る競技でも沢山の喜びや感動は味わえたと思います。今回はロンドン以降活躍してきた選手から新たな顔ぶれに変わる世代交代の感が強かったですが、卓球の水谷選手やマラソンの大迫選手は感動しました。水谷選手の団体戦のシングルスの試合が出勤中で見ることができなかったのが心残りです。あとは男子400メートルリレーが本当に残念だったです。

今後はコロナの感染拡大が広がっているのをいかにパラリンピックまでに抑えるか、お盆の過ごし方が重要になろうかと思います。私はというと、オリンピックの関係で祝日が多く、しかし家にいることが多いので、仕事はサクサクと捗り、また本もどんどん読めるため今日は本の収納場所を整理したりと、それはそれで快適に過ごしています。最近は夜寝る前に世界の街の紹介しているYouTubeを見たりして、近年にないある意味いつもより汗汗せず優雅な過ごし方をしています。

来週の日曜日はお盆休みということでブログもお休みさせて頂きます。お盆が過ぎたらまたシャッキリと仕事にまい進したいと思います。受験生はとにかく最後の2週間で天才になれるよう頑張ってもらい、皆様にとって良い夏休みとなりますように。


健康診断の事後措置について

2021-08-01 22:11:12 | 労働法

最近の労基署の調査では安衛法関係が以前より厳しくみられるようになったという感じたこともあり、週末チェックシートを作っていました。安全衛生管理体制もしっかりやっている会社さんでも思いがけないところで整備されていなかったりするのですが、おおむね50人以上の事業場は、衛生管理者、産業医の選任は行われており、要注意が10人以上50人未満の事業場の衛生推進者の選任です。

以前と比べてとても細かいところまでチェックが入るようになったのが健康診断についてです。特に事後措置について細かくチェックが入りますので、以下の点をしっかり対応しておく必要があると思います。

①健康診断の結果は、健康診断個人票を作成し、通常は5年間保存が必要です。( 安衛法第66条の3、則51条)
②健康診断の結果異常の所見のある労働者について、医師等の意見を聞かなければなりません。( 安衛法第66条の4)
・・・この意見聴取は、健康診断が行われた日から又は労働者からの健康診断の結果が提出された日から3か月以内に行うこととされており、また聴取した医師等の意見を健康診断個人票に記載することとされています。3か月以内の聴取はほとんど指摘はないですが、個人票に意見を記載しておくようにという点についてはほぼ指摘されていると思います。
③上記医師等の意見を勘案し必要があるときは、作業の転換、労働時間の短縮等の適切な措置を講じなければなりません。(安衛法第66条の5 )
④健康診断結果は、労働者に通知しなければなりません。( 安衛法第66条の6)
⑤健康診断の結果、健康保持に努める必要がある労働者に対し、医師や保健師による保健指導を行うよう努めなければなりません。 ( 安衛法第66条の7)
⑥常時50人以上の労働者を使用する事業者は、健康診断(定期のものに限る。)の結果は、遅滞なく、所轄労働基準監督署長に提出しなければなりません。( 安衛法施行規則52条)

上記以外に注意する必要があるのが「深夜業」を行っている場合の特定業務健康診断です。この場合は年に2回の健康診断が必要になります。2020年5月31日のブログに詳しく取り上げているのでこちらご参考にしてください。

Twitterにも上げたのですが、令和3年の厚生労働白書が出ました。今回のテーマは「新型コロナウィルス感染症と社会保障」ということです。リーマンショック時との様々な比較はとても興味深く、今回のコロナの影響の大きさを思い知った気がします。コロナ感染拡大によって見えた問題は、感染以前から抱えていた問題や今後表面化したであろう問題がコロナ感染拡大により急速に見えてきたものであり、コロナが収束しても元に戻るのではなくこの問題に正面から向き合い進まなければならないと。白書にも関わられた厚労省の職員である私の大学院の先生のこのコメントを拝見して、白書はいつも流し読みをしていたのですが今回は真剣に読んでみたいと思いました。

https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/kousei/20/

オリンピックも半分が競技を終えた感じでしょうか。柔道の金メダルラッシュや卓球混合ダブルスの大逆転や体操の堂々たる試合ぶりなど毎日楽しませてもらっています。ただバトミントンや水泳の番狂わせも結構あり4年に1度のオリンピックで最高の力を発揮することの難しさも感じます。今日見た男子100メートルの決勝などは予選会から見ていましたが、準決勝で凄かった中国の選手が、その時一緒に走っていた優勝したイタリアの選手に決勝ではかなり遅れを取っているのを見ると、実力だけではない運というか最後は神様に微笑まれなければならないのか、と感じてしまいます。神様の微笑は日ごろからの努力によるものであることは間違いないのでしょうけれど、そういうものをも引き付ける力が必要なのかなという気がします。