OURSブログ

社会保険労務士としての日々の業務を行う中で、考えたこと、感じたこと、伝えたいことを綴る代表コラム。

公平な判断を民主党に願う

2011-10-30 21:06:27 | 年金

専業主婦が、被扶養配偶者として国民年金第3号被保険者である場合に「会社員の夫が退職した場合」、また「自身がパートで働くことにより130万円以上の収入を得て被扶養配偶者でなくなった場合」には、第1号被保険者への資格変更を自分で行い国民年金の保険料を払わなければなりません。

それを行わず、再び第3号になることにより未納になった第1号被保険者の期間が埋もれてしまい、結果第3号被保険者として扱われ老齢基礎年金を本来より多く年金を受け取っている受給者は約5万3000人いるとのことです。

今年の始めに「運用3号」として騒ぎになった件の一部既に年金を受給している受給権者についての対応が11月4日に閣議決定された後臨時国会に法案提出されるようです。

それが驚いたことに過払い分の返還を一切求めない方針を固めたとのことなのです。

厚労省は今月13日、民主党厚生労働部門会議に次の提示したそうです。

(1)年金の過払い分のうち時効にかからない過去5年分を今後の年金額から減額し、返還を求める

(2)将来の年金額は正しい記録に合わせて減額する

(3)減額幅は支給額の1割以内とする

減額を避けるため、納付期限(2年間)を超えて10年間まで保険料の後払いを認めたり、切り替え漏れ期間を年金加入期間に算入し無年金とならない措置も盛り込んだ。・・・至って妥当な案だと思います。

しかし、(1)について民主党内には「所得の低い人の生活に配慮すべきだ」との意見が強く、厚労省は住民税非課税世帯の人を対象から除く方向で調整していた。にもかかわらず、28日の同部門会議で過払い分の返還自体を求めるべきではないとの意見が大勢を占め、一切の請求を見送るよう求める意見が相次いだことから、同省も方針転換を余儀なくされた、とのことです。

なぜ未払いの部分についての返還を求めないのか理解に苦しみます。保険料を払わなかったのだからその分の年金を返還するのは当たり前のこと。それについて文句を言われても、そのために票が失われることがあっても、通さなければならない筋というものがあるはず。筋を通すことが積み重なってこその信頼だと思います。民主党の場当たり的な、人気取りとしか思えない考え方が年金制度への信頼をますます失わせ、自身の党も傷つけてしまうとなぜ気が付かないのでしょうか。とても残念です。

参考まで「運用3号問題についての大臣談話(平成23年3月時点)」 ↓

http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000013s6c.html

金曜日にOURSセミナー第8回が無事に終了しました。今回は60名の方が申し込んでいただいて会場が満席となりました。今回は労働時間シリーズ第3回目の、時間外・割増賃金(36協定と特別条項)がテーマでした。36協定の過半数代表者の選出、特別条項の手続きなどセミナーの中で実務対応をお話ししましたが、アンケートで役に立ったとの声が多くありました。せっかく来て頂いたので何か一つでも気づきがあれば、といつも考えているためとてもうれしく思いました。また次回もがんばります。


復職規定の改定の必要性

2011-10-23 22:33:40 | 労務管理

先週は28日に行うOURSセミナーのレジュメを作る予定で時間を多少とっていたので、その狭間を縫って懸案事項であったOURSのモデル就業規則を改訂しました。今回の改定の目玉は休職規定と復職規定です。

開業して間もなく就業規則のない小さな顧問先で重大な病気に社員がかかるということがあり、その時に休職規定がないため社長も何か月様子を見ればよいのか非常に困った「どうしよう?」というご相談ごとがありました。病気の社員であるため退職してもらうのは気の毒だし、かといって代わりの人を雇わなければ人数が少ないためとても会社として業務を継続するのが無理であるということで、その時初めて休職規定の重要性に気が付きました。

要する休職規定でどのくらいなら待ってあげられるのかというルールを決めておくことにより、お互いにある程度割り切るということが可能になるということです。幸い3か月その社員の友人に助けてもらい何とか復帰され、今も元気で働いておられます。それから、小さな会社でも正社員については休職規定を決めていただくよう説明することにしています。

以前は休職規定の適用は入院して手術をしてという病気に対してでしたが、昨今メンタルな病気に対して適用することが非常に多くなり、数年前にOURSのモデル就業規則の休職規定を細かく改定しなおしたということがありました。しかし今回は休職規定より復職規定に重きを置いて改定することにしました。正直言って最近の状況はどこまでメンタル不調の方が増えていくか想像がつかないほど多くなってきているのが事実です。また休職期間満了時点、復職時点での対応にご質問が多いのが現状です。

 例えば復職日については診断書や社員の希望する日にするのか、会社が決定してもよいのかというところ等細かい部分を見直したわけです。この問題については「復職日は会社が診断書や職場の受け入れ状況を勘案し決定するものとする」と入れてよいと考えます。厚生労働省で出している「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」があり、そちらに「(ア)職場復帰日 復帰のタイミングについては、労働者の状態や職場の受入れ準備状況の両方を考慮した上で総合的に判断する必要がある。」という記述があります。確かに周りがある程度受け入れ準備ができた状態での方が職場復帰もスムーズにいくのではないかと思います。

就業規則は時代の変化に伴ってきめ細かく改定していく必要がありますが、最近は毎年モデルを改定している状況です。しかしこれを改定しておけば、顧問先企業を始めとした企業からのお問い合わせにも迅速に対応できるためやっとホッとしました。

心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き ↓ ご参考まで。

http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei28/dl/01.pdf

今週末何とかOURSセミナーのレジュメも8割方出来上がりましたので、ホッとしたところで明日は支部の管外研修で山梨に行ってまいります。支部の管外研修は会員同士いつもスーツ姿で研修など一緒に受けているのとは違う面を知る機会でもあり、なかなか参加してみると楽しいものです。1日中行動を共にするため結構時間もあり仕事の情報交換なども自然とできて収穫もあります。とても気持ちの良い季節ですし、工場見学やぶどう狩りもありますので楽しんで来ようと思っています。


高齢者雇用・年金制度の見直しについて

2011-10-16 21:32:25 | 労務管理

今日は本当に気持ちの良い日でした。クリーニングに出さない夏物をきれいに洗濯して、仕舞う準備をしました。今年の秋冬はポンチョやケープが流行りそうとか。気に入ったものを探して1枚購入してみようと思っています。冬に向けては、有難いことに仕事のご依頼が立て込んでいる状態で、あっという間にお正月になりそうな気配です。頑張っていい仕事をしていきたいと思っています。

厚生年金の報酬比例部分は、平成25年度から支給開始年齢65歳を目指し段階的に引き上げが開始されます。現在は厚生年金の被保険者であったサラリーマンが60歳で定年退職した場合は、報酬比例部分だけは60歳から支給開始されますが、平成25年度からは61歳からの開始となり、60歳の定年退職後すぐに何らかの年金を受給するということはできなくなります。そうなると収入のない期間を生じさせないためにその期間の雇用の確実な確保が必要であり、65歳までの「希望者全員の雇用」がここにきて盛んに取り上げられるようになりました。

厚生労働省が労働政策審議会に提示した「2012年度の労働政策の重点事項(案)」にも高齢者の就労促進(「生涯現役社会」の実現)として取り上げられ、その中では65歳の希望者全員の雇用についての制度的な対応と企業への取り組みに対する支援、また70歳まで働ける企業の積極的普及などがあげられています。希望者全員を65歳まで雇用するというのは大手企業ではすでにやっているところも多くありますが、現在でも特に中小の各企業でご相談も多くかなり苦心している状況です。それが70歳まで努力しろということになるとどうなのでしょう。企業にばかりにすべての付けを回しているように思えてなりません。

経団連は、2011年人事・労務に関するトップマネジメント調査の中で「希望者全員の65歳までの継続雇用が義務化された場合、約4割の企業が若年者の採用数の縮減を行う用意があることが分かった」と公表しています。高齢者の雇用も大事ですが若い人の雇用はもっと大事です。しかも報酬比例の支給開始年齢が65歳から68歳までさらにひきあがるということを年金制度改正案として検討していくとのこと。若い世代には希望の持てないことばかりです。もう一度原点に立ち返り、企業だけではなく日本人全体で多少の痛みを伴っても最初からデザインしなおさなければならない時期なのではないかと思います。特に年金は昭和61年の大改正の頃と今とでは家族構成も平均寿命も国自体の成長率も異なっているわけですし、それを修正でまかなおうとするには限界がきていると考えます。修正修正は裏切りでもあるわけですから(かといって評論家ではいけないですね。社会保険労務士としては何をできるか考えなくてはいけないです。最近年金制度や医療制度については実務で気が付いたおかしな点を手帳にメモするようにしています)。とにかく一番大事なのは「若い世代が希望を持てる」ということが基本的な考え方ではないでしょうか?

昨日はBBクラブの幹事会を行いました。10周年事業の記念DVDをみんなで見た後、これからのBBクラブのあり方から次回の勉強会の内容まで良い話し合いができたと思います。今後のBBクラブのスタイルとしては、法改正の網羅的な勉強はこれまで通り、さらにその回ごとに旬のテーマを決めて法改正と併せて学び、さらに講師を内部・外部からお願いして今回のテーマの話をしてもらうということで法改正と旬のテーマを中心に学んでいくという方向性を決めました。この10年から次の10年に踏み出すまで、幹事さんの中心メンバー数人は勉強会はもちろんのこと幹事会もほとんど全出席でやってきました。思い起こせば本当にありがたいことだと思います。昔のDVDを見ると私もみんなも本当に若いです。それからここまでよくコツコツと継続してきたと感慨深いです。「継続は力なり」を信じてこれからもよろしくお願いします(写真は佐々先生をお迎えしてご講演頂いた10周年記念事業の風景です)。 


ささいな幸せ

2011-10-08 23:31:12 | 雑感

 第3号被保険者については、新たな考え方をもとに見直しが検討されることになりましたが、それがまた「なんでそうなるの?」という内容です。要するに夫の保険料の半額を妻が負担したとみなして、年金を2等分して夫と妻にそれぞれ給付するという制度です。

厚生労働省の資料には以下の通りの考え方とありました。

 第3号被保険者も、その配偶者である第2号被保険者と共同で保険料を負担していると考えることができる。この仕組みを現行の年金制度に導入するとすれば、第3号被保険者は、保険料を負担せずに給付を受けるのではなく、いわばみなし第2号被保険者として保険料を負担して給付を受けると認識することになるので、この考え方に立てば、不公平感は一定程度解消することが出来るのではないか。
  なお、共同で保険料を負担したことに対する年金給付は、厚生年金部分を夫婦で分割して受け取ることとなり、実際の効果は、年金分割の案に近い。

こうなるとますます第3号被保険者を抱える被保険者と抱えない被保険者の保険料が同じ仕組みで決まるのはおかしく、その不公平感は全く解消しないどころか不公平感は増えてしまいます。今後どうなるのか注目して行かないといけないですね。

先週事務所のメンバー数人と行った小淵沢で午前3時に空を見たらまさに満天の星でした。180度の空に星がちりばめられているという感じでこういう場面に巡り合えたことに幸せを感じました。そもそも私はもう20年程前くらいからささいな幸せを感じることの名人なのです。若いころはそうでもなかったような気がするのですが社労士を開業した20年前くらいからとても小さいことにも「幸せ感」を感じるようになったと思います(もしかして社労士という仕事がよほど肌に合ったのでしょうか)。本当につまらないことなのですが、毎晩寝る際にも「寝れる~」という幸せを感じますし、特に冬ホカホカの布団に入るときなどはメチャクチャ幸せです(毎晩ヒャア~幸せ~と言いながら布団に入るくらいです)。また締め切り前に原稿が仕上がった時や仕事を終えた時に感じる気持も同じような感じです。大きな幸せも大事だとは思いますが人生でそうそうあるものではありません(社労士試験に合格した時は飛び上るほどうれしかったです)。ささいな幸せであってもたくさん感じることができればそれが積み重なって人生とても幸せになれるような気がします。それと同じように「ささいなこと」が割りに好きです。これはお得な性格です。例えば何かの研修に行った時も1つでも2つでも新しい発見や気づきがあるとそれで満足です。全てはささいなことの積み重ねだと思っているのです。ささいなことや日常の小さなことの幸せに敏感でいようと思っています。


組織におけるものの見え方

2011-10-02 22:43:36 | 雑感

今日は雑感を記させて頂きます。

組織の中で働いた私の経験は2年間ととても短いものです。23歳から25歳の2年間の会社員生活では組織のことを考えて動いているはずもなく、組織の構成のことや組織内でのそれぞれの役割などについては、社会保険労務士を開業してスタッフを雇い入れてからあれこれ考えることになりました。

現在OURSはスタッフが私を含め6人、パートナーとして週2日来てくれる開業社労士スタッフが2名、請求業務を担当している友人が1人という9人体制に加えて、人研所長、人事制度のプロジェクト等に入ってくれるOURSグループのメンバー、さらにOB会のBBクラブの会員で事務所業務について企業人の立場からアドバイスをもらうアドバイザーなど、何か集まるときは必要に応じて入れ替わりがあってもだいたい10人です。このところの10人規模になってみるとこれまで家族的にやってきた方法では通用しないように感じることが多くあります。しっかりとした体制を作りたいと考えて、先週もスタッフそれぞれの役割をミーティングで明確にしました。スタッフが5人程度になったときに、これから仕事によってはプロジェクトを組むことにすると宣言したところ「苦笑」という雰囲気も今はなく、例えば人事制度の改定をするという案件の内部ミーティングは「担当者+グループ1名+人研所長+案件により代表である私が参加」というようなプロジェクトを組めるようになりました。人数が多くなり、しかもOURSは正規のスタッフ以外の上記関係者が様々なかかわり方をしているため、情報の入り方も多岐にわたり、今のところ良い効果が生まれていると思います。

最近本当に面白いなと思うのは、組織の中での立場によりものの見え方がその時々で非常に変わってくるということです。例えば組織の中で働く場合は、まだ経験が浅く組織の中でもいわゆる駆け出しのころは目の前のことしか見えず、全体の状況またこれまでの経緯などを踏まえた判断はできません。従って定型業務をこなし経験を積むことになります。それが当然ということです。しかし何年か経ってくると全体がある程度見えてくるはずで、その場合に全体の中での自分の役割はなにかということを意識してものを考え動くようになるはずです。その場合ある程度正確な判断ができるようになりますから仕事を任されるようになると思います。そして上に立ったら組織の中での自分というよりは組織対「外」を考えながら組織の体制を作りあげていくということで常に組織全体の内側と組織の外、外から見た組織を見るようになります。その時々でのものの見方や見えてくるものは異なり、入る情報も増えてきます。立場に応じてだんだんと広がる視野について面白みを感じます。

話はやや変わりますが、民主党は政権を取るなり事業仕訳を実施しました。上記たとえで行けば駆け出しの目の前のことしか見えないときに実施してしまったという印象が否めないのです。先週の山の手統括支部の研修で元渋谷ハローワーク所長が講義されましたが、障害者雇用の現場においても事業仕訳により本来廃止になるべきではない組織(障害者雇用促進協会)がなくなってしまったとのことです。産業医がいない企業を支援する地域産業保健センターも同様です。今になって悪い影響が出ているのではないでしょうか。事業仕訳というのはマイナス思考の産物に思えてならないのです。要するに「壊しただけ」という気がします。日本はこのまま民主党政権であり続けて大丈夫なのかと心配になります。取り組むべき課題は震災によりこれまでとは比較にならないほど大きくなっています。政府として与党として、国民の上に立つものとしてのものの見方ができるでしょうか?

先日、経産大臣や首相が中小企業を相次いで視察して、中小企業が元気になれるような施策を…というお話でしたが、視察をすることの良し悪しはともかくとして、あまりに見ているものが目先という気がしました。中小企業は日本が元気にならなければ元気になれないし、日本が元気になれるためには中小企業に仕事を発注する大企業が元気になる必要があると考えます。要するに日本における大きな仕組みの中で経済というものがまわっているというイメージは、経済においてはほとんど見識がない私でもわかります。自分の父親が中小企業の社長だか何だか知りませんが、そんな個人的な事情や思い入れで目先のテコ入れだけお約束して本当に日本は大丈夫なのかという気がしました。お願いだからこれ以上日本という国にを滅茶苦茶にしないでと思います。上に立つものとしては支持率や票のためにいつも国民感情を判断基準にするのではなく、広い視野での正しい判断や言動をお願いしたいものです。