昨年12月26日に労働政策審議会は「有期労働契約の在り方について」厚生労働大臣に建議を行いました。
各企業からいただくご相談の中では、契約社員についての契約更新等についてとてもご質問が多くあります。この建議の内容により次期通常国会で審議が進められますので、どのような内容であったか把握しておくことは大切かと思います。
この有期労働契約の在り方についての議論は、途中すべての項目で労使が対立しているということでどこが落としどころになるのか見えない状況でした。今後もかなりもめるのではないかと思いますが、まずはこの建議で論点のどこが残り(〇)、どこは見送られた(×)のかを簡単に整理しておこうと思います。
①有期労働契約の締結への対応について → ×合理的な理由がない場合(例外事由に該当しない場合)には有期労働契約を締結できない仕組みとすることについては、措置を講ずべきとの結論に至らず。
②有期労働契約の長期にわたる反復・継続への対応について → 〇同一の労働者と使用者との間で5年の利用可能期間を超えて有期労働契約が反復更新された場合には、労働者の申出により、期間の定めのない労働契約に転嫁させる仕組みは導入することが適当。
なおクーリング期間は6か月が適当とされ、利用期間満了前の雇い止めが懸念されるため期間の定めのない労働契約に転嫁させる仕組みについて必要な措置を講ずることが適当
③雇止めの法理の法定化 → 〇その内容を制定法化し、明確化を図ることが適当。
④期間の定めを理由とする不合理な処遇の解消 → 〇有期労働契約における労働条件が期間の定めを理由とする不合理なものと認められるものであってはならないこととすることが適当。
⑤契約更新の判断基準 → 〇労基法15条1項の規定により明示することが適当。
※労基法15条1項とは、「賃金および労働時間に関する事項等については書面明示(昇給に関する事項を除く)により明示しなけれがならない。(略)」という規定です。「更新の判断基準は」現在は雇止め基準として告示されているのみで法定されているわけではありません。
⑥1回の契約期間の上限等 → △引き続き検討することが適当。
⑦雇止め予告の義務化 → ×措置を講ずべきとの結論に至らず。
⑧契約締結時の有期労働契約を締結する理由の明示 →×措置を講ずべきとの結論に至らず。
上記から見てもわかるようにいわゆる「入口規制」は残らず「出口規制」を中心にした内容になりました。特に②の部分の今後のゆくえが気になるところです。詳しくは以下をご確認ください。
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001z0zl-att/2r9852000001z112.pdf
派遣法は昨年末に改正法案が3党合意により修正され、その中で「登録派遣の禁止」は削除されました。登録派遣の禁止を見越して今年の春には派遣から直接雇用の契約社員に切り替える企業もあり、有期労働契約の上記の改正が行われれば企業は本当に難しい対応を迫られることになります。
派遣法は元々野党時代の民主党案でしたが、今回の修正のことを考えると、改正の肝の部分が削除されて当初の改正の目的と違ってきてしまっているようで、成立しても意味があるのかなと思います。また、東日本大震災の対応に当たった政府の10会議の議事録が作成されていなかったということにはびっくりしました。意図的なのかミスなのかは分かりませんが、これは結構重要なことではないかと考えます。委員会なども民主党政権になってから開かれていないものが数多くあるようですし、これほどまでに未熟な政権では日本が壊れそうな気がして心配でなりません。