OURSブログ

社会保険労務士としての日々の業務を行う中で、考えたこと、感じたこと、伝えたいことを綴る代表コラム。

小学校就学前までの短時間勤務について

2024-03-24 22:40:48 | 労働法

2025年4月改正予定の育児介護休業法改正法案のうち「子の年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置の拡充」の中に、3歳以上の小学校就学前の子を養育する労働者に関し、事業主が職場のニーズを把握した上で、柔軟な働き方を実現するための措置を講じ(※)、労働者が選択して利用できるようにすることを義務付ける、という内容があります。
(※)上記講ずる措置とは以下を言います
➀始業時刻等の変更、②テレワーク、③短時間勤務、④新たな休暇の付与、⑤その他働きながら子を養育しやすくするための措置のうち事業主が2つを選択

なお、現状の育介法第24条では、小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者等に関する措置として、a.育児休業に関する制度(育児休業に「準ずる」休業等)、b.所定外労働の制限、c.短時間勤務、d.始業時刻変更等の措置、が「努力義務」として定められています。内容を比較すると「テレワーク」「新たな休暇の付与」が目新しいところです。

法案が通れば、来年4月から上記①~⑤の措置の中で会社は2つの措置を選択し、社員はそのうちの一つを選ぶことになるのですが、おそらく③の短時間勤務はかなりの企業が選択するのではないかと思います。実際に子育てをしながら働いている社員にとっても、短時間勤務は歓迎なのかもしれません。

ここで若干私が危惧するのは「小学校就学前まで」という措置終了のタイミングです。子が小学校に入学するというイベントは、親子共に大きな生活の変化をもたらします子を取り巻く環境や行動パターンが変化する時期であること、親として子を小学校に入学させるとやらねばならないことを理解していないことから落ち着くまでは様々見通しがつきにくく、そこまで短時間勤務で働いていた社員が、子供が小学校に入学したと同時にフルタイムに切替えるということはかなり不安やストレスがあるのではないかと思うのです。むしろこれまで預けてきた保育園等にいる間(例えば5歳)がスムーズなフルタイムへの移行を可能にするのではないかと考えます。また、小学校入学時を避け3年生まで短時間勤務を続けられる措置も一つの方法であるかもしれません。ただこちらについては、約10年間短時間勤務を継続することになるので、完全に短時間勤務のペースが出来上がってしまいそうな気がします。様々な統計を見たとき、女性はパートタイマーの働き方が圧倒的に多いのですが、できればフルタイムで子育てだけでなく仕事と仕事以外の人生を楽しんでもらいたいと思うので、短時間勤務からフルタイムへの移行は上手くタイミングをとらえて、スムーズであって欲しいと思います。

子どもが小学校3年生の時に社労士試験を受験してそれ以来仕事と家庭をはじめとしてプライベートな生活と両立してきましたが、ポイントとしては「時間を買う」ことについて惜しまないということではなかったかと思います。時間を買うことにお金を使ってほとんど残らないという時期もあるかもしれませんが、その時期の経験が将来大きく花を咲かせるかもしれませんので、今はそれでよいのではないかと割切ることも必要だったと思います。といっても今も晩御飯をどうするか綱渡りの毎日ではあるのですが・・・。


育休延長、給付金の審査を厳しく

2024-03-17 21:23:06 | 労働保険

3月14日の日経新聞に「保育所申請、落選狙いに歯止め、申告書の審査厳しく」との見出しで2025年4月から育児休業給付金の延長可否を、自治体の証明する「入所保留通知書」だけではなく、ハローワークが判断することとする記事が載りました。3月14日の労政審職業安定分科会雇用保険部会の資料が出ており、省令案要綱と概要を見ることができます。

雇用保険法施行規則の改正案は抜粋すると「育児休業の申出に係る子について、保育所等における保育の利用を希望し、申込みを行っているが、当面その実施が行われない場合については、速やかな職場復帰を図るために保育所等における保育の利用を希望しているものであると公共職業安定所長が認める場合に限ることとすること。」となっています。

これは、原則1年間の育児休業(給付)の期間を延ばすために、落選狙いであえて人気のある入所の難しい保育施設に申し込むなどの事例が相次ぎ、また自治体が親の希望を踏まえて落ちやすい施設を紹介することも少なくなかったということから、育児休業給付金の申請に必要な提出書類に保育所入所についての詳細な内容を記入してもらい、不信な申請があれば親の復職意思を確認し給付するかどうかをハローワークが判断をするということです。

本人が記載する申告書には以下の内容が盛り込まれる予定です。
➀市区町村に保育所の利用申し込みを行なったか
②利用申込みを行った日
③利用開始希望日
④利用保留の有効期限
⑤利用内定辞退をしたか
⑥利用申し込みを行った中で自宅または勤務先から最も近隣の施設名、通所方法と通所時間(片道)
⑥-2 通所時間(片道)が30分以上の場合次のいずれか
  ア.申し込んだ保育所等が通勤経路の途中
  イ.他に利用できる保育所等が存在しない
      a.30分未満で通える保育所等存在しない
      b.30分未満で通える保育所等では職場復帰後の勤務時間・勤務日に対応できない
      c.子に特別の配慮が必要であり、30分未満の保育所等では対応ができない
  ウ.その他の理由(理由欄に記載)

1歳の育児休業を延長するのにそこまで作戦的な必要があるのであれば、むしろ2歳までの育児休業期間の中で自身で育児休業期間を選択してもらう方が、会社としても復職の予定が立って有難いように思うのですが、やはりそこまで給付を実施すると財源的に厳しいでしょうか。

仕事は相変わらずあれこれ忙しく、1週間の開始時にはすでにのその週は予定が入らない状況が続いています。ただ、今年は年明けからここまで体調も崩さずセミナーの集中期も声を枯らさず来れたので良かったと思っています。

まだ桜は蕾が固いようですがあと1週間から2週間の辛抱かなと思い、それまでには色々と片付けてお花見をゆっくりしたいと思っています。また、春から少し新しい仕事の準備に取組む予定です。


日本で女性の活躍を進めるヒント

2024-03-11 19:47:33 | 雑感

日本の女性活躍は、世界経済フォーラムが算出しているジェンダーギャップ指数では146ヵ国中125位と先進国としては最低水準だということです。

女性活躍がなかなか進まないのは、よく言われるのは家事負担が女性に偏りがちという点です。確かにこれまではそうだったかもしれませんが、10年前くらいからは周りを見ると男子は家事負担についても子育てについてもかなり頑張っているようには感じており、これは一部の事例でしょうか。そうだとしても現在50代以上の男性と比較すると働き方も異なると思いますし、ずいぶんと家事、育児へのかかわり方は大きく変化しているように感じます。おそらく50代以上の男性からみるとびっくりするぐらい、今の子育て中の世代は夫婦で生活にかかわる作業を分担し協力しあっているように見えます。これは海外の状況では比較的普通なのかもしれないとイメージしています。今の子育て世代が社会で決定権のある世代となる10年15年後は女性の活躍についてもだいぶ変わるのかもしれません。

女性の活躍が進まないのは、私の考えでは、日本人の控え目を良しとする気質や、教育、社会に出てからの会議への参加、発言などの機会の少なさがかなり大きな要因となっているのではないかと感じています。ただそれ以上に一言でいうとやはり「男性社会」という壁のようなものは感じることは多々あります。外部の会議などでも男性の中にたった一人の女性という状況になることは多く、それは専門職として比較的入りやすいということがあるかと思いますが、男性社会の常識とかルールなどが暗黙の了解の中で守られているような気がします。多様性が注目されてからずいぶんと時間が経ちますが、今のところ動かし難い、大きな壁のようなものを感じることが多いです。女性がその壁を超えて会議に参加するなどということについては男性側からしても女性側からしてもなかなか壊しにくいもののように思えます。

3月8日の日経新聞の「国際女性デー」の記事で丸井グループの青井社長のインタビュー記事はとても印象的でした。こんなトップであれば組織の多様性が実現し、閉塞感が打開されるのだろうなと思いました。というのも長い低迷期に同質の男性ばかりが集まり、議論を進めると予定調和的な議論になり、時代に合わせて変わることができないことに思い至り、女性や若手をメンバーに入れる構成の会議でないと、会議をしないで帰ることにしたというのです。残業の削減に仕事の見える化やITを活用し、シフトを細かく刻み、対話の重視など様々な施策を進めたそうです。また男性の抱える重荷を軽くするという意味で女性の活躍により男性が稼がなければという負担感を減らし幸福度を高めるという考えも示されており、女性の活躍のヒントが沢山語られていました。トップの考えと意思が組織を時代に合わせて変えていくには必要なのだということをつくづく感じさせる記事です。

 

週末を使って旅行に行ってきました。一人旅の女性もいて少し話をしてみるとそれぞれ自分の楽しみ方や考え方を持っていてとても教えられることが多いです。女性の好奇心や企画力、情報交換のコミュニケーション力を生かさない手はないと思うのです。同質性の中で安心するのではなく時には議論が過ぎるくらいのことがあったとしても、多様性を楽しむくらいの企業や組織が増えてくると、日本社会も企業、働く人ももっと元気になり皆が幸せを感じることができるのではないかと思います。


事業を継続するということについて

2024-03-04 00:35:26 | 開業記

今年の4月で社労士を開業してはや32年目になります。開業当初自分の中で事業を開始するといった意識はなく、ただ開業社労士という専門士業としてやっていくことだけを考えていましたが、様々なご縁や出会いを頂いて事務所の規模が大きくなり、今は社労士であるとともに社労士法人という事業を経営していくという感覚を日々持っています。社労士法人というと一般の企業とは異なる部分もあると思いますが、色々な企業からのご相談などを受けていると、人を雇い入れ働いてもらうということについては大差なく、事務所での出来事や導入した施策、事務所運営で自分が考えることがアドバイスに生きていることは間違いないところです。

事務所の規模がある程度大きくなるにつれて一番感じることは、色々なタイプの人間が集まることで組織としての強みが倍々で増していくということです。新たなことをイメージし、実行に持って行くことについては自分の得意とするところだと思っており、また法律順守と共にソリューションのためのアイディアが自分の社労士業務の柱だと思っています。ただこのアイディアを実現して継続的に運用していくには持久力が必要で、決められたことを飽きずに運用していくタイプの人間がいないと形になっていかないことも実感しています。顧問先のご相談に乗っている中で例えば「残業許可制を導入しましょう」とこちらは簡単にご提案したところ、「許可を受けているかどうかをチェックする機能がない(人がいない)ので形だけになってしまうので止めておきます。」と言われてハッとしたことがあります。ある程度はシステムやIT化で解決できる問題はありますが、そこには許可をし、許可の有無を確認し、さらに許可を受けていないことが続けばどうするか対応する、という必要が出てきます。人により得意分野が異なることにより、これらは継続的に運用されて、事業がつつがなく回っていくと感じます。

もう一つ重要だと考えるのは事務所の理念・目指すところです。こちらも特に高い目標を掲げて開業をスタートしたわけではなかったのですが、これは私の昔から自然に考えていることが事務所の経営理念になっていると感じます。まずは「志を高く持つ」こと。社労士という仕事に誇りを持てるよう、しっかり勉強して真の実力をつけたいと常に思っています。日々アンテナを高く情報をキャッチし、分析し自分の思考に落とし込むことは楽しく、顧問先企業のご相談を考えることも非常に勉強になります。こういうことができる社労士という仕事につけて本当に良かったと思っており、この姿勢は社労士の独占業務である手続でも、事務所で積極的に導入しているIT化においても、また事務所の特徴であるコンサル業務でも同じことで、事務所のスタッフに全員に持ってもらいたい事務所の理念です。また、「惜しみなく与える」という点も理念といえると思います。与えるというとおこがましいのですが、自分の持っている情報やスキルは同業者であってもまた時には報酬のいかんにかかわらず提供するということです。結局のところ個人の力では限界があり、業界全体が実力をつけることが必要だと常に思うことと、またこの考え方により時を経て大きな恩恵が返ってくると思うのです。

特に事務所のスタッフが10人を超える頃になった15年前あたりから試行錯誤しながら社労士法人という事業を30年超継続してこれたという、ここまでの歴史のようなものもとても大切に感じています。最近は、この30年間、先を見て、方向性をイメージし、様々な選択をしてきたことを思うと、事業継続の面白さを感じています。

今の事務所がここまでくるにあたり一番重要だったのは人に恵まれたことに尽きると思います。これについては「感謝」の一言です!