OURSブログ

社会保険労務士としての日々の業務を行う中で、考えたこと、感じたこと、伝えたいことを綴る代表コラム。

36協定 一定期間を3カ月に設定する場合

2017-03-26 23:12:07 | 労働時間

36協定の締結は4月1日を初日として締結することが多いかと思いますが、36協定の免罰効果は届出をして初めて発生するため4月1日以前に届け出ておかないと4月以降時間外労働や休日労働をした場合に違法になってしまうことに注意が必要です。特に今年は4月1日が土曜日ですので、3月31日までに届け出を済ませておく必要があります。

ところでこのところ当然に36協定の内容の確認依頼が多いのですが、特別条項について3カ月の延長時間を定めてみたいという会社が今年はやや多めに感じています。

そもそも36協定の延長時間は、「1日についての延長時間及び1日を超える一定期間」についての延長時間を協定しなければならないこととされており、一定期間については、「1日を超え3箇月以内の期間及び1年間」とされています。ということは、1日・1カ月超3カ月以内・1年の延長時間を定める必要があるということです。この1カ月超3カ月以内の期間は、圧倒的に「1カ月45時間」と定めることが多いのです。

ところでさらにここで定めた時間数をさらに延長できるとされた特別条項を締結する会社がほとんどであるのですが、特別条項を3カ月(例えば)240時間などと定めようとするのであれば、いわゆる限度基準に基づく延長時間も3カ月120時間以内に定める必要があります。要するに限度基準に基づく延長時間の期間単位と特別条項として定める延長時間の期間の単位は揃えなければならないということです。1カ月45時間で特別条項3カ月240時間と定めることはできず3カ月120時間で特別条項240時間などと定めることになるということです。

これはどこかに通達があったと思い探したのですが、確か以下の通達の「一定期間として協定されている期間ごとに」、という部分が根拠であったと思います。

「時間外労働の限度基準」の解釈(労働基準法第36条関係)(平成11年1月29日基発45号・平成15年10月22日基発1022003号)

 (3) 一定期間についての延長時間の限度
 イ 労使当事者は、時間外労働協定において一定期間についての延長時間を定めるに当たっては、当該一定期間についての延長時間は、限度基準別表に掲げる限度時間を超えないものとしなければならないこととしたものであること。
 ハ 一定期間についての延長時間は限度時間以内の時間とすることが原則であるが、弾力措置として、限度時間以内の時間を一定期間についての延長時間の原則(以下「原則となる延長時間」という。)として定めた上で、限度時間を超えて労働時間を延長しなければならない特別の事情が生じたときに限り、一定期間として協定されている期間ごとに、労使当事者間において定める手続を経て、限度時間を超える一定の時間(以下「特別延長時間」という。)まで労働時間を延長することができる旨を協定すれば(この場合における協定を「特別条項付き協定」という。以下同じ。)、当該一定期間についての延長時間は限度時間を超える時間とすることができることとしたものであること。

 年度末で今週は皆さん忙しいのだろうと思います。私の方は今週でやっと8週連続セミナー講師の仕事が終わりますので少しホッとしています。我が家のベランダでは受講生OBのMさんから頂いたシクラメンがとてもきれいに咲いています。一鉢は4年前、もう一鉢は2年前に頂いたもので、残念ながら3年前に頂いたものだけは翌年を迎えられなかったのですが、2鉢は元気で毎年楽しんでいます。

それでは、来週から新たな年度に入りますので気分一新して頑張っていきましょう。


時間外労働の上限規制等に関する労使合意について

2017-03-20 23:28:41 | 労働法

経団連のホームページに「時間外労働の上限規制等に関する労使合意文書」が掲載されています。http://www.keidanren.or.jp/policy/2017/018.html

3月17日に働き方改革実現会議において、政府と経団連、連合は、「時間外労働の上限規制」に関して共同提案をしました。企業にとっては非常に気になる繁忙期の特例は安倍首相が示した月100時間未満で決着がつきました。

 労働基準法に指針を定める規定を設け、労働基準監督署は指針に基づき、企業等に必要な助言や指導を行うことになります。「インターバル制度=退社から翌日の出社までに一定時間の休息を設ける制度」については、法改正して努力規程になる予定です。

上限規制の内容としては以下の通りです。(「時間外労働の上限規制等に関する労使合意文書」より抜粋)

1.上限規制

時間外労働の上限規制は、月45時間、年360時間とする。ただし、一時的な業務量の増加がやむを得ない特定の場合の上限については、

  1. 年間の時間外労働は月平均60時間(年720時間)以内とする
  2. 休日労働を含んで、2ヵ月ないし6ヵ月平均は80時間(*)以内とする
  3. 休日労働を含んで、単月は100時間を基準値とする
  4. 月45時間を超える時間外労働は年半分を超えないこととする

以上を労働基準法に明記する。これらの上限規制は、罰則付きで実効性を担保する。

さらに、現行省令で定める36協定の必須記載事項として、月45時間を超えて時間外労働した者に対する健康・福祉確保措置内容を追加するとともに、特別条項付36協定を締結する際の様式等を定める指針に時間外労働の削減に向けた労使の自主的な努力規定を盛り込む。

(*)2ヵ月ないし6ヵ月平均80時間以内とは、2ヵ月、3ヵ月、4ヵ月、5ヵ月、6ヵ月のいずれにおいても月平均80時間を超えないことを意味する。

上記からすると、休日労働を含み単月で90時間の時間外労働をした場合、翌月は70時間に抑えなければならないということになり、細かくブレーキを効かせる感じでしょうか。

2ヵ月ないし6ヵ月平均の80時間と単月100時間には「休日労働時間数も含む」というところがこれまでと比較して非常に厳しく、また月45時間を超える時間外労働は年半分を超えないという点ではこれまでの特別条項の「臨時」と同じ考え方になっています。

勤務インターバル制度は職種によっては導入することが難しいという点もあり、努力規定になりましたが、上記の基準を長時間労働がある企業が守るためには、本腰を入れないといけないと感じます。

いよいよ桜ももうすぐという春めいた空気の3連休で気持ちがウキウキしてきますね。3連休はなんとか無事に最後のセミナーレジュメを仕上げ、駅ビルに入ったニトリを見に行って帰りにお花を買ってベランダに並べたり、「電通の深層」という本を買って読んだりして比較的家の近辺で過ごしました。

国際化推進特別委員会の委員になっているで少しは英語が話せたら(せめてもう少し聞き取れたら)と思っているのですがラジオは挫折したので、4月からテレビの英会話を聞くことにしたのでテレビの予約機能がついたPCを購入したり、乾燥機能が不安定な洗濯機の原因を解消したり、春に向けてかなり準備万端になってきました。

今年は桜を堪能したいですね。


裁量労働適用について

2017-03-12 22:52:21 | 労働時間

来週のセミナーは裁量労働についてがテーマであるため、今週末は裁量労働について通達を読み直したり、安西先生の著書を読んだりしてレジュメをまとめていました。専門業務型裁量労働制一つとってもあれこれと話すテーマはあり、36協定ほどではなくても労基法の条文は一つ一つそれなりに深いものだと感じます。ちなみに専門業務型裁量労働制は昭和63年4月1日に施行されているものです。

その中で本来であれば専門業務型裁量労働制の対象労働者が裁量労働の適用から外れるケースについて考えてみました。

労基法第39条の3の専門業務型裁量労働制の条文では、「使用者が、労使協定により裁量労働の要件である事項を定めた場合において、労働者を裁量労働対象業務に就かせたときは、当該労働者は、協定で定める時間労働したものとみなす。」と定められています。要するに裁量労働対象者であったとしても、みなし労働時間で働くことになるのは「裁量労働対象業務に就かせたとき」であり、裁量労働対象業務を行っていないときは「みなし労働時間制」は使えないということになるわけです。

安西先生の著書では、「裁量労働対象業務に就かせなかったとき」とは、①欠勤等によって裁量労働に従事しなかったとき、②当該裁量労働以外の業務に従事したとき(たとえば、他の一般事務労働、出張、労働組合活動、私用外出等)とあります。

これらの業務を行う場合は、本来の業務が裁量労働対象業務の労働者であっても、通常の労働者と同じ実際の時間管理がなされる必要があるということになります。その場合は、就業規則や裁量労働に係る労使協定に、「裁量労働対象業務に従事しなかった場合は、本協定に定めるみなし労働時間の適用はない。」と定めておくことが必要とされています。

先日の法改正セミナーで、改正育児介護休業法で質問の手が上がったのが、やはり裁量労働で働いている場合についてでした。裁量労働対象者の場合の半日単位の子の看護休暇・介護休暇の扱いについてはどのようにすべきか、ということでした。確かに裁量労働は例えばみなし労働時間を8時間としている場合、6時間しか働かなくても8時間とみなされるわけですから、半日単位の子の看護休暇として4時間取得したとしても、みなし労働時間制の考え方から言えば8時間働いたとみなされることになるわけです。厚生労働省のモデル育介規程によると、半日単位の子の看護休暇・介護休暇は「対象労働者の範囲を決めることができる」ようなので、当該半日単位の取得対象者から裁量労働対象者を適用除外すると労使協定に定めることはできるかと、改正前に一度労働局に問い合わせたことがあります。しかし、その部分については今のところ決まっていませんという回答でした。

実務上からいうとかどちらかの扱いになると思います。

①子の看護休暇・介護休暇の半日単位から適用除外しておく(要するに半日単位で4時間働いた日でも8時間とみなされるためわざわざ半日単位の子の看護休暇・介護休暇を取得する必要がない)

②裁量労働対象者からその場合外して、半日単位で子の看護休暇・介護休暇をとってもらう。

どちらが労働者に有利かと言えば、①の半日単位の取得から適用除外しておく方が有利のようにも思いますが、裁量労働制があまりメリハリがない場合は裁量労働から外して半日単位の子の看護休暇・介護休暇を取得できるようにしておく方が取得しやすいようにも思え、会社ごとに決めるのが良いのかなとも思います。

やはりあれこれ実務と絡めてみると裁量労働一つとってもなかなか深いものがあります。

花粉症の季節がそろそろ来たのと同時になんとなく空気が春めいてきてウキウキします。今年は顧問先の担当者の方に花粉症の薬は早めに飲んでおく方が良いですよと言われたので、10日前くらいから対策をしているためかほとんどムズムズもなく快調です。

講師時代良くお話ししたのですが「はなうがい」というものを毎日寝る前に行っていて、それをしないと気持ちが悪く、もう20年くらいは続けていると思います。そのためか比較的風邪もひきにくいように思うのですが、花粉症の時期だけは「はなうがい」ではどうにもならずやはりお薬の世話になります。今は外に出るときガードのためにスプレーするとかいろいろなものが販売されていますが、多少は効果があるのでしょうか。辛い時期を過ごしている方もいると思いますのでくれぐれもお大事に。この季節が過ぎればさらに気持ちの良い季節が待っていますので一時の辛抱と思います。


二重処分などについて

2017-03-05 22:44:08 | 労務管理

就業規則には一般的に懲戒処分の規定を定めます。懲戒処分の内容は、戒告(譴責)・減給・出勤停止・降格・懲戒解雇などの種類がありますが、これらの懲戒処分を2つ併科することはできません。一事不再理の原則があるからということで、この根拠はどこにあるのか調べる機会がありました。

憲法第39条に以下の規定があります。

「何人も、実行の時に適法であつた行為又は既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問はれない。又、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問はれない。」

刑事訴訟法上、「ある事件について判決が確定した場合、同一事件につき、再度の起訴を許さないという原則」もあります(刑事訴訟法第338条など)。

ただし、懲戒処分と合わせて始末書の提出を求めることはできるとされています。始末書は懲戒処分に至らなくても求められる場合もありますので処分ではなく、むしろ謝罪の意味がその中に含まれているものとされています。従って始末書の提出を強制することはできず、また提出しないことに対して懲戒処分をすることもできないとされています。

これは、憲法第19条「思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。」という規定を侵害することになるという点が問題になるためで、裁判例では見解は分かれているようです。

実務では「始末書」の提出がなされない場合などは「顛末書」の提出を指示することになります。「顛末書」は、事実の経過を記載する文書でありそこには謝罪の意味を込める必要がないため、これを提出しない場合は懲戒処分も可能であるとされています。

2月から3月末にかけて毎週セミナーがあり、毎週週末に順番にレジュメの準備をしてきましたが、あと残すところ2つとなりました。ここまで風邪もひかずインフルエンザにもかからず体調は極めて良好な状態でこれたことは本当に感謝としか言いようがありません。

今日は息子が小学校時代5年間お世話になった小学校の野球チームの30周年のお祝いに行ってきました。当時と同じユニフォームの子供たちから40歳の第一期生まで、総勢200人の親子が集まり盛大な会でした。

毎週土曜日と日曜日、朝早くおにぎりを握り、野球場に行き子供たちの世話をして試合を観戦していました。ちょうど息子が2年生で野球を始めた翌年に私は社労士試験に合格したのですが、考えてみると勉強は週末はしていなかったのだろうと思います。その当時のコーチだったお父さんたちや一緒に子供の世話や応援をしたお母さんたちに久しぶりに会うと、実にそれはそれでよい時代だったとしみじみ感じます。

先日あるセミナーのご質問で、女性活躍といったって保育園に入れないのではどうしようもないではないか、その点についてはどう考えるかというご質問がありました(ちなみに50代と思しき男性のご質問でした)。その時お答えしたのは、必ずしも保育園に入ることができなくても、子供に手がかからなくなってからまた働き始めることができる環境整備をすることや機会が与えられることも大事なのではないか、ということでした。その時その時の自分を取り巻く状況を受け入れて、無理せずできることを楽しんでみることも自分自身の成長につながると思います。その上で再び働き始めたとき、それ以前とは違う自分がいるはず、と経験から思います。