OURSブログ

社会保険労務士としての日々の業務を行う中で、考えたこと、感じたこと、伝えたいことを綴る代表コラム。

労働条件の明示方法についての整理と留意点

2024-05-19 22:56:03 | 労働基準法

労働条件の明示方法について気になることがあったので少し頭を整理したいと思います。労働条件の明示と言えば今年2024年4月から改正施行されており、①就業場所・業務の変更の範囲、②更新上限の有無と内容、③無期転換申込機会と無期転換後の労働条件の3点が新たな明示事項として追加されました。このうち②及び③は有期契約の場合であり、①のみ全ての労働者への明示が必要ということになっています。

正社員については労働条件通知書や労働契約書を締結せず、辞令と就業規則などで明示をしているという会社は以前はとても多かったと思いますがそれは違法ではないと考えています。ただし、先日ある会合で人事担当の方数人に伺ったところ最近は正社員にも労働条件通知書を渡しているという会社は増えているようです。

労働条件の明示については労基法15条に以下の通り定められています。
(労働条件の明示)
労基法第15条 使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項※1については、厚生労働省令で定める方法※2により明示しなければならない。
※1 厚生労働省令で定める事項とは、施行規則5条に定められており上記改正内容も盛り込まれています。
※2 厚生労働省令で定める方法についても同条に、昇給に関する事項を除くいわゆる絶対的明示事項は書面交付を原則とし、労働者が希望した場合はFAX、メール等も認められるとしています。
 
法及び施行規則において、明示すべき文書の様式は定めていませんが、平成11年の4月1日からそれまで口頭での条件明示でも差し支えないとされていたものが、書面明示が義務化されたに伴い労働条件通知書のモデル様式が示され(平成11.2.19基発81号)行政指導はされています。
 
とはいえ労働契約法7条には以下の通りの定めがあり、就業規則の明示は労働条件の書面明示といえ、就業規則と辞令の明示でも上記書面明示が義務とされている事項がすべて網羅されていれば問題ないと考えます。

労契法第7条 労働者及び使用者が労働契約を締結する場合において、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする。(以下略)
 
注意したいのは、4月の改正ですべての労働者への明示事項とされた「就業場所・業務の変更の範囲」について辞令や就業規則では賄えていない可能性があるため、今後正社員の採用時においても労働条件通知書を作成するか、「就業場所・業務の変更の範囲」を辞令又は就業規則に追記する必要がある点は留意事項といえます
 
コロナ禍が過ぎたころから渋谷は本当に外国人が多いです。事務所の隣のビルのヒカリエや渋谷駅周辺は外国にいるような気分になります。日本の経済にとっては有難いことなのだと思いますが、いつもお客様が来られた時に使っていた事務所から一番近いお店がガイドブックに載ったのか長蛇の列になってしまい、少し困っていますが諦めるしかないですね。ちなみにスクランブル交差点を上から眺めている観光客もとても多いです。きっと渋谷の名所なのですね。
 

現物給付について

2024-05-12 21:06:31 | 社会保険

現物給与とは「労働の対償として現物で支給されるもの」をいいますが、住宅の貸与(社宅)と食事の供与が一般的なものといえます。なお、作業衣の支給等については「労働者が業務に従事するため支給する作業衣又は業務上着用することを条件として支給又は貸与する制服の利益については賃金とされない」とされています。この現物給与について最近質問が重なりましたので若干触れておこうと思います。

労働基準法(労働保険)では住宅の貸与や食事の供与は原則として福利厚生とみなされますが、住宅の貸与を受けない者に対して住宅手当など均衡給与が支給されるている場合の均衡給与相当額は賃金とみなされるとされています。ただし実費の分3分の1以上を徴収をされている場合は実質的に支給されていないものとして賃金とはされない(昭和22.129基発452号)ので、概ねこの点を踏まえて実費徴収されており賃金になる場合は少ないのではないかと思います。

社会保険では、住宅や食事その他について、原則として厚生労働大臣がその地方の時価によって定めた額があり、毎年3月に4月からの新年度における現物給与価格一覧表が発表されます。

令和6年4月からの現物給与の価額
https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/hoshu/20150511.files/2024.pdf

社会保険の調査では現物給与について確認されることがあり、例えば現物給与価額が変わったときは固定的賃金の変動に該当することや住宅の貸与については結構細かいのですが居間や寝室など居住用の部分の面積を出して、畳一畳につき決められた額を乗じることで計算するという方法は知っておく必要があります。また食事について食事代を徴収している場合、決められた現物給与価格の3分の2以上を徴収している場合は現物給与の支給とはされず、3分の2未満が徴収されている場合は、決められた現物給与価格から徴収額を控除した額が現物給与の額になります。

労働基準法(労働保険)と社会保険では現物給与とされる食事の徴収率について異なっている点は注意が必要です。

SDGsに関連して、衣料廃棄物問題が注目されるようになり、各メーカーともリサイクルの考え方が普及し自社製品を引き取ってくれることが多くなりました。ユニクロなども店舗にBOXを用意しているのを今日自宅近くの駅ビルにあるお店で見つけました。

昔は服を選ぶ際サイズや型を気にすることがなかったのですが、特にここ数年は体形がどんどん変わっていきシーズンが明けると情けなくも着れなくなっている、あるいは無理をしているように見えるなどの状況が発生。良く購入する三陽商会の服も引き取ってくれてポイントに換算してくれるということで、連休中の衣替えの時に思い切って整理して持って行きました。かなり気に入っていたものもあったのですが、おそらく元の体系には戻れないし、今の自分を受け入れる気持ちは大事だよなあ~と思いつつ、一つ一つクリーニングに出して感謝を込めて持って行きました。


労働生産性の国際比較

2024-04-29 22:29:35 | 労務管理

顧問先のご担当者からのご依頼で、労働生産性に関する資料を探したところ、2023年12月22日に日本生産性本部が発表した「労働生産性の国際比較2023」がとても興味深いものでした。その資料によると、2022年の日本の時間当たりの労働生産性は52.3ドル(5,099円/購買力平価(PPP)換算)OECD加盟38ヵ国中30位。日本より後順位はスロバキア、ハンガリー、韓国、ギリシャ、チリ、コスタリカ、メキシコ、コロンビアとなっており、昨年から順位を2つ下げ、データ取得可能な1970年以降最低ということです。主要先進7か国の時間当たりのグラフを見ると2018年を境に移行極端に順位が下がっていることが分かります。※OECDの2022年の円ドル換算レートは1ドル=97.57円・・・もちょっと驚きですが。

さらに1人当たりの労働生産性は85,329ドル(833万円/購買力平価(PPP)換算)、OECD加盟38か国中31位ということで、やはり主要先進7か国で最も低い水準です。日本の製造業の労働生産性は、94,155ドル(1,078円/為替レート換算)。OECD加盟主要34ヵ国中18位で、主要先進7か国で比較するとイタリアより上位につけたため6位となっています。ただこれも驚くことに、2000年にはOECD加盟主要国でトップだったが、2005・2010年に9位、2015年に17位と後退して、以降16~19位で推移しているということなのです。ここの約20年間に国際的に後れを取ってしまったことがよくわかります。

労働生産性がなぜ日本は低いのか、という点についてはネットで検索してみるといくつも分析が上がっていますが、総じて「年間労働時間の長さ」が原因の一つとしてあげられています。ドイツでは、労働者が所定労働時間内で業務を終わらせる文化が根付いているということで、日本の残業は当然という考え方とは全く異なっていることが分かります。日本の場合時間に追われず納得できるところまで仕事に取り組みたいというある意味仕事熱心な国民性があるように思います。しかし、女性も働き夫婦で家庭を支え、またプライベートを大切にするという考え方から行けば、所定労働時間内で仕事を終わらせるという習慣は大切だと感じます。これは今後変わっていく兆しはあると思いますが長年の習慣はかなり強く意識改革をしないと短期間では変わらないかもしれません。

またICT(情報通信技術)が長時間労働解消をはじめとして効率化には当然欠かせないこと、あと65歳以上の就業率が高いことにより短時間労働であるのも要因になっていると考えられるとしている分析もあります。

令和5年労働経済の分析の中で「労働生産性向上の取組み」が取り上げられていますが、1位営業力・販売力の強化、2位業務プロセスの見直しによる効率化、3位働き方改革による労働時間短縮となっています。働き方改革ということで、フレックスやテレワークを導入してある意味形から入ることはもちろん大切なのですが、並行して業務分析をすることで必要のない会議や作業をやめたり統合することや、IT化をすべての作業において推進することなど個々人の細かな業務改革が非常に重要なように感じます。

[参考] 労働生産性の国際比較2023(公益財団法人日本生産性本部)
https://www.jpc-net.jp/research/list/comparison.html

連休前半はどのように過ごされたでしょうか。私は応援している相模原ダイナボアーズ(ラグビー)の試合を見に行ったり(特に後半は盛り上がり、1部残留も決めてとても楽しかったです!)、この春引退される顧問先第1号の会社の社長ご夫妻をランチにご招待したり、衣替えのついでに着れなくなった洋服は寄付できることを聴き、またよく購入するメーカーがリサイクルで買い取りをしてくれるとのことなので服の仕分けしたり、読みたい本を3冊読み終えたりとかなり充実した連休前半でした。後半は少しのんびりしたいと思います。よって5月5日(日)のブログはお休みさせて頂きます。


子ども・子育て支援金制度の費用負担について

2024-04-22 00:02:15 | 社会保障

今話題になっている子ども政策についての財源を医療保険料に上乗せすることについて、法律等はどのようになっているのかが気になって調べてみました。そもそもこの財源を必要とする政策は、こども未来戦略の「加速化プラン~今後3年間の集中的な取組~」に盛り込まれた施策であり、これを着実に実行するための財源をどうするかというためにできたのが「子ども・子育て支援金制度の創設」ということになります。

令和5年12月22日に発表された「こども未来戦略」を見てみると、「加速化プラン」の予算規模は全体として3.6兆円程度としており、財源については国民的な理解が重要であり、徹底した歳出改革等と賃上げによって実質的な社会保険負担を軽減し、その効果の範囲内で支援金制度を構築し、実質的な負担が生じないこととする。また、消費税などこども・子育て関連予算充実のための財源確保を目的とした増税は行わない、と記載されています。確かに岸田首相の答弁も同様であり、国民一人あたりの月平均の負担額は450円(所得水準によっては1000円超え)などとも言われているので、賃上げについて大きな影響はないと思いますが、昨年経団連の会長が賃上げ分の実感が得られないことを懸念し、幅広い層に負担を求める消費税を財源とする議論が必要との見解を示しています。

元々こども未来戦略会議の元となった令和4年7月の「内閣府子ども・子育て本部」が発表した「子ども・子育て支援新制度について」を見ると、財源については「⑤ 社会全体による費用負担・ 消費税率の引き上げによる、国及び地方の恒久財源の確保を前提」とされており、それが筋だろうとは思います。消費税増税の目的を明確にして、国民全体に負担してもらうということが、少子化対策の財源としては適切であり、医療保険という社会保険の仕組みの中で決まる医療保険料に上乗せして徴収するのは筋違いと考えます。しかも法案概要では被保険者から徴収する保険料に「含める」となっており、改正条文では「一般保険料『等』額」として乗じる率は「基本保険料率と特定保険料率とを合算した率と『子ども・子育て支援率とを合算した率』」となっており一般保険料に混ぜ込んだ形については、非常に違和感があります。

以下は、子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律案の概要です。

①国は、以下※1~3の必要な費用に充てるため、医療保険者から子ども・子育て支援納付金を徴収することとし、額の算定方法、徴収の方法、社会保険診療報酬支払基金による徴収事務等を定める。

※1.ライフステージを通じた子育てに係る経済的支援の強化(児童手当の拡充、妊婦のための支援給付)、2.全てのこども・子育て世帯を対象とする支援の拡充(こども誰でも通園制度)、3.共働き共育ての推進(育児時短就業給付、国民年金第1号被保険者の育児期間保険料免除)

②医療保険者が被保険者等から徴収する保険料に納付金の納付に要する費用(子ども・子育て支援金)を含めることとし、医療保険制度の取扱いを踏まえた被保険者等への賦課・徴収の方法、国民健康保険等における低所得者軽減措置等を定める。

③歳出改革と賃上げによって実質的な社会保険負担軽減の効果を生じさせ、その範囲内で、令和8年度から令和10年度にかけて段階的に導入し、各年度の納付金総額を定める。

●子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律案の概要
https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/e81845c0-3359-433b-b848-edcd539066f5/cbc95edd/20240216_laws_houan_e81845c0_01_01.pdf

そろそろ連休中の過ごし方も気になってきますね。ここのところ毎年事務所メンバーの全員と面接しているのですが昨年から5月の連休中を中心に行っています。連休中は顧問先もお休みしているところが多いせいか比較的予定も入りにくくまとまった時間が取れるという理由からです。

連休前半は事務所がGREENPARTNERSとなっている相模原ダイナボアーズの最終戦に総勢20名で応援に行き、後半は衣替えや色々な整理と旅行に行く予定にしており、なかなか盛沢山の予定を立てています。

https://www.mhi.com/jp/company/sports/dynaboars/


株式報酬の社会保険料の算定対象への該当性について

2024-04-14 20:05:21 | 社会保障

顧問先企業から「株式報酬」について、社会保険の算定基礎に算入するべきか否かというお問い合わせが来ることがあるのですが、判断の根拠になる情報がなかなか見つけられずにいたところ、遅ればせながら根拠を見つけることができました。ただし、非常に難しい内容ですので、資料の抜粋によるご紹介程度にとどめさせて頂こうと思います。

また、2023年3月時点として『「攻めの経営」を促す役員報酬-企業の持続的成長のためのインセンティブプラン導入の手引-』が経産省より公表され、その中に従業員に自社株報酬を付与する場合のQ&Aの追加を中心として改訂が行われています。この手引きはここまで数回改定されているため、2020年7月12日のOURSブログ「株式報酬制度のかかる社会保険料」の内容に加えて、Q13において退職時に受ける株式報酬について追加されていることにご注意ください。

第5 従業員に対する株式報酬の付与に関するQ&Aが新設されています。

Q80 従業員に向けた株式報酬の支給は労働基準法における「賃金通貨払いの原則」には抵触しませんか。

従業員向けの株式報酬では、付与される自社株式が労働基準法(以下「労基法」という。)上の「賃金」(労基法第 11 条)に該当することにより、賃金を通貨で支払うことを原則とする「賃金の通貨払いの原則」労基法第 24 条)に抵触するか否かが問題となりますが、2022年 7 月の CGS ガイドラインの改訂で、一定の要件を満たす場合は、通常、「福利厚生施設」に該当するものと解することが考えられるとするなど、一定の整理がなされています。具体的には、上記の改訂後の CGS ガイドラインの「5.5 幹部候補人材の育成・エンゲージメント向上」では、「新たな自社株式保有スキームに関する報告書」(平成 20 年 11 月 17日公表)と同様の整理がなされています。上記の平成 20 年の報告書において、企業が信託等のビークルを通じて一定の要件を満たす従業員に対して退職時に無償で自社株式を付与するスキームについての検討がなされました。この中では、実態等をみて総合的に判断されるべきではあるものの、一定の要件(以下の a.~c.の全て)を満たす場合には、労基法第 11条の「賃金」には該当せず、同法第 24 条の賃金の「通貨払いの原則」にも抵触しないものと整理できるとされています。
a. 通貨による賃金等(退職金などの支給が期待されている貨幣賃金を含む。以下同じ。)を減額することなく付加的に付与されるものであること。
b. 労働契約や就業規則において賃金等として支給されるものとされていないこと。
c. 通貨による賃金等の額を合算した水準と、スキーム導入時点の株価を比較して、労働の対償全体の中で、前者が労働者が受ける利益の主たるものであること。
なお、従来から金銭で支払っている給料の代替として付与することはできず、上乗せに伴う費用がかかる点には留意が必要です。

上記の平成 20 年の報告書は、企業がビークルを通じて退職時に自社株式を付与するものを前提としていましたが、この整理の際に検討された各要素(労働者の個人的利益に帰属するか否か等)は、ビークルの利用の有無や退職時の付与であるか否かとは無関係のものであるため、従業員に株式報酬を直接付与する場合及び在職中に付与する場合についても、同様の整理が当てはまるものと考えられます。つまり、企業が従業員に対して、直接又は信託のビークルを通じて在職中又は退職時に自社株式(譲渡制限付株式を含む)を付与するものについても、上記の a~c の要件を満たす場合には、通常、労基法第 11 条の「賃金」には該当せず、同法第 24 条の賃金の「通貨払いの原則」にも抵触しないものと整理できると考えられます。なお、ストックオプションから得られる利益については、賃金には該当しないと考えられています。

https://www.meti.go.jp/press/2022/03/20230331008/20230331008.pdf

上記a~cの一つでも該当する場合は賃金に該当するということになると考えられ、賃金に該当する場合もあることに注意が必要だと思います。なかなか難しい内容なので完全に未消化なのですが、今後お問い合わせがあった際はこの手引を見ながら行政に確認できるかと思います。

昨日は、女性社労士の勉強会である二土会で「ビジネスと人権」のお話をさせて頂きました。お休みの土曜日にもかかわらず、熱心に聴いて頂いて女性社労士の勉強熱心に感銘を受けました。その後事務所で次回夏のBBクラブの準備のための幹事会でしたが、コロナ禍を経て会費徴収も振込みになり、ネット等の活用によりさらなる効率化を検討することになりました。なかなか時代の変化についていっている感じで素晴らしいと思います。

また、今日はパンなどを持参して自宅近くの公園にお花見に行きました。既に桜は7割葉桜状態でしたが、気持ちの良いお天気でしたのでのんびり楽しむことができました。


構造改革の必要性

2024-04-07 14:05:54 | 雑感

色々な企業の様々な課題のご相談を受けていると「これは構造的な問題、解決するにはそこから見直さないと難しい」と感じることが多いです。コロナの期間を経て価値観が180度変わったと常日頃から感じていますが、価値観や目指すものが変わっても、「働く場」や「働くこと」についての意識が昔からの構造を引き継いでいるため軋みが生じていると思い至ります。

今メンタル疾患がとても増えており、協会けんぽの傷病手当金や労災認定のメンタル疾患の件数はどちらもいわゆる疾病を抜いて非常に増加しており、社会で早急に解決しなければならない問題になっていますが、これも働く場の構造改革=働き方の意識の改革が必要ということではないでしょうか。

例えば長時間労働は単に一企業で頑張るのでは難しいというケースが多くあります。いろいろな企業が集まり現場を形成している場合、全体が本来働く時間内に仕事を仕上げるという意識がなければ、一企業のルールを作っても意味がありません。働き方として勤務時間内に仕事を終えることがあたりまえ、残業は特別の場合ということになるような仕事量と仕事の内容の効率化と人員体制といった構造を変えていく必要があります。

また店舗をはじめとして、様々サービスを提供する仕事の場合でも、サービスが行き届きすぎ、時にはサービス過剰といっても良いものもあります。日本人の良いところでもあることはよくわかっているのですが、長年の積み上がりで行き過ぎていると感じることもあります。例えばコンビニは本当に生活に欠かせないものになりましたがSEVENイレブンができたときは確か開店時間が23時までで、それでも驚いた記憶があります。私の子供の頃はお店は夜になると閉まってしまうものでしたから。お正月も元旦からオープンすると聞いてそれまで年末年始用の食材を買い込んでいたことを辞めましたが、そこまで必要なのでしょうか。企業間の競争もあると思いますので、業界挙げての構造改革でかなりサービスのスリム化ができると思います。

女性活躍にしても、業界団体や企業の会議やパーティーに集まるのはほとんど男性で、女性はちらほらということも多いです。最近女性のトップもだいぶ出てきていますが、やはり一般的には経営層は男性という構造が組織の姿なのだなと改めて感じます。社長が女性になっても取り巻くのは圧倒的に男性なのではないでしょうか。こちらについてはランチの時間帯にちょっとしゃれたお店に入ると全員女性ということも良くあります。男性と女性では外に出ている時間帯が違うのだなと感じます。これは高度経済成長期の男女の役割分担から全く脱却していないことなのだろうと思います。そうだとするとまず106万円や130万円の壁の撤廃という社会保障制度の構造的見直しが必要だと思います。日本国民である以上成人したら男女の区別なく全員が税金と保険料を負担するという考え方が逆に一人一人の意識を変えると思いますので、まずはとにかく取り組むべきは構造改革なのだと思います。

同一労働同一賃金や60歳以上の賃金も同じように感じます。アルバイトだから、高齢だからという賃金の決め方ではなく、その人の担当する業務やスキルについて、少なくとも決定要素に入れておく必要があります。組織を区分分けして区分ごと一律の労務管理をするという手法も構造改革することにより人口減少による人手不足対策とすることができると思います。

昭和の時代の成功体験が平成になっても変わらず続いてきましたが、令和になっていよいよ構造を見直すことが必要になったと感じています。一つ一つ構造を見直していくことがこれからの日本の働き方や日本人が大事にするものに繋がっていくものと思います。

桜が咲きましたね。今日は本当に満開です。今年は入学式にタイミングがあったようでよかったです。それにしても4月1日は新卒の社会人が沢山渋谷の駅や電車にいました。みな学生っぽさを残して初々しく、明るく楽しそうでした。社会に新しい価値観を”元気に”吹き込んでもらいたいものだと思います。


仕事と介護の両立支援

2024-04-01 00:31:21 | 雑感

毎週のブログの他平日は「X(旧Twitter)」で社労士業務に関連する人事・労務管理、労働社会保険関係の情報を発信しています。こちらはOURSの若手スタッフに毎日審議会をはじめとして情報が得られるサイトをチェックしてもらってその情報をもらい内容を確認して発信することにしています。その中で先日「仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドラインを公表します(2024年3月26日」という経済産業省のHP がありました。厚生労働省も「介護離職を防ぐために」などのリーフレットや動画を出しているのですが、経済産業省とは驚きました。

なぜ経済産業省なのかということがHPには次の通り書かれています。

超高齢社会の日本において、生産年齢人口の減少が続く中、仕事をしながら介護に従事する、いわゆるビジネスケアラーの数は増加傾向であり、2030年時点では約318万人に上り、経済損失額は約9兆円と試算されています。

2040年代後半には団塊ジュニア約800万人が後期高齢者になる一方で第1線で働く人数の少ない現役世代が、公私にわたり高齢者を支える構造となり、また共働き世帯の増加というライフスタイルの変化と慢性的な人材不足の中、仕事と介護をめぐる認識を今一度改める必要がある、ということで、政府は喫緊の課題と認識しているようです。

団塊ジュニア世代とは、1971(昭和46)年~1974(昭和49)年に生まれの世代ですので現在おおむね50代に入ったところでしょうか。この世代が後期高齢者になるまでにはまだ20年はありますが、日本の将来を見据えた国策は絶対必要ですので、今後どのような施策につながるのか、厚労省の審議会の状況なども気になります。

1997年に成立した介護保険法が施行(2000年)されるまでにはかなり時間がかかりなかなか受験用のテキストに載せることができなかったほど、とても難産でした。ただ介護保険があたり前のようにある現在、本当にこの制度があって助かっている人は多いと思います。認定の判断や介護保険制度の中身も精緻であり実際の運用が可能なもので本当に素晴らしい制度だと思います。

今後は育児休業は当たり前に加えて、介護休業についてどのように国がフォローしていくのか日本の将来の姿も見えてくるように思います。

https://www.meti.go.jp/press/2023/03/20240326003/20240326003.html

桜がとうとう咲き始めましたね。もう散っているかもと時期が少し遅れた高校時代の友人たちとの今週の集まりはむしろばっちり花見ができそうな感じです。明日から4月、新年度のスタートです。気分新たに頑張っていきましょう!


小学校就学前までの短時間勤務について

2024-03-24 22:40:48 | 労働法

2025年4月改正予定の育児介護休業法改正法案のうち「子の年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置の拡充」の中に、3歳以上の小学校就学前の子を養育する労働者に関し、事業主が職場のニーズを把握した上で、柔軟な働き方を実現するための措置を講じ(※)、労働者が選択して利用できるようにすることを義務付ける、という内容があります。
(※)上記講ずる措置とは以下を言います
➀始業時刻等の変更、②テレワーク、③短時間勤務、④新たな休暇の付与、⑤その他働きながら子を養育しやすくするための措置のうち事業主が2つを選択

なお、現状の育介法第24条では、小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者等に関する措置として、a.育児休業に関する制度(育児休業に「準ずる」休業等)、b.所定外労働の制限、c.短時間勤務、d.始業時刻変更等の措置、が「努力義務」として定められています。内容を比較すると「テレワーク」「新たな休暇の付与」が目新しいところです。

法案が通れば、来年4月から上記①~⑤の措置の中で会社は2つの措置を選択し、社員はそのうちの一つを選ぶことになるのですが、おそらく③の短時間勤務はかなりの企業が選択するのではないかと思います。実際に子育てをしながら働いている社員にとっても、短時間勤務は歓迎なのかもしれません。

ここで若干私が危惧するのは「小学校就学前まで」という措置終了のタイミングです。子が小学校に入学するというイベントは、親子共に大きな生活の変化をもたらします子を取り巻く環境や行動パターンが変化する時期であること、親として子を小学校に入学させるとやらねばならないことを理解していないことから落ち着くまでは様々見通しがつきにくく、そこまで短時間勤務で働いていた社員が、子供が小学校に入学したと同時にフルタイムに切替えるということはかなり不安やストレスがあるのではないかと思うのです。むしろこれまで預けてきた保育園等にいる間(例えば5歳)がスムーズなフルタイムへの移行を可能にするのではないかと考えます。また、小学校入学時を避け3年生まで短時間勤務を続けられる措置も一つの方法であるかもしれません。ただこちらについては、約10年間短時間勤務を継続することになるので、完全に短時間勤務のペースが出来上がってしまいそうな気がします。様々な統計を見たとき、女性はパートタイマーの働き方が圧倒的に多いのですが、できればフルタイムで子育てだけでなく仕事と仕事以外の人生を楽しんでもらいたいと思うので、短時間勤務からフルタイムへの移行は上手くタイミングをとらえて、スムーズであって欲しいと思います。

子どもが小学校3年生の時に社労士試験を受験してそれ以来仕事と家庭をはじめとしてプライベートな生活と両立してきましたが、ポイントとしては「時間を買う」ことについて惜しまないということではなかったかと思います。時間を買うことにお金を使ってほとんど残らないという時期もあるかもしれませんが、その時期の経験が将来大きく花を咲かせるかもしれませんので、今はそれでよいのではないかと割切ることも必要だったと思います。といっても今も晩御飯をどうするか綱渡りの毎日ではあるのですが・・・。


育休延長、給付金の審査を厳しく

2024-03-17 21:23:06 | 労働保険

3月14日の日経新聞に「保育所申請、落選狙いに歯止め、申告書の審査厳しく」との見出しで2025年4月から育児休業給付金の延長可否を、自治体の証明する「入所保留通知書」だけではなく、ハローワークが判断することとする記事が載りました。3月14日の労政審職業安定分科会雇用保険部会の資料が出ており、省令案要綱と概要を見ることができます。

雇用保険法施行規則の改正案は抜粋すると「育児休業の申出に係る子について、保育所等における保育の利用を希望し、申込みを行っているが、当面その実施が行われない場合については、速やかな職場復帰を図るために保育所等における保育の利用を希望しているものであると公共職業安定所長が認める場合に限ることとすること。」となっています。

これは、原則1年間の育児休業(給付)の期間を延ばすために、落選狙いであえて人気のある入所の難しい保育施設に申し込むなどの事例が相次ぎ、また自治体が親の希望を踏まえて落ちやすい施設を紹介することも少なくなかったということから、育児休業給付金の申請に必要な提出書類に保育所入所についての詳細な内容を記入してもらい、不信な申請があれば親の復職意思を確認し給付するかどうかをハローワークが判断をするということです。

本人が記載する申告書には以下の内容が盛り込まれる予定です。
➀市区町村に保育所の利用申し込みを行なったか
②利用申込みを行った日
③利用開始希望日
④利用保留の有効期限
⑤利用内定辞退をしたか
⑥利用申し込みを行った中で自宅または勤務先から最も近隣の施設名、通所方法と通所時間(片道)
⑥-2 通所時間(片道)が30分以上の場合次のいずれか
  ア.申し込んだ保育所等が通勤経路の途中
  イ.他に利用できる保育所等が存在しない
      a.30分未満で通える保育所等存在しない
      b.30分未満で通える保育所等では職場復帰後の勤務時間・勤務日に対応できない
      c.子に特別の配慮が必要であり、30分未満の保育所等では対応ができない
  ウ.その他の理由(理由欄に記載)

1歳の育児休業を延長するのにそこまで作戦的な必要があるのであれば、むしろ2歳までの育児休業期間の中で自身で育児休業期間を選択してもらう方が、会社としても復職の予定が立って有難いように思うのですが、やはりそこまで給付を実施すると財源的に厳しいでしょうか。

仕事は相変わらずあれこれ忙しく、1週間の開始時にはすでにのその週は予定が入らない状況が続いています。ただ、今年は年明けからここまで体調も崩さずセミナーの集中期も声を枯らさず来れたので良かったと思っています。

まだ桜は蕾が固いようですがあと1週間から2週間の辛抱かなと思い、それまでには色々と片付けてお花見をゆっくりしたいと思っています。また、春から少し新しい仕事の準備に取組む予定です。


日本で女性の活躍を進めるヒント

2024-03-11 19:47:33 | 雑感

日本の女性活躍は、世界経済フォーラムが算出しているジェンダーギャップ指数では146ヵ国中125位と先進国としては最低水準だということです。

女性活躍がなかなか進まないのは、よく言われるのは家事負担が女性に偏りがちという点です。確かにこれまではそうだったかもしれませんが、10年前くらいからは周りを見ると男子は家事負担についても子育てについてもかなり頑張っているようには感じており、これは一部の事例でしょうか。そうだとしても現在50代以上の男性と比較すると働き方も異なると思いますし、ずいぶんと家事、育児へのかかわり方は大きく変化しているように感じます。おそらく50代以上の男性からみるとびっくりするぐらい、今の子育て中の世代は夫婦で生活にかかわる作業を分担し協力しあっているように見えます。これは海外の状況では比較的普通なのかもしれないとイメージしています。今の子育て世代が社会で決定権のある世代となる10年15年後は女性の活躍についてもだいぶ変わるのかもしれません。

女性の活躍が進まないのは、私の考えでは、日本人の控え目を良しとする気質や、教育、社会に出てからの会議への参加、発言などの機会の少なさがかなり大きな要因となっているのではないかと感じています。ただそれ以上に一言でいうとやはり「男性社会」という壁のようなものは感じることは多々あります。外部の会議などでも男性の中にたった一人の女性という状況になることは多く、それは専門職として比較的入りやすいということがあるかと思いますが、男性社会の常識とかルールなどが暗黙の了解の中で守られているような気がします。多様性が注目されてからずいぶんと時間が経ちますが、今のところ動かし難い、大きな壁のようなものを感じることが多いです。女性がその壁を超えて会議に参加するなどということについては男性側からしても女性側からしてもなかなか壊しにくいもののように思えます。

3月8日の日経新聞の「国際女性デー」の記事で丸井グループの青井社長のインタビュー記事はとても印象的でした。こんなトップであれば組織の多様性が実現し、閉塞感が打開されるのだろうなと思いました。というのも長い低迷期に同質の男性ばかりが集まり、議論を進めると予定調和的な議論になり、時代に合わせて変わることができないことに思い至り、女性や若手をメンバーに入れる構成の会議でないと、会議をしないで帰ることにしたというのです。残業の削減に仕事の見える化やITを活用し、シフトを細かく刻み、対話の重視など様々な施策を進めたそうです。また男性の抱える重荷を軽くするという意味で女性の活躍により男性が稼がなければという負担感を減らし幸福度を高めるという考えも示されており、女性の活躍のヒントが沢山語られていました。トップの考えと意思が組織を時代に合わせて変えていくには必要なのだということをつくづく感じさせる記事です。

 

週末を使って旅行に行ってきました。一人旅の女性もいて少し話をしてみるとそれぞれ自分の楽しみ方や考え方を持っていてとても教えられることが多いです。女性の好奇心や企画力、情報交換のコミュニケーション力を生かさない手はないと思うのです。同質性の中で安心するのではなく時には議論が過ぎるくらいのことがあったとしても、多様性を楽しむくらいの企業や組織が増えてくると、日本社会も企業、働く人ももっと元気になり皆が幸せを感じることができるのではないかと思います。


事業を継続するということについて

2024-03-04 00:35:26 | 開業記

今年の4月で社労士を開業してはや32年目になります。開業当初自分の中で事業を開始するといった意識はなく、ただ開業社労士という専門士業としてやっていくことだけを考えていましたが、様々なご縁や出会いを頂いて事務所の規模が大きくなり、今は社労士であるとともに社労士法人という事業を経営していくという感覚を日々持っています。社労士法人というと一般の企業とは異なる部分もあると思いますが、色々な企業からのご相談などを受けていると、人を雇い入れ働いてもらうということについては大差なく、事務所での出来事や導入した施策、事務所運営で自分が考えることがアドバイスに生きていることは間違いないところです。

事務所の規模がある程度大きくなるにつれて一番感じることは、色々なタイプの人間が集まることで組織としての強みが倍々で増していくということです。新たなことをイメージし、実行に持って行くことについては自分の得意とするところだと思っており、また法律順守と共にソリューションのためのアイディアが自分の社労士業務の柱だと思っています。ただこのアイディアを実現して継続的に運用していくには持久力が必要で、決められたことを飽きずに運用していくタイプの人間がいないと形になっていかないことも実感しています。顧問先のご相談に乗っている中で例えば「残業許可制を導入しましょう」とこちらは簡単にご提案したところ、「許可を受けているかどうかをチェックする機能がない(人がいない)ので形だけになってしまうので止めておきます。」と言われてハッとしたことがあります。ある程度はシステムやIT化で解決できる問題はありますが、そこには許可をし、許可の有無を確認し、さらに許可を受けていないことが続けばどうするか対応する、という必要が出てきます。人により得意分野が異なることにより、これらは継続的に運用されて、事業がつつがなく回っていくと感じます。

もう一つ重要だと考えるのは事務所の理念・目指すところです。こちらも特に高い目標を掲げて開業をスタートしたわけではなかったのですが、これは私の昔から自然に考えていることが事務所の経営理念になっていると感じます。まずは「志を高く持つ」こと。社労士という仕事に誇りを持てるよう、しっかり勉強して真の実力をつけたいと常に思っています。日々アンテナを高く情報をキャッチし、分析し自分の思考に落とし込むことは楽しく、顧問先企業のご相談を考えることも非常に勉強になります。こういうことができる社労士という仕事につけて本当に良かったと思っており、この姿勢は社労士の独占業務である手続でも、事務所で積極的に導入しているIT化においても、また事務所の特徴であるコンサル業務でも同じことで、事務所のスタッフに全員に持ってもらいたい事務所の理念です。また、「惜しみなく与える」という点も理念といえると思います。与えるというとおこがましいのですが、自分の持っている情報やスキルは同業者であってもまた時には報酬のいかんにかかわらず提供するということです。結局のところ個人の力では限界があり、業界全体が実力をつけることが必要だと常に思うことと、またこの考え方により時を経て大きな恩恵が返ってくると思うのです。

特に事務所のスタッフが10人を超える頃になった15年前あたりから試行錯誤しながら社労士法人という事業を30年超継続してこれたという、ここまでの歴史のようなものもとても大切に感じています。最近は、この30年間、先を見て、方向性をイメージし、様々な選択をしてきたことを思うと、事業継続の面白さを感じています。

今の事務所がここまでくるにあたり一番重要だったのは人に恵まれたことに尽きると思います。これについては「感謝」の一言です!


医師の働き方改革についての協力事項

2024-02-25 23:53:07 | 労働基準法

この時期毎年行っている4月に向けた法改正セミナーでも36協定集中講座でも、今年は時間外労働の上限規制の猶予事業についての猶予期間終了、すなわち建設、自動車運転、医師の3つの業務等がそれぞれ特別条項の上限規制を受けることになる点は一つのポイントになります。なかでも医師の働き方改革は2016年から様々な検討会などで検討されてきて今回だいぶ整理されたのかなと思いますが、それにしても時間外労働の上限の時間数は他とは比較にならない時間になっています。

2024年4月1日から勤務医の時間外・休日労働時間は、原則として年960時間が上限となりこれが「A水準」とされています。ただし他院と兼業する医師の労働時間は通算で1,860時間(各院では960時間)とされており「連携B水準」、地域医療の確保の必要のための「B水準」ともに1,860時間です。さらに臨床研究・専門研修医の研修のための「C1水準」と長時間修練が必要な技能の習得のための「C2水準」は同じく1,860時間です。A水準以外は医療機関が都道府県知事から地域医療の確保の必要性という理由で指定を受ける必要があります。

原則月45時間及び特別条項でも月100時間未満、年間時間外労働720時間という通常の時間外労働の上限規制から考えると1,860時間はあまりにも長い時間ですが、あくまで2024年4月から暫定措置であり2035年にはこの暫定措置を解消することを目標としています。それでもこの医師の長時間労働という難題に切込み、時間をかけて検討し、整理をしてここまでもってきたことは本当に関係者全員が大変なことだったと想像します。

時間外労働の上限規制については、様々な業種の企業のご相談に乗ってきましたが、結局1企業レベルでは解決できない構造的な問題を抱えている部分もあると思っており、その点業界挙げての取組みは参考になります。厚労省の「医師の働き方改革」.jpというサイトでは、「患者さんやご家族の皆様にご理解、ご協力していただきたいこと」として以下のことをあげています。

・診療時間内の受診にご協力をお願いします・・夜間や休日などの診療時間外に緊急性のない受診を控えて欲しいことや、患者さんは家族への説明を診療時間内に実施することの協力を求めています。また軽症の病気は身近な医療機関(診療所等)への相談を促し、大病院等に集中しないよう求めています。

・”いつもの先生”以外の医療スタッフの対応にご理解をお願いします・・医師の働き方改革の一環として、チームで医療を提供することで医師への負担のかたよりをなくすという取り組みへの理解を求めています。タスク・シフト/シェアという、医師の担っている業務のうち一部を他の医療スタッフ(看護師、薬剤師、臨床検査技師、事務職(医師事務作業補助者)などに移管(シフト)や分担(シェア)することや複数主治医制への理解も求めています。

上記については他の職種でも参考にできることと思われ、これまで当たり前と思われてきた日本人の丁寧な献身からするとクールなイメージを受けてしまうかもしれませんが、社会がその点を十分理解して受入れ協力していくことが必要なのだと思います。
https://iryou-ishi-hatarakikata.mhlw.go.jp/realize/

この週末は雨が多かったですがひと雨ごとに春に近づいているような気がしてもう少しの辛抱と思っています。この週末でILO の支援を受けて連合会で行ってきた今年度の「『ビジネスと人権』と社労士の役割研修」の上級編が終わりました。来年度はさらに多くの回数を実施しBHR推進社労士を増やす予定ということですが、今年度だけでも200人程度が誕生し連合会のHPに公表されています。上級編の研修参加までかなり時間をかけて研修受講や実際の企業へのチェックリストでのチェック、テストや課題提出等を行う必要があり、受講者はそれぞれ意識が高い方ばかりだったと思います。「ビジネスと人権」についての企業の取組みをしっかり社労士が支援していけることをアピールしてこの研修を実りあるものにしていきたいと思っています(以下のサイトでは「BHR推進社労士リスト」も載っています)。
https://www.shakaihokenroumushi.jp/organization/tabid/853/Default.aspx


税金や社会保険料を納めることについて

2024-02-18 23:23:51 | 雑感

2024年10月1日からいよいよ社会保険の適用拡大が51人以上規模の企業に拡大されます。条件や準備フローは2022年の10月に101人以上の企業に拡大された際と同様です。ところで適用拡大の状況としてはどうなったのか気になり調べてみたところ、社会保障審議会の年金部会で資料として取り上げられたJILの調査がありました。この調査では昨年2022年の適用拡大についてのアンケートを行っています。

「厚生年金・健康保険が適用されるよう、かつ手取り収入が増える(維持できる)よう、所定労働時間を延長した(してもらった)」(6.4%)と「所定労働時間はそのまま、厚生年金・健康保険が適用された」(14.5%)が合わせて 21.0%に対し、「厚生年金・健康保険が適用されないよう、所定労働時間を短縮した(してもらった)」は 12.0%等で、「厚生年金・健康保険は適用されておらず、働き方にも変化はないが、今後については検討している」が 21.0%等となった。

労働時間を延長した6.4%より、短縮してもらった12.0%の方が多いという結果は残念な感じがします。ちなみに企業調査では、できるだけ適用するが55.1%、どちらかといえば、適用するが7.6%と6割を超えており、理由としては法律改正で決まったことだからが66%と最も多かったということです。

税金や社会保険料については、私は高いと思うことはありますが納付することはどちらかと言えば積極的に考えています。それはもしかしたら専業主婦時代を10年間経験しているからかもしれません。専業主婦時代は自分の名前で呼ばれることはほとんどなく、税金や社会保険料を負担することもなかったので、社労士になり被扶養者という立場を離れて、税金や保険料を納めることにり「自立」した感覚が持てたからかもしれません。また税金は国を支える国民としての義務という気持ちが強いです。

先日樋口恵子さんの本を読んだのですが1986(昭和61)年から実施された第3号被保険者の制度により、サラリーマンの妻は非正規雇用でいいとなってしまった。非正規の平均年収が200万円前後で、賃金の低さがまんま年金に反映されるので経済的に苦しい高齢女性が増えるということを書かれています(表現はもっと刺激的です)。解決策は一つ、「あらゆる女性が職場に出て、平等な扱いを受けて、給料を得て、自分の生活を支えるだけではなく、税金や公共料金の担い手として、男並みにそれも払うこと。」と言っておられます。これにとても共感を覚えました。やはり、国民の義務としての税金や国民皆年金の社会保険料を納めないでよい制度というのは、障害や貧困の場合を除いて、1人前の人間として違和感があります。

「社会保険の適用拡大への対応状況等に関する調査」https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/001101667.pdf

樋口恵子さんにはずいぶん昔、女性労働協会の理事会で錚々たるメンバーの揃う中監査として参加して一度だけお会いしたことがあり、その時はこちらをチラリと見られて怖い人という印象でしたが、今回本を読んで身近に感じました。

※先日OURSセミナーで「技能実習生の制度廃止の時期」についてブログでお伝えするとしましたのでここでお伝えします。2024年の通常国会に法案を提出するため、まだ施行日は決まっていないようです。


オンライン保育所申請

2024-02-12 22:37:15 | 労働法

2月5日の日経新聞に、「現在は書面での手続きが中心の保育所への入所申請が2026年度からオンラインでできるようになる。」という記事が載っていました。こども家庭庁が自治体ごとに異なる申込みの内容を統一してスマホで手続きができるような仕組みを作るそうで、各自治体が導入すれば利用が可能となるそうです。

育児休業の延長や育児休業給付金の支給申請の際には保育所に入所できない場合の確認資料として「保育所入所保留通知書」の提出が必要です。これは保育所入所を希望した保護者の申込みに対して、保育所に入所ができなかった場合に交付されるもので、育児休業給付金の延長の支給要件である「保育所等における保育の利用を希望し申し込みを行っているが、当面保育が実施されない場合」に該当しているかどうかはこの通知書で判断することになっています。これは申請が適正になされていることを前提として、申請者、市町村、事業主等の負担軽減の観点から保留通知書もって判断することになっています。しかし、こちらについては様々な支障が出てきており、例えば1歳以降も育児休業の延長を希望する入所意思のない保護者から「確実に保留になるための相談に30分から1時間程度の時間を取られたり、意に反して入所内定となった場合の苦情も来てその対応に時間を取られるなど自治体の負担になっている」という現状があります。

この状況を踏まえて、地方分権改革有識者会議等で「制度そのものを、制度の趣旨に沿うように見直すことが求められる」ということとなり、見直し案として保育所に当面入所できないことの確認については、単に入所保留通知書を提出するだけではなく、ハローワークがさらに必要な書類を求めて「育児休業給付を延長しなければならない状態にあること」を認定した場合に限り延長を認めることとするということが考えられているようです。

ハローワークが個々の申し込み状況を的確に判断できるのかという点も疑問はありますが、これまでより更に確認過程が増えて利用者の負担も増すことになるため、それならいっそ延長は条件を付けなくても良いのではないかと思ってしまいます(異次元の少子化対策ということであればそれもありではないかと・・・)。

ともあれ保育所申請は2026年度までに各自治体でばらつきのある保育所申請の届出内容を全国共通としてオンライン申請が可能となり、申請以前に必要な保育所の情報収集や見学・面談予約もアプリ上で完結できるようになるそうです。申込内容が共通になれば、点数の算出や、入所調整にAIを活用して迅速に進められるというメリットもあるようです。この結果ハローワークの認定も的確に行われるということにつながると良いと思っています。

毎年この時期はセミナーの仕事がかなり入りとにかく喉を大事に、つつがなく全てのセミナーをこなせるように注意しています。先週は連合会主催のビジネスと人権の埼玉会開催のセミナーが2日にわたりありファシリテーターを務めました。昨年秋から色々な県会で開催されており、概ね全体ファシリテーター2人とグループファシリテーター2、3人という5名程度のチームで進めていきます。研修はグループに分かれディスカッションとロールプレイからなり、これまで一方通行で講義をしてきた私としては、当初ヨロヨロしていたのですが、慣れてきた今はファシリテーションを楽しんでやれるようになりました。埼玉県会の全体ファシリテーターの相棒は東京会の真見先生で、初めて組んだのですがとてもご本人の持つ優しさが出ていると感じました。ファシリテーションもそうですが講師業というのはその人の持っている個性が滲むものですね。

   


裁量労働制の健康福祉確保措置について

2024-02-04 11:07:56 | 労働基準法

4月施行の法改正の中で裁量労働の労使協定で定める「健康福祉確保措置」の改正は、「同意及び同意の撤回ルールの定め」の陰に隠れがちに感じるので、専門業務型裁量労働制に特化して触れておきたいと思います。

現在の専門業務型裁量労働制に関する協定届には、「労働者の健康及び福祉を確保するために講ずる措置(労働者の労働時間の状況の把握方法)となっており、モデルの例では2か月に1回、所属長が健康状態についてヒアリングを行い、必要に応じて特別健康診断の実施や特別休暇の付与を行う(IDカード)となっています。

今回の改正で健康福祉確保措置はこれまでより具体的な措置が追加列挙されており、労使協定の裏面にその内容の記載があります。その中から番号と内容を表面の該当欄に記載することになっています。

改正では、示された具体的な内容の列挙のいずれかを選択し、実施することが適切であり、以下【1】と【2】から1つずつ以上実施することが望ましいとされており、このうち特に把握した適用労働者の勤務状況及びその健康状態を踏まえ、③の措置を実施することが労働者の健康確保をはかる上で望ましいとされています。
【1】長時間労働の抑制や休日確保を図るための事業場の適用労働者全員を対象とする措置
① 終業から始業までの一定時間以上の休息時間の確保(勤務間インターバル)
② 深夜業(22時~5時)の回数を1箇月で一定回数以内とする
③ 労働時間が一定時間を超えた場合の制度適用解除
(一定時間は、時間外・休日労働の時間が月100時間未満、2~6か月平均80時間以内が適切とされています)
④ 連続した年次有給休暇の取得
【2】勤務状況や健康状態の改善を図るための個々の適用労働者の状況に応じて講ずる措置
⑤ 医師による面接指導
⑥ 代償休日・特別な休暇付与
⑦ 健康診断の実施
⑧ 心とからだの相談窓口の設置
⑨ 必要に応じた配置転換
⑩ 産業医等による助言・指導や保健指導

この健康福祉確保措置については、指針(「労働基準法第38条の4第1項の規定により同項第1号の業務に従事する労働者の適正な労働条件の確保を図るための指針」)が示されており、今回の法改正により指針も加筆がされています。加筆されたうちの一つが、「健康・福祉確保措置の結果を踏まえ、特定の対象労働者に制度を適用しないこととする場合における、配置及び処遇又はその決定方法について、あらかじめ労使協定で定めておくことが望ましいとされています。

指針 https://www.mhlw.go.jp/content/001130316.pdf

昨日は4年前のコロナ中止以来久しぶりにリアルで、オリンピックセンターでBBクラブの勉強会を開催しました。以前にも何度か利用したことのある300人部屋・階段教室で行ったのですが、100名を超える本当に懐かしい沢山の方が参加頂いて非常に嬉しく、終了後の懇親会も含めて楽しい時間を過ごしました。BBクラブの勉強会は年に2回法改正をお話しすることになっているのですが、その前に近況報告や、最近考えていること、また法改正といっても半分くらいは世の中の労務管理を中心とした状況など、受験生時代と異なり、気楽に楽しくお話しさせて頂いています。44回目ということで年に2回行っていますので再来年には25周年のパーティーを行うこととしており、ご連絡が途絶えた方にも久しぶりに参加のお声掛けをしてみようと思っています。

毎年受講生が合格していくと合格は嬉しかったのですが、一方寂しい思いもありました。それが卒業後もBBクラブでここまで永年繋がってこれたということは本当に私の人生にとても幸せなことだと思っています。

また、既に講師を卒業してから15年近く経っているため、新入会員は本来いないはずなのですが、社労士会で知り合った方で参加を希望された方が紹介という形で加わってくれています。もともと受講生も受講した年が異なれば知らない仲であったわけで、社労士という接点のもと様々な方を受け入れてオープンに人間関係を作ることができる組織であることを願っています。