OURSブログ

社会保険労務士としての日々の業務を行う中で、考えたこと、感じたこと、伝えたいことを綴る代表コラム。

保育園の送迎に係る通勤災害について

2015-12-27 22:45:17 | 労働保険

通勤災害の定義は労災保険法第7条第2項及び第3項において以下の通り定められています。

2項 通勤とは、労働者が、就業に関し、住居と就業の場所との間を、合理的な経路及び方法により往復することをいい、業務の性質を有するものを除くものとする。

3項 労働者が、前項の往復の経路を逸脱し、又は同項の往復を中断した場合においては、当該逸脱又は中断の間及びその後の同項の往復は、第1項2号の通勤としない。ただし、当該逸脱又は中断が、日常生活上必要な行為であって厚生労働省で定めるものをやむを得ない事由により行うための最小限度のものである場合は、当該逸脱又は中断の間を除き、この限りでない。

さらに上記「日常生活上必要な行為」は、労災則第8条において以下の通り規定されており、日常生活上必要な行為の最中である「逸脱・中断中」については通勤災害と認められないものの、その前後については通勤災害が認定されることになります。

労災保険法第7条第3項 の厚生労働省令で定める行為は、次のとおりとする。

一   日用品の購入その他これに準ずる行為

二   職業訓練、学校教育法第一条 に規定する学校において行われる教育その他これらに準ずる教育訓練であつて職業能力の開発向上に資するものを受ける行為

三   選挙権の行使その他これに準ずる行為

四   病院又は診療所において診察又は治療を受けることその他これに準ずる行為

五   要介護状態にある配偶者、子、父母、配偶者の父母並びに同居し、かつ、扶養している孫、祖父母及び兄弟姉妹の介護(継続的に又は反復して行われるものに限る。) *平成20年4月1日より追加されました。

 ところで「保育園への送迎」については上記逸脱・中断の規定の中には含まれていないので、送迎の前後または送迎中の事故については通勤災害と認められないかというとそういうわけではありません。

共稼ぎの場合の保育園の送迎についてはそもそも通勤として「合理的な経路又は方法」として通達(平成27.3.31基発0331第21号)で以下の通り認められており、「逸脱・中断」にすらならない、ということになります。

「合理的な経路及び方法」とは、当該移動の場合に、一般に労働者が用いるものと認められる経路及び手段等をいうものである。・…(略)…さらに、他に子供を監護する者がいない共稼ぎ労働者が託児所、親せき等にあずけるためにとる経路などは、そのような立場にある労働者であれば、当然、就業のためにとらざるを得ない経路であるので、合理的な経路となるものと認められる。

平成19年の労働保険審査会の決定でもそのような判断になっています。

平成19年労第364号(通勤災害関係事件)・取消「夫婦共稼ぎの請求人が出勤の途中で保育園を経由する経路は、特段の合理的な理由があるとして、原処分を取り消した事例」

http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/shinsa/roudou/08/rousai/txt/73.txt

いよいよ今年もあと数日になりました。今日は休日出勤をするスタッフに付き合って事務所で溜まっていた仕事を片付けました。来年がスタートすると色々とご依頼頂いているセミナー等のレジュメを作ることになるため、溜まっていた情報誌類を整理して資料を準備することもできました。

明日は事務所の納会で、業務を早めに終えたら事務所内で料理のとても上手い永年姉と慕っているスタッフの手料理と持ち込んだお酒や参加費用の代わりなのか送られてきたシャンパンなどで締めるのがここ10年近くでしょうか慣わしになっています。顧問先から頂いたネクタイ・ストールから郵便局の景品をくじ引きしたり、私も小さなプレゼントをみんなにプレゼントをしたりでなかなか楽しい会になります。これをやってしばらく年末年始のお休みです。私の新年のスタートは4日の渋谷区の新年会からです。また忙しい1年になりそうです。

ということで来週はお正月(1月3日)なのでブログはお休みさせて頂きます。今年も有難うございました。良いお年をお迎えください。


65歳以上の雇用保険について

2015-12-20 20:59:17 | 法改正

現状65歳以上の雇用保険の適用についてはなかなか複雑です。

65歳以上の被保険者については「高年齢継続被保険者」という名称で、「同一の事業主の適用事業に65歳に達した日の前日から引き続いて65歳に達した日以後の日において雇用されているもの」とされています。

要するに同一の事業主に65歳前から雇用されておりそのまま65歳以降も継続されて雇用されているもの、ということになっています。この高年齢継続被保険者は、失業した際に「高年齢求職者給付金」を受給することになり、給付額は基本手当より少ない50日(1年以上の算定基礎期間の場合)又は30日(1年未満の場合)です。

65歳以上新たに雇用される者についてはこれまで被保険者にはなれなかったところが、厚生労働省が11月25日の労働政策審議会雇用保険部会に示したたたき台で、現在の雇用状況等を踏まえ雇用保険の対象とするとともにそれに伴う諸課題については個別に政策対応を図る、とされています。審議会で検討される概要としては以下の通りです。

1.受給要件と給付が一般被保険者と異なるため名称については「高年齢被保険者(仮)」

2.高年齢被保険者が失業した際の給付については高年齢求職者給付金(一時金)を支給

3.失業認定申告書の記載、厳正な認定等の失業認定の見直しを検討・・・これまでは失業認定は1回のみであり失業状態であれば支給されています

4.高年齢継続被保険者は対象外とされていた教育訓練給付、介護休業給付等も対象にすることを検討

5.年度初日の4月1日に64歳以上の被保険者については、事業主負担分及び本人負担分ともに保険料が免除されることとされている扱いは廃止し原則通り徴収…激変緩和の観点から、一定の経過措置を検討

確かに今の時代60歳定年はまだもったいないと感じることは多く、さらに65歳以上でも仕事をすることは十分可能になってきていると思います。65歳以上も雇用保険が普通に適用されることは当然かもしれません。

いよいよ今週はクリスマス、来週で今年も終わりですね。今年は仕事も沢山ご依頼頂いて有難いことに事務所は常に忙しくしていました。スタッフだけではなくまわりの社労士を始めとして沢山の方に助けられた感があります。

私個人としても様々な場面で新たなことに取り組むことが多く、非常に刺激的な1年でした。まだまだこれからも新たなチャレンジができそうなので、本当に恵まれていることを感謝しつつ来年に向けてワクワクしています。健康第一に行きたいと思います。


面接指導に係る100時間のカウントについて

2015-12-13 20:34:33 | 労働法

今年の秋の初めころまで、労働基準監督署の企業への調査がとても多かったのですが最近一段落という感じです。塩崎厚生労働大臣になってから過重労働対策が最重要課題とされたこと、労働基準法の改正で高度プロフェッショナル職というこれまでの時間外労働の管理と異なる考え方が実行される前に時間外労働を抑制することが必要になっていることが要因にはなっていると思います。

時間外労働は会社によってかなり差があると感じますが、36協定を沢山見ていると1カ月の法定労働時間を超える時間数はだいたい80時間となっていることが多いように思います。さらに1カ月当たりの時間外労働数が100時間を超え、かつ疲労の蓄積が認められるものが面接指導の申出を行ってきた場合は、会社は医師による面接指導を行わなければならないことになっています(安衛法66条の8)。

この100時間のカウントについて先日お問い合わせがありました。36協定の時間外労働については休日時間数は含まず法定労働時間を超えた時間数と決められていますが、面接指導の100時間については、休日労働時間数も含めて考えるということで、通達も出ていました。

リーフレットの計算式では以下の通りです。

1か月の時間外・休日労働時間数=1か月の総労働時間数※―(計算期間1か月間の総暦日数/7)×40   

                       ※1か月の総労働時間数=労働時間数(所定労働時間数)+延長時間数(時間外労働時間数)+休日労働時間数

なお、時間の算定は、毎月1回以上、一定の期日を定めて行わなければなりません。例)賃金締切日とする。  以下リーフレットは参考まで。

 とすると36協定の管理とは別に時間数のカウントを行わなければならないことになるので注意が必要だということになります。

事務所ではグーグルカレンダーを使って予定を共有しています。どこまでスタッフが予定を入れているのかわかりませんが、私はだいたい毎日夜にメンテしてできるだけ正確な予定を入れています。今年はかなり色々な役割ありましたので予定がバッティングしてキャンセルや変更が多くかなりストレスになりましたが、何とか手帳とグーグルカレンダーのお蔭で乗り切れたという感じです。

グーグルカレンダーは各人の色分けがされており私は赤なのですが、ずっと真っ赤っかでした。しかし12月に入ってから少し余裕ができて、女性活躍法・若者雇用促進法の外部セミナーの予定を入れることができました。また、雇用保険のマイナンバーについての社労士会のセミナーもあり、そういう意味では頭の中がだいぶ充実してきたように思います。今日は被用者年金一元化法のDVDを見て勉強しました。来週は障害者雇用促進法についてのセミナーも受講することにしました。

やはり勉強は面白いと思い、来年はスタッフも交替で外部のセミナーに行けるようにある研究組織の年間契約をすることにしました。やはり法改正の情報や実務の知識・対応方法をいかに会社に提供できるかが社労士の最も大事な役割だと思いますので。

年に2回ではありますが受講生のOB会であるBBクラブもできる限り継続して行きたいと思っています。1月の勉強会のお返事が毎日続々と届いています。ちょこっと書かれているメッセージも必ず目を通しています。できるだけ良い講義ができるよう年末年始仕入れを生かしたレジュメを作成する予定です。 


女性活躍推進法に見る諮問から答申まで

2015-12-07 00:10:47 | 労働法

11月まで全く隙間なく手帳のスケジュールが埋まっていたのですが、12月に入り半日予定がない日が何日かできたので、さっそく女性活躍法と青少年雇用促進法の研修を2つと被用者年金一元化方のdvdを1つ購入し、さらにストレスチェックの本も1冊読むということでインプット月間にしようと思っています。ちなみに来年倫理研修の講師を務めることになっているため年末年始は社労士法を徹底的に学ぶ予定にしています。従ってこの1カ月間はとにかく勉強月間というつもりでいます(あまりに多忙でインプットができずカラカラになっている感じがしていましたので正直ワクワクしています)。

早速女性活躍法の研修に先週行ったのですが、なかなか得るものがある研修でした。そもそも女性活躍法で定める一般事業主行動計画は、次世代育成支援対策推進法の一般事業主と重なるイメージであり、その計画を立てたからと言ってどの程度の効果があるのだろうかと疑問を持っていました。女性活躍法の一般事業主行動計画の計画期間は平成28年度から平成37年度までの10年間ということで、それを実情に応じておおむね2年から5年間に区切り進捗を検証しながら改定を行うというものです。10年先をイメージして行動計画を実行して行こうという考え方であり、今40代の女性たちが50代になった際に管理職に当たり前の割合で就くことになるのかなというイメージができるものでした。

常時雇用する労働者の数が301人以上の事業主平成28年4月1日までに策定をしなければなりません。その流れとしては以下の通りです(義務付けられています)。

①自社の女性の活躍に関する状況把握、課題分析 ②状況把握、課題分析を踏まえた行動計画の策定・社内周知・公表 ③行動計画を策定した旨の都道府県労働局への届出 ④女性の活躍に関する状況の情報の公表

詳しくは厚生労働省の以下のサイトに載っています。まだ載っていないようですがこのページに「行動計画策定支援ツール」が用意されるようなのでそれを使って一般事業主行動計画を作成するのもよさそうです。

http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000091025.html

ところでこれらの指針が定められていくにはどのような過程なのかちょっと興味を持ち調べてみました。厚生労働省のHPには諮問と答申が出ており、それを見てみると諮問の段階では指針案が示されて大きく3つの項目から構成されています。①「女性活躍の意義、現状及び課題」としてこの指針を定める背景や課題が明示されています ②「女性の活躍推進及び行動計画策定に向けた手順」として一般事業主行動計画の内容案が示されています ③女性の活躍推進に関する効果的な取組として効果的な取組例を提示しています。ページ数は17ページにわたりかなり詳しい内容になっています。

これを労働政策審議会の雇用均等分科会で審議した上で、厚生労働大臣宛てに「別紙記の通り」として答申しています。労働政策審議会雇用均等分科会の開催履歴を見ると、女性活躍の指針については9月3日から6回程度開催されたようで、議事録がまだアップされていないので残念です。 しかし最初の開催日である9月3日の配布資料と参考資料の量は膨大(資料1~9、参考資料は1~15まで)はであり、委員はこれを事前に読んでくるのか当日目を通すのか、ともかくこれだけの資料に目を通すのにはかなりパワーが必要だと思いました。こういった会議に出て発言するということはこれまでの社労士業務とは少し異なった視点で資料を見るなりそれなりの手法がありそうです。

諮問と答申とはどのようなものなのかということを最近疑問に思っていたのですが、諮問はかなり具体的な提案についてどのように考えるか審議会に投げかけ、審議会はそれを審議して妥当かどうかを検討し答申する、というそれぞれの役割は今回の調査でだいぶ分かった気がしました。答申は尊重されなければなりませんので、その前提としてある程度の具体策の提示がないとなかなか難しいものだなと思いました。

OURS小磯社労士法人も、事務所スタッフのSさんの尽力によりPマークを取得できました。半年以上時間がかかり大変だったと思いますがマイナンバーに間に合い本当に良かったです。早速アクリルケースを購入し認定証を入れて事務所の入口に設置しました。