OURSブログ

社会保険労務士としての日々の業務を行う中で、考えたこと、感じたこと、伝えたいことを綴る代表コラム。

2暦日にわたる労働の時間外労働のカウントについて

2019-01-27 21:13:32 | 労働基準法

木曜日に渋谷労働基準協会で「36協定集中講義」をさせて頂いた際に、説明していて疑問が出てしまい「調べてOURSブログに載せておきます」と言ったので今日はそのテーマを取り上げてみたいと思います。

内容としては2暦日にわたる労働が休日にかかる場合で、36協定の時間外労働時間数についてどこをカウントするかという点についてです。

①平日2暦日労働(原則)

そもそも暦日にわたる労働については、「始業時刻の属する労働とみなす(昭和63.1.1基発1号)」という考え方があります。例えば月曜日13時に仕事を開始して翌日火曜日の7時まで働いた場合で月曜日、火曜日各1時間ずつ休憩を取った場合で考えてみます。

月曜日の労働時間は10時間、翌日の労働は6時間の合計16時間になるわけですが、この場合月曜日の10時間と火曜日の6時間に分けて、月曜日の10時間が8時間を超えた2時間が時間外労働になるわけではありません。「始業時刻の属する日の労働とみなす」ために、月曜日の労働として合計16時間のうち法定労働時間8時間を超えた8時間が時間外労働になります。

②平日(土曜日)から休日にわたる2暦日労働

翌日が休日にかかる場合はどうなるかということになるのですが、その場合は0時で区切ることになります。例えば土曜日13時に仕事を開始して翌日法定休日である日曜日の10時まで働いた場合で休憩を上記同様1時間ずつ取った場合、土曜日の労働は13時から24時までの10時間、日曜日の労働は0時から10時までの9時間となり、土曜日の時間外労働は8時間の法定労働時間を超える2時間、日曜日は休日労働のカウントになります。

③休日から平日にわたる2暦日労働

法定休日である日曜日13時から仕事を開始して翌日月曜日の始業時刻である10時まで働いた例の場合で休憩を上記同様1時間ずつ取った場合も同様に0時で区切るため、13時から24時までは休日労働となり、翌月曜日の0時から10時までの9時間のうち8時間を超える1時間が時間外労働のカウントになります。

東京労働局に確認したところ、やはり36協定の時間外労働のカウントについては、上記割増の対象となる時間が時間外労働としてカウントされることになりますので、原則としては8時間が時間外労働にカウントされるが、土曜日から休日をまたいだ場合は休日分は休日労働のカウントとなり土曜日の2時間が、休日から月曜日をまたいだ場合は休日分が休日労働のカウントとなり月曜日の1時間が時間外としてカウントされます。

休日労働についてはなぜ0時で区切るのかということについても分かりました。休日は0時から24時の暦日として考えるため、0時を超えても前日の労働としてしまうと、「休日労働」とならないため「始業時刻の属する日の労働」の原則を適用しないということなのです。なるほどと納得しました。

2月はセミナーが毎週のようにありますので、インフルエンザが流行っているということで電車に乗るときは珍しくマスクをするようにしています。マスクはあまり好きではないのですが仕方がありません。講師業というのは原則として代わりが利かないのでその点はかなり緊張感があります。特に風邪をひき声が出なくなってしまうという事態に過去遭遇しており、一度はTACの満員御礼となった横断セミナーでどうしても声が出ず代講を立てるという大失態を演じたことがあり、それだけは避けたいと考えています。

OURSセミナーでも一度声が最後ギリギリ状態となり来られていた皆さんに不安そうな顔をさせてしまったことがあります。終わってから「大丈夫。聞こえてましたよ。」と言って頂いた時は本当に申し訳なく、そのやさしさにウルっと来たことも良く思い出します。

さてさて、OURSは相変わらず沢山お仕事を頂いているのですが、スタッフを増やして一人一人の負担をできるだけ平準化していくことを目指し、少し自分への負荷も軽くして、乗り切っていきたいと思っています。


経営というもの

2019-01-20 22:14:02 | 雑感

社労士を開業して26年経ちますが、これまでのことを思い起こしてみると「社労士」の仕事は自分にとても合っていたという感じがしています。本来とても不器用なのですが、どちらかといえば社労士の業務は蓄積がものをいいますので、スポーツでいえば長距離走であり、その面で粘り強さだけが取り柄の私には向いていたという気がします。

「社労士」の仕事は、まず人と接する機会が多くそれがとても楽しく刺激やパーワーを頂くことも多くあり、また感謝して頂くことも多いので仕事の達成感や充実感もとてもあると思います。しかし事務所の経営となるとこれがなかなか難しいと言えます。企業からのご相談を受けアドバイスしているとやはりその難しさを感じ、法律をベースにしながら一緒に考える場面が多いのですが、振り返れば今ご相談頂いている社長や人事担当者の気持ちは自分とダブることもあります。事務所が小さい頃は小さい頃の悩みがあり、大きくなれば大きくなったなりの悩みがあります。私の中にはやはり会社は一家、社員は家族という昭和時代の感覚があり、それは今の世の中には通じにくいのかもしれません。しかし、「人とのご縁と信頼関係が一番の財産」という考えは持ち続けようと思っています。

事務所運営については、稲盛和夫さんの「人生を生かす」という経営塾での質疑形式の本を、また松下幸之助さんの「道をひらく」という本を開いてみることにしています。

毎月勤労統計のことがかなり報道されており、かなり大きな問題になりそうな感じです。ちょうど平成26年に社労士試験の選択式問題として出題されたこともあり、複雑な気持ちになります。額的には、1件ごとそれほど大きな額にならないように思えますが、その件数たるやかなりの数になると思われ、今後の対応が懸念されます。先日厚生労働省に出向いた際もその話ばかりでしたので、若干働き方改革の進捗にも影響する可能性を感じました。

ところで、36協定のモデルを自分なりに作ってみたのですが、なかなか色々な点で作成ポイントがあると感じました。渋谷労働基準協会の36協定集中講座だけでなく、2月15日のOURSセミナー、2月23日のBBクラブでご説明できればと思いますが、まずは事務所のミニ勉強会でスタッフがアドバイスをできるようにして顧問先企業のご相談に応じられるようにしておこうと思います。 


労働時間「所定」と「法定」の違い

2019-01-14 22:25:00 | 労働基準法

1月24日に渋谷労働基準協会さんが開催する「36協定集中講座」を皮切りに2月にかなりセミナーが立て込んでおり、ほとんどが働き方改革関連の改正であるため、12月(一部HPの公開は1月)に厚生労働省から発表された通達や資料について読み込んでみました。

12月に発表された「時間外労働の上限規制」「年5日の年次有給休暇の確実な取得」はともにわかりやすい解説と銘打っており、①法令解説編、②実務対応編、③Q&A、④参考、から構成されており、工夫された内容になっていると思います。

その中で「所定」と「法定」の違いというコラムがあり、確かにこの2つの考え方はしっかり理解しないと時間外労働の上限規制に対して誤った対応をとってしまう可能性があります。

元々昔から、労基法で定めた労働時間は「法定労働時間」に対して会社で定めた労働時間は「所定労働時間」という説明はしていました。その点についてはそれほど難しいことはないのですが、問題は休日の扱いです。労基法で法定休日は、1週間に1日又は変則休日制として4週間4日と定めており、土日が会社の定めた休日の週休2日制の場合、うち1日は法定休日に当たるわけですが、残り1日は法律で定めた休日ではなくその日に出勤したとしても法律上は休日出勤ではないという扱いになります。したがって法律上の休日ではない日に出勤したとした場合に、週40時間を超えて働いたところから時間外労働になることになります。

平成22(2010)年の労基法の改正により、60時間以上の時間外労働をさせた場合の割増率は50%と定められ、すでに大企業には2010年4月から施行されています。その際60時間のカウントをするときに、所定休日の出勤については時間外にカウントする場合があるということを認識することになりました。それまでは、法定休日と所定休日を明確に区分するという発想があまりなく、所定休日に出勤した場合も35%割増しの手当を支払えば損はしないので良いでしょう、という考えでした。しかし60時間を正確にカウントしないと、50%の割増賃金を支払うところ35%しか払わなかった場合未払い発生となるため、正確を期すということになったわけです。

なお、平成22年の改正当時出た「改正労働基準法に係る質疑応答」Q10に、法定休日が特定されていない場合について記載があります。

「法定休日が特定されていない場合で、暦週(日~土)の日曜日及び土曜日の両方に労働した場合は、当該暦週において後順に位置する土曜日における労働が法定休日労働となる。4週4日の休日制を採用する事業場においては、ある休日に労働させたことにより、以後4週4日の休日が確保されなくなるときは、当該休日以後の休日労働が法定休日労働となる。」

もし就業規則に「月曜日から1週間をカウントする」と定めておくと、法定休日が特定されていなくても土曜日・日曜日両方に労働した場合は、後順に位置する日曜日が休日労働となるということになります。

https://www.mhlw.go.jp/topics/2008/12/dl/tp1216-1k.pdf

今回中小企業についても2023年4月から時間外労働が60時間を超えた場合50%の割増率が適用されることと、大企業にも時間外労働の上限規制が2019年4月から適用されることを考えると、この法定休日について正確に理解してもらうことと、できれば明確に定めることは重要なことと思います。

昨年ゴルフクラブを購入し時々練習場に行っているのですが、軽くボールが飛んで行ったときの快感が少しわかるようになりました。まだコースに出たことはないのですが、練習ばかりしているのではなくすぐコースに出た方が良いですよと以前後輩社労士に言われたので今年はできればコースに出ることを楽しみにしています。

よく駅のホームでエアー素振りをしている人をみかけたりして、何が面白いのかな~と思っていましたが、それに近づくかもしれません。しかし運動神経がないことを自負している私としては、まずは仕事や勉強の気晴らしと運動不足解消と併せて家族交流が一番の目的といったところです。

大学院の方は、あと残すところレポートが一つとなり、何とか単位の方は予定通り取れそうな感じです。最後のレポートは立法過程について自分のテーマを取り上げるということなのですが、修論テーマとは異なり以前から興味をもって見ている「老人保健法」の立法過程を追ってみようと思いちょっとワクワクしています。


全ての労働者の労働時間の把握について

2019-01-06 20:31:54 | 法改正

あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

今回の年末年始は9日連続休暇を取られた方も多いのかなと思います。ゆっくり休まれたでしょうか。今年は5月の連休もかなり長期休暇になる会社が多いかと思いますが、休暇という点からいよいよ本格的に働き方改革が始まる年という感じがします。

4月より働き方改革関連の法改正が行われることになりますが、その中でかなり大きな改正点として「すべての労働者の労働時間を把握する義務」があげられると思います。そもそもこれまでは管理監督者は労基法第41条の定めにより、「労働時間・休憩・休日の適用除外」とされているため労働時間の把握義務は使用者にはなかったわけです。また、裁量労働者については、労基法第38条の3の定めにより「労働者の裁量にゆだねる必要があるため、当該業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をすることが困難なもの」ということで労働時間の把握義務が同じく使用者にはないということになっていました。ただし安衛法の面接指導の規定は適用されるということである意味間接的に把握義務があるという作りになっていました。

今回の改正ですべての労働者の労働時間について、使用者は労働時間の把握義務があるということが明確になりました。関係のリーフレットなどに書かれていますので既に認識されている方が多いと思います。また高度プロフェッショナル制度対象者については法律条文がどのようになっているかという点について触れてみようと思います。

安衛法66条の8の3 事業者は、第66条の8第1項又は前条第1項の規定による面接指導を実施するため、厚生労働省令で定め る方法により、労働者(次条第1項<いわゆる高度プロフェッショナル制度>に規定する者を除く。)の労働時間の状況を把握しなければならない。

上記安衛法の規定で時間把握について除かれている高度プロフェッショナル制度対象者については労基法において、労働時間だけではなく「労働時間と事業場外において労働した時間との合計時間である健康管理時間」を把握する措置が義務付けられています。

労基法第41条の2,3号  対象業務に従事する対象労働者の健康管理を行うために当該 対象労働者が事業場内にいた時間(この項の委員会が厚生労働 省令で定める労働時間以外の時間を除くことを決議したときは 、当該決議に係る時間を除いた時間)と事業場外において労働 した時間との合計の時間(略「健康管理時間」という。)を把握する措置(厚生労働省令 で定める方法に限る。)を当該決議で定めるところにより使用 者が講ずること。

今回、管理監督者については、労基法における労働時間等の概念がないことについてはそのままにして、安衛法において労働時間の把握義務を設けたところはやはり「健康管理のため」という目的があることが主たる理由であると思いますが、ちょっと違和感も感じています。

今年のお正月は年明けに備えて大掃除や駅伝観戦の合間に、セミナーレジュメやレポートに取り組んでだいぶはかどりました。4日に出社したときに36協定集中という1月に渋谷労働基準協会で行うセミナーのレジュメをひらこうとしたら12月31日0時〇分とあり、アレそんな時間にやっていたんだっけと自分でびっくりしてしまいました。働き方改革からしたら全く劣等生の私なのですが、TACの講師時代から社労士の仕事や勉強が楽しくて面白くて仕方ないという感じでここまで来てしまいました。そういう仕事に巡り合えたことは人生においてやはり幸せなことと思っています。

初詣では「大吉」が出ましたし、今年は周りに迷惑はかけないように気を付けながら元気に行きたいと思っています。宜しくお願いします。