OURSブログ

社会保険労務士としての日々の業務を行う中で、考えたこと、感じたこと、伝えたいことを綴る代表コラム。

55歳時点進路選択制度について

2014-05-25 23:12:38 | 労務管理

 先週のブログでも書いたのですが、昨年改正された労働契約法の有期労働契約の無期転換ルールの特例等として、「定年後引き続いて雇用される有期契約労働者」が無期転換のルールの適用除外とされる予定です。

しかし60歳未満で有期契約であった場合については、定年後引き続いて雇用されているという定義に当てはまらないため、上記特例の対象とはならず無期転換の対象となるということでした。従って高年齢雇用確保措置を導入する際に認められている55歳進路選択制度により55歳の時点で有期契約となり処遇が下がりそのかわりに65歳まで働くという場合については無期転換の申し込みが5年経過後にできることになります。そこで、この場合は65歳の雇用上限をしっかり定めておく必要があるということになります。この55歳進路選択制度は高年齢者雇用安定法Q&Aに以下の通り載っています。

高年齢者雇用安定法Q&A(高年齢者雇用確保措置関係)

1.継続雇用制度の導入

Q1-6: 例えば55歳の時点で、

(1)従前と同等の労働条件で60歳定年で退職

(2)55歳以降の雇用形態を、65歳を上限とする1年更新の有期労働契約に変更し、55歳以降の労働条件を変更した上で、最大65歳まで働き続ける

 のいずれかを労働者本人の自由意思により選択するという制度を導入した場合、継続雇用制度を導入したということでよいのでしょうか。

A1-6: 高年齢者が希望すれば、65歳まで安定した雇用が確保される仕組みであれば、継続雇用制度を導入していると解釈されるので差し支えありません。
 なお、1年ごとに雇用契約を更新する形態については、高年齢者雇用安定法の趣旨にかんがみれば、65歳までは、高年齢者が希望すれば、原則として契約が更新されることが必要です。個々のケースにおいて、高年齢者雇用安定法の趣旨に合致しているか否かは、更新条件がいかなる内容であるかなど個別の事例に応じて具体的に判断されることとなります。

今回の特例があるなしにかかわらず、55歳進路選択制度については、労働契約法の無期転換の定めを考えると、55歳で65歳までの雇用を選択した場合でも60歳までは無期契約とし、60歳から65歳までの5年間を有期契約とする設計にした方が無期転換のルールを考えると自然な感じがします。

また60歳時の賃金と60歳~65歳までの賃金を比較して75%未満にならないと、雇用保険法からの高年齢雇用継続基本給付金の受給ができないため、60歳までに賃金を下げてしまうとそれ以後の賃金と変わらない状態になってしまい給付が受けられないことにもなってしまいます。

従って55歳進路選択制度については、55歳~60歳までは有期ではなくそのまま定年までの期間の定めなしとして、賃金はそれまでの7割ほどに下げ、60歳以後有期契約とし当初の賃金の5割に下げるという2段階の処遇変更の設計が無難なところかもしれません。

だいたい家でセミナーのレジュメなどを作って過ごした休日の日は夕方になると1人で気晴らしも兼ねて駅周辺にあるスーパーに色々と買い出しに行くのですが、最近気になるのが買い物に来ている老夫婦です。お母さんの後ろをお父さんがついて歩いているのですが、先日「あんたが余計なことを話しかけたから何を買うのか忘れちゃった」とお父さんがお母さんにおこられていました。また今日は薬局にやはり老夫婦がいたのですが、お母さんえばってるなあと気にしつつ買い物をしていたところ、やはり二人が出口に出たところで「あんたが〇〇したから私が転びそうになったじゃないか」とお父さんがおこられているわけです(〇〇は何をしたのかわかりませんでした)。ああ、なんか気をつけなくちゃなあと思いました。当分しばらくは老夫婦の力関係の観察は続きそうです。


労働契約法の無期転換の特例について

2014-05-18 21:00:34 | 法改正

金曜日にOURSセミナーが無事終了しました。今回も定員に達しての活況なセミナーとなり、ご参加いただきました皆様に感謝いたします。内容は就業規則の適用・総則ということで、最後の退職・解雇については完全に時間切れとなりましたが、長年就業規則にかかわってきた中でさまざまに思うことの話をさせて頂いて、楽しく講義させて頂きました。かなり端折った退職・解雇については、また懲戒解雇のあたりで再度触れることができるようにしたいと思います。

ところでOURSセミナーの準備をしていた先週、東京労働局と社労士会の意見交換会があり、その時労働契約法の特例の説明がありました。新聞報道などから特例の対象(2)については「60歳以上適用」と理解していたのですが、説明を受けて資料を見ていたところ「定年後に同一の事業主等に雇用されたケースに限られる」ということに気が付きました。翌日労働局に問い合わせをして確認しました。やはりきちんと厚生労働省のHPに載っている案を確認しなければだめですね。反省です。

1 無期転換ルールの特例について
 ○ 特例の対象となる労働者
 (1) 一定の期間内に完了する業務に従事する高収入かつ高度な専門的知識、技術または経験を有する有期契約労働者
 ※ 対象者の範囲や年収などの具体的な要件については、法案成立後改めて労働政策審議会において検討
 (2) 定年後に同一の事業主またはこの事業主と一体となって高齢者の雇用の機会を確保する事業主(高年齢者等の雇用の安定等に関する法律における「特殊関係事業主」)に引き続いて雇用される高齢者

 ○ 特例の対象となる事業主
 対象労働者に応じた適切な雇用管理の実施に関する基本的な指針を策定した上で、この指針に沿った対応を取ることができると厚生労働大臣が認定した事業主

 ○ 特例の具体的な内容 
 (1)の労働者 : 企業内の期間限定プロジェクトが完了するまでの期間は無期転換申込権が発生しないこと(上限は10年)
 (2)の労働者 : 定年後に同一事業主または特殊関係事業主に引き続いて雇用されている期間は、通算契約期間に算入しないこと

 ○ 労働契約が適切に行われるために必要な具体的な措置
 事業主は、労働契約の締結・更新時に、特例の対象となる労働者に対して無期転換申込権発生までの期間などを書面で明示する仕組みとすること

2 改正労働契約法に基づく無期転換ルールの円滑な施行について
 平成25年4月から施行された無期転換ルールについて、無期転換申込権が発生する直前の雇止めについて懸念があることを踏まえ、厚生労働行政において無期転換ルールの周知などを積極的  に進めること

http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11301000-Roudoukijunkyokuanzeneiseibu-Keikakuka/0000037312.pdf

特例(2)の説明に60歳未満で契約社員として雇入れられた場合は、無期転換の特例対象にはならない(5年後無期転換の申し込み権が発生する)ということが書かれています。要するに57歳で契約社員として雇われた場合には5年後62歳で通算5年を超えて契約を更新した場合は、無期転換の申し込み権が発生するということになるわけです。またこれは労働局に確認しましたが、例えば63歳で契約社員として雇われた場合についても、68歳で通算5年を超えて契約を更新した場合は無期転換の申込み権が発生することになります。あくまで無期転換の申込み権が発生しないのは、永年勤めた会社を60歳で定年退職後その会社またはグループ会社等特殊関係事業主に継続雇用されて65歳を超えて契約更新された場合ということになります。

またセミナーの後打上げでその話になり、人研の所長から言われて納得したのですが、継続雇用制度の設計の中で55歳の時点で処遇を下げて有期契約とし65歳までの更新を約する方法については厚生労働省も高年齢雇用確保措置として認めるとしていますが、この場合60歳の定年後同一事業主に引き続き雇われているケースとは扱わないとのこと。この方法を導入している企業は雇用上限について明確な考え方を持ち、規定していく必要があると思います。

この週末はかなりさわやかなお天気でいい気分になりました。久しぶりに週末あまり疲れが残っておらず、本を読んだり、散歩したりとリラックスすることができました。明日からはいよいよ衣替えが進みそうですね。

 


いよいよ中小企業にも時間外労働5割増し導入か

2014-05-11 21:37:11 | 労務管理

今日は、こんどの金曜日に開催のOURSセミナーの準備がまだ終わっていないので、昨日の日経新聞の記事の紹介です。それにしても時間外労働が多い会社にとっては厳しいことになりそうです。

「残業代 中小も5割増 長時間労働を抑制 政府検討」

政府は中小企業の残業代を引き上げる検討に入った。2016年4月をめどに、月60時間を超える残業には通常の50%増しの賃金を払うよう企業に義務付ける。現在の25%増しから大企業と同じ水準に引き上げて、なるべく長時間労働を減らすよう促す。やむを得ず残業する人の収入は増えるようにして、消費を押し上げる狙いもある。労働政策審議会(厚生労働相の諮問機関)で議論を進めて、15年の通常国会に労働基準法の改正案を出し、16年4月からの適用を目指す。

日本の労基法が定める労働時間は1日8時間、週40時間までが原則。企業がそれを超えて従業員を残業させる場合は、通常よりも割り増しした賃金を払う必要がある。中小企業の残業に対する割増率はいま、25%以上と決められている。1時間あたりの賃金が1000円の人なら、少なくとも1250円の残業代を受け取れる。政府は今回、月60時間を超えた残業時間に対する割増率を50%以上に引き上げて、1500円を受け取れるようにする方針だ。

政府は10年4月に施行した改正労基法で、従業員が300人を超えるような大企業に対して、60時間超の割増率を50%以上に引き上げた。当初はすべての企業で一律に引き上げる方針だったが、経営が苦しい中小企業への配慮で当面は猶予し、3年をめどに再び検討することにしていた。

中小企業庁によると、中小で働く人は3217万人と、働く人全体の70%を占める。厚労省の調べでは、中小企業の事業所のうち月60時間超の残業をしている人がいるのは4.4%。大企業の8.1%より少ないが、労務管理がずさんな企業もあり、賃金を支払わない「サービス残業」を含む実際の残業時間はもっと長いとの指摘が多い。全国の労働基準監督署は12年度にサービス残業をさせていた1277社を指導して、10万人の働き手に計105億円の残業代を払わせた。中小の割増率を引き上げると、人件費を抑えるために残業を減らす効果が期待できる。一方で、かえって残業代を払おうとしない企業が増えてしまう可能性もあるため、厚労省は労働基準監督署による監視の強化も併せて検討する。

一部には残業時間を減らしにくい業種もある。例えば運送業は荷主から荷物を受け取ったり、届け先に渡したりするまでの待ち時間が長く、労働時間が延びやすい。厚労省はこうした業界に限って、企業の残業代負担を抑えるため、助成金などの措置を検討する。残業代の引き上げは、安倍政権が目指す賃上げによる景気底上げ策の一環でもある。残業代が増えれば「消費の押し上げが期待できる。生産性が上がって残業が減れば、余った時間に消費を増やす効果もある」(ニッセイ基礎研究所の斎藤太郎経済調査室長)。

国際労働機関(ILO)の10年の調べでは、国際的に「長時間労働」とされる週49時間以上働く人の割合は、日本で23%。米国(15%)、英国(12%)、フランス(12%)、ドイツ(12%)を大幅に上回っている。(2014/5/10 2:00 情報元 日本経済新聞 電子版)

今週は土曜日はOURSセミナーのレジュメつくりに集中し、日曜はのんびりする予定でいたところ、いきなり息子が来て三浦に魚釣りに行きアジを25匹釣って持ってきました。夕方から3枚におろしたり息子がうちに来る途中買ってきた干物を干す網で干物にしたりで4時間くらい魚と格闘することに。刺身、アジフライ、塩焼、お茶漬けにして食べたところ、これが流石に美味しく、また結構楽しくもありました。お蔭で今日はまたセミナーのレジュメ作りになることに。

今回もOURSセミナーは、満員御礼で締め切らせて頂きましてありがとうございます。内容の充実した話ができるように頑張りたいと思います。


社労士試験の勉強方法について

2014-05-06 21:14:44 | 雑感

毎年5月の連休は社労士受験生にとっては大事な時期です。OURSのスタッフも受験生がいるので、連休前に勉強方法を話していて講師時代を思い出しました。

一般的には秋から勉強を開始して、おおむね連休前に各法律の講義が終了し、横断セミナーを受けて頭の中を整理し、一般常識に集中後インプットの時期からアウトプットの時期に徐々に移行していく、というあたりだと思います。

試験と言えばみんなそうなのかもしれませんが、「勉強方法がわかれば7、8割合格」ということになります。「勉強方法がわかる」というのは、こうすれば力はついていくと自分自身が実感できるようになり、この方法で本試験までやっていこうと確信めいたものができるということです。これは講師をしていた時、受講生が掴んだなというときにはわかるものでした。

この「勉強方法がわかる」というのがなかなか難しいものです。「勉強方法がわかる」というのはテストの点数が取れるというのとイコールというわけではありません。科目ごとに行われるテストの点数というのは、極端に言えば前の日に必死で暗記してしまえば1科目くらいは何とか点数が取れる状態になるものです。しかし何と言っても社労士試験は、本試験当日に沢山の法律から構成される択一350問を相手にしなければならず、暗記だけでは合格レベルまで行くのは大変なことです。暗記というのは少し時間が経てばカスミのように忘れてしまうものも多く、択一にプラスして選択問題もあることを考えるとなかなか本試験の日にすべてを暗記で頭に入れるのは大変なこと(時としてかえって時間がかかってしまうもの)です。

若くてまだまだ知識も浅く深く考えない1年目ということで暗記で高得点で合格するというケースもあります。そういうケースはそれはそれで良いと思いますが、実は何もわからずに受かってしまったということで、実際に社労士の仕事をするとなると1から勉強のやり直しということになります。それではやはりもったいない、と思います。

また社労士の試験勉強は面白くなると細かなことまで気になり出し、試験で押さえるべきポイント以外の部分が頭に浮かぶようになると、これがまた厄介なものです。これはこれで実際社労士になってから生きてくる部分は多いとは思いますが、なんといっても試験で正解が得にくくなるという方向に向かってしまうことが多々あります。これまた時間がかかってしまいもったいないと思います。実務ではその場で調べて答えることで何の問題もないものも多く、また実務では実務で試験の範囲以外の知識と経験を必要とする部分が本当にたくさんあり、試験勉強で深く追求したとしても未完成であることには変わりないわけです。

それではどのような勉強をすればよいのかということになろうかと思いますが、これはやはり「学問に王道なし」だと思います。

1つ目は、テキストを読み込むことにより試験のポイントを理解していくか又は問題をこなし不明点をテキストに戻り確認していくことで頭にしっかり入れていくことです。テキストを読み込むことによりこれができる人は、私の見るところ2割程度で、だいたい通常は問題をこなし理解していない部分を丁寧にテキストに戻り理解していくということが大切です。テキスト読み込みタイプではない人がテキストを読み込むとこれまたポイントを押さえることができずとんでもなく時間がかかってしまいます。

2つ目は、1つ目が終わったら今度は繰り返すことで身体にしみこませ定着させ、さらに繰り返し正解が得られる範囲を広げていくことです。間違える部分をひとつひとつ繰り返して行くことでポイントを理解し、どのような方向から問われたとしても正解が得られ、さらに正解が得られる部分を広げていきます。

3つ目は、最後1か月前くらいになったらひたすら繰り返すことで、全科目コンスタントに頭に入れながら、問題を解くスピードを上げ行くことです。要するに例えば「フレックス+36協定の届け出を要する」ときたら×、「障害補償一時金+変更」ときたら×(※)とすぐにキーワードを結び付け正解が出るという状態まで持っていくことができればかなり良いところまで来たと言えます。もちろん以下のポイントはすぐに頭に浮かびつつキーワードを結び付け×か〇かを判断することになります。

(※)フレックスを導入する場合に36協定を締結することは要件ではあるが届出までは必要としない。障害補償年金は自然的に障害の程度が増悪した場合に等級の改定があるが一時金の場合については(再発を除き)改定はない。

キーワードを結び付け正解を出す方法だけでは合格点には至りませんが、素早く解ける問題をたくさん増やすことにより、迷う問題に対してじっくり考える時間をたくさん取ることができることになり、結果高得点に結びつくということになるわけです。

連休前少し社労士試験のことを思い出し、懐かしくまた楽しかったので、これからスタッフとともに本試験まで思い出しながら勉強をしてみようと考えています。考えていると懐かしい沢山の受講生のその時々の顔が思い浮かびます。

本試験までまだ3か月以上あります。間違えず勉強を進めていけば、必ず力はついていくと思います。今年の試験を受験する受験生は、あせらず、覚悟を決めて心残りがないように本試験の日を迎えられるように、頑張っていきましょう。