先週は、山手統括支部の実務修習の事務所見学の受け入れをしました。昨年に引き続き受け入れたのですが、事務所のシステムの説明などスタッフのITに強いT君に行ってもらった後、開業した頃のことなどを含め雑談をしてとても楽しかったので、今年も同じメニューにして少し事前にお話する内容を考えました。開業して既に23年が経ち、流石に開業当初のことを思い出すことも少なくなりましたが、TACの講師時代に「入門テキスト」の巻末に載せた開業体験記があるので、それを読み返すと懐かしく昨日のことのようにも感じます。やはり書き残すことは大切です。
これまで社労士になってもちろん一度たりとも社労士を辞めようと思ったことはなく、ほとんど23年間ずっと全速力で走ってきた感じがします。いつの時代も平凡な能力しかない自分の目いっぱい、というより120%フル回転させてくることにより、次の局面が来るのが面白くここまであっという間に来てしまったという感じです。
社労士の仕事は、ご相談を受けた時に与えられた条件の中でいかに的確に答えを出すかという所に特徴があるかと思います。頂く情報は隅から隅まで全てというわけにはいかないことが多く、こちらに与えられていない情報が後から分かることも多々あります。それでも少ない情報の中から本質的な問題点を見つけて的確にアドバイスするところが腕の見せ所かと思っています。
あくまで会社には会社ごとの歴史、経営方針や経営状況などがあり、様々な情報を集めて決定していくのは会社自身ということになります。社労士はあくまでその判断や決定の一助になるような法律や通達の情報提供、他社や世間の状況、落としどころなどをアドバイスしていくことになります。一般のコンサル会社と異なり、国家資格としての社会保険労務士としては法律というベースがあり、その上に成り立つというところが単なる経験やトレンド、感覚でのアドバイスとは異なると考えています。
なぜ社労士のアドバイスが有効かというと、「横ぐし」または「すじかい」としての役割ではないかと考えます。法律とひとことで言ってもその取り扱う範囲の広さは半端ではなく、50以上になります。それぞれ複雑に絡み合い、例えばパートタイマーを雇い入れる場合ひとつをとっても、労基法・パート労働法・職安法・雇用保険法・健康保険法・厚生年金法などいくつもの関係法令に注意する必要があり、さらにそのパートタイマーさんが入社したらすぐに「おめでた」が分かったなどというと今度は均等法や育介法が関係してきます。
これらの法律の関係するところについて念頭に置きながら対応しなければならないことを考えアドバイスをしていくことになります。これは日本の縦に分業している行政には絶対できないことであり、マイナンバーなどで事務手続きが簡単になっても残る必要な仕事になります。
また企業は他の企業の方法や動向を見ながら色々な施策等を講じたり、対応方法を検討したりすることが多くあります。その点1つの企業内ではなかなか情報が入らないため我々社労士にご相談があります。よく「好事例」という言葉を耳にしますが、他の企業の「好事例」をアドバイスに生かすことも可能です。社労士を通じて色々な対応策を材料することが可能になるわけです。
あくまでコンサル・ご相談業務の場合、決定権は会社にあり我々社労士にはありません。社労士がご提案した内容を採用されない場合ももちろんあります。しかし企業が何かを決定する場合に「検討しなかった」のではなく「検討した上で採用しなかった」ということが大切だと思います。判断の材料を的確に提供し、企業の決定がしっかりしたロジックに基づいたものになるよう、すじかいを入れていくことができればと思います。
マイナンバーのセミナーはとても有効でした。社労士としては今年の10月頃を目指して、色々と準備することが多くありそうです。事務所でも情報共有することにして、支部会員にもこれは早目に分かったところから提供すべきだと思い早速5月連休前後にセミナーを企画できるよう動きました。
考えるポイントは、マイナンバーをどのようなスケジュールと方法で会社が取得していくか、そのマイナンバーを社労士としてはどのようにその情報の提供を受けるか、それらの管理についてどこまでセキュリティーを含め体制づくりが必要か、実際の手続にはマイナンバーはどのように使われるか、などではないかと今のところ考えています。
本屋さんに行っても今のところ有効なものはあまり出ていないようです。少しずつでも情報を取っていってあわてないようにしたいものです。