OURSブログ

社会保険労務士としての日々の業務を行う中で、考えたこと、感じたこと、伝えたいことを綴る代表コラム。

年金を受ける権利の時効について

2014-07-27 23:47:33 | 年金

昨日はTAC合格者のOB会であるBBクラブの勉強会の日でした。いつもと変わらず150人弱が集まり、渋谷支部の成田先生のあっせん委員から見たあっせんの話や、法改正、中野さんの純白の開業体験談ととても充実した内容で、その後の懇親会も和気あいあいとした中で終わりいい一日だったと思います。

今回の法改正講義は私が担当したのですが、やはり若干時間切れで、本当は話したかった年金の時効のことを話しそびれました。年金を受ける権利の時効については、時効特例法が施行された平成19年7月6日以前に受給権が発生したものと、後に発生したものと若干異なっています。

なお、「時効の援用」とは
時効とは、時効期間が過ぎれば自然に成立するものではなく、時効が完成するには時効によって利益を受ける者が、時効が成立したことを主張する必要があります。この時効が成立したことを主張することを「時効の援用」といいます。以下の時効の援用をするは「国」ということになります。

<基本権>
年金を受ける権利(基本権)は、権利が発生してから5年を経過したときは、時効によって消滅します(国民年金法第102条第1項・厚生年金保険法第92条第1項)。
ただし、やむを得ない事情により、時効完成前に請求をすることができなかった場合は、その理由を書面で申し立てることにより、基本権を時効消滅させない取扱いを行っています。(平成19年7月7日以降に受給権が発生した年金について、時効を援用しない場合は、申立書の提出は不要です。)

<支分権>
○平成19年7月6日以前に受給権が発生した年金
平成19年7月6日以前に受給権が発生した年金の支給を受ける権利(支分権)は、会計法の規定により、5年を経過したときは時効によって消滅します。ただし、年金記録の訂正がなされた上で裁定(裁定の訂正を含みます。)が行われた場合は、支分権が時効消滅している場合であっても、全額が支給されます。(年金時効特例法による取扱い)

○平成19年7月7日以降に受給権が発生した年金
年金時効特例法の制定に伴う厚生年金保険法及び国民年金法の一部改正により、平成19年7月7日以降に受給権が発生した年金の支分権は、5年を経過しても自動的に消滅せず、国が個別に時効を援用することによって、時効消滅することとなりました。
5年以上前の給付を受ける権利について、次の(1)又は(2)に該当する場合には、国は時効を援用しないこととします。
(1)年金記録の訂正がなされた上で裁定(裁定の訂正を含みます。)が行われたもの
(2)時効援用しない事務処理誤りと認定されたもの

…年金を受ける権利としての基本権は本来5年で時効消滅であるところ、(これは年金問題の以前から)時効の援用をしないという扱いにして、裁定請求が受給権発生時から5年経過後であったとしても年金の受給権を発生させるという扱いをしてきたものです。しかし毎月の支払われる権利である支分権は、会計法の規定により援用不要で5年で時効消滅することになっていました。従って年金問題以前は裁定請求が遅れた場合であっても基本権は発生させるが、支分権の時効消滅した年金を遡り受給することはできないとされていました。しかし年金問題が起こり、支分権についても援用が必要とされ、記録訂正が必要な場合や旧社会保険庁の事務処理の誤りにより年金額を遡り修正する必要があるというような場合など必要に応じて援用をしない扱いをして年金の確保を図ったということになります。

ちょっとややこしい話ではあるのですが、第三者委員会で3年ほど委員として務めさせて頂いた私としては日本年金機構のHPに載っていた上記の記載により頭が整理されました。年金問題は平成19年に起こったということになりますが、随分あれから時間が経ったなという気がします。

年に2回のBBクラブの勉強会ですが、受講生の顔を見るとちっとも変っていないことに驚いてしまいます(年をとったのは自分だけのような気がして)。合格してからもずぅっとこの勉強会に参加してくれて、しかもほとんど言葉も交わさず帰ってしまう方もいるのですが、きっと年に2回この会に参加することで、勉強したことの確保を図るということだけではなく、その時の気持ちを忘れないために等それぞれの方にとって何らかの思いがあるということで必ず来てくれているのかなと思っています。それぞれに何かの役割をしっかり果たしているのであろうこの勉強会はどんなことがあっても頑張って続けていきたいと考えています。折しも勉強会の帰りにメールを確認していたところ、もう8年近く連絡をくれなかった受講生OBからのメールが来ていました。またいつでも戻って参加することができるという会でありたいと思っています。


仕事で着る服のこと

2014-07-21 23:38:51 | 雑感

服は結構好きでよく雑誌なども買って今年はどんなものが流行るのかなあなどと見ています。子供が生まれて毎日ジーンズで子育てをして、10年専業主婦の後資格を取得して開業社労士になったときは、仕事に着ていく服がなく、TACの採点チームのアルバイトに行き入ってくる収入のほとんどは本と洋服に消えていました。その後20数年のうちには体型もかなり変わりその時代ごとに悩みながら、楽しみながら服は大切に着てきたと思います。

毎週週末に1週間着たものをにアイロンをかけ、季節ごとにクリーニング屋さんにはかなり貢献して、服を大事にしているつもりです。気に入ったものは長く着ようと思うのですが、ある時むしろワンシーズンで徹底的に着倒す方が良いのかもしれないと気が付きました。やはり翌年又は数年たつとどんなに大事にしても愛用している服はヨレて来ますし、またその年に流行るものもメーカーの仕掛けとは思いますが買いたくなるということもありますので。

TACの講師をしている頃は、だいたいTシャツとスカートにジャケットというスタイルが多く、講義の最中はジャケットは暑くて着れないという感じでした。某資格取得校は黒いスーツに白いブラウスという決まりがあると聞いたことがありますが、その点TACはおおらかで特に服装について何か言われたということはありませんでした。しかし今はTシャツは似合わなくなりました。年齢が行きあまりラインが出るものではなくパリッとしたシャツの方がキリっとするような気がします。

服を買うお店は最近だいたい決まっていますが、ぶらっと仕事の帰りにお店で確認してネットで購入することも結構あります。お店の人にはいつもスーツなのですか?と聞かれることが多いです。これくらいの年齢になるともう少し違う雰囲気の洋服を着ることが多いのかもしれません。やはり固い職業ですから毎日スーツまたはスーツに準じるスタイルにはなります。20年以上経つと、開業当初はなかなかしっくりこなかったスーツスタイルもいつの間にか安心できるスタイルになりました。

何を着ようか考えるのが好きということもありますが、社労士の先輩や後輩から結構男女問わず服・髪型・お化粧に関するコメントを頂くことは多いです。特に少し派手かなと心配しながらの時でも「今日は良いねえ」などと言っていただくと励まされます。髪を切ったり新しいバックを持っている時も周りの方から長年の間あれこれコメントをもらうことでずいぶん意識が高くなったと思います。社労士は結構おしゃれな人が多いのではないかという気がします。よく見ておられますから。

最近一番まずいなと思うのは「なんだか政治家みたいですね」と時々言われることです。自分でも鏡に映してみた時にそんな気がする時がありますので、これは今後何とかしなくてはならない課題です。

3連休で少しずつたまっていた仕事などをゆっくり片付けることができました。セミナーの準備もほぼ終わり、今日は久しぶりに爽快な気分になりました。社労士業務の最大のヤマである年度更新と算定も終わりいよいよ次は本試験ですね。受験生はあと1カ月で何をするかある程度絞り込み徹底的に繰り返す時期に来ました。頑張っていきましょう。


70歳未満の高額療養費について

2014-07-13 22:30:52 | 社会保障

高額療養費は大きな病気をした場合にはとても心強い制度です。

原則として、医療費の3割を自己負担することになっていますが、自己負担限度額が定められており限度額以上については高額療養費として医療保険者が支給してくれることになっています。本来いったん3割の自己負担額を支払っておいて、高額療養費の支給申請をすることで自己負担限度額を超えて負担した額を戻してもらっていました。近年「限度額適用認定証」を保険証と併せて医療機関等の窓口に提示すると、1ヵ月 (1日から月末まで)の窓口での支払いが自己負担限度額までとなったので、さらに被保険者にとっての利便性は高まりました。

自己負担限度額は、年齢および所得状況等により設定されています。

※70歳以上の高額療養費は仕組みが少し異なりますので今日は70歳未満の高額療養費に限って考えてみたいと思います。

70歳未満の被保険者の自己負担限度額

上位所得者

(標準報酬月額53万円以上)

150,000円+(医療費-500,000円)×1%
一般 80,100円+(医療費-267,000円)×1%

低所得者

(住民税非課税)

35,400円

例えば、一般の場合で医療費が500万円かかった場合の自己負担限度額は80,100円+(5,000,000円-267,000円)×1%=127,430円となります。

(この1%の考え方が改正により出てきたときには、TACの講義で1%などという小さい数字ではあまり負担は変わらないというような話をしたことがありますが、医療費がかなり高額になるとそれなりの数字になりますね。)

本来は5,000,000円の医療費の3割である1,500,000円を自己負担しておいて、高額療養費の請求をして1,500,000円と自己負担限度額の127,430円のとの差額を戻してもらっていました。しかし、高額療養費が振り込まれるのは2,3か月かかるとされているため一時的であっても大きな額となると負担も大きいです。やはり限度額認定証の提出により患者の負担を経ずに保険者と医療機関との間で精算をしてくれるのはとても有難いことだと思います。

なお、自己負担限度額は以下の区分により算定します。

・同一月・一の医療機関の一部負担金等(医療機関から交付された処方せんにより調剤薬局で調剤を受けた場合は、薬局で支払った自己負担額を処方せんを交付した医療機関に含めて計算します)

・歯科・歯科以外区分

・入院通院別

なお差額ベットなどの特別料金等保険外診療部分、食事療養標準負担額、生活療養標準負担額についてはこの算定には含めず、別途自己負担が必要になります。

世帯で複数の人(協会けんぼに加入している被保険者とその被扶養者)が同じ月に病気やけがをして医療機関で受診した場合や、一人が複数の医療機関で受診したり、一つの医療機関で入院と外来で受診した場合は、自己負担額は21,000円以上のものに限り合算世帯合算することができ、その合算した額が自己負担限度額を超えた場合は、超えた額が払い戻されます。

例えば、被保険者[通院]+被保険者[入院]、被保険者+被扶養者、被扶養者+被扶養者の自己負担額21,000円以上について合算して上記表の自己負担限度額を超えた場合高額療養費として請求することができます。

さらに直近の12か月間に、既に3回以上高額療養費の支給を受けている場合には多数回該当とされ44,400円がその月の負担上限額になります。

世帯合算による払い戻しの場合や多数回該当の場合については限度額認定証を提出していても、なお高額療養費の支給申請をする必要があります。

BBクラブの勉強会が7月26日に行われますが既に150人の方の申込みを頂いています。合格者OBの変わらぬ勉強意欲がとても嬉しくできるだけ皆がそれぞれに何かを掴んだり、元気が出るような勉強会の1日となることを願い、私も楽しみに、頑張ろうと思います。


第186回 平成26年通常国会法案成立状況

2014-07-07 00:36:53 | 法改正

第186回通常国会は、2014年1月24日 ~ 2014年6月22日の間開催されました。

厚生労働省が提出した労働・社会保険関係法案内容及び成立状況は以下の通りです。

①労働者派遣法改正
派遣労働者の一層の雇用の安定、保護等を図るため、特定労働者派遣事業を廃止するとともに、労働者派遣の役務の提供を受ける者の事業所その他派遣就業の場所ごとに派遣可能期間を設ける等の措置を講ずるもの。→廃案…野党の反対と条文ミスにより審議入りができなかっため廃案となりました。

②労働安全衛生法改正
 最近における経済社会情勢の変化及び労働災害の動向に即応し、労働者の安全と健康の一層の確保を図るため、化学物質による労働者の危険又は健康障害を防止するための措置を強化するとともに、労働者の精神的健康の保持増進のための措置を充実する等。→成立…ストレスチェック制度の創設や受動喫煙防止などが規定されています。

③専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法案                                                                                                         専門的知識等を有する有期雇用労働者等の能力の維持向上及び活用を図ることが当該有期雇用労働者等の能力の有効な発揮及び活力ある社会の実現のために重要であることに鑑み、事業主による当該有期雇用労働者等の特性に応じた雇用管理に関する特別の措置の下で、労働契約法の特例を定める。→継続審議…無期転換の除外の特例を定めるものですが、衆議院で6月5日に可決したものの参議院で時間切れとなり継続審議となりました。

④パート労働法改正                                                                                                                                     短時間労働者の雇用管理の改善等を図るため、差別的取扱い禁止の対象となる通常の労働者と同視すべき短時間労働者について、期間の定めのない労働契約を締結していることとする要件を削除するとともに、事業主等に対する国の援助について定め、短時間労働援助センターを廃止する等。→成立…通常の労働者との差別的取扱い禁止とされるパート労働者の範囲を拡大するもの等です。

⑤国民年金法等改正案                                                                                                                                           政府管掌年金事業等の運営の改善を図るため、国民年金保険料の納付率の向上に向けた納付猶予制度の対象者の拡大、事務処理誤りにより納付の機会を逸失した国民年金保険料の納付等の特例の創設、年金個人情報の訂正手続の整備、滞納した国民年金保険料等に係る延滞金の割合の軽減等の措置。→成立・・前回のブログで取り上げた内容です。

⑥次代の社会を担う子どもの健全な育成を図るため、次世代育成支援対策推進法の有効期限の延長、一般事業主行動計画の策定・届出義務に係る特例措置の創設、母子家庭及び父子家庭に対する支援の拡充、児童扶養手当と年金の併給調整の見直し等の措置を講ずる。→成立・・・時限立法である次世代法の有効期限の延長などが内容です。

⑦雇用保険法改正案
現下の雇用情勢を踏まえ、雇用保険制度において、基本手当、就業促進手当、教育訓練給付及び育児休業給付金の給付の拡充並びに暫定措置の新設及び延長等の措置を講ずる等。→成立…育児休業給付金の給付率が休業開始から6か月につき50%から67%に拡充されます。

雨が降らない日はとても気持ちが良いですね。国会も終わりいよいよ改正が決まった法律を中心に明日からBBクラブやOURSセミナーに向けて勉強を開始です。今回は改正が盛り沢山なのでちょっとパワーが必要ですが頑張ります。

また、BBクラブの勉強会とOURSセミナーの合間を縫って、8月1日に事務所が引越しをします。少し表参道よりで246から入ってすぐのところに移ります。これまでギューギューに机を詰め込んで働いていたのがだいぶ余裕ができそうです。会議室も2つあり、1つは普段フリースペースにしておく予定ですがつなげれば20人程度の会議はできると思います。引っ越しは大変ですが富ヶ谷から渋谷の事務所に移転した際に行った「ビールの会」を8月の本試験後にでも開いて新事務所のお披露目をしてもよいかなと思っています。