OURSブログ

社会保険労務士としての日々の業務を行う中で、考えたこと、感じたこと、伝えたいことを綴る代表コラム。

転勤について

2017-04-30 23:50:22 | 労務管理

2017年1月11日の日経新聞に、 正社員でも転勤に配慮をということで「厚労省が研究会、3月末までに対策 」という記事が載りました。「研究会の対策には転勤の際に、育児や介護といった家庭環境に配慮するよう企業に求めるねらいがある。」ということで計3回の研究会が開催されているようです。

以下、「転勤に関する雇用管理のポイント(仮称)」策定に向けた研究会が取りまとめた報告書を、厚生労働省のサイトで見ることができます。

「転勤に関する雇用管理のポイント(仮称)」策定に向けた研究会報告書を取りまとめました
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000160196.html

 報告書の中で、転勤の実態を調査している部分がありますが、全国転勤型の正社員(総合職)のうち実際の転勤経験者の割合は、男性については「1割程」度が21.0%で最も割合が高く、次いで「2割程度」が17.2%など、女性については「転勤経験がほとんどない」が51.7%で最も割合が高く、次いで「1割程度」が19.2%などとなっているとあります。

転勤があることにより、困難に感じることはあるかについて、各項目で「そう思 う」又は「ややそう思う」とする者の合計は、 「介護がしづらい」が 75.1%、 「持ち 家を所有しづらい」が 68.1%、 「進学期の子供の教育が難しい」が 65.8%、 「育児が しづらい」が 53.2%、 「子供を持ちづらい」が 32.4%、 「結婚しづらい」29.3%となっ ているともあります。

正社員男性の転勤経験者が1、2割約40%とは少ない感じがしました。私自身は父親が銀行員であったため、まさに転勤族で、また父は地方出身でしたから私が高校3年生までは社宅住まいで、少し昇進すると社宅も移動しなければならず、また東京→大阪→高松とちょうど小学校高学年から高校2年生までの3回の転勤があり、結局入学した学校を卒業できたのは大学のみという状況でした。

とにかく2,3年後には転勤があると親から言われると何となく落ち着かない気分になっていたことは確かですし、転校生はやはりいじめられやすく馴染むまでは苦労もしました。親が転勤している期間2年間は行く学校がなくなるといけないということで2年間学校の寮に入っていたこともありました。

しかし転勤が良くないかといえば、今となっては良かったと思っています。父親の高松支店長次代の部下の方が私にとっては唯一といってよいほど楽しい記憶に残る方たちであったということは、それだけ地方支店時代の人間関係が家族も含め身近であったということだったと思うのです。家族としては、やはり転校したり中学生の頃から親と離れて暮らしたりということが、自分にとっては貴重な経験になっていると思います。転校の経験により、今でも事務所でも支部でも新たに入ってきた人が寂しくないか気になりますし、新たな人間関係に入ることは苦になりません。寮生活は、当初こそ寂しかったですが慣れればこれも楽しく、よく友達と休みの日にはギターを弾いたり、チキンラーメンを部屋のストーブで作って食べたり、学校もすぐ隣でしたから毎日テニスのボード打ちの朝練に1人で通って身体も丈夫になりました。

家族を持つ女性や介護期間中の場合、転勤するのはなかなか厳しいと推察します。こういう研究会ができて配慮がされるのも必要だと思いますが、やはり機会があるのであれば転勤も経験した方がよいと思っています。

少し時間ができそうなのでいろいろな人を招待できる準備をしようと、週末は小淵沢の家に行って花壇にあれこれ植えてきました。咲いてくれるとよいのですが。まだ小淵沢は少し寒く、近くには桜も咲いていました。今年は近くの低山を歩き回ろうと計画しています。

  遠くの八ヶ岳

 


労災保険と健康保険の調整について

2017-04-23 23:42:51 | 労働保険

平成29年2月1日に、次の内容の平成29.2.1基補発0201第1号「労災認定された傷病等に対して労災保険以外から給付等を受けていた場合における保険者等の調整について」が発出されました。

これまで、労災認定された傷病等に対して過去に健康保険等医療保険から給付を受けていた被保険者等については、医療保険からの給付額を保険者に返還した上で、改めて労災保険給付の請求を行うことを原則としていました。

上記通達によると、被保険者等が医療保険の保険者に返還する必要のある金額に相当する分の労災保険給付の受領について、医療保険の保険者に委任する旨を労働基準監督署に申し出た場合には、返還額相当分の労災保険給付を医療保険の保険者に支払うことにより調整を行うことができることとする、とされました。

要するに、労災給付として受けるべき給付に相当するものを健康保険等で誤って受給していた場合に、その給付分を労災で受給しなおすなどのケースが発生したら、まず健康保険等に一部負担金以外の費用も含め全額支払った上で労災に申請して労災給付を受けていたものを、申し出により労災と健康保険等の保険者間でやり取りをしてくれるので、いったん全額負担する必要がないということなのです。

労災で受けるべき給付を健康保険証を使ってしまったというケースは実務では多く発生しますので、これはとても楽になると思ったのですが、先日事務所のスタッフから「あくまで一度労災認定がされていないとこのケースは該当しないそうです」という報告がありました。確かに冒頭の通達を読んでみたところ「労災認定された傷病等に対して」という文言があります。一度確認してみようと思っていましたところ、金曜日に統括支部の定期会議があり監督署の労災担当の副署長も来賓で来られていましたので聞いてみました。

確かに一度「労災認定」されていないとこの扱いはないということで、でもそれはどういうケースなのかというと、治療については健康保険証を使って健康保険で受けており、労災の療養補償給付を受けず休業補償給付だけを受けていたようなケースがあるそうです。その場合は一度は休業補償給付において労災認定がされていたわけですから、その後治療部分のみ健康保険等から労災保険の療養補償給付に切り替えなおすということになり、そういった場合は全額精算をするのではなく労災保険と健康保険等保険者間で調整してくれるということでした。

なかなかこれは通達でそこまで理解するのは難しく、問い合わせが多いためか通達もネットでは検索できなくなっているようです。

金曜日に山手統括支部の定期会議があり、2年間の統括支部長のお役目を終えました。渋谷支部の支部長時代から数えてまる6年間支部長職についていたことになり、よく考えてみるとずいぶん長い間支部長を務めさせて頂いたものだと思います。やはり流石に寂しいものがありますが、肩の荷が下りた感じもあります。

今日はスマホと携帯の一本化をすることにして、ドコモショップで3時間と家に帰って種々の設定で一日が過ぎました。何とかだいたいの作業を終えることができましたが、長年使ってきた携帯メールがスマホメールに代わるのが心配です。

 2017.4.21山手統括支部定期会議


無期転換時の労働契約の成立について

2017-04-16 22:09:55 | 労働法

今週は月末に渋谷労働基準協会で行う無期転換の実務対応セミナーの準備を開始しました。これまでも何度かこのテーマでセミナーをさせて頂いているのですが、平成25年の法改正後5年を経過する来年の4月以降無期転換権の行使がいよいよ開始されるためレジュメを再編しています。

法改正後の4年間の中で、定年後の有期雇用についての特例ができたり若干の変更事項があったためもう一度体系だてて無期転換を考えてみようと思うのと、同一労働同一賃金ガイドライン案も視野に入れた無期転換社員用就業規則モデルを作ってみようと思っています。

その中で労契法の条文を再度確認してみたのですが、無期転換が「新たな労働契約の成立」なのか、「労働条件の変更」なのかどうかは議論があるところのようです。新たな労働契約であると考えれば以下の労働契約法第7条が適用されることになります。

第7条   労働者及び使用者が労働契約を締結する場合において、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする。(略)

厚生労働省が出している「無期転換のあらまし」にも、「無期転換した場合の労働条件については、労働者と使用者の間で認識に齟齬がないように、あらかじめよく確認し合うとともに、無期転換前と異なる労働条件を適用する必要がある場合には、労働協約、修行規則、個々の労働契約で定めておくことが必要です。」とありますから、新たな労働契約の成立と考えてよいように思います。

どちらにしても、労働者と使用者の合意があって無期転換契約は成立するので、無期転換後の労働条件の変更について、転勤があるなど不利益といえる部分が別段の定めとされていても不利益変更とは言えないのではないかと考えています。

先週は関東甲信越の社労士会の正副会長が集まる会議がありました。先輩の女性社労士の先生と5人部屋で色々なお話を伺ったり、なかなかゆっくりお話しできない他県会の先生とのお話を聞いたりして、やはり情報が集まるという点で東京会がもっといろいろな発信をしてリードすべきなのだろうなと思いました。

今日は急に夏になりましたが、東京会のBBQに参加しました。参加してくれた子供たちや孫たちがとても可愛かったのと春のお花がきれいでした。今年の連休は長いですね。読みたい本が沢山あるので連休中に読破するつもりです。 


偽装請負とは

2017-04-09 20:59:50 | 労働法

偽装請負とは、「請負ないし業務委託契約の形式をとりながら、注文者ないし業務委託者が、請負人ないし業務委託者の労働者に直接指揮をしている関係をいいます。(「労務インデックス」より:税務研究会出版局)

どのようなケースであると偽装請負とされているかについては、「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」 (昭和61年労働省告示第37号)と疑義応答集が第1集と第2集が出ているので、疑問になった際はこの疑義応答集を確認してみる必要があります。例えば疑義応答集第1集には「5.発注者の労働者と請負労働者の混在」の回答は以下のように書かれています。判断のポイントは「発注者等の直接の指示」があるかどうかということになります。

http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/gigi_outou01.html

A 適正な請負と判断されるためには、請負事業主が、自己の労働者に対する業務の遂行に関する指示その他の管理を自ら行っていること、請け負った業務を自己の業務として契約の相手方から独立して処理することなどが必要です。
 これらの要件が満たされているのであれば、仮に両事業主の作業スペースがパーテーション等により物理的に区分されていることがなくても、それだけをもって偽装請負と判断されるものではありません。
 また、同様に、上記の要件が満たされているのであれば、パーテーション等の区分がないだけでなく、発注者の労働者と請負労働者が混在していたとしても、それだけをもって偽装請負と判断されるものではありません。
 ただし、例えば、発注者と請負事業主の作業内容に連続性がある場合であって、それぞれの作業スペースが物理的に区分されてないことや、それぞれの労働者が混在していることが原因で、発注者が請負労働者に対し、業務の遂行方法に必然的に直接指示を行ってしまう場合は、偽装請負と判断されることになります。

なお、派遣法第40条の6は、労働契約申込みみなし制度を定めており、いわゆる偽装請負等の場合については、当該行為を行った時点において、労働者派遣の役務の提供を受ける者が派遣労働者に対して、善意無過失の場合を除き、「労働契約の申込みをしたものとみなす」とされています。

今週はどこもお花見で賑わっていました。顧問先にお伺いした日も皆さんでお花見に行かれるとのこと。前日から場所取りをされているということでそのお役目の方はたいへんですがその分盛り上がるのだろうなと思いました。やはり桜の時期は何となく楽しいですね。今週からいよいよダウンコートともお別れし新たな年度が開始しました。

昨日は同じ支部の大野先生が藍綬褒章を受章されたお祝い会があり、全国の社労士が集まられ盛会でした。特にお役目がない会というのも久しぶりで、この2年間連合会の理事を務めさせて頂いてお世話になった先生方に御礼をすることができる良い機会となりました。めったに会うことができない社労士の先輩とも久しぶりにお話しできてジ~ンとする言葉をかけていただいたり、受講生OBにも何人か会うことができて、「何とかやっています」と言いながら活躍している様子。受講生時代が思い出され本当に嬉しかったです。

また私も今年度新たな気持ちでいろいろなことに取り組んでいきたいとワクワクしています。


育児休業2歳まで延長可能に

2017-04-02 22:40:28 | 産前産後・育児・介護休業

改正雇用保険法と関連法が3月31日に可決成立しました。雇用保険料の引き下げ、育児休業期間が条件に該当すれば2歳まで取得できる等の改正ですが、主な内容については以下の概要がわかりやすく取りまとめられていますのでご確認ください。

http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/soumu/houritu/193.html

1月施行の改正に引き続く育児介護休業法の改正ですが、今回はそれほど盛沢山の改正内容というわけではありません。ただ付帯決議がついたという点は特徴があると思います。

今回の育児介護休業法の改正の目玉は、これまでも保育所に入所できない場合は原則1年の育児休業を1年半まで延長できることになっています。ただ認可保育所が充足しているわけではないということから、10月から、保育所に入れない場合等に限りさらに6か月の再延長が可能になり最長2年まで育休がとれるようになりました。

また、男性の育休取得率を上げるため、「パパ・ママ育休プラス」の活用促進と、父親に一定期間の育休を割り当てる「パパ・クオータ制」の導入を検討するよう政府に求める付帯決議がつきました。

付帯決議は「待機児童問題の解消と保育サービスの量的質的拡充を最優先に取り組むこと」、また「保育士の処遇が他産業に比して遜色ない水準が実現されるよう具体的な対策を講ずること」とされたほか、以下の通りパパ・クオータ制の導入に向けて検討することとされています。

2 本法の施行後二年を目途として、育児休業制度の対象となる労働者等への事業主からの個別周知の有無を調査すること。また、本法附則の規定に基づく検討においては、男性の育児休業取得率が依然として低いことに鑑み、利用率の低いパパ・ママ育休プラス制度の活用促進に向けた改善措置を講ずるとともに、父親に一定期間の育児休業を割り当てるパパ・クオータ制の導入に向けて検討すること。

パパ・クオータ制とは?(公益財団法人日本女性学習財団HPより)

父親に一定の育児休暇を取得するよう割り当てる制度(Papa Quotaのクオータとは割り当てを意味する)。子どもを養育するための育児休業制度は、男女両方に保障されているが、実際には男性の取得は非常に少ない。このような状況を解消するために考え出されたのが「パパクオータ制」である。1993年、世界に先駆けてこの制度を導入したノルウェーでは、所得補償率100%で42週間の育児休暇が保障されており、その間、男性は最低4週間の休暇を取ることが義務付けられている。もし男性が休暇を取らない場合、その分の休暇は差し引かれる。また男性が女性より多く休暇を取ることも可能である。導入前の男性の取得率は5%程度であったが、現在では80%以上が取得していると報告されている。

今週はいろいろな仕事が一段落したのでとてもほっとしたのかなんとなくふわっと過ごしてしまいました。週末は購入していたPCのセッティングをしたり、BBクラブの幹事会で夏の勉強会の打ち合わせをしたり、大学のOBのための桜祭りと同時に開かれる体育会テニス部の総会に行って帰りに吉祥寺で雑貨を見たりして珍しく仕事はせず過ごしました。これが普通なんだと思いますが新鮮な感じでした。