OURSブログ

社会保険労務士としての日々の業務を行う中で、考えたこと、感じたこと、伝えたいことを綴る代表コラム。

36協定特別条項に定める一定期間について

2018-03-25 22:40:37 | 労働法

36協定を4月1日に更新する企業は多いため念のためチェックをと依頼されることが多い時期です。それほど多いケースではないのですが、時々見かける誤った決め方がありますので、その根拠もここで明確にしておきたいと思います。

協定に定める場合は、1日についての延長することができる時間及び1日を超える一定の期間についての延長することができる時間について協定しなければなりません。

この中で、一定期間とは「1日を超え3箇月以内の期間及び1年間」をいい、例えば「1日と1箇月と1年」又は「1日と3箇月と1年」の延長時間を定めることになります。この場合延長時間の上限が定められており、原則として1箇月の場合は45時間、3箇月の場合は120時間になります。

ほとんどの企業は1箇月の上限時間を定めていることが多いのですが、3箇月の上限時間を定めている企業もたまに見かけます。これは3箇月の上限時間を120時間と決めて、とても忙しい月には80時間の時間外を行ったとしても翌月と翌々月が各20時間であれば、3箇月で120時間以内に収まることになり、法定された上限時間を超えていないため、特別条項は適用する必要もないということになります。

誤りやすいのは、3箇月の上限時間を定めた場合です。一定期間を3箇月で定めた場合に、特別延長時間は例えば1箇月70時間と定めるのは認められません。一定期間を3箇月で定めた場合に、特別条項における特別延長時間も3箇月(例えば3箇月210時間など)で定めなければなりません。

以下の通達の抜粋が根拠です。(平成11年1月29日基発45号、平成15年10月22日基発1022003号)

ハ 一定期間についての延長時間は限度時間以内の時間とすることが原則であるが、弾力措置として、限度時間以内の時間を一定期間についての延長時間の原則(以下「原則となる延長時間」という。)として定めた上で、限度時間を超えて労働時間を延長しなければならない特別の事情が生じたときに限り、一定期間として協定されている期間ごとに、労使当事者間において定める手続を経て、限度時間を超える一定の時間(以下「特別延長時間」という。)まで労働時間を延長することができる旨を協定すれば(この場合における協定を「特別条項付き協定」という。以下同じ。)、当該一定期間についての延長時間は限度時間を超える時間とすることができることとしたものであること。

なお、留意すべきは、一定期間の上限時間は1箇月の場合45時間ですが、3箇月の場合は120時間とされているため、若干3箇月で定める場合の方が少ない時間数となります。

法改正間近ではありますが、現状特別条項が1年の半分までとされているにもかかわらず、半分に収めるのがかなり難しいという状況で、業務の繁閑がかなりあるというようなことであれば、一定期間についての上限時間とそれをさらに延長できる特別条項を定めるにあたって、一定期間についてよく検討してみるのも一つの方法ではあると思います。

4月から大学院で勉強することになり、昨日履修説明会に行きいよいよ始まることになりました。社会人入学でもちろん働きながらの勉強にはなるのですが、事務所のスタッフの戦力も充実したので、少し時間をもらって社労士としてさらに違う視点から学ぶ意義もあるのではないかと考えました。昼の授業もいくつか取ってあまり無理せず、体調管理をしてテーマを絞り研究していきたいと思います。

 ベランダの花も春が来て花盛りになりました


高齢社会対策大綱

2018-03-18 23:24:33 | 社会保障

高齢社会対策大綱が平成30年2月16日に閣議決定されました。

高齢社会対策大綱は、高齢者政策の新しい指針とされており、その中では65歳以上を一律に高齢者とみる一般的な傾向について、現状に照らせば現実的でなくなりつつあるとしています。70歳やそれ以降でも、個々人の意欲・能力に応じた力を発揮できる時代が到来しており、「高齢者を支える」発想とともに、意欲ある高齢者の能力発揮を可能にする社会環境を整えることが必要である、とされています。

ここで「一般的」に65歳が高齢者とみるということになっているのは、各法律で高齢者の定義が異なっており、制度間で統一した「高齢者」という法律上の定義づけがされていないということによります。そういう意味では現状65歳になって自分が「高齢者」だと思う人は比較的少なく、よく耳にするのは75歳の後期高齢者になった際に「いよいよ後期高齢者になった」というお話のように感じます。

大綱の中で社労士の関係する分野としては、1.就業・所得、2.健康福祉の部分になりますが、特に1.就業・所得は、これからの方向性を見極める上でも一読しておくと良いように思います。

65歳まで働けるような安定的な雇用の確保や、65歳を超えても、70歳を通じ、またそもそも年齢を判断基準とせず年齢にかかわりなく希望に応じて働き続けることができるような雇用・就業環境の整備を図るとともに、社会保障制度についても柔軟な制度となるよう必要に応じて見直しを図るとあります。

就業については、多様な形態による就業機会等の確保や再就職の支援だけでなく、高齢者の企業の支援などについても記述があり、資金融資を含めた支援を行うなどかなり具体的な内容になっています。

さらに、年金については受給開始時期について現在の60歳から70歳までの支給繰上げ・繰下げ制度をさらに拡大し、70歳以上の受給開始を選択できるようにするなどの記述もあります。また、在職老齢年金についても弾力的に対応する観点から制度の在り方について検討を進めるとあります。

これらの内容を見ている限り、今後定年60歳から65歳への延長もそう遠くないような気がします。健康寿命男性71歳、女性74歳を平成20年には1歳以上延伸、平成25年には2歳以上延伸ということが目標になっており、この年齢までは平均的な人であっても働けるということであれば現状より5年延長はおかしくないのかなと思います。

高齢社会対策大綱

http://www8.cao.go.jp/kourei/measure/taikou/h29/2-2.html

話はそれますが、このところ3月末までに「無期転換の規程」を作りたいというご依頼が多くて毎日無期転換のことを考えています。その中でも一番問題になるのが60歳定年後に無期転換権が発生した際の対応ということで、第2定年を設けるということがまっとうな対応なのですが、第2定年を70歳としてもまだそれ以上の社員がいるという会社が業種によってはありなかなかその点では工夫が必要なのです。高齢社会対策大綱を読んだとき、70歳以降も意欲に応じて働ける世の中を作るというのであれば、なぜ無期転換権発生の特措法の特例を「定年退職後引き続き雇用される場合に限る」ではなく「60歳以上」としてくれなかったのかと、これはかなり強く思っています。60歳定年後は、これまでと異なり柔軟な働き方をするためにもかえって無期転換権の発生により契約期間の上限などを会社に設定されるよりは、無期転換権を発生させず有期雇用で働くことが良いのではないかと考えるためです。

春がもうすぐそこに来たという感じで、ベランダの花たちがとても元気で毎朝楽しみです。シクラメンはいよいよ5年たちますがまた今年もきれいに花が咲きました。例年1月~3月に集中するセミナー等講師の仕事も一段落して、後はいくつかの規程を年度末までに完成させるためあと一息です。

25周年の記念パーティーや記念旅行も終了したところで、また新たな課題が頭の中で芽を出しはじめ、事務所を移転するかどうか自分の中で検討を始めています。いまの事務所は既に手狭になり、顧問先の方がもっとご相談に来ていただくにももう少し駅に近い立地がよいように感じています。今度移転したら個室を作る方が良いかなとも考えています。集中して勉強するためにも、またお客様との打ち合わせももちろんなのですが、スタッフとの色々な話をする際もその方が良いのかなという気がしています。まだ夢なのではありますが。


1年単位の変形労働時間制

2018-03-11 23:36:31 | 労働法

ここのところ変形労働時間制の協定書やカレンダーを見て欲しいというご依頼がいくつかありだいぶ復習もして、勉強になりました。特に難しいと感じるのは期間が長い1年単位の変形労働時間制です。

1年単位の変形労働時間制は、以下のことを労使協定で締結して労働基準監督署に届け出ることで採用が可能となります。

①対象労働者の範囲②対象期間及び起算日③特定期間(特に繁忙な期間)④労働日及び労働日ごとの労働時間⑤労使協定の有効期間

②の対象期間は1か月を超え1年以内の期間に限り、また③の特に繁忙な期間として特定期間を設定するのは、連続して労働させる日数が原則6日のところ1週間に1日の休日が確保できれば良いということで最初と最後に休日を持って来て12日連続労働日として設定するためです。

1日10時間、1週間52時間という労働時間の上限が定められている他、1週間に48時間を超える所定労働時間を設定するのは連続3週以内、対象期間を初日から3カ月ごとに区切った各期間に1週間48時間を超える週の初日が3以内などの条件がありますが、いくつか1年単位の変形労働時間制を見せて頂く中では、48時間を超える所定労働時間の週を設定しているほど偏ったカレンダーを作っていることはほとんどないような気がします。

この中ではやはり一番のポイントは④の労働日及び労働日ごとの労働時間の部分になるかと思います。要するに対象期間(たぶんほとんど1年間かと思います)についてカレンダーを作成し、その中で労働日(休日)と労働日ごとの始業・終業時間(労働時間)を決めなければなりません。もし1年間全てを決めるのは無理であるということであれば、対象期間を1か月なり3カ月なり(1か月以上)の期間に区切り、最初の期間のみ労働日(休日)と労働日ごとの始業・終業時間(労働時間)を決めて、残りの期間は労働日数と総労働時間のみ決めておくことでよいとされています。なお、各期間の始まる30日前に過半数組合等の同意を得て書面で労働日と労働日ごとの労働時間を決めることが必要です。

1年単位の変形労働時間制の総枠は、1年間の対象期間の場合は2085.71時間です。私が受験生だった平成3年の頃は1年単位の変形労働時間制は制度としてなくて、3か月単位の変形労働時間制が一番長い変形労働時間制でした。平成5年の法改正で3か月単位が1年単位まで対象期間を広げています。講師になって授業の予習をしてみてあれっと感じたことを覚えています。やはり業務の繁閑が3カ月の範囲内ではなかなか調整できなかったのだと思います。しかし1年単位であると当然忙しい時期がかなり続くことも考えられ、そういう意味でも1か月単位の変形労働時間制より制約は厳しいです。また休日の振替は「予期しない事情が生じ、やむを得ず休日の振替を行わなければならなくなることも考えられるが、そのような振替までも認めない趣旨ではなく一定の条件のもとある程度までは可能」と通達で示されています。しかしあまりに頻繁な振替を行っていると労監督署の調査の際にかなり厳しめな指導があるようです。

今週も日中は外出やセミナー講師の仕事等で事務所にいないことが多く、また連合会の国際化委員会の関係でインドネシアの視察団が事務所に来られるなど、なかなか作業時間が取れない中でいくつか無期転換のための就業規則の改定を行わなければならず、また自分の確定申告もしなければならないという、読んでいただくだけでも息苦しくなるような状況での週末突入ではありましたが、何とか全てをクリアし、今日は自由な時間を確保することができました。特に確定申告は電子申請を既に5年ほど行っており昨年からはマイナンバーカードを使っていますが、非常に簡単にできるようになっています。関連書類は先週揃えてはあったものの、昨年のデータ読み込みもしてくれるため1時間程度ですべてが終わり本当に助かりました。

最近視力は相変わらず良い(1.5又は1.2)のですが近くが極端に見にくくなりどうしても眼鏡を作り直す必要があるなと感じていましたので久しぶりに買い物に行きました。セールもすっかり終わった中でもまだ少し残っていたかなり大幅にお安くなったセーターなどを購入し、だいぶストレス発散となりました。 


遅刻に対する取扱いについて

2018-03-04 20:53:50 | 労務管理

就業規則をチェックしていると昔から時々みかけるのですが、「遅刻を3回した場合年次有給休暇を1日分取得したものとみなす」と規定されていることがあります。この規定については問題があると説明し廃止となるのですが、どこに問題があるのかということを記しておこうと思います。

まずこの規定の趣旨は、遅刻を3回した場合について「(懲戒)処分」を行うということになるかと思います。遅刻1回につき懲戒処分としての減給の制裁を行うということは、あながち法違反ということにはなりません。減給の制裁は、1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が1賃金支払期における賃金総額の10分の1を超えてはならないと定められています。従って遅刻1回につき平均賃金の半額を減給の制裁として行うことは可能ですし、遅刻3回であれば平均賃金の半額×3回=1.5日分の減給ということも可能ではあります。しかしこれには問題点があります。

しかし冒頭の扱いについての問題の1つ目は、「年休1日分を取得したものとみなす」という点にあります。年次有給休暇については、労働者の「時期指定権」があり、遅刻をしたからといって年次有給休暇の時期指定権を失わせることはできませんので、本人の意思にかかわらず1日分取得したものと「みなす」扱いはできないということになります。年次有給休暇ではなく振替休日ではどうかという点ですが、振替休日は本来「振替えるべき日を指定」して休日と労働日をトレードすることが可能になるとされており、あらかじめ休日として指定していた日を勝手に振替え済にしてしまうという扱いにすると、それはむしろ減給の制裁が行われたことになり、振替休日自体については無効となり、休日労働による割増賃金が発生するということになるかと考えます。

問題の2つ目は、遅刻を3回した場合の減給の制裁についての妥当性です。遅刻を3回した場合といっても10分の遅刻を3回した場合と1時間の遅刻を3回した場合では、合計で30分と3時間(180分)とかなりの差があります。減給の制裁というのはあくまで懲戒処分の一つであり、単なるノーワーク部分の賃金控除とは意味が全く異なります。懲戒処分の「処分」は軽いものから重いものまでありますが、「制裁罰」ということでいずれも労働者にとっては厳しいものであり、使用者に与えられている「懲戒権」については濫用できないよう、様々な制約が存在します。

その制約の中の一つとして「相当性の原則」というものがあり、「処分の内容が行為に対して相当でなければならない」とされています。この相当性を欠けば懲戒処分は無効となるわけです。例えば5分の遅刻を3回した場合、減給の制裁とはいえ「懲戒処分にあたる程の非違行為であるかどうか」という点で相当性を欠く可能性が高いです。また30分の遅刻でも3時間の遅刻でも、遅刻時間にかかわらず減給の制裁として平均賃金1日分の半額を減給するとした場合、その内容に差がありすぎこちらについても処分の内容の相当性を欠く可能性あります。

上記の点からやはり遅刻した場合については減給の制裁等を行うのではなく、ノーワークの部分についての賃金の控除又は勤怠を賞与の査定に反映するという扱いにすることが良いのではないかと思います。

いよいよ春の気配ですね。ここ3日間くらい花粉が飛んでいる気配もあります。今週末は名古屋に行き父の37回忌の法事を行い、いとこたちに会いました。6人兄弟の一番末っ子であった父方のいとこはだいぶ年上で、父の子供の頃や若い頃を知っており時々名古屋に行って私の知らない話を聞いたりするのが楽しみです。名古屋では、到着後味噌煮込みうどん、朝食にはアントースト、帰りは味噌カツ弁当を食べて大満足。やはり名古屋は私のルーツなのかと感じてしまいます。