OURSブログ

社会保険労務士としての日々の業務を行う中で、考えたこと、感じたこと、伝えたいことを綴る代表コラム。

改正育児介護休業法 パパ休暇

2010-04-27 23:51:34 | 産前産後・育児・介護休業

昨日は初めて有料でOURSセミナーを開催しました。ご参加いただきました企業の皆様、社労士の方々、昨年の上級FASTクラスの受講生、TACの講師仲間、BBクラブのOBの方々またお手伝いいただいたOURSグループ関係者等ありがとうございました。相変わらず私の講義は最後の育児・介護休業法のところで時間がなくなり走ってしまい若干悔いが残ることになりましたが、アンケートでは温かいお言葉を頂きましたので、また次のセミナーでもできるだけ参考になる話ができればと勇気が出ました。

もう少し時間をかけて説明したかったなあという心残りがありますので、その分はこれから改正育児・介護休業法のポイントをブログで取り上げていこうと思っています。

今回の改正の中でいちばんアイディアだなと感じているのが出産後8週間以内に男性が取得する育児休業=パパ休暇です。

パパ休暇には2つの役割があります。

1つめは育児休業再度の取得の要件緩和です。本来原則1回しか取得できないのがこれまでの育児休業です。2度目の育児休業を取得するには離婚等特別の事由がないとできないことになっています。しかし、改正によりパパ休暇を取得した場合については特別の事由がなくても再度の育児休業を取得できることになります。要するに出産後8週間以内(例えばママが病院から自宅に戻ってきたタイミングで)2週間取得、これがパパ休暇になります。その後8カ月くらいでママが職場復帰するときにさらに2週間取得。これまでは原則この2度目は取得できませんでしたが、短期間でも男性が育休を何度も取得できる仕組みになっており良いアイディアだと思います。(もっとも先日育休を取得した文京区長は、確か2週間くらいだった育休中急がしくて本も読めなかったとのことでしたね。)

2つ目は、パパ・ママ育休の際に、パパ休暇はここでも効果を発揮します。パパ・ママ育休は父母「ともに」育休を取得する場合、本来1年の育児休業期間を1年2か月に延ばすことができます。要件が3つありますがその中で本人の育児休業開始日が配偶者の育児休業開始日より前ではないこと(=同時かアトであること)となっているわけです。その時産後8週間以内に取得していたパパ休暇はパパにとってはなかったものとしてママより後に育児休業が開始したことにみなします。ママにとっては配偶者であるパパがパパ休暇を取得したのだからママより先に開始しているという考え方になるわけです。これは父母「ともに」育児休業を取得することがパパ・ママ育休の条件ですから配偶者が育休を確実に取った「以後」の育休取得でなければ1歳2か月までの延長はできない。という仕組みになっているのだと思います。パパ休暇が有効に機能しているのが楽しいです。(詳しくは労務行政さんから出版してもらいました「改正育児・介護休業法の基本と実務早わかり」 をご確認いただければと思います。)

また今回のセミナーテキスト「就業規則のポイントチェック」はOURS人研で購入可能です。http://www2.odn.ne.jp/ourszkn/CCP018.html

セミナーが終わったあと打ち上げを兼ねて新人歓迎会をしましたが、OURSは本当に幸せな組織になったなあと思いました。色々な場面でスタッフやパートナーが意見を自由に出し合い、セミナーや大事な局面でBBのOBたちがバックアップしてくれるということで本当に人に恵まれた組織になりました。これからも活発に情報交換をしていろいろなことをOURSが核になり企業や社会に発信していければと思っています。

 

 


労災保険率について

2010-04-19 01:11:59 | 労働保険

労災保険率の変更を申請するために、今週顧問先企業の担当者の方と監督署に行く予定にしています。

労災保険の保険料率は労災保険率適用事業細目表をもとに決められます。この労災保険率適用事業細目表を見ながら労災保険率を決定するのは、これまでの私の経験から行くと結構大雑把であったと思っています。新しく立ち上げた会社の労働保険の保険関係成立届を提出に労働基準監督署に行った時に、どのような事業が主たるものかを説明して決めていくのですが、細目表に載っていない場合も多くあり、その場合でも「その他の各種事業」であれば保険料率は同じであるためそれほど神経質に決めてこなかったという感じがありました。

ただ、平成18年の改正により労災保険率の「その他の各種事業」は4つに区分されました。①通信業、放送業、新聞業又は出版業、②卸売業・小売業、飲食店又は宿泊業③金融業、保険業又は不動産業、④その他の各種事業と区分され当時の概算確定保険料申告書で企業が自己申告又は修正できるようになっていたと思います。その際、それまで同じ率でくくられていたもののうち「卸売・小売等」だけ若干高い率になりました。現在も同じようにその他の各種事業のこの4つのうち「卸売・小売等」だけ4/1000であり、それ以外の3つは3/1000になっています。

4月1日の労働基準法の改正により、時間外労働が60時間を超えた場合に割増賃金を5割以上とすることになりました。しかしこの適用は中小企業には猶予されます。猶予される中小企業の概念は日本標準産業分類よります。事業の判断基準が同じ労働法規でありながら異なるものを使うことはおかしなことだと思うので統一して欲しいとは思うのですが、そう言っても無力なもので変わるわけもなく、ただ企業にとって業種の整合性をこの機会にとる必要があると考えてセミナーなどでも何度かお話ししてきました。

どう考えても情報産業であるのに、当初の労災保険の新規適用の際に登記簿謄本にソフトの販売とあったためだと思いますが卸売小売等に分類されており、ここまで卸売小売等の労災保険率を適用してきたというケースがあり、相談業務だけを委託されていたために、こちらもそれについて深く考えず特にアドバイスもしていませんでした。

しかし労災保険率は本来その他の各種事業としての率より高いものが適用になっていますし、労災保険率の適用と同じ卸売・小売ということであれば130人の企業ですから、中小企業に該当せず労基法の改正で5割の割増賃金の適用を猶予されないことになります。

そこ今回の変更申請になったわけです。労働基準監督署には、主たる売り上げや従業員の業務の配置等が分かるもの(必要資料は各労働基準監督署に確認してください)などを持参していくことになります。

雇用保険率も改正で上がりますし、適正な労災保険率にしておくことは企業にとって大切なことだと思います。

風邪をひいてからスポーツクラブに行くのを少しお休みしていましたが、また今週から復帰しようと思っています。マシンを少ししてプールで50メートル歩いて、50メートル泳いでサウナに少し入って(熱いのがあまり得意でないので)来るのですが、なかなか気持ちがいいです。朝など急いで駅まで走っていくときも身が軽くなった気がします。また今週もがんばりましょう。


退職後の国民健康保険料

2010-04-11 23:17:41 | 社会保険

社労士の仕事内容は多岐にわたります。OURSの通常の業務は人事労務管理の相談やご質問に対応するコンサルティング業務と労働保険・社会保険の手続きを行うアウトソース業務です。一応部門を分けていますがアウトソース業務でもただ手続きを行うだけではなく、顧問先から日々たくさんのご質問や相談を受けています。

よくあるご質問に、退職後医療保険はサラリーマン時代から引き続く健康保険の任意継続と地域の健康保険制度である国民健康保険のどちらの方が良いのかというものがあります。

4月1日施行の改正で、国民健康保険の保険料は雇用保険法の特定受給資格者と特定理由離職者(倒産等や正当な理由による自己都合による退職)に該当する場合は、算定基礎額である前年の給与所得を30%で算定して保険料を決定することになりました。

健康保険と国民健康保険は以前は治療などを受けた際の自己負担額が異なっており(健康保険1割に対して国民健康保険が3割等)、健康保険が有利でした。しかし2002年の医療制度改革で健康保険と国民健康保険ともに同じ3割の負担になりました。

従って今は保険料負担だけが異なるということで、退職後2年間任意継続被保険者となり健康保険に入り続けたときの保険料と国民健康保険の保険料のどちらが低額かを比較して加入制度を決める場合が多いのです。

これまで退職直前の給与が高い場合は、保険集団の標準報酬月額の平均額 を保険料の算定基礎の上限とする健康保険の任意継続被保険者のほうが(会社負担分も負担するとしても)前年の給与所得をそのまま算定基礎とする国民健康保険に加入するよりは保険料が低くなるというのが一般的な考え方でしたが、今後は国民健康保険のほうが低くなることが多くなりそうです。やむを得ず退職した場合は、ケースによって慎重にアドバイスすることが必要になりました。

このような細かいしかも制度横断的な法改正について的確にこたえることができるのは社会保険労務士しかいません。社会保険労務士業務をしているとアウトソースだけではなくコンサルティングでも社労士しかできない仕事というものがあるのだと痛感することがあります。これらのベースは社労士試験で勉強したことばかりです。確かに社労士試験では書類の書き方や添付書類などは出題も少なく勉強もしません。開業するとその点に戸惑うこともありますが、勉強したことは決して無駄にはなりません。書類の書き方などよりもずっと大切なそれらの根底にある法律を身につけることが複雑に絡み合う各法律の適用に関するアドバイスのもとになるからです。これは体系的に各法律を勉強した社労士でなければ無理なことです。実務経験だけで対応できるような生易しいものではありません。試験の範囲が広いことも勉強しているときは大変ですが、それだけ業務範囲が広いということです。

先日電車の中で社労士の資格をお父さんが持って定年後も再就職をしたという話を聞いて友人の方が「社労士なんてすごいね~」というのを耳をダンボにして聞きました。特定社労士もこれからどんどん増えて、勉強をしっかりしていけば社会保険労務士は今よりもっと価値のある資格になると思います。活躍の場は思っている以上に多いと思います。これからが楽しみです。


年俸制と割増賃金

2010-04-05 00:21:36 | 雑感

今日は母校の桜祭に行ってきました。昨年まで日曜日に講義があり行くことができなかったので是非行ってみたいと思っていました。気温はかなり低かったですが懐かしのグランドの周りの桜は満開でした(真剣に勉強をしたのは社労士の受験からで大学のころは体育会テニス部でグランドにばかり行っていました)。

トラスコンガーデンというしゃれた名前の体育館を改造したと思われる(・・記憶が定かではない)喫茶部で先輩・後輩や顧問の先生にもお会いできて楽しい時間を過ごすことができました。

同期の友人達も子供が就職しその話を聞いていたら、「年俸制の場合は残業代は出ないのよね?」という言葉にいきなり職業意識を取り戻し、H12.3.8基収第78号の通達の話をしました。

この通達では割増賃金を含めた年俸について、一般的には、年俸に時間外労働等の割増賃金が含まれていることが労働契約の内容であることが明らかであって、割増賃金相当部分と通常の労働時間に対応する賃金部分とに区別することができ、かつ、割増賃金相当部分が法定の割増賃金額以上支払われている場合は労働基準法第37条に違反しないと解される。

要するに割増賃金が年俸に含まれていることが労働契約上明らかであり、割増賃金相当部分と通常部分の賃金を区別することができれば、年俸制に割増賃金が含まれていることが認められるということであり、年俸なら残業代は出ないということではないわけです。

「割増賃金が年俸に含まれていることが明らか」というには契約書や給与明細等にきちんと割増賃金の額が計算方法から分かるように記載されている必要があります。

ただ、この通達の元になった事案は、年俸額に割増賃金部分が含まれていることが口頭で説明されているだけではあるが、年俸額決定の際には労使当事者間で交渉を積み重ねていることから労使双方認識しており、また年俸額が900万円~1000万円ということで、労働基準法第37条(割増賃金の支払い)違反とは取り扱わないが、賃金の決定・計算の方法等が契約時に明示されておらず労働基準法第15条第1項違反として取り扱うこととするとされています。

第37条違反であれば6箇月以下の懲役又は30万円以下の罰金、第15条1項違反であれば30万円以下の罰金のみであり未払い残業も発生しないということになるわけです。

通達もよく読んでみると深いですね。

週末風邪をひきました。今日はみんなに声をかけたので頑張って出かけて少し元気になりましたけど、早く春の暖かい日が来ないかな~と思っています。