OURSブログ

社会保険労務士としての日々の業務を行う中で、考えたこと、感じたこと、伝えたいことを綴る代表コラム。

有期労働契約ゆくえ

2012-01-29 23:04:10 | 労務管理

昨年12月26日に労働政策審議会は「有期労働契約の在り方について」厚生労働大臣に建議を行いました。

各企業からいただくご相談の中では、契約社員についての契約更新等についてとてもご質問が多くあります。この建議の内容により次期通常国会で審議が進められますので、どのような内容であったか把握しておくことは大切かと思います。

この有期労働契約の在り方についての議論は、途中すべての項目で労使が対立しているということでどこが落としどころになるのか見えない状況でした。今後もかなりもめるのではないかと思いますが、まずはこの建議で論点のどこが残り(〇)、どこは見送られた(×)のかを簡単に整理しておこうと思います。

有期労働契約の締結への対応について → ×合理的な理由がない場合(例外事由に該当しない場合)には有期労働契約を締結できない仕組みとすることについては、措置を講ずべきとの結論に至らず

有期労働契約の長期にわたる反復・継続への対応について → 〇同一の労働者と使用者との間で5年の利用可能期間を超えて有期労働契約が反復更新された場合には、労働者の申出により、期間の定めのない労働契約に転嫁させる仕組みは導入することが適当

 なおクーリング期間は6か月が適当とされ、利用期間満了前の雇い止めが懸念されるため期間の定めのない労働契約に転嫁させる仕組みについて必要な措置を講ずることが適当

雇止めの法理の法定化 → 〇その内容を制定法化し、明確化を図ることが適当

期間の定めを理由とする不合理な処遇の解消 → 〇有期労働契約における労働条件が期間の定めを理由とする不合理なものと認められるものであってはならないこととすることが適当

契約更新の判断基準 → 〇労基法15条1項の規定により明示することが適当

※労基法15条1項とは、「賃金および労働時間に関する事項等については書面明示(昇給に関する事項を除く)により明示しなけれがならない。(略)」という規定です。「更新の判断基準は」現在は雇止め基準として告示されているのみで法定されているわけではありません。

1回の契約期間の上限等 → △引き続き検討することが適当

雇止め予告の義務化 → ×措置を講ずべきとの結論に至らず

契約締結時の有期労働契約を締結する理由の明示 →×措置を講ずべきとの結論に至らず

上記から見てもわかるようにいわゆる「入口規制」は残らず「出口規制」を中心にした内容になりました。特に②の部分の今後のゆくえが気になるところです。詳しくは以下をご確認ください。

http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001z0zl-att/2r9852000001z112.pdf

派遣法は昨年末に改正法案が3党合意により修正され、その中で「登録派遣の禁止」は削除されました。登録派遣の禁止を見越して今年の春には派遣から直接雇用の契約社員に切り替える企業もあり、有期労働契約の上記の改正が行われれば企業は本当に難しい対応を迫られることになります。

 派遣法は元々野党時代の民主党案でしたが、今回の修正のことを考えると、改正の肝の部分が削除されて当初の改正の目的と違ってきてしまっているようで、成立しても意味があるのかなと思います。また、東日本大震災の対応に当たった政府の10会議の議事録が作成されていなかったということにはびっくりしました。意図的なのかミスなのかは分かりませんが、これは結構重要なことではないかと考えます。委員会なども民主党政権になってから開かれていないものが数多くあるようですし、これほどまでに未熟な政権では日本が壊れそうな気がして心配でなりません。


年金関係 平成25年問題

2012-01-22 22:32:37 | 雑感

昨日はBBクラブが20周年に向けて歩み出した初めての勉強会でした。10年続いたこれまでと基本的には同様に法改正講義と実務こぼれ話を行いつつ、少し違いを出そうと幹事会で検討し、今後は毎回勉強する注目のテーマを選択してそれに合った内部又は外部の講師に講義をお願いして行こうということになりました。

今回は「今後の年金制度の動向」ということで、特定社会保険労務士の東海林正昭先生にお願いして、とても興味深く、勉強になる講義をしていただきました。

東海林先生は様々な書籍や新聞等に執筆されていて有名な先生ですが、もう10年近く前に、女性税理士会の60周年記念のご相談コーナーのお手伝いを一緒にさせて頂いたご縁でお話しするようになりました。よく年金関係の審議会等の傍聴に行かれており、書かれている内容もいつも面白く読ませて頂いていたので一度講義を聴いてみたいと思っていました。講義後の会員の評判もとてもとても良かったです。

講義の内容は「社会保障と・税の一体改革素案」の年金の部分について項目ごとに進めて頂きどれもこれも興味深い内容だったのですが、その中で「25年問題」の部分がありました。要するに、平成25年4月以降60歳になる昭和28年4月2日から昭和30年4月1日生まれの男性について、報酬比例部分の支給開始年齢が61歳になるという問題です。年が明けたら目の前に迫っているという感じになってきたのですね。

報酬比例部分の支給開始年齢の引き上げは平成12年の改正でした。まだまだ先だと思っていたのにもう目の前に迫っているのだと実感しました。報酬比例部分が61歳開始ということは、60歳になっても特別支給の老齢厚生年金を受給することはできないため、60歳定年で退職した場合雇用保険の基本手当を受給し終えるとその後61歳到達までは年金もなく収入が途絶えるという状態になるということです。

継続雇用の場合は、直近1年間の賞与額がたいていの場合かなりの額になるため、在職老齢年金の仕組みにより年金がかなり減額されることが多く、前年の賞与の支給時期により収入額の計算が何パターンにもなってしまいました。今回のこぼれ話はまさにその総報酬月額相当額のことを取り上げたのです。それもあと1年のことなのですね。年金自体が支給されない期間の収入額は、賃金と高年齢雇用継続給付の合計額といういたってシンプルな計算になるわけですから。

昨日は勉強会の内容も充実しており、また150人以上の方が集まりとても楽しかったですし、2次会の懇親会もとても良い雰囲気で活気があふれていたと思います。その上3次会ももちろん行ったのですが、それがとても盛り上がってなんだか久しぶりに笑い転げてしまう1日でした。BBクラブは私にとっても戻る家なのかもしれません。感謝!


開業記23 事務所の法人化について

2012-01-15 23:35:17 | 開業記

開業記23 事務所の法人化について

平成5年に小磯社会保険労務士事務所を富ヶ谷の自宅で立ち上げてから今年で20年目です。個人事務所として1人で始めた事務所ですが、平成21年1月に法人化しました。社会保険労務士法人のメリットは何かということをそれほど考えていたわけでもなかったのですが、やはり法人化の効果は大きかったです。

法人化をしようと考えた一番の理由は事業の継続性でした。小磯事務所の場合親族に引き継いでもらうという選択肢は全くない状況でしたので、どこかで法人化して私が仕事をしなくなった後も現在のスタッフが困らぬよう事務所を引き継げるようにしておく必要はあると考えていました。また、それが委託頂いている顧問先企業にとっても安心感につながると考えました。そもそも座右の銘の一つが「継続は力なり」という私ですから当然のごとく社労士法が改正になり社労士事務所が法人化ができるようになってから、どのタイミングだろうかといつも頭にありました。

渋谷支部の中では法人化したのは特に早い方ではなかったのですが、1点OURSの法人化には特徴がありました。それは役員である社員を通常の2人ではなく5人にするということでした。これはいざという時スタッフがスムーズに引き継げるようにということもありますし、1人法人が認められていない社労士法人は、2人が社員としてスタートし片方が何らかの理由で辞めた場合次の手をどう打つかというところで難しいように思ったからです。既に法人化してから丸3年が経ちましたが法人化当初と同じメンバーが社員ですから杞憂という感もありますが、やはり安定感はここまでずっと感じています。

法人化した当初よく他支部の先生からも「法人化のメリットは何?」と聞かれました。当初1年目は正直それほどメリットは感じませんでしたが、会計という面では個人事務所時代とは異なりました。自分の財布と事務所の財政が明確になったということです。またやはり個人事務所ではないのだという意識面でも多少の変化はあったと思います。ただ一番参ったのは個人事務所に比べていろいろ面でお金がかかるようになったことでした。社労士法人の場合、例えば法人としての会費と、社員は開業社労士としての会費を会に支払わなければなりません。要するに私個人としては会費が2倍になったという感覚でしたし、それまで勤務登録だったスタッフ2人の会費も開業会員になり倍になったというわけです。また損害賠償責任保険の保険料なども法人は個人に比べてとても高いのです。さらにスタッフが役員である社員になったことで、労働者ではなくなったため労災の特別加入をすることになりました(社労士法人の社員は兼務役員は認められないのです)。そんなこんなで当初費用面での負担が大変でした。

法人にして2年目あたりから感じたのは、入ってくる仕事が変化してきたということでした。企業の規模も大きく、また知名度が高いところからお話を頂くことが多くなったということを何となく実感するようになりました。3年目の昨年は成約しなかった企業もありますが、特に後半本当にたくさんのお仕事のお話を頂きました。ここにきて顧問先企業の規模がとても大きくなったため個人事務所時代に比べて委託頂いている被保険者数は飛躍的に増えたという感じです。当然売り上げもかなり増えました(経費も増えましたが)。これは法人事務所として社員・スタッフ・パートナー社員みんなで頑張ってきた証と思います。私個人ではなく事務所に仕事を頂くようになったのだと思います。

時代のスピードは本当に早いものだと思います。社労士もそれについていかなければ取り残されてしまうという気がします。盛んに行われる企業のM&Aに対応するために大量のデータ処理も避けては通れない課題です。ますます労働法や社会保険の手続き等が複雑になっていくのでその勉強も怠りなく行っていく必要があります。これまで以上に社労士の方向性の先にはたくさんの選択肢があるような気がしています。そんな中で、法人、個人にかかわらずビジネスモデルを持てればますます仕事の範囲は広がると考えます。

まだまだ少人数の事務所なのでひとつひとつ乗り越えるのに必死なのですが、ここを乗り越えればまた一つ成長できるという楽しみもあります。やはり最後は当たって砕けろ、他の人がやれることが自分にできないわけはない(急に体育会系ですみません)という感じです。


特定理由離職者とは

2012-01-08 16:59:00 | 労働保険

「特定理由離職者」の制度は、平成20年の改正で雇用保険法に規定されました。今後この扱いについて話題になるかもしれませんので復習もかねて取り上げてみたいと思います。

この特定理由離職者とは以下の2つの受給資格者を言います。

1.期間の定めのある労働契約の期間が満了し、かつ、契約更新がないことにより離職した者 

 …更新を希望したにもかかわらず、更新されなかった場合に限る←ここがポイントです。更新を希望していない、またあらかじめ更新はないと言われていた場合は該当しないのです。また、3年以上被保険者であった期間雇用者など特定受給資格者に該当する場合は除かれます。

2.正当な理由のある自己都合により離職した者

  …病気・妊娠・出産・育児・家族の看護・配偶者の転勤で別居生活が困難等正当な理由の自己都合で離職した場合

この特定理由離職者は、当時派遣切りなどで話題になった非正規労働者を救済するために作られた制度であり、雇用保険法に恒久的に定められました。

特定理由離職者は、以下の「①受給資格要件の緩和」と「②所定労働日数の拡充」が特徴です。※1と2どちらの理由で特定理由離職者になっても3か月の給付制限期間はありません。

①受給資格要件の離職日以前2年間に被保険者期間が通算して12カ月以上必要とされるところ、離職日以前1年間に被保険者期間が通算して6か月以上あれば満たされる。

②特定理由離職者のうち1の「期間の定めのある労働契約が更新されなったことにより離職した者」については、平成24年3月末まで特定受給資格者とみなされる。…特定受給資格者とみなされるということは、給付日数が一般の受給資格者の場合より手厚くなります。

一般の受給資格者が年齢と被保険者であった期間に応じて90日~150日に対して、特定受給資格者(倒産解雇等により離職を余儀なくされたもの)は90日~330日です。…例えば30歳以上45歳未満の場合算定基礎期間(被保険者であった期間)が5年未満であれば90日と一般の受給資格者と同じなのですが、算定基礎期間5年以上10年未満の場合は一般の受給資格者が90日・特定受給資格者(特定受給資格者とみなされた特定理由離職者も含む)180日と給付日数がかなり異なってくるのです。

②の扱いは平成24年3月末までとされていますが、労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会で検討されており、その報告では「平成26年3月31日まで延長すべきである。」とされていますので延長される可能性大です。

参照はhttp://www2.odn.ne.jp/ourszkn/index.html(平成24年1月9日分です)

(またこの中で平成25年3月末までの措置とされている高年齢雇用継続給付も検討課題にあがっていますが、こちらはどうなるかはもう少し時間がかかりそうです)。

お正月はあっという間に過ぎていき4日から事務所で一人準備したにもかかわらず、 5日、6日は怒涛のように忙しく過ぎていきました。しかし6日の事務所の新年会はホッコリした年初めの良い会となり、なかなか好調なスタートを切れたように思います。 来週からいよいよ本格的に仕事がスタートしますね。まずは体調を整えて張り切っていきましょう。


花も咲かない冬の日は

2012-01-02 23:49:54 | 雑感

あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。 

 

2011年は本当に大変な年でした。それでも新たな2012年が始まったのですから、気持ちを入れ替えて元気を出して明るい気持ちで進んでいきたいものです。 

 

沢山の年賀状を毎年頂くのですが、その中には幸せいっぱいのご報告や、絶好調のご報告もあり、赤ちゃんや子供たちの写真などは思わず微笑んでしまいます。仕事・受講生・社労士・友人などに分類された名簿は500人くらい載っていて、毎年実は元旦から3日間くらいはその整理をシコシコしています。プライベートな友人関係の年賀状には最近孫の写真が登場するようになり自分自身の年齢により頂く年賀状も変化していくんだと実感します。

  

頂いた中にはちょっと心配なものもいくつかあります。そんな年賀状をくれた方に元気が出るように年の初めに「花も咲かない冬の日は…」の言葉を贈ろうと思います。これはマラソン金メダリストの高橋尚子選手がテレビで話していたところから知ったものなのですが、安岡正篤先生の言葉です。人にはそういうじっと辛抱する時期も必要なのだと感じます。

  

「花も咲かない冬の日は. 下へ下へと根を伸ばせ. やがて大きな花が咲く」 

 

安岡正篤先生は、佐藤栄作首相から、中曽根康弘首相に至るまで、昭和歴代首相の指南役を務め、さらには三菱グループ、東京電力、住友グループ、近鉄グループ等々、昭和を代表する多くの財界人に師と仰がれ、日本のトップ・リーダーたちに、わが国の進むべき道を、常に指し示してこられたそうです。(1898年~1983年)。

  

もう一つ、これは私も今年留意して行こうと思います。「知識・見識・胆識」です。安岡先生の弟子が以下のように説明されているそうです。

  

知識は、その人の人格や体験あるいは直観を通じて見識となります。見識は現実の複雑な事態に直面した場合、いかに判断するかという判断力の問題だと思います。

  

胆識は肝っ玉を伴った実践的判断力とでも言うべきものです。困難な現実の事態にぶつかった場合、あらゆる抵抗を排除して、断乎として自分の所信を実践に移していく力が胆識ではないかと思います。

 

仕事をしていく上で、社労士としての知識だけではなく、直感や経験に基づいて答えを出していくことは大事にしてきたつもりでしたが、私にはまだまだ胆識が足りないですね。努力していこうと思います。 

 

それではよい年にして行きましょう!今年もよろしく!