OURSブログ

社会保険労務士としての日々の業務を行う中で、考えたこと、感じたこと、伝えたいことを綴る代表コラム。

年金の受給資格期間の短縮について

2012-10-28 00:48:27 | 法改正

年金の受給資格期間が、税制抜本改革の施行時期にあわせて平成27年10月から現在の25年から10年になることになりました。

この改正内容の概要は以下の通りです。
① 納付した保険料に応じた給付を行い、将来の無年金者の発生を抑えていくという視点から、老齢基礎年金の受給資格期間を10年に短縮する。
②対象となる年金は、老齢基礎年金、老齢厚生年金、退職共済年、寡婦年金、老齢基礎年金に準ずる旧法老齢年金。
③現在、無年金である高齢者に対しても、改正後の受給資格期間を満たす場合には、経過措置として、施行日以降、保険料納付済期間等に応じた年金支給を行う。

無年金者の納付済みの状況としては、10年未満59%、10年以上25年未満の人の合計は40%だそうです。ということは現在無年金の人の4割に年金が支給されるということになります。数としては17万人ということでかなりの数です。

この改正は思っていたより簡単に決まってしまったような印象を受けるのですが、必ずしも良い改正には見えないのです。現在の25年の受給資格期間は確かに長いかもしれませんがこれまでも25年どころか老齢基礎年金の満額受給できる40年間コツコツと保険料を納めてきた人たちがいることを考えると、それらに比べいくら受給できる額が少ないといっても10年間の保険料納付で年金が受給できるのは安易な気がしてならないのです。

また今後年金の抜本的改革でどのようになるのかわかりませんが、10年で受給できる額はどの程度の額なのか。あまりに少なすぎては意味がないでしょうから、結局25年間苦しい中で保険料を納付してきた人たちとあまり変わらない額ということになりそうな気がしてしまうのです。

ただ1つだけ思うところがあります。昔息子の友達のお父さんがなくなり、自営業であったためお母さんが受給できるのは遺族基礎年金のみ。小学生だった息子の友達が18歳になり高校を卒業した時にその遺族基礎年金も失権してしまうということになり、その時に何か受給できるものがないかと相談されたことがありました。その亡くなったお父さんはとてもまじめな方だったので大学を卒業後年金保険料は滞納したこともなく、亡くなったのが40代半ばで、国民年金基金もずっと掛金も納付していたということでしたが、納付期間が24年数か月だったのです。お母さんが受けている遺族基礎年金が失権となっても寡婦年金を60歳から受けられれば良かったのですが、寡婦年金の受給権は「亡くなった夫の要件として原則として保険料納付済期間が25年必要」ということで65歳になるまで年金を受けることができないことになりました。その時24年と数か月という数字が非常に無念だったのを覚えています。

どこかで線はひかなければならないのですが、25年近く保険料を納付していて60歳からの寡婦年金が受けられないという状態は解消されるということで、その点は良かったと思います。この改正でもしかしたら寡婦年金が受けられるとなればと思っています。

ずいぶん気温が下がってきましたね。ここのところ仕事と支部のことでひどく慌ただしかったのですが、今週は週末2日とも家にいられましたので早速急ぎ「衣替え」と「11月9日のOURSセミナー」のレジュメ作りをしました。これで来週の週末は2日間渋谷くみん祭(渋谷区民の広場)でつぶれてもなんとかなる体制ができホッとしました。講師時代もみんなにお忙しいでしょうと言われていましたが、今もあまり状況は変わらなくなっているような気がして恥ずかしくなりますが、性分なので仕方がないですね。

渋谷くみん祭は11月3日と4日、社労士会渋谷支部としては約10年ぶりにブースを出します。多分「骨密度の計測器」を準備する予定です。しかしそれを知った支部の役員の先輩方が「それ小磯さんが測りたかったんじゃないの~?なんだか高齢者ばっかり集まりそうだな~。」と先週の支部の管外研修で大盛り上がりに盛り上がり・・・。そういえばそうかも。来年は「金魚すくい」にしようかなどと考えています(一応社労士の仕事として「健康」は関係があると思ったのですが・・・次世代育成支援の方にするか)。ぜひ骨粗鬆症の具合を計測に来てください。各士業のブースが並んでいる通りのC15のブースです。私は2日間とも終日詰めている予定です。

渋谷くみんの広場会場図 ↓

http://www.city.shibuya.tokyo.jp/shibuya/event/pdf/shibufes02.pdf
 


労務コンサルティング

2012-10-20 22:36:20 | 雑感

労働契約法、派遣法、高年齢者雇用安定法の改正についてはなかなか資料等を読み込む時間が取れなかったので、これではイケナイと来週以降数社ご訪問して説明させていただくことにしています。やはり自分が説明するということになると講義と同じで準備をしますので、頭に一番入ると思います。このほか年金も細かな改正が決まっており、久々にワクワク感じています。労働法はまず第一弾として、さらに実務的な提案を集めたら第二弾として年明けに再度ご訪問を順次していくつもりです。


事務所内はこの半年に3名の新人が入社して、少し雰囲気が変わりました。やはり新しい空気が入ってくるのは良いものです。今までは当たり前にやってきたことについて考える機会が増える感じです。ちょっとしたきっかけで自分の行っている業務について今週は考える機会が多くありました。


ここ10年以上事務所内での私の担当する業務は相談業務と講師が主なものでした。相談業務というのは顧問先企業から受ける労務管理において適法かどうかのご相談や人事管理上のアイディアを求められたり、懸案になっている案件について見解が欲しいというご要望があったりです。これらについては手続き業務に対してコンサルティング業務と区分してきました。しかし、年間2件から3件人事制度(賃金制度・評価制度)の改定の仕事を受託することもあり、こちらも当然コンサルティングということになります。そういう意味でもコンサルティングという言葉をOURSではどのように定義するのか考えなければいけないなあと思っていました。一般的に考えれば、手続アウトソーシングに対して労務コンサルティングが私の担当してきた業務という区分でよいように思います。さらに人事制度コンサルティングとセミナー・書籍がOURSの4本柱の業務と言ってもよいかと思います。OURSの手続きアウトソーシングは単に手続を代行するだけではなく、手続きに関する方法等のご相談からやはり労務管理のご相談まで受けていますから、そこにもコンサルティングの要素は十分にあります。従って当然重なり合う部分があるわけです。それでは労務コンサルテイングはどこに違いがあるのかということになります。


労務コンサルティングは、もちろん法律だけではなく行政解釈である通達をベースにアドバイスさせて頂くものが多いのですが、その中では落としどころを考えることも多々あります。行政に問い合わせをしてそれをそのまま企業に返すということであればあまり社労士の介在する意味がないと思いますので、そこにこれまでの経験したケースや、もともとの法趣旨をもとに説明させていただくこともあり、さらに他の法律との関係を考えた落としどころをご説明することもあります。人事管理上のアイディアについては、ご相談があってからしばらく温めさせて頂いて、あるときアイディアがひらめいたり考えがまとまると「こういう方法もあります」というご提案をします。


法律から外れるということでなければ、私はあまりご相談いただいた企業がご提案を取り入れて頂けなくても気になりません。当然こちらが知りえない状況などもあると思いますし。あれこれとお話ししている中で相手がピンとくる部分が少しでもあればわかりますので、そうなればすがすがしい気分で事務所に戻ることができるという感じです。そうやってだんだんと顧問先と信頼関係ができてくるというのは社労士の醍醐味だと思います。多分こちらで最良と考えたご提案をしたとしても、会社でそれを採用しないという選択をされればそれは会社が決めることなので当然、今度はその選択の結果によって発生したことについてまたどう対応するのかを考えていくという相手のペースに合わせて考えていくことに楽しさを感じます。こちらが押し付けても受け付けられないものは受け付けられないでしょうし、それは講義でも同じです。1つでも2つでもヒントになると感じでもらえれば、理解できたものがあれば講義もある程度成功と思っています。


コンサルティングということについてどういうものなのかとカバン持ちをして勉強したことは特にありませんし、本を読み漁ったということもありません。確か1,2冊今後はアウトソースではなくコンサルティングができる事務所を目指せればと考えた時にパラパラと目を通した程度です。「コンサルティングの極意」などネットで検索してみてもなんとなく書かれていることがピンとくるわけでもありません。それでも私にご相談いただけるとしたらどういう理由なのだろうと思うと、ひとことで言えば「自分の考えを持つ」ということなのではないかと思います。「その考えを聞いてみたい」と思っていただければ仕事になるのだと思いますが、少し普通とは違う考え方を持っている方が良いのかもしれないですね。あとはアイディア。これも命です。


コンサルも自己流、講義も自己流で、また元来世間の常識というのはあまり興味がない方です。また自分で納得しないとなかなか動けないけれど、一度納得すればあまり迷わない。そんなところがコンサルを仕事として楽しいと感じる元になっているような気がします。


明日は渋谷支部の管外研修で1泊の旅行に行きます。企画段階からかなり入れ込みましたが、色々と想定外続きです。鳴子温泉に泊まるのですが紅葉が素晴らしいと言われている鳴子峡は工事のため通行止めだそうです。しかしそれに匹敵できるところがあるとのことでそこを散策できそうです。だいたいのトラブルは何とかなるもんだと思います。2日目は中尊寺も行きます。楽しんでまいります。


時差出勤

2012-10-14 22:39:22 | 労務管理

時差出勤と始業・終業時刻の繰上げ繰下げ制度の違いについてご質問を受けました。今まで考えたことがなかったのですが、「時差出勤」は通勤の混雑緩和を主な目的としているが「始業・終業時刻の繰上げ繰下げ」もう少し広い範囲で考えられているのではないかと思いました。

法律上の定義はないと考えますが、平成17年 女性労働協会「働く女性の母性健康管理 母性保護に関する法律のあらまし」の中に「時差出勤」について以下の通り書かれていました。

《始業・終業時刻の繰上げ・繰下げの例》 

(育児のための時差出勤の制度)

1)始業終業の時刻に30分から1時間程度の時間差を設けること
2)フレックスタイム制度を適用すること

フレックスタイム制度を適用するのも時差出勤の中に含むということになるとはちょっと意外でした。また時差出勤の場合やはり通勤の混雑緩和を目的としているのでずらす時間については意外に短い時間の範囲で考えているわけなのですね。

厚生労働省の職員の時差出勤についても以下のように規定されていたようです。

《平成13年に出された「厚生労働省に勤務する職員の勤務時間、休暇等に関する訓令》

午前8 時3 0 分から午後4 時4 5 分まで、午前9 時から午後5 時15 分まで、午前9 時1 5 分から午後5 時3 0 分まで、午前9 時3 0 分から午後5 時4 5 分まで、ということで8時30分から9時30分までの1時間の間を4つに区切っています。

始業・終業時刻の繰上げ繰下げは、就業規則にだいたいは規定しておくものです。これは一見なにげない規定なのですが、実務では意外に使える条文です。一般的には「各日の始業・終業時刻及び休憩時間は、午前〇時から午後〇時までとする。ただし、業務の都合その他やむを得ない事情により、これらを繰り上げ、又は繰り下げることがある。 」と規定します。女性の妊娠・出産の際の保護規定について使うことが一番多いと思いますが、例えば地震などの緊急事態でで就業時刻を変更する場合も、パートタイマーの勤務時刻を変更する必要が出た時もこの規定があると重宝するのです。

大きなくくりでは時差出勤はその始業・終業時刻の繰上げ繰下げに含まれるものと考えてよいと思います。2004年あたりに全国の官公庁や企業が、7月から8月の間“サマータイム”と称する時差出勤を導入する動きがあり、主な理由としては電力需給のピークをずらして分散させたり、出勤・退勤時刻をずらして行き帰りの混雑を避けるなどの効果が期待されているということもあったようです。時差出勤とサマータイムとはちょっと違うような気がしますが。

なお、勤務時間の短縮と決定的に異なるのは、始業終業時刻の繰上げ繰下げや時差出勤は労働時間を短縮させることがないという点ですね。 

スマートフォンを持つようになってから既に3年くらい経ちますがこれまでPCにきたメールを外出先で確認できることだけで便利だなあと思っていました。アプリをダウンロードするということもなく来たわけですが、先日事務所のT君に名刺を撮影して管理が簡単にできるアプリを教えてもらいました。これは感激物でこれまでよくご連絡する顧問先の担当者の方の名刺が入った分厚い名刺入れをいつも持ち歩いて時々「ずいぶん分厚い名刺入れですね~」と驚かれていたのですが、これで少し軽量化が図れそうです。ついでにメモを撮影して整理しておけるアプリも購入しました。これは頭に入れておきたい案件や情報のポイントをコマメに撮影しておいて、移動時間などに復習するために使おうと思っています。本当に便利な世の中ですね。


2012年度経団連規制改革要望について

2012-10-08 00:36:48 | 雑感

日本経団連が9月に規制改革の要望を取りまとめました。

雇用労働分野については以下で確認いただければと思いますが、企画業務型裁量労働制の対象業務・対象労働者の拡大や手続きの簡素化など17項目についての要望があげられています。118社・団体から寄せられた589の回答を精査しまとめたものということですが、かなり実務的に細かいものがあります。このような要望については社労士が日常的にご質問等を受けているのですから、是非社労士会からも会員が企業から受けたご相談等をもとに要望を出していくべきだなと興味深く読んでみました。

http://www.keidanren.or.jp/policy/2012/065_09.pdf

その中でフレックスタイム制については、「週休2日制の場合のフレックスタイム制にかかる法定労働時間枠の変更」がありました。

1箇月単位の変形労働時間制でも1箇月の所定労働時間を総枠いっぱいに設定しているために、暦によっては、1箇月の所定労働時間がその総枠を超えてしまい、1箇月を平均しても週所定労働時間が40時間以内にならなくなる場合があります。要するに法定による総枠の計算方法は30日の月については「40時間×30日(暦日数)÷7=171.42・・」ということで概ね171時間以内に収めることになっているわけですが、6月など祭日が少ない月の場合暦によっては労働日数が22日になるケースがあり、その場合は22日×8時間=176時間。要するに法定労働時間通り働いた場合に、変形労働時間制であれば時間外が発生するが、変形労働時間制にしなければ時間外が発生しないということになってしまうわけです(他の月は祝日があり法定の計算方法による総枠の方が大きくなるのがほとんどだと思います)。その場合はどうするかというと、1箇月単位の変形労働時間制の場合その月は対象としないということになるわけですが、1年単位の場合同様なことが起こっても対象としないということはできず時間外割増を払う場合が発生するということになります。

ということは、経団連の要望にあるように、「40時間×暦日数÷7」の計算方法では対応できない部分が出てきているということです。このようなことについてのご質問があったとき、法律や通達を調べて、厚生労働省や労働局に問い合わせ確認して回答するのですが、きちんと内容を残しておき、不具合についての指摘が出せるようになれるとよいなあと思います。

講師が天職と言われることがよくありますが、自分ではいつもどんな仕事でも楽しいので講師だけが向いていると思っているわけでもありません。ただそう言われるということは、講義をしているとき楽しそうに見えるとかそういうことなのかもしれません。講義をしている時に、「ああ今受講者の方がこちらの話に集中して入り込んでくれている」と感じることがあります。だいたい実務の事例をお話ししている時が多いとは思うのですが、そういうときはとても充実感があり楽しいなあと思います。でも一番の理由はおおむねにこやかに話をしているということなのかなと思います(実務の仕事をしている時はできるだけ明るくと思っていますがそうはいきません…未熟だからですね)。これは講師の仕事の性質にもよるのではないかと思います。講師の仕事は程よい距離感が受講者との間にあり、余裕があります。また例えば社労士講座であれば自分が受験するわけではないので、見守っている立場としてはやはり余裕があります。この一歩下がってみるような「余裕」がポイントかもしれません。ちなみに余談ですが20年近く前に社労士講座の講師になってマイクが身近な存在になってからカラオケが好きになりました。講師とマイク、切っても切れないものですものね。