OURSブログ

社会保険労務士としての日々の業務を行う中で、考えたこと、感じたこと、伝えたいことを綴る代表コラム。

社労士の仕事の役割

2015-02-22 22:57:05 | 雑感

先週は、山手統括支部の実務修習の事務所見学の受け入れをしました。昨年に引き続き受け入れたのですが、事務所のシステムの説明などスタッフのITに強いT君に行ってもらった後、開業した頃のことなどを含め雑談をしてとても楽しかったので、今年も同じメニューにして少し事前にお話する内容を考えました。開業して既に23年が経ち、流石に開業当初のことを思い出すことも少なくなりましたが、TACの講師時代に「入門テキスト」の巻末に載せた開業体験記があるので、それを読み返すと懐かしく昨日のことのようにも感じます。やはり書き残すことは大切です。

これまで社労士になってもちろん一度たりとも社労士を辞めようと思ったことはなく、ほとんど23年間ずっと全速力で走ってきた感じがします。いつの時代も平凡な能力しかない自分の目いっぱい、というより120%フル回転させてくることにより、次の局面が来るのが面白くここまであっという間に来てしまったという感じです。

社労士の仕事は、ご相談を受けた時に与えられた条件の中でいかに的確に答えを出すかという所に特徴があるかと思います。頂く情報は隅から隅まで全てというわけにはいかないことが多く、こちらに与えられていない情報が後から分かることも多々あります。それでも少ない情報の中から本質的な問題点を見つけて的確にアドバイスするところが腕の見せ所かと思っています。

あくまで会社には会社ごとの歴史、経営方針や経営状況などがあり、様々な情報を集めて決定していくのは会社自身ということになります。社労士はあくまでその判断や決定の一助になるような法律や通達の情報提供、他社や世間の状況、落としどころなどをアドバイスしていくことになります。一般のコンサル会社と異なり、国家資格としての社会保険労務士としては法律というベースがあり、その上に成り立つというところが単なる経験やトレンド、感覚でのアドバイスとは異なると考えています。

なぜ社労士のアドバイスが有効かというと、「横ぐし」または「すじかい」としての役割ではないかと考えます。法律とひとことで言ってもその取り扱う範囲の広さは半端ではなく、50以上になります。それぞれ複雑に絡み合い、例えばパートタイマーを雇い入れる場合ひとつをとっても、労基法・パート労働法・職安法・雇用保険法・健康保険法・厚生年金法などいくつもの関係法令に注意する必要があり、さらにそのパートタイマーさんが入社したらすぐに「おめでた」が分かったなどというと今度は均等法や育介法が関係してきます。

これらの法律の関係するところについて念頭に置きながら対応しなければならないことを考えアドバイスをしていくことになります。これは日本の縦に分業している行政には絶対できないことであり、マイナンバーなどで事務手続きが簡単になっても残る必要な仕事になります。

また企業は他の企業の方法や動向を見ながら色々な施策等を講じたり、対応方法を検討したりすることが多くあります。その点1つの企業内ではなかなか情報が入らないため我々社労士にご相談があります。よく「好事例」という言葉を耳にしますが、他の企業の「好事例」をアドバイスに生かすことも可能です。社労士を通じて色々な対応策を材料することが可能になるわけです。

あくまでコンサル・ご相談業務の場合、決定権は会社にあり我々社労士にはありません。社労士がご提案した内容を採用されない場合ももちろんあります。しかし企業が何かを決定する場合に「検討しなかった」のではなく「検討した上で採用しなかった」ということが大切だと思います。判断の材料を的確に提供し、企業の決定がしっかりしたロジックに基づいたものになるよう、すじかいを入れていくことができればと思います。

マイナンバーのセミナーはとても有効でした。社労士としては今年の10月頃を目指して、色々と準備することが多くありそうです。事務所でも情報共有することにして、支部会員にもこれは早目に分かったところから提供すべきだと思い早速5月連休前後にセミナーを企画できるよう動きました。

考えるポイントは、マイナンバーをどのようなスケジュールと方法で会社が取得していくか、そのマイナンバーを社労士としてはどのようにその情報の提供を受けるか、それらの管理についてどこまでセキュリティーを含め体制づくりが必要か、実際の手続にはマイナンバーはどのように使われるか、などではないかと今のところ考えています。

本屋さんに行っても今のところ有効なものはあまり出ていないようです。少しずつでも情報を取っていってあわてないようにしたいものです。


社労士として自分のウリを作るということ

2015-02-15 21:42:12 | 雑感

開業したばかりの頃は普通は社労士としてのウリを持っている人は少ないと思います。それでも開業したら何か得意分野を身につけていく必要があるとほとんどの人は考えると思います。社労士の職域は労務管理、年金、人事コンサルティング、あっせん、これからは成年後見人とどんどん広がっていきます。その中で何を自分の専門性にするかは、偶然入ってきた仕事によることもあると思いますし、好きで勉強し続けた結果ということもあると思います。

どちらにしても、自分のウリを作るには「作ろうとする意識と継続性」が必要だと思います。ずいぶん以前にいっしょに原稿の仕事をした先輩社労士が、平成16年の年金大改正のときに、国会で議論されている法律案を手に「これを徹底的に研究して理解してみようと思う。それがセミナーや執筆の仕事に繋がるだろうから」とおっしゃっていたのをよく覚えています。その時は私は「すごいなあ~」と思っただけでした。

法改正は社労士にとってチャンスに違いありません。法改正を説明し、必要な対応を提案できること、だけではなく人より深くそれを理解するために徹底的に研究し社長や人事担当者をうならせる話ができるか、誰よりも深く広く様々な方面から検証しているか、その積み重ねは確実にその社労士のウリになってきます。

従ってウリは一朝一夕にはできないと思いますが、地道な積み重ねで必ず持てるものとも思います。先日ある顧問先企業のセミナーをお願いした安衛法の講師の先生が、これは面白いので読んでみるとよいですよと講義の中でおっしゃっていたペーパーを読んで心から同感!と思いました。それは職場の中で起こりうる「災害調査」のことについて書いてあったのですが以下抜粋です。

災害調査というものは「何よりもまず事実を尊重し、真実に密着した調査をする」ということが基本だと思う。いかに高名な科学者でも、自分の専門とする立場に囚われて、その側面だけから、事故を認識するということは避けてもらいたい。一見無駄と思われること、関係なさそうに思われることでも、ひとつ、ひとつ虱つぶしに当たってみること、つまり地味な刑事のような仕事ぶりが、災害のような複雑な社会現象と取り組むときには必要である。局限された専門的立場や、自分の考えに囚われないで、できるだけ視野を広げ、ほんとの事実を知ろうとする態度を我々は持たなければならない。」(「ユニークな英国の調査」狩野広之」より)

これを読んだ後に先日の日経新聞に桜ゴルフの社長「佐川八重子さんに聞く」が女性経営者の哲学という題で載っていました。とても面白くその記事を読んだのですが最後にやはり同感!が載っていました。以下が抜粋です。

こういう厳しい状況下で思うことは、本業をもっと掘り下げて、その道の学者になることです。そして、他の追随を許さない特化したサービスや技術で、景気に左右されないような会社を作ることが大事なんです。それは当たり前のことなんですけれど。

自分の好きな分野を研究することもよいですが、目の前に与えられた仕事を徹底的に研究することで仕事はどんどん加速度的に面白くなってくると思います。

明日はマイナンバーのセミナーに行って勉強してきます。顧問先の大きな企業の方が社労士より早く情報が入っているようで気になっていました。受講料もOURSセミナーの10倍くらいするので、ひとことも聞き逃さず勉強してきます。

案件を簡単に片付けず、ひとつひとつこだわり、研究して自分の力が上がってくるのを楽しみながら社労士の仕事をしていきたいと思います。


36協定特別条項 1年の延長時間数

2015-02-08 11:49:02 | 労働時間

先週は渋谷労働基準協会のセミナーで「36協定集中」を講義させて頂きました。

36協定はたった1枚の届出なのですが、そこには労働時間の考え方を始め色々な要素が詰まっておりそれらも含めて3時間お話しできるということで楽しみにしていました。ところが3時間ではとても話し切れないほどネタがあり、後半はかなりかけあしのバタバタになってしまい少し後悔が残ります。

もっと丁寧に皆さんにわかりやすく整理しながら進められたのにと思いますが、お話しなければならない内容はほぼ話せたので良しとしましょう。36協定恐るべしと実感したのでした。最後のご質問でも何人もの方が手をあげられ、また終わってもご質問が列となり受講された方の熱心さが伝わってきました。

その中で36協定の「労働時間延長の限度基準」と「特別条項の延長時間」は特に大事なところで、担当者は悩まれるという部分です。

延長時間は、基準で「1日及び1日を超える一定の期間(以下「一定期間」という。)についての延長することができる時間を定めるものとされており、ここでいう一定期間は「1日を超え3箇月以内の期間及び1年間」としなければならないとされています。要するに、限度時間は「1日」と「原則1カ月(または3カ月)」と「1年」の3つを決めるということになります。

この一定期間(1日を超える一定の期間=1日を超え3箇月以内の期間=だいたいの36協定は1カ月時々3カ月で決めているところもあります。それに1年)には延長時間の限度が基準で定められています。これが「労働時間延長の限度基準」なのですが、1日の限度時間は定められていないため自由に定めることができます。

この一定期間については限度時間いっぱいに決めておくとすると、1カ月45時間と1年360時間となるわけです。

さらにこの限度時間ではとても時間外は収まらないということで、特別条項を設けることができるわけですが、特別条項には限度基準は定められていません。ただ、特別条項は「臨時」である必要があるため、上記1カ月45時間を超えて特別条項によりさらに延長できるのは年の半分までとされています。

特別条項の一般的な時間数は45時間を超え70時間又は80時間としているのが一般的だと思います。しかしこの特別条項で決めた時間数を超えて時間外労働をしてしまうと違法になりますので、ここは慎重に決めることが必要です。

さらに特別条項の1年間についての決め方は自由なのですが、例えば1カ月が70時間の特別延長を決めている場合は、70時間×6か月+45時間×6か月=690時間という考え方にしてます。

これは計算として自動的にそうなるであろうという数字なのですが、この1年の特別延長時間を例えば630時間とすることもできるわけです。その場合特別延長で定めた1カ月の時間数を限度まで使って時間外労働をしているとおさまらないことになるので、年度の最後の方で630時間に収まるように調整する必要が出てきたりすることもあります。1年の特別延長時間の設定により時間外労働の抑制を図る=枠をはめるということもできるわけです。

長時間労働を抑制するということに力を入れている行政サイドから見るとその姿勢は評価されるような気がしますので、検討に値すると思います。

ところでこの1年の特別延長時間を決めておかず1カ月の特別延長時間だけが90時間と決められていた場合はどうなるかということなのですが、90時間×6か月+45時間×6か月=810時間の時間外労働が許されるのではなく、あくまで1年間は360時間という限度基準の時間数までということになります。1年の特別延長時間を決めておかないと特別延長を4回使うとあとは時間外は一切できない(90×4か月=360時間)ということになってしまうわけです。

最近ネットで買い物をすることにしています。雑貨から洋服まで購入しているのですが、イメージやサイズが違っていたというと返品もできてとても便利です。靴はだいたい同じメーカーのものをとっかえひっかえ履いているのでほとんどネットで購入しています。帰宅時は食材を購入するのでいっぱいいっぱいですから、届けてくれるのは本当に助かります。

また正月明けからセールが始まっているのですが、商品数が店頭とは比べ物にならない数でまた結構「エッ」と思うほど安くなっていたりします。セールになってからショートダウンとチェック柄のシャツ、春も着れるショートコートを購入しました。どちらも大好きなブランドですがショートダウンは1万円程度チェック柄のシャツは5000円で購入(たぶん50%より安い)できました。ほんと便利です。難点はあまりにPCに向かい過ぎて肩こりと目が見えにくくなることです。


仕事と子育て

2015-02-01 23:27:34 | 雑感

子供が生まれた時に心に決めていたことが2つありました。1つ目は人生の幸せは心の安定にあるのではないかと思っていたので、子供を精神的に安定できるように育てて行こうということでした。そのためには親である自分の気持ちが子供には敏感に伝わると思い、特に環境の変化などがあったときにどっしりと構えていないといけないと思っていました。

2つ目は小さなときは思いっきり可愛がってもどこかで子離れ・親離れして子を自立させることが子育てだと思っていました。これは自分自身が親の転勤に伴い神戸から高松に家族が移動する際中学校3年生から2年間寮生活を経験したことが大きかったと思います。親から離れることがいかに重要かを中学生とはいえ実感していたのだと思います。

社会保険労務士を開業した時には既に専業主婦暦10年、子供は小学校5年生になろうとしていました。そのくらいになれば母親が働くことについてはそれほど問題はありません。週に1、2回TACの採点チームの仕事に行くときは私より早く帰ってきていましたが男の子でもあり心配した記憶はありません。しかし開業したのが自宅であったのは、当時やはり私自身は家事や育児を大切にして行こうと思っており、毎日外に働きに行くイメージはありませんでした。

ただ、私が覚悟を決めたのはTACの社労士講座で講師になれることになったときに、土日の講義や夜の講義、5月の連休も講義があっても、その依頼を受けようと決めた時でした。中学受験直前半年弱という頃で、私は講義の準備で塾のお弁当を作るのがやっとで面倒を見ることができなくなりましたが、結局本番では息子自身が何とかするしかないのだから大丈夫だろうと腹を決めました。

その後TACの講師と事務所運営で私の仕事は加速度的に忙しくなってきたので、子供にあまり手を掛けることはできなかったのですが「小さなころは思い切り可愛がったのだから大丈夫」となんとなく自信めいたものがありました。幼稚園まではもちろんのこと、小学校3年生くらいまでは友達が遊びに来ると私も一緒にちょっと遠い公園まで行ってドッチボールに参加したりやザリガニを見に行ったりと、高校時代のカブスカウト(ボーイスカウトになる前の子が所属)のリーダー時代のような感じで過ごしていましたので、どちらかというとそろそろ相手にしてくれなくなった頃に社労士試験を受験したという感じでした。

覚悟を決めてからは、「家庭や子供よりは仕事」で来たと思います。子供が浪人を経て大学に入って夏休みに一人暮らしをしたいと言い出すまで食事は殆ど毎日準備していたので、ないがしろにしたわけではなかったと思いますが、やはり気持ち的には仕事に向いている割合がかなり高かったと思います。家族の理解があったということはあるのかもしれませんが、家事の協力は全くと言ってよいほどなく、また夕食の準備を考えると残業ができないので自宅持ち帰りとなり、残業を思いっきりできる人が羨ましいといつも思っていました。その頃が苦しかったと言えば苦しかったと思います。

しかし今考えると、仕事を始めてから学校に持たせるものを忘れたりする回数が増えたことはありましたが、家族にそれほど迷惑を掛けたり生活が混乱した記憶はなく、思い出すのは高校の卒業式の日が、平成15年合格クラスの大事な厚生年金保険法第4回目の講義でどうしても受講生をことを考えると休みたくなく、午前中の式は出席をあきらめ、午後の第5回目の講義だけS先生に代講をお願いし謝恩会に駆け付けたことです。学校に行ってみたら「小磯は今生協の精算に駆け回っているところ」と息子の友人に言われて、ほかの人は親が済ませていたところをすまなかったなあ(けどまあいいことでしょう)と思ったこととか、センター試験が日曜日のため講義の日の朝に早起きして合格弁当を作り、送り出してから自分の講義に出かけるのは結構しんどかったというくらいでしょうか。

ある程度大きくなってからの仕事と子育ての両立でしたので、あまり悩んだこともなく、何の参考にもならないのですが、仕事をしていてよかったとは心から思っています。なんといっても、子供を自然に自立させることができたことや、大人になった今も仕事の話を普通にすることができることは仕事を続けてきたからこそだろうと思います。

子供が小さい頃も働くことは、それも会社という一定のルールの中で働くことは大変なことだろうと思います。子供が1歳で職場復帰をするのか、小学校に入れてからなのか、それともあくまで家庭や子供に影響のないようにパートで働くのかまたは専業主婦でいるのかはその人の状況や、考え方次第だと思うので、自分がどのように生きていくのか、仕事と家庭の両立ができるかどうかをよく見極めて決める必要があると思います。

もし家庭を持ちながら仕事をするのであればやはり「覚悟」は必要だと思います。仕事より家庭が優先というのであればそれが許される仕事を見つけざるを得ないと思います。仕事は責任を伴い、その責任を果たすことでまたそれまでとは違う景色が見えてくるものだと思います。そこまでできるかどうか見極める必要がありますが、これからは責任が重くても違う景色を見てみようと思う女性が増えていくことを願っています。

また、親の気持ちは子に伝わりますから、できれば「この仕事をどうしても自分自身のために継続したいと思っている」「今の仕事が本当に面白いと思うので頑張ってみたい」と考えていれば、子供はそれを感じて理解してくれると思います。

仕事と子育ての両立、あまりいいアドバイスはできませんが、頑張っていきましょう。

先日BBクラブの飲み会で教えてもらったのですが、どなたが言った言葉なのか失念しましたが「男性は自分の力が6割でも引き受けるが、女性は10割でないと引き受けない」ということがあるそうです。確かに特に若い頃は女性の方が相対的に男性よりまじめなような気がしますからそういうことはあるかもしれないなあと思いました。今の世の中、挑戦することは学生時代までは女性も男性と同じように経験してきているのですから、仕事も多少荷が重いと思っても挑戦をして、女性も大きく成長して行ければよいですね。