OURSブログ

社会保険労務士としての日々の業務を行う中で、考えたこと、感じたこと、伝えたいことを綴る代表コラム。

短時間労働者 社会保険の適用拡大について

2016-03-27 23:29:57 | 社会保険

今年の10月から社会保険の適用基準が変わります。短時間労働者に対しての適用が拡大されることになりますが雇用保険と揃う部分が多くあります。

<適用拡大の5要件> (平成28年10月施行)
1 週の所定労働時間が20時間以上あること
2 賃金の月額が8.8万円(年収106万円)以上であること
3 勤務期間が1年以上見込まれること
4 学生を適用除外とすること
5 規模501人以上の企業(特定適用事業所)を強制適用対象とすること

上記適用拡大の5要件の他改正のための現状分析が載っている資料が厚生労働省から出ています。

http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000099460.pdf

P15には賃金の月額8.8万円(年収106万円)以上であることの考え方が載っています。

週給、日給、時間給を一定の計算方法により月額に換算した額が、88,000円以上である場合をいう。
ただし、次に掲げるものは除く。(省令で規定する予定)
① 臨時に支払われる賃金(結婚手当等)及び1月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与等)
② 所定時間外労働、所定休日労働及び深夜労働に対して支払われる賃金(割増賃金等)
③ 最低賃金法において算入しないことを定める賃金(精皆勤手当、通勤手当及び家族手当)

 詳細は省令で定められるということですが、賞与と時間外が除かれるというのは少し驚きです。年収106万円の考え方の中には含まれているのかと思っていました。

また、10月から適用される「常時500人を超えるもの」に該当するか否かの、特定適用事業所の適用基準については、
・容易な雇用調整による適用回避を防ぎつつ
・社会通念上、常時として取り扱うことが許容されると考えられる範囲内として
・「1年のうち6月以上、500人を超えることが見込まれる場合」
とすることとし、具体的な考え方が上記PDFには記述があります。

以下ポイントがまとめられたリーフレットが日本年金機構から出ています。

https://www.nenkin.go.jp/jigyonushi/index.files/20160202.pdf

ここ2週間くらいめちゃくちゃ仕事を片付けたので、今週末は珍しく仕事をせずのんびりしました。親孝行を兼ねて明治座にお芝居を見に行き、今日は増えてしまったバック類を整理して、お正月に整理しきれなかった遅く届いた分の年賀状を区分ごとに整理しました。

こういうこまごまとした整理は気持ちがすっきりしてとても爽快です。事務所の中のことや社労士会の統括支部長職などとにかくこまごまとしたことの処理が毎日沢山あり、それらを上手くてきぱきとこなすことができるとやはりとても爽快です。仕事においては大きな課題に取り組む力と同じくらい雑事処理能力がとても大事でだと思っています。雑事ばかりで本来の仕事に時間がとれないということを思うこともあるのですが、雑事もきちんと処理していくこと、それも本来の仕事と考えるようにしています。

「神は細部に宿る」という言葉がありますが、仕事をしていると本当にそうだなと思うことがあります。全体像をとらえるというか俯瞰的に物事を見る方がどちらかというと好きなのですが、やはり最終的な決め手は細部にあると感じることが多々あります。そういう意味でこまごまとした事務処理も気を抜かずにと思っています。


事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン

2016-03-21 23:08:56 | 労務管理

2月23日に厚生労働省から発表された「事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン」には、がんや脳卒中などの疾病を持つ労働者が、治療を行いながら職業生活と両立できるようにするための事業場の対応を取りまとめたもので、特に最後に「がん」についての留意事項が詳しく示されています。

ガイドラインには、「近年の診断技術や治療方法の進歩により、かつての『不治の病』の生存率が向上し、労働者が病気になったからと言って、すぐに離職しなければならないという状況が必ずしも当てはまらなくなってきているが、疾病に対する労働者自身の不十分な理解や、職場の理解・支援体制不足等により、離職に至ってしまう場合もみられる。」とされています。

「例えば、糖尿病患者の約8%が通院を中断しており、その理由としては「仕事(学業)のため、忙しいから」が最も多くなっている。また、連続1 か月以上の療養を必要とする社員が出た場合に「ほとんどが病気休職を申請せず退職する」「一部に病気休職を申請せず退職する者がいる」とした企業は、正社員のメンタルヘルスの不調の場合は18%、その他の身体疾患の場合は15%であり、過去3 年間で病気休職制度を新規に利用した労働者のうち、38%が復職せず退職していた。」ということです。

治療と職業生活の両立支援に際しては、就業場所の変更、労働時間の短縮等の適切な就業上の措置や治療に対する配慮を行うことが就業の前提となるるわけですが、それらを適切に行うのは患者、医療機関の関係者、事業場関係者などが情報を共有して対応していく必要があります。ガイドラインには、「両立支援にかかわる関係者間の連携の重要性」として以下のように示されています。

治療と職業生活の両立支援を行うに当たっては、労働者本人以外にも、以下の関係者が必要に応じて連携することで、労働者本人の症状や業務内容に応じた、より適切な両立支援の実施が可能となること。
①事業場の関係者(事業者、人事労務担当者、上司・同僚等、労働組合、産業医、保健師、看護師等の産業保健スタッフ等)
②医療機関関係者(医師(主治医)、看護師、医療ソーシャルワーカー等)
③地域で事業者や労働者を支援する関係機関・関係者(産業保健総合支援センター、労災病院に併設する治療就労両立支援センター、保健所(保健師)、社会保険労務士等)  (以後略:詳しくは以下URLを参照してください)

ここで「社会保険労務士」が関係者の中に記述されたことは社労士の認知度が高まっていることを示していると思われます。確かに医師や看護師等の医療関係者の認識の中に「社会保険労務士」の存在はしっかりあるようで、最近大病院や町の診療所に行って職業はと問われ「社会保険労務士です」というと一様に少し驚かれるというか「オッ」という感じで感嘆されるような気がしています。そういう状況の中でこの分野でも活躍する社労士がどんどん育っていく環境を整備していくのが自分の役割ではないかと考えています。

「事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン」

http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11201250-Roudoukijunkyoku-Roudoujoukenseisakuka/0000113625_1.pdf

この連休は完全休日の最終日以外はかなりの仕事をこなし、山手統括支部の予算を考えるのに時間を使いました。特に2日目は就業規則のリーガルチェックを終わらせるために終日PCの前にいたのですが、そういう日は夕飯の買い物がてら駅ビルの中にある本屋に行くのがものすごい楽しみなのです。高校時代から本屋に行って本を眺めてワクワクしていたため、大学受験の時にいろいろ考えた末やはり本好きなら日本文学科が良いであろうと思い受験をしたくらいです。

この週末も忙しいのはわかっていたのですが、2冊購入してしまいました。「佐藤オオキのスピード仕事術」と「マンガでよくわかる怒らない技術」の2冊で、あっさりマンガの方は昨晩読み切りました。「怒らない…」は勉強になりましたがうまく実践できるかは未知数です。「確かに~」と思うことはありました。引き続き読み始めた「・・・スピード仕事術」はかなり自分の考え方と近いものがあるような気がしています。たとえば著者は同時に400件のプロジェクトを動かしているということなのですが、ものをいうスピードは純粋な処理能力ではなく「同時処理能力」だということなのです。「いろいろなことを並行して考えたり進めたりできるような工夫や環境づくりこそ重要」と書かれてあるのですが、社労士のようにたくさんの法律や顧問先に対応していく場合の考え方に近いように感じながら読んでいます。


平成27年派遣法改正 過半数労働組合等への意見聴取

2016-03-13 23:33:01 | 労働法

最近顧問先をご訪問する日程調整をさせていただくと、昨年9月30日に施行された改正派遣法対応について相談したいことが何点かありますとご連絡いただくことが多く、派遣法の資料を持参しています。うちの事務所には、前職が大手派遣企業社員というスタッフも数名おり、派遣元の内部的な事情も詳しいであろうとできるだけセミナー等も集中的に受けてもらい知識水準を上げているので私のレベルはそこまで達していないのですが、それでも日々ご質問を受けて考えたり、調べたりしていると大分いろいろと知識がついてきたように感じています。

昨年の改正の大きなポイントのひとつは、派遣期間制限の考え方の見直しということになります。派遣期間制限については、個人単位の期間制限と事業所単位の期間制限の2つの考え方があります。詳しくは一番よくまとまって書かれている「平成27年 労働者派遣法 改正法の概要 」を見ていただければよいと思いますが、ここで取り上げてみたいのは過半数労働組合等への意見聴取手続きです。

派遣先は、事業所単位の期間制限による3年の派遣可能期間を延長しようとする場合は、その事業所の過半数労働組合又は労働者の過半数代表者(以下「過半数労働組合等」)からの意見を聞く必要があります。意見を聞いた結果、過半数労働組合等から異議がなければ、その事業所では3年を超えて継続して派遣労働者を受け入れることができるわけですが、異議があった場合はどのようになるのかという点はあまり取り上げられていないように思います。

異議があった場合には、派遣先は対応方針を説明する義務があるとされていますが、法律では3年を超えて継続して派遣を受け入れることはできないとはされていません。以下条文の概要です。

【労働者派遣法40条の2,5項(労働者派遣の役務の提供を受ける期間)、派遣法則33条の4】

派遣先は、過半数労働組合等が異議を述べたときは、事業所の派遣就業の場所ごとの業務について、派遣可能期間経過日の前日までに、過半数労働組合等に対し、以下の事項について説明しなければならない。

一   派遣可能期間の延長の理由及びその延長の期間

二   異議への対応に関する方針(労働者派遣により労働者の職業生活の全期間にわたるその能力の有効な発揮及びその雇用の安定に資すると認められる雇用慣行が損なわれるおそれがある旨の意見に限る。)

さらに指針で具体的な対応を以下のように示しています。異議に対応したのち再度の異議への対応について派遣可能期間の延長の中止も検討するように示しています。

【派遣先が講ずべき措置に関する指針第2、15】 
(3) 異議への対処
イ 派遣先は、派遣可能期間を延長することに対して過半数労働組合等から異議があった場合に、労働者派遣法第40条の2 第5 項の規定により当該意見への対応に関する方針等を説明するに当たっては、当該意見を勘案して当該延長について再検討を加えること等により、当該過半数労働組合等の意見を十分に尊重するよう努めること。

ロ 派遣先は、派遣可能期間を延長する際に過半数労働組合等から異議があった場合において、当該延長に係る期間が経過した場合にこれを更に延長しようとするに当たり、再度、過半数労働組合等から異議があったときは、当該意見を十分に尊重し、派遣可能期間の延長の中止又は延長する期間の短縮、派遣可能期間の延長に係る派遣労働者の数の削減等の対応を採ることについて検討した上で、その結論をより一層丁寧に当該過半数労働組合等に説明しなければならないこと

「平成27年 労働者派遣法 改正法の概要 」

http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11650000-Shokugyouanteikyokuhakenyukiroudoutaisakubu/0000098917.pdf

先日顧問先担当者の方に「最近健康志向のようだから」ということで「タニタ食堂」に連れて行っていただきました。ランチだったのですが日替わりメニューは確かに野菜中心で薄味ではありましたがかなりのボリューム感でおなかは満足感いっぱいでした。申し込めば、からだの測定をした後ガラス張りのブースで食事などについてのアドバイスをしてくれるのですが、とても分かりやすいアドバイスでした。

お米はどのくらい食べますかということだったので、毎日は食べないですと言うと驚かれ毎食120グラムは食べてくださいとのこと。お肉などのたんぱく質は片手の手のひらくらい、野菜は一日に両手いっぱい食べると良いということで、お米の量が減るとどうしてもお肉などのたんぱく質が増えるのでコレステロールなどが増えてしまうそうです。

ご飯好きの私はそれでうれしくなってしまい、この週末は毎日120グラム食べました。ずっと我慢していた紫蘇巻やアサリの佃煮と一緒に幸せに食べてしまいました。さてこれからどうするかは体重計をにらみながら考えます。


過重労働防止への監督強化について

2016-03-06 22:26:53 | 労務管理

平成28年度、労働基準監督官の増員が拡大されるというニュースが労働新聞に載っていました。増員数は例年のほぼ二倍の22人が予定され、全国の労働基準監督官数は3,241人になるそうです。この増員は働き過ぎ防止や過労死防止対策を重点に監督指導を強める方針となっています。増員される監督官の配置については、過重労働に関する違反が目立つ大都市圏の労働基準監督署が中心ということです。

この監督官の増員により、月100時間を超える時間外労働を行わせているすべての事業場に対する監督指導を徹底することと、過労死などによる労災請求があった事業場に対する重点的な監督指導を展開するようです。

先日、昨年に引き続き渋谷労働基準協会さんの36協定集中講座を担当させて頂いたのですが、36協定の話は3時間が足りないくらい色々な要素を含んでいます。終了後ご質問に長い列ができ、中でも特別条項の設定のご質問は多かったと思います。上記月100時間を超える時間外労働を行っているかどうかは36協定の特別条項を見て調査に入るということは多々あるかと思います。それだけではなく時間外労働抑制の効果を考えてもやはり36協定の作り方は重要だと思います。最近の書類送検の案件でも、36協定の過半数代表者の選出が不適切(会社が指名していた)など36協定の違反が多くみられます。適切な36協定を締結できるよう企業にアドバイスするのは社労士の大事な役目だと思っています。

労基法は、上記過重労働対策がある程度前提で改正されるのだと考えますが、塩崎厚生労働大臣は積み残しとなっている労基法改正案の確実な審議を求めたそうです。平成28年度も引き続き労働時間の問題は大きなテーマになりそうです。

今週末は、2泊3日で東京都社会保険労務士会の海外研修に上海に行ってきました。あちらではいま日本と行き来しながら弁護士活動をされている向井蘭弁護士と上海の弁護士で日本にも留学経験のある張弁護士の講義を受けました。3、4年前と異なり日本企業現地法人は状況が厳しいところがあるということや上海では希望退職を募ると優秀な人から辞めていくので希望退職を募ることはできないなど、やはり日本ではなかなか聞くことのできない現地ならではの情報を聞けて興味深かったです。

上海は昨年の夏に行ったばかりでしたので最終日の朝は早く起きてしまったこともありホテルの周りを一人で歩いてみました。あちこちの公園では日本のラジオ体操のように主に中年から老年にかかった女性が集まって太極拳をしていました。かなり遠くまで歩いてしまったので一人で地下鉄に乗ってホテルに戻りちょっと周りに驚かれました。

外灘  朝の公園