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社会保険労務士としての日々の業務を行う中で、考えたこと、感じたこと、伝えたいことを綴る代表コラム。

業務上の怪我の事業主補償について

2025-04-28 01:34:42 | 労働保険

 業務上の怪我の場合、労災保険の補償を受ける又は自動車事故の場合などは自賠責など民間保険を使い労災の補償は民間保険に該当する部分については受けないということが一般的な取扱いかと思います。労災保険の補償を受けず自賠責を先行させることについては、以下の通り通達「自賠責保険と労災保険との支払事務における自賠責保険の先行支払の調整について(昭和41.12.16基発1305号、平成8年3.5基発99号)」が出ています。

 「今般、自動車損害賠償保障法、同法施行令並びに労働者災害補償保険法が改正されたことを機会に、調整事務の円滑化をはかるため、関係機関と協議の上、従来の取扱いを下記のとおり定めることとしたので、事務処理に遺憾のないよう期せられたい」とあり、「給付事務の先後の調整 労災保険の給付と自賠保険の損害賠償額の支払との先後の調整については、給付事務の円滑化をはかるため、原則として自賠保険の支払を労災保険の給付に先行させるよう取り扱うこと」とされています。

 それでは労災の補償を受けないケースというのはそれだけかというとそうではなく、労基法の災害補償の規定を元に事業主が補償をするケースもあります。これは比較的小さな怪我の場合が多いと思うのですが、事業主が治療費や休業についても補償するという方法も可能です。労基法の災害補償は、①療養補償②休業補償③障害補償④遺族補償⑤葬祭料が定められており、そもそも労災保険は労基法の災害補償を実現可能なものとするために作られたとされています。

 というのも労災の補償はとても手厚く、また治癒までにどの程度期間が必要かもわからないというある程度の怪我である場合には事業主補償は負担が大きいため労災補償を受けることが適切ですが、休業は必要がないといった程度や、数日の休業で済むような業務上の怪我であれば、労災申請をする手間や、支給されるまでの期間を考えると事業主が負担してしまった方が良いという判断もあり得ることです。

 これはいわゆる「労災隠し」とは異なります。労災隠しとは、業務上災害が発生した際に労働基準監督署に安衛則97条に定める「労働者死傷病報告」を提出しなかったり虚偽の内容を記載して労災の事実を隠そうとする場合を指し、労働安全衛生法の100条(報告)違反とされることをいうのであって、事業主が補償をすることにより労災を申請しないのは労災隠しではありません。

 労働者死傷病報告は休業がない場合は提出不要とされていますので、ちょっとした業務上の怪我で病院で手当てを受けたというような場合は、事業主補償をするケースもかなりあり、法律上においても問題はないわけです。なお、事業主が補償する場合であっても、休業した場合には「労働者死傷病報告」の提出は必要なので忘れないようにしなければなりません。

中高4年間過ごしたテニス部のOB会に参加するために、週末久しぶりで神戸に行ってきました。北野にあるホテルに1泊して、お天気も良かったため、翌日はあの辺りを歩いてみたのですが、古いマンションもベランダに花を飾り外国に旅行したような雰囲気で、とてもリフレッシュしました。

来週はゴールデンウイークなのでブログはお休みします。良い連休をお過ごしください!

泊まったホテルの「世界一の朝食」はクロワッサンと半熟卵がすごく美味しかったです。

  


労災申請の取り下げ

2025-04-14 00:57:34 | 労働保険

労災申請を行ったものの、まだ認定される前に民間保険を使うことになり取り下げる場合どうすればよいか調べてみました。労災申請を行った場合まだ認定される前であっても、労災(補償)給付請求書の取り下げ願いを提出する必要があります。取り下げ願いには、①労働保険番号 ②被災者氏名 ③災害発生年月日 ④保険給付の種類(例:療養、休業等) ⑤取り下げ理由 を記載する必要があります。調べたところによると、この書式は監督署によって異なるということなので、申請をした監督署に問い合わせる必要があります。

会社が社員の業務上のけがなどの補償のために加入していた民間保険を使うことになった場合の他、労災申請を取り下げるケースというのはあまりないと思いますが、どのようなケースがあるか調べてみたところでは、以下のケースがあるようです。
➀精神的負担の軽減: 労災申請に伴うストレスや不安を避けたい場合
②職場環境の改善: 労働環境が改善され、申請の必要性が薄れた場合
③補償金への不満: 提示された補償金額に納得できない場合
④医療状況の変化: 病状が改善し、申請が不要になった場合
⑤再発防止策への信頼: 会社が安全対策を講じたことで安心感が生まれた場合

労災給付は手厚いという印象があるため③の補償金への不満により労災申請を取り下げるということがあるのかなと思いますが、確かに慰謝料などは労災ではカバーされないので民間保険で申請を希望するということもあるのかもしれません。また労災給付は申請してから労災認定され給付されるまでに時間がかかることが多い(請求受付から給付決定までの期間はおおむね1か月ですが、場合によっては、1か月以上を要することもあります。)ので、民間保険の方が早く補償されるということもあると思います

少し古いですが「今後における労災保険の窓口業務等の改善の取組について(平成23.3.25基発0325第2号)」では、「労災保険給付に係る請求の取下げは、本人の意思に基づくものであることから、本人又は代理人の真意に基づくものに限って取下げの処理を行うこと。なお、取下げの意思のない者に取下げを指導することは厳に慎むこと。」とあります。

また少し話は逸れますが、同じ通達で、「請求に関する相談のあった場合、いたずらに業務上となる可能性の低いことを説明する等により、労災保険給付に係る請求の受付を拒むようなことは厳に慎むこと。」とあり、監督署が労災申請の取り下げを示唆することはないと思いますが、労災認定がされることはないであろうと思われる申請についてのアドバイスは、窓口でしてもらうほうが良いように思います。

この1週間はコートは着ないで少ししっかりしたストールだけ首に巻いて通勤しましたが寒さ的には問題なく、やはりかさばるコートがないと身軽で楽だなあと嬉しい気分でした。私の場合、首で感じる温度が非常に大切で、多少寒くても首に巻きものがあればかなり寒さを凌ぐことができるのですが、逆に夏になると首に巻いていると暑くてしょうがないので巻物は絶対にしないことにしています。従ってマフラーなど冬物の手持ちが多いのは良いのですが、意外にスカーフ類も思わず買ってしまい、かなり手持ちがあります。今の寒くなく暑くない季節の短い期間が活用のチャンスです。


高年齢雇用継続給付4月より縮小へ

2025-01-14 00:40:25 | 労働保険

高年齢雇用継続給付についてはブログで何回か取りあげているのですが、いよいよ今年の春から給付率が15%から10%に縮小されることになっています。この給付率縮小については、令和2年に決まったことなので、当時の法改正レジュメを見てみると比較的詳しく調べてあり、ただその時10%への縮小はかなり先になります、とお話ししていたことを覚えています。あの時はまだまだ先だなと思っていたのがあっという間に現実になってしまいました。

高年齢雇用継続給付は、平成6年に創設されましたので、ちょうど私が開業した翌年に誕生しました。この時支部の研修で説明があり、また手続が増えることになると嘆く先輩たちを見て、まだほとんど顧問先がない身だった私は羨ましく感じたものでした。

当初から暫定措置という説明はあり、60第台前半も働くことを促進するための給付ではあるが、65歳の雇用確保措置と並行していずれは廃止される給付ということはいつも頭の片隅にありました。現に平成19年の雇用保険部会報告書では明確に「激変緩和措置をとった後、廃止すべき」と書かれていました。ただその後の雇用保険部会の報告書では改めて検討すべきなどという表現になっており廃止に言及したものはなかったのですが、令和2年の改正においては「・・・その上で、高年齢者雇用継続給付の在り方については、これらの状況も見つつ、廃止も含め、更に検討を行うべきである」としてあります。

今年2025年で全員が75歳になるということで団塊の世代の動きは日本の社会保障制度の制度設計の上でもとても考えられていますが、30年前の創設時は現在75歳から80歳の団塊の世代も45歳から50歳で、高齢化社会が今後到来することを見越した上で10年~15年後のために準備をしたのではないかと考えています(それぐらい日本の社会保障制度はこれまで先を見て新たな制度を作ってきたことを勉強すればするほど感じるからです)。

最近、高年齢雇用継続給付が縮小することをお伝えすると会社さんから問われるのが、65歳へ定年年齢を伸ばした場合、65歳から70歳までの間、高年齢雇用継続給付のような給付ができる可能性があるのか?というご質問があります。こちらについては今のところ話としては出ておらず、令和2年の雇用保険部会の報告書の(R2.1.8)「65 歳以上の高齢者の70 歳までの就業機会確保措置に取り組む事業主への支援、高齢者の再就職支援や地域での多様な就業機会の確保に関し、当該支援策を雇用保険二事業を中心に、効果的に行う」としており、65歳から70歳までの継続給付創設は今のところ検討されてはいないものと考えます。

高年齢雇用継続給付の廃止はどうなるかということなのですが、しばらく廃止という結論は出しにくいのではないかと考えます。団塊世代が75歳以上となると団塊ジュニア(昭和46年~49年生まれ)もそれなりに年齢が上がってきており、現在50歳代前半というところに来ています。この団塊ジュニア世代もそれなりに母数があり、この層にも60歳以上になるのは早い年齢では5年後に迫ってきています。団塊ジュニアに60代働いたもらうためには高年齢雇用継続給付もまだ政策効果がありそうな気がしますので、廃止もまだ先になりそうな予感がします。このほか2月のアワーズセミナーでは少し実務対応もお話しできると思います。

お正月明けの3連休はゆっくり過ごした方が多かったのではないかと思いますが、私は日曜日に相模原ダイナボアーズ(ラグビー)の応援に相模大野からバスに乗っていくギオンスタジアムに行ってきました。試合ではこれまで勝利したことのなかったコベルコスティーラ―ズとの対戦でしたが、補強選手の素晴らしいプレーもあって歴史的勝利を収めてくれました。OURSやBBクラブのラグビー好き家族も含めた10数名混合チームで観戦して、のんびりワイワイとても楽しい1日でした。

暮れから量産体制に入っていた、レジュメも連休中にだいぶ目途がついてきましたので少しホッとしています。あとはセミナー続きの週にインフルエンザに罹らないことを神に祈るばかりです。


特定理由離職者について

2024-08-25 23:32:42 | 労働保険

セミナーの準備をしていて「特定理由離職者」について気になったので少し調べてみました。特定理由離職者とはそもそもいつ、何のためにできたのかはまだ鮮明に記憶にあります。まず特定理由離職者とはどのような人たちを言うかですが、簡単に記すと以下の2種類の区分があります。

➀期間の定めのある労働契約の期間が満了し、かつ、当該労働契約の更新がないことにより離職した者(その者が当該更新を希望したにもかかわらず、当該更新についての合意が成立するに至らなかった場合に限る。)
②体力の不足、心身の障害、疾病、妊娠、出産、育児、介護等により「正当な理由のある自己都合により離職」した者

特定理由離職者の区分が創設されたのは平成21年改正で、上記②の正当な自己都合離職の考え方はそれ以前からありました。正当な自己都合という言い回しは、転職による自己都合は正当な理由の離職ではないのかという点で、今となっては違和感がありますが、少なくとも私が社労士を開業した平成5年には特定理由離職者という区分はなかったですが、正当な自己都合離職はあり、正当な離職ということで給付制限がなかったと記憶しています。特定理由離職者の創設により➀の「期間満了で更新がなく離職」した区分ができたときに、正当な理由のある自己都合による離職は特定理由離職者の区分②になりました。

なぜ特定理由離職者の創設をよく記憶しているかというと、平成21年当時リーマンショック直後で年越し派遣村が大きな話題になるなど、期間雇用者が大量に雇止めされて、特に特定理由離職者➀はそれを救済するためにできた改正だからです。有期契約で3年以上の雇用保険の継続した被保険者期間があれば特定受給資格者になりますが、それより短い被保険者期間の人たちを救済するという目的で特定理由離職者➀の区分ができました。

ただ特定理由離職者は、特定受給資格者と同様に給付制限期間はないのですが、特定受給資格者のように全員が給付日数が増額されるのではありません。現在もハローワークインターネットサービスには「特定理由離職者のうち区分1に該当する方については、受給資格に係る離職の日が2009(平成21)年3月31日から2025(令和7年)年3月31日までの間にある方に限り、所定給付日数が特定受給資格者と同様となります。」という記載がありますが、この記載の理解が難しいと思います。特定受給資格者と同様といっても、給付日数が増えるのは特定理由離職者➀の区分(期間満了更新なし)の30歳以上の120日~180日(改正当初は45歳上の150~180日)の場合に限ることになります。というのも3年以上の被保険者期間がある雇止めについては特定受給資格者に該当するため、雇止めによる特定理由離職者は3年未満(給付日数表は5年未満)しか該当しないためです。この辺りを授業で説明するのに難しくて苦労した記憶があります。また、雇止め通知があったか、本人が更新を希望したかにより微妙に特定理由離職者に該当したりしなかったり、特定受給資格者に該当したりする場合もあり、フロー図を作って良く会社さんに説明していました。これは自分としては力作だったので今も大切に取ってあります。

ところで特定理由離職者区分➀は創設当初は暫定措置との考えであったようで、2年間の平成23年度末までとされています。雇用保険の改正の経緯を見るとその後も改正が重ねられており、平成23年、平成26年と2年ごとに延長され、平成29年改正では「雇止めされた有期雇用労働者の所定給付日数を倒産・解雇等並みにする暫定措置を5年間実施」とされ令和6年度末までとなっています。制度ができた当初とはだいぶ社会状況が変化してきており、そもそも本則ではなく法附則第4条に規定されていることもあり、以前のように特定理由離職者のことを調べる機会も減っている現状でもあり、来年3月で終了するのか気になっています。

今日は社労士本試験の日でした。うちの事務所の受験生には応援メッセージを昨日チャットしたのですが、今のところ結果については何の連絡もありません。きっと疲れ切ってしまったのかなと思います。年に1回だけの試験、全国の受験生の皆さんも本当にお疲れさまでした。やっとここから夏休みが取れますね。

夏祭りの季節で、1か月ほど前には恵比寿駅前で盆踊り大会があり、駅ビルからちらっと見かけたらもの凄い人が集まって踊っており仰天してしまいました。コロナ明けたからかお祭りや花火など行事を求めて以前より人の動きが激しいような気がします。今日は息子の家の近くの神社のお祭りで孫娘が山車を引くということで午前中つきあったのですが、すっかりバテました。なかなか子供が集まらず町内会の人たちは心配していましたが、出発の時間にはある程度形になるくらい集まってきてホッとしました。少子化で今後が心配ですが何とか続いて欲しいですね。


育休延長、給付金の審査を厳しく

2024-03-17 21:23:06 | 労働保険

3月14日の日経新聞に「保育所申請、落選狙いに歯止め、申告書の審査厳しく」との見出しで2025年4月から育児休業給付金の延長可否を、自治体の証明する「入所保留通知書」だけではなく、ハローワークが判断することとする記事が載りました。3月14日の労政審職業安定分科会雇用保険部会の資料が出ており、省令案要綱と概要を見ることができます。

雇用保険法施行規則の改正案は抜粋すると「育児休業の申出に係る子について、保育所等における保育の利用を希望し、申込みを行っているが、当面その実施が行われない場合については、速やかな職場復帰を図るために保育所等における保育の利用を希望しているものであると公共職業安定所長が認める場合に限ることとすること。」となっています。

これは、原則1年間の育児休業(給付)の期間を延ばすために、落選狙いであえて人気のある入所の難しい保育施設に申し込むなどの事例が相次ぎ、また自治体が親の希望を踏まえて落ちやすい施設を紹介することも少なくなかったということから、育児休業給付金の申請に必要な提出書類に保育所入所についての詳細な内容を記入してもらい、不信な申請があれば親の復職意思を確認し給付するかどうかをハローワークが判断をするということです。

本人が記載する申告書には以下の内容が盛り込まれる予定です。
➀市区町村に保育所の利用申し込みを行なったか
②利用申込みを行った日
③利用開始希望日
④利用保留の有効期限
⑤利用内定辞退をしたか
⑥利用申し込みを行った中で自宅または勤務先から最も近隣の施設名、通所方法と通所時間(片道)
⑥-2 通所時間(片道)が30分以上の場合次のいずれか
  ア.申し込んだ保育所等が通勤経路の途中
  イ.他に利用できる保育所等が存在しない
      a.30分未満で通える保育所等存在しない
      b.30分未満で通える保育所等では職場復帰後の勤務時間・勤務日に対応できない
      c.子に特別の配慮が必要であり、30分未満の保育所等では対応ができない
  ウ.その他の理由(理由欄に記載)

1歳の育児休業を延長するのにそこまで作戦的な必要があるのであれば、むしろ2歳までの育児休業期間の中で自身で育児休業期間を選択してもらう方が、会社としても復職の予定が立って有難いように思うのですが、やはりそこまで給付を実施すると財源的に厳しいでしょうか。

仕事は相変わらずあれこれ忙しく、1週間の開始時にはすでにのその週は予定が入らない状況が続いています。ただ、今年は年明けからここまで体調も崩さずセミナーの集中期も声を枯らさず来れたので良かったと思っています。

まだ桜は蕾が固いようですがあと1週間から2週間の辛抱かなと思い、それまでには色々と片付けてお花見をゆっくりしたいと思っています。また、春から少し新しい仕事の準備に取組む予定です。


年収の壁・支援強化パッケージ(106万円の壁対応)の利用を考える

2023-11-12 21:56:33 | 労働保険

年収の壁・支援強化パッケージのキャリアアップ助成金のQ&Aやリーフが出揃い、だいぶ具体的に見えてきたので、パートさんの就業抑制が特に多い12月を前に利用を考えてみたいと思います。10月2日のブログを書いた時点では、助成金であるため先に計画書を提出する必要があると考えていたのですが、リーフレットを見ると1月末までに計画書を出せばよいということですので、かなり利用しやすくなったと思います。まず、今回は年収の壁・支援強化パッケージ3つのうち「106万円の壁」対応についてイメージできればと思います。

●106万円の壁対応(手当等支給メニューの場合)

10月からキャリアアップ助成金に「社会保険適用時処遇改善コース」ができました。これは被保険者が101人以上の企業のパートタイマーさんの年収が106万円を超えた場合、社会保険の資格取得をすることになり保険料を納付することでパートさんの手取りが減ってしまう現象を解消し、壁を意識せず働いてもらうための助成金です。利用法を以下の例で考えてみました。

・11月に通常のシフト勤務で年収106万円を超え120万円まで働くことにしたパートさんは12月に新たに社会保険の資格取得。

・被保険者になったことで発生する保険料本人負担分相当額(年額17.7万円)を会社が「社会保険適用促進手当」として支給(月額手当又は賞与でまとめて支払う)。

月額93,000円~101,000円未満の働き方であれば標準報酬月額は98,000円であるため厚生年金保険料は8,967円(健康保険、厚生年金保険、介護保険の保険料合計は年額17.7万円
 なお、月額88,000円~93,000円未満の働き方であれば標準報酬月額は88,000円で保険料合計は年額15.9万円、月額101,000円~107,000円未満の働き方であれば標準報酬月額は104,000円で保険料合計は年額は18.8万円
 社会保険適用促進手当の対象は、標準報酬月額が104,000円以下の者であるため、会社が負担した社会保険適用促進手当は必ず助成額20万円の範囲内となる

・社会保険適用促進手当は、標準報酬月額・標準賞与額の算定にならないため、上記パターンの場合月100,000円(年収120万円)まで働くと本人の手取りは月額100,000円となり社会保険に資格取得した社会保険料の影響なし。

・会社は社会保険適用促進手当を持ち出しで支払うが、その分は助成金を申請することで負担が事実上ゼロとなる。ただし、対象者が被保険者の資格取得した分の事業主負担の保険料は負担する。

・キャリアアップ計画書を1月末までに提出。
(これは特例期間であるため2月以降取組みを開始する場合は取組み開始前日までに提出の必要がある)。
支給申請は6か月継続した後2か月以内。
助成額の支払は6か月ごとに10万円×2回(大企業は7.5万円×2回)。

●上記を考えると、パートさんが12月に就労抑制を希望したが人手不足のため困ってしまった企業は、被保険者になっても手取りが減らない10.4万円までの働き方を提案し、社会保険の資格を取得させて、社会保険適用促進手当を月額手当又はまとめて賞与として支払い、キャリアアップ計画書を1月末までに提出しその後申請、受給することで、12月の繁忙期を乗り切る、という利用方法がイメージできます。以下リーフレットです。

https://www.mhlw.go.jp/content/001162661.pdf

年収の壁・支援強化パッケージは難しい!
急に寒くなりましたが風邪などひかないように。


フリーランス労災保険適用

2023-11-05 23:19:06 | 労働保険

11月1日の日経新聞「労災保険、全フリーランスが加入可能に」という記事が載りました。今回のフリーランスの労災適用は、労災保険法の施行規則を改正して2024年秋の施行を目指すとされています。

労働政策審議会労災保険部会の資料なども時々見ているので、その考え方はある程度押さえていましたが、いよいよかという感じです。大学院で修士論文に取り上げたテーマが「雇用によらない働き方に対する労災適用について」でしたが、その方向性としてはあまりずれてはいなかったなと改めて修士論文をとり出してみて感じたところです(実は、修士論文を提出してから思い残すことが沢山あり、見るのが恐ろしい気がして、ほとんど読んでみることがありませんでした)。

労災の特別加入は労災の適用である「労働者(雇用されている人)」ではない人に特別に加入の道を開き適用させるもので、第1種の中小事業主等、第2種の一人親方と特定作業従事者、第3種の海外派遣と3種類があります。この中でも第2種のうちの特定作業従事者についてはこれまで「危険有害である業務」として認められた業務のみが加入可能で、長年かけて少しずつ対象が増えてきました。しかし時代と共にほとんど加入者がいなくなった業務が残っていたり、業界団体が強い場合や最近事故があった業務が認められる等、加入対象範囲の拡大に整合性が認められないこと、今後働き方の多様化に対して労災や労災の特別加入はどのように対応していくかが整理していく必要があるということが問題意識としてありました。

10月4日の審議会資料を見ると、いわゆるフリーランス法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)が2023年4月に成立し、成立過程での国会審議等により特別加入の対象拡大への取り組みが求められていること、また同法の附帯決議で希望するすべての特定受託事業者が加入できるよう対象範囲を拡大することが決定されていることで審議会での審議が決まっていました。

検討課題としては、①特定受託事業者を労災適用することについての検討、②既存の特別加入の対象者との関係、③保険料率をどう整理していくか、また④第2種特別加入に必要な特別加入団体の在り方について、これまでも求められていた特別加入団体が実施すべき災害防止措置の内容を今回の拡大でどのように考えるか、が示されています。

具体的には、特別加入の成り立ちが労基法の適用労働者に準じて保護すべきものであり特例として労災適用するという制度の根幹にかかわる部分の中で、特別加入の対象範囲や運用方法についてどのように考えるか。既存の特別加入と選択制にした場合に保険料率の低い方に流れるのではないかという点など、今後の審議会の審議に着目したいところです。

冒頭の記事によると現在70万人ほどのフリーランスの加入が、約270万人が対象となり、新制度の特別加入者はかなり増加する可能性があるようです。フリーランスの業務委託で働いてもらっている人の保険料は今は本人負担ですが、多様な働き方の拡大や人手不足を考えると企業が保険料を負担することも将来的にはあり得そうな気がします。

週末コロナワクチンを受けて、3連休の1日はつぶれることを覚悟していたのですが、今回は副反応はほとんど出ませんでした。しばらくしたらインフルエンザの予防接種設もうけようと思います。いよいよ11月に入り今年もあと2か月になりましたので、年末年始の準備を考えたり、衣替えをしたり、やらねばならないと思っていたことがだいぶ片付き充実した3連休になりました。


労災メリット制に係る不服申し立て

2023-09-18 23:20:04 | 労働保険

昨年12月に「労働保険徴収法第12条第3項の適用事業主の不服の取扱いに関する検討会報告書」が発表され、労災保険のメリット制について事業主が不服申し立てができる仕組みに見直す方針が了承されました。メリット制は労災と認定された場合に事業所が負担する労災保険料が引き上げられる制度です。これまで労災認定について、事業主が不服申し立てはできなかったのですが、今回の検討会報告書でも認定についての不服申し立てが認められることになったわけではありません。あくまで不服申し立てできるのは労働保険料についてということになります。

今回の報告書では、以下のように取扱うことが適当であることが取りまとめられました。
(1)労災保険給付支給決定に関して、事業主には不服申立適格等を認めるべきではない
(2)事業主が労働保険料認定決定に不服を持つ場合の対応として、当該決定の不服申立等に関して、以下の措置を講じることが適当。
 ア) 労災保険給付の支給要件非該当性に関する主張を認める
 イ) 労災保険給付の支給要件非該当性が認められた場合には、その労災保険給付が労働保険料に影響しないよう、労働保険料を再決定するなど必要な対応を行う。
 ウ) 労災保険給付の支給要件非該当性が認められたとしても、そのことを理由に労災保険給付を取り消すことはしない

今のところどのような不服申し立ての方法になるのかは具体的に整備されていないようですが、メリット制の仕組みについては理解しておくと良いと思います。と言っても非常に複雑な仕組みなのでごく簡単に説明すると以下の通りです。

メリット制は、継続事業、一括有期、単独有期でそれぞれ異なりますが、継続事業については以下のような計算方法で「労災保険率を上下させる仕組み」となります。労災給付に要した費用が少なければ労災保険率は下がり、多ければ労災保険率は上がるということです。

・まず適用される労災保険率から非業務災害率(一律0.6/1000)を減じた率を±40%の範囲で増減させる仕組みが大前提です。従って通勤災害で労災認定されたものについては労災保険率に影響しないわけです。
・この上下幅40%の範囲はメリット収支率により決まります。例えばメリット収支率が10%以下であれば40%減となりメリットが効きますが、150%を超えると40%増ということでデメリットが効く(要するに保険料率が上がる)ことになります。
・それではメリット収支率とはどのように決まるかですが、以下の計算式で算出されます。
(連続3保険年度中の)業務災害に係る保険給付及び特別支給金/(同)確定保険料×第1種調整率×100=メリット収支率
つまり、メリット制の適用に必要な収支率が出るのは3保険年度後であり、その間に給付した給付額が払った保険料に対してどのくらいの割合であったかを算定するわけです。(第一種調整率は年金を一時金に換算した保険給付に合わせた調整のための率です)

やはりなかなか複雑な仕組みですね。大きな労災事故があっても3年経過後に保険料率に影響するので事業主は今頃なぜとびっくりすることがあるようです。

いよいよあれこれ沢山の仕事を抱えて走っている最中で、それでも何とかスケジュール通りこなせているので快調な気分です。コロナ禍の半年間の自粛期間に行けなかったとき、蟻に家がやられて大変なことになっていたので、月に1回は小淵沢の家の様子を見にいくのですが、今回は流石に向こうでも出かけずPCに向かっていました。ただ窓の外の景色に癒され、時々外に出て深呼吸をしたり結構ワーケーションも仕事が捗ると感じました。まだまだ昼間は夏の空気なのですが、夕方になるとかなり涼しく秋の気配です。以前から仕事の途中で見つけて買ってみたいと思っていたコージーコーナーさんのプチケーキの詰め合わせを行きがけに購入しました。こちらも秋のシリーズになっていました。可愛さ満載なのでぜひ一度!お勧めです。

     


自己都合退職の場合の失業給付の給付制限期間

2023-04-23 23:59:38 | 労働保険

デジタルやグリーンといった成長産業などへの労働移動を促すため、政府は、自己都合で離職した人への失業給付のあり方を見直す方針。自己都合で離職した後、原則2か月間受給できない制限措置の扱いが焦点となるという報道(2月18日NHKニュースより)ありました。岸田総理大臣は、先に、構造的な賃上げの実現には、グリーンやデジタルといった成長産業などへの労働移動を促す必要があるとして自己都合で離職した人への給付のあり方を6月までに見直す方針を明らかにしたということです。

現在雇用保険法第32~34条において給付制限が定められており、その中で「被保険者が自己の責めに帰すべき重大な理由によつて解雇され、又は正当な理由がなく自己の都合によつて退職した場合」には、待期期間満了後1箇月以上3箇月以内の間で公共職業安定所長の定める期間は、基本手当を支給しない。」と定められています。
 1箇月以上3箇月以内と定められているものの、正当な理由がない場合の自己都合退職については2か月又は3か月間が給付制限されます(3箇月の給付制限が令和2年10月1日以降の離職については「5年間のうち2回までは給付制限を2箇月とする」ということになりました)。この給付制限期間は法や施行規則に定められているのではなく、雇用保険業務取扱要領に載っている行政手引52205(5)給付制限期間に定められています。
 
調べてみたところ、給付制限期間については、元々1箇月であったものの昭和59年の改正により3箇月に延長されたようです。経緯としては、①受給資格者の6割が正当な理由のない自己都合退職であり、その傾向は若年者層において顕著(29歳以下82.2%)、②これは、給付制限期間が1箇月と短期間であることが安易な離職を誘う結果となっているのではないかと指摘されていることから、給付制限期間を延長することにより、離職を決意する際の慎重な判断を期待し、安易な離職を防止するとともに、離職後の再就職意欲を喚起するため、給付制限期間を延長することとしたもの、とあります。
 
自己都合退職の場合の給付制限期間が、給付制限がかからない会社都合の離職に比べて3箇月とされているのは、自分の都合で会社を辞めたのだから合理的と考えてきましたが、確かに労働移動を阻害する要因になることは否めません。
2023年2月16日付日本弁護士連合会は「雇用保険の抜本的な拡充を求める意見書」を出しています。「給付制限は、自己都合退職の場合、保険事故を自ら作り出す側面があることからモラルハザードを防止すること、また、離職が予見可能であることなどを理由に正当化されてきた。・・・失業手当受給者の半数以上が『正当な理由のない自己都合退職』として給付制限をかけられている現状は、不合理である。これは、転職の自由(職業選択の自由や勤労権に含まれる)が不当に制約されていると評価され得る。
※モラルハザードとは、「保険によって補償される」という意識により保険事故(ここでは失業状態)を回避する努力が阻害される現象のことである。
上記意見書においては、「離職理由による受給資格の区別の廃止」も上げています。
 
終身雇用が当たり前とされていた時代とは異なり、新たな産業に労働力が移転していかなければならない現状においては、これまで合理的とされてきた仕組みが不合理となるわけで、社労士としても様々点検していく必要があると思いました。
 
今年初めて小淵沢の家に行ってきました。久しぶりにおいしい空気を吸ってくることができた感じです。小淵沢はまだ寒くて、あちらこちらで桜が咲いていました。家の前の畑にあるまだ小さな桜も咲いていました。また山の斜面には藤の花が沢山咲いており真っ盛りでした。先日「藤の花はなかなか強いのよ」と先輩がご飯を食べながら話してくれたことを思い出して、苗木を買ってみようかなと思っています。

休業補償給付受給時の保障について

2022-12-19 00:20:13 | 労働保険

労災保険の休業補償については、休業(補償)給付が給付基礎日額の60%に休業特別支給金の20%が上乗せされるので、80%が休業日数について補償されることになります。その際会社が100%まで補償しようと考える場合はどのような扱いになるかということですが、ある程度の補償は可能だと考えて問題ありません。

休業補償給付の受給要件は、①療養のために休業する日であること、②労働不能であること、③賃金を受けない日であること、となります。会社から生活保障等が支給された場合には、③の賃金を受けない日に該当するかどうかがポイントになります。

所定労働時間の全部を労働不能であり休業した場合に、平均賃金の60%以上の生活保障を受ける場合は、「休業する日(賃金を受けない日)」に該当しないということで休業(補償)給付は支給されません。従って平均賃金の60%未満の生活保障を受ける場合は、「休業する日」に該当するため、休業(補償)給付の支給には影響がありません(昭和40.9.15基災発14号)。つまり、休業(補償)給付が60%+休業特別支給金20%+会社からの生活保障が50%支払われる場合は、合計130%が保障されることになります。

労災の休業(補償)給付が支給されない待期期間の3日間については労基法の災害補償の規定を根拠に会社が補償する必要がありますが、4日目以降については、労基法84条に、労基法の災害補償の事由について労災保険に基づく災害補償に相当する給付が行われる場合は補償の責めを免れる、という規定があるため、会社の補償は義務ではありません。

ただ、近年民法536条の規定により、会社に安全配慮義務違反があれば、労働者は100%の賃金請求権があるという判決も出てきているようです(長崎地判平成30.12.7)。これに関してはかなり勉強しなければなりませんが、研究者の間では反論も多くあるようですので、今後どのようになるかは注視しておきたいと思います。なかなか興味深いテーマだと思いました。

民法536条2項(債務者の危険負担等)
債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債務者は、反対給付を受ける権利を失わない。この場合において、自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者に償還しなければならない。

大学院を修了してからそろそろ3年が経とうとしているのですが、労災保険のテーマを考えていると、やはり労災保険は解釈していくことが面白いなと思いました。判決文を読むのはあまり得意ではないのですが、時間ができたらまた興味のあるテーマをじっくりと研究したくなりました。

今年もいよいよ押し迫ってきましたので、何となく落ち着かないというか、新たな年に向けてワクワクするというか、いやその前にクリスマスがあると思いだし、慌ただしいような気分になります。寒くなりましたので、体調管理に注意して元気で年末とお正月を迎えられるようにしたいと思います。


精神障害の労災補償

2021-08-22 20:19:58 | 労働保険

最近メンタル疾患で労災申請をしたいという社員からの申し出があり、どうすればよいかというご相談が多くあります。以前より数的には多くなったように思います。実際に申請に至る場合もあれば、まずは労働基準監督署の窓口に相談に行ってもらい労災申請はしないという本人の結論に至ることもあります。以前労災申請をしたとしても認定される件数は10%から20%くらいと聞いたことがあり、実際のところどうなのか令和2年度過労死等の労災補償状況」が厚労省から発表されているので今回調べてみました。

精神障害の労災補償状況を見てみると、令和2年度は請求件数2051件(決定件数1906件)のうち支給決定件数608件で、認定率31.9%(支給決定件数÷決定件数)と聞いていたより高い率で認定されています。ちなみに令和元年度の認定件数は32.1%、平成30年度の認定件数は31.8%ということで、おおむね3割が支給決定されているようです。

色々とみていくと、支給決定件数の多い業種としては「医療福祉(社会保険・社会福祉、介護事業)」と「医療福祉(医療業)」が圧倒的といってよく、職種としては「専門的・技術的職業従事者」の支給決定件数が多くなっています。また年代別には、40~49歳、30~39歳、20~29歳の順に多くなっています。

労災認定されるかどうかの判断の大きな要素となる「出来事」については、支給決定件数のうち多い順に①上司等からのパワハラ、②悲惨な事故や災害の体験・目撃、③同僚からの暴行又はいじめ・嫌がらせ、④仕事の内容・仕事量の(大きな)変化を生じさせる出来事があった、となっています。

ただ決定件数を見ると、上司からのパワハラ180件より上司とのトラブル388件が多くなっています。決定件数とは、請求があった件数から取り下げ等があったものを控除した件数ですので、労災申請を行った実質の件数といえます。要するに認定されるかどうかは別として、精神障害の原因は「上司のパワハラや上司とのトラブル」という訴えが非常に多く占めているということがわかります。ちなみに令和2年度の、上司とのトラブルの決定件数388件に対して支給決定件数は14件ということで認定率は3.6%と想像以上に少ないと感じました。

この統計を見ているとだいたいの労災申請の認定状況が見えてくることがわかりましたので、今後も毎年追って傾向等を把握しておきたいと思いました。

https://www.mhlw.go.jp/content/11402000/000796022.pd

8月も後半に入りましたがまだまだ暑いものの、吹いてくる風は若干秋めいた感じがすることがあります。今日は年1回の社労士試験ということで、事務所からも10名弱の受験生が頑張ったと思います。受験生の皆様お疲れさまでした。まずはゆっくり休んで久しぶりの解放感を味わってください。合格していればこれからが本番、残念な結果であっても決してあきらめないこと、これだけは忘れないでもらえればと思います。


5月、6月の雇用調整助成金について

2021-04-18 19:34:15 | 労働保険

4月16日の労働政策審議会(職業安定分科会雇用保険部会)で、雇用調整助成金の特例措置など5月以降縮小する案が了承されました。変更点としては以下の通りです。

新型コロナウイルス感染症関係事業主が行った令和3年5月1日から同年6月 30 日までの期間中の休業等について
1.雇用調整助成金
①1日当たりの支給上限額  13,500 円(現在15,000円)
②助成率 令和2年1月 24 日以降解雇等を行っていない場合には、中小企業事業主9/10(現在、10/10)
まん延防止等重点措置の対象区域で知事からの時短要請を受けて事業主に休業させられた場合は特例が設けられ、上限15,000円、助成率10/10が維持される場合があります。詳しくは、以下概要の2ページ目を確認ください。

2.休業支援金等
新型コロナウイルス感染症等の影響により休業させられた労働者のうち、休業手当の支払いを受けることができなかった場合(大企業はシフト制労働者のみ対象)に支給される休業支援金等については上限が原則9,900円(現在11,000円)になります。

・雇用保険法施行規則の一部改正する省令案概要
https://www.mhlw.go.jp/content/11601000/000769708.pdf

7月以降の雇用調整助成金についてはお問い合わせも多いため、調べてみたのですが特に記載されたものは見つかりませんでした。4月1日に発表された「令和3年度地方労働行政運営方針」では、 雇用の維持・継続に向けた支援として、新型コロナウイルス感染症の影響及びそのまん延防止措置の影響により、休業を余儀なくされた労働者の、雇用の維持・継続のために、雇用調整助成金により、引き続き休業のほか、教育訓練、出向を通じて雇用維持に取組む事業主を支援する。産業雇用安定助成金により、在籍型出向を活用した雇用維持を促進するとあり、雇用調整助成金がなくなるわけではないとしても、産業雇用安定助成金に軸足が移ることも考えられます。

・令和3年度地方労働行政運営方針
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_17792.html

・産業雇用安定助成金
https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000735076.pdf

連休中も家でおとなしく過ごすことになるので、テレビを買いなおしたところ、簡単にNetFlixやYouTubeを見れることになり、かなり楽しめています。夜はテレビを消してカフェミュージックなどを流すと良い雰囲気です。ついでにゆっくり映画を見るために一人掛けの椅子を買ってしまおうかと思案中です。実は、自分用の小さなソファーはあるのですがそこに座るとすぐコロッと眠くなり寝てしまうということもあるのですが、なんでかわからないのですが椅子が大好きで見ているだけでワクワクしてしまうのです。


高年齢雇用継続給付の見直しについて

2019-12-09 00:14:02 | 労働保険
高年齢雇用継続給付の見直しが労働政策審議会雇用保険部会で検討され、2025年度から段階的に廃止する改正法案が来年の通常国会に厚生労働省から提出されることになりました。以下、12/6 日本経済新聞電子版より抜粋です。

厚生労働省は、賃金が現役時代に比べて大幅に下がった60~64歳の高齢者を対象に支払う高年齢雇用継続給付金を見直す。65歳までの継続雇用が2025年度から完全義務化されるのに合わせ、25年度から段階的に廃止する。
25年度に60歳になる人から段階的に給付額を減らし、30年度をメドに廃止する。
25年度には、希望者全員を65歳まで雇用する高年齢者雇用安定法が企業に全面適用される。そのため、同給付を25年度以降も維持する必要性は薄いと判断した。(12/6 付日本経済新聞)
 
そもそも平成6年の高年齢者雇用安定法の改正による60歳以上の定年年齢義務化(平成10年施行)にあわせて平成6年に創設された高年齢雇用継続給付は、平成19年までの措置とされていたところを、平成24年まで延長され、さらに平成25年度以降についても、高年齢雇用継続給付は高年齢者の雇用促進に重要な役割を果たしているという現状を踏まえ、当面の間は存知することとし、今後の高齢者雇用の動向を注視しつつその在り方について改めて再検証すべきと平成24年1月に雇用保険部会報告書で示され、ここまで来たものです。
 
経団連は、「雇用保険制度見直しに関する提言」を9月 17 日 に発表しており、「定年後再雇用者をめぐっては、同一労働同一賃金に関する法改正に対応するため、基本給や賞与、諸手当等の個別待遇ごとに、公正処遇の確保が要請されている。こうした状況に鑑みると、高年齢雇用継続給付の見直し議論は避けられない。仮に高年齢雇用継続給付の見直しを行うにしても、受給者への十分な配慮とともに、企業における人事賃金制度見直しの動向とあわせて考えることが不可欠であり、十分な経過措置を講じるべきである。」としています。
 
統計(厚生労働省「雇用保険事業年報」)を見てみると、支給延べ人数はそれほど多く変わっているわけではないようですが、初回受給者数は2009年から比較して2017年まで下降傾向を示しておりベビーブーマーがほぼ70歳以上となった今、5年後からの5年間でかなり支給延べ人数は減っていくと思われます。2030年に完全廃止ということであればそのころは70歳まで当然働く世の中になっており、抵抗がないかもしれません。ただ、今後60歳以上の賃金制度の見直しはする必要が出てきました。
 
金曜日は顧問先様向けセミナーということで、同一労働同一賃金の対応についてお話しさせて頂きました。各企業が検討される際に、事前に説明させて頂きたいことが沢山あったのですが、自分の中で、派遣の同一労働同一賃金まで説明できるほどにこなれるには時間がかかり、12月になってしまいました。少し遅くなりましたが、やっと説明できてホッとしました。あとは各企業で検討された内容についてフォローのご相談に乗らせて頂ければ、大企業は来春までには間に合うかなと思います。

雇用保険の基本手当の受給期間の延長について

2019-10-12 22:31:01 | 労働保険

雇用保険の基本手当は、原則、離職日の翌日から1年以内の受給期間内の 失業している日について、一定の日数分支給されます。この受給期間内に、妊娠、出産、病気等の理由で引き続き30日以上職業に就くことができない場合は、雇用保険法の「失業」の定義である労働の意思及び能力を有していないということで、その期間は基本手当は受給できません。

そこで、ハローワークに申請することにより、受給期間を延長することができます。どのくらい延長することができるかというと、本来の1年の受給期間にプラスして職業に就けない期間を加えることができるわけです。離職日の翌日から4年以内まで延長することができることになっていますが4年を超えて受給期間が延長されることはありません。離職日翌日から4年間、30日以上職業に就くことができない理由が継続すれば受給期間の延長をしても基本手当は受給できません。例えば1年間の受給期間うち離職日翌日以後の当初の6か月後、例えば2引き続き4か月職業に就くことができなくなった場合の受給期間は1年+24か月ということになり、事実上の受給期間は当初の6か月とその後24カ月(その間は病気であるため受給できない)経過した後の6か月間ということになるわけです。

受給期間延長のハローワークへの申請は、妊娠、出産等の理由により引き続き30日以上職業に就 くことができなくなった日の翌日以降、延長後の受給期間の最後の日までの間であれば、申請が可能です。以前は1か月以内でしたが改正により平成29年4月から1か月経過しても延長申請は可能となっています。ただし、申請が遅い場合は、受給期間の残日数が不足して、受給期間延長を行っても基本手当の所定給付日数の全てを受給できない可能性があり、注意が必要となります。少なくとも所定給付日数の未受給の日数分は受給期間内に確保した上で申請する必要があり、そのためにはできるだけ職業に就くことができない理由が30日を経過した日の翌日以降早めに延長申請を行い受給を開始することが肝要です。

引き続き職業に就くことができない理由については、雇用保険法20条と施行規則30条に定められており、①妊娠、②出産、③育児、④疾病又は負傷、⑤①~④のほか管轄職業安定所長がやむを得ないと認めるものとなっています。

今回の台風は東京は土曜日に来ましたので、仕事がお休みという方が多かったのは幸いでしたが、いろいろなイベント等が中止となってしまいました。それでも大きな災害が起きていないと良いのですが、明日朝起きたときが少し心配です。

昨日(金曜日)仕事を終えて帰り道にスーパーで2日分の食料を買いこもうとしたところ、流石に8時過ぎに行ったのでは遅すぎて、パンもお惣菜もすべて棚は空っぽでした。それでもどうしても買いたかったシャインマスカットはまだ残っておりちょっと嬉しかったのと、卵があったのは救われました。電車も計画運休を早めに決めましたし、日本人も最近は何かと早めに安全を確保する習慣がついてきたように思います。 


「雇用類似」の働き手に対する保護のあり方について、検討会中間報告

2019-07-16 01:55:03 | 労働保険

 7月4日付け労働新聞に、「厚生労働省は、『雇用類似』の働き手に対する保護のあり方について、検討会中間報告(案)を明らかにした。」という記事が載っています。

 副業・兼業を認めていくという国の方針もあり働き方が多様化する中で、「雇用類似の働き手の保護」という観点から厚労省では検討会を行っています。その中間報告がまとめられ以下のような概要となっています。

雇用類似の働き方に係る論点整理等に関する検討会 中間整理について

https://www.mhlw.go.jp/content/11911500/000523663.pdf

 修士論文のテーマはかなり焦点を絞ることにしましたが大きく括ればテーマといってよく、興味があるところですが、「労働基準法の労働者性判断基準を拡張して、雇用類似の働き手を保護すべき」という意見に対して、「これまでに確立された知見を抜本的に見直す必要が生じる」ということで短期的には結論を出すことはできないということになりました。今後、保護ルールを検討する考えである、ということです。保護対象となる雇用類似の働き手の定義としては、「発注者から委託を受け、主として個人で役務を提供し、その対償として報酬を得る者」が中心になる、としています。

 厚生労働省のhpにある検討会の資料をみると、中間報告に至るまでにかなり詳細なヒアリングと分析がなされていて、その中では契約条件の明示、契約の締結・変更・終了などに関しては「書面等での明示」、報酬の確実な支払い確保、水準設定、最低報酬額などが課題とされており、最低報酬の設定、その他、安全衛生、就業時間、損害賠償の予定などについて優先的に検討するということです。

 検討会の検討内容とは違った視点からの切り口で自分なりの研究をしてみようと考えており、特に影響を受けるということはないのですが、「労働基準法上の労働者」についての判断基準については、確かに拡大するには大きな転換が必要だとは感じます。しかしヨーロッパは特に国によっては拡大を図っているケースもありその転換のきっかけや考え方のプロセスなど調べてみたいことは色々とあります。

先週のゼミの後で、修士論文の報告をして概ね方向性は良いでしょうという菊池教授のアドバイスを頂いて、かなりホッとしたためというわけではないのですが、週末は小淵沢に行ってきました。ほとんど雨でしたし、先月からひいている風邪が抜けないのでゆっくりしようと思ったのですが、ウィンブルドンの決勝があまりに凄い試合で、ジョコビッチが勝利するまで寝ることができず結局夜更かしをしてしまい、まだ咳が残っています(それにしても本当にすごい試合でした!)。

今週末のBBクラブの予習・本番と7月末の学期末までのレポートを仕上げたら、修論についてはどこから何をして書き出すかという方向性も決まりましたので安心してふと気が付いたら既に7月中旬になっており、社労士本試験にあと約1か月ということに気が付きました。

受験生とっては、いよいよここからが本当、勝負のかかった大事な時期になるので、集中して力をあげていって欲しいです。