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社会保険労務士としての日々の業務を行う中で、考えたこと、感じたこと、伝えたいことを綴る代表コラム。

医師の働き方改革についての協力事項

2024-02-25 23:53:07 | 労働基準法

この時期毎年行っている4月に向けた法改正セミナーでも36協定集中講座でも、今年は時間外労働の上限規制の猶予事業についての猶予期間終了、すなわち建設、自動車運転、医師の3つの業務等がそれぞれ特別条項の上限規制を受けることになる点は一つのポイントになります。なかでも医師の働き方改革は2016年から様々な検討会などで検討されてきて今回だいぶ整理されたのかなと思いますが、それにしても時間外労働の上限の時間数は他とは比較にならない時間になっています。

2024年4月1日から勤務医の時間外・休日労働時間は、原則として年960時間が上限となりこれが「A水準」とされています。ただし他院と兼業する医師の労働時間は通算で1,860時間(各院では960時間)とされており「連携B水準」、地域医療の確保の必要のための「B水準」ともに1,860時間です。さらに臨床研究・専門研修医の研修のための「C1水準」と長時間修練が必要な技能の習得のための「C2水準」は同じく1,860時間です。A水準以外は医療機関が都道府県知事から地域医療の確保の必要性という理由で指定を受ける必要があります。

原則月45時間及び特別条項でも月100時間未満、年間時間外労働720時間という通常の時間外労働の上限規制から考えると1,860時間はあまりにも長い時間ですが、あくまで2024年4月から暫定措置であり2035年にはこの暫定措置を解消することを目標としています。それでもこの医師の長時間労働という難題に切込み、時間をかけて検討し、整理をしてここまでもってきたことは本当に関係者全員が大変なことだったと想像します。

時間外労働の上限規制については、様々な業種の企業のご相談に乗ってきましたが、結局1企業レベルでは解決できない構造的な問題を抱えている部分もあると思っており、その点業界挙げての取組みは参考になります。厚労省の「医師の働き方改革」.jpというサイトでは、「患者さんやご家族の皆様にご理解、ご協力していただきたいこと」として以下のことをあげています。

・診療時間内の受診にご協力をお願いします・・夜間や休日などの診療時間外に緊急性のない受診を控えて欲しいことや、患者さんは家族への説明を診療時間内に実施することの協力を求めています。また軽症の病気は身近な医療機関(診療所等)への相談を促し、大病院等に集中しないよう求めています。

・”いつもの先生”以外の医療スタッフの対応にご理解をお願いします・・医師の働き方改革の一環として、チームで医療を提供することで医師への負担のかたよりをなくすという取り組みへの理解を求めています。タスク・シフト/シェアという、医師の担っている業務のうち一部を他の医療スタッフ(看護師、薬剤師、臨床検査技師、事務職(医師事務作業補助者)などに移管(シフト)や分担(シェア)することや複数主治医制への理解も求めています。

上記については他の職種でも参考にできることと思われ、これまで当たり前と思われてきた日本人の丁寧な献身からするとクールなイメージを受けてしまうかもしれませんが、社会がその点を十分理解して受入れ協力していくことが必要なのだと思います。
https://iryou-ishi-hatarakikata.mhlw.go.jp/realize/

この週末は雨が多かったですがひと雨ごとに春に近づいているような気がしてもう少しの辛抱と思っています。この週末でILO の支援を受けて連合会で行ってきた今年度の「『ビジネスと人権』と社労士の役割研修」の上級編が終わりました。来年度はさらに多くの回数を実施しBHR推進社労士を増やす予定ということですが、今年度だけでも200人程度が誕生し連合会のHPに公表されています。上級編の研修参加までかなり時間をかけて研修受講や実際の企業へのチェックリストでのチェック、テストや課題提出等を行う必要があり、受講者はそれぞれ意識が高い方ばかりだったと思います。「ビジネスと人権」についての企業の取組みをしっかり社労士が支援していけることをアピールしてこの研修を実りあるものにしていきたいと思っています(以下のサイトでは「BHR推進社労士リスト」も載っています)。
https://www.shakaihokenroumushi.jp/organization/tabid/853/Default.aspx

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