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OURSブログ

社会保険労務士としての日々の業務を行う中で、考えたこと、感じたこと、伝えたいことを綴る代表コラム。

日本における児童労働

2025-05-18 20:49:50 | 労務管理

ビジネスと人権について調べていた中で、日本にとってはあまり関係ないと思われる児童労働も注意しないといけないと感じる部分がありましたので、整理してみたいと思います。

まず労働基準法で決められた年齢に関する制限については、以下の通りです。

・15歳年度末(中学卒業まで)の児童は原則使用禁止
・例外として、非工業的業種で以下※の条件に該当すれば、13歳以上15歳未満の児童を使用することができる。
・また映画の製作又は演劇の事業であれば13歳未満の児童を使用することができる。

※健康福祉に有害でなく、労働が軽易であり、行政官庁の許可受けており、就学時間外に使用すること。

労働におけるビジネスと人権チェックブック(厚労省・ILO駐日事務所)によると、先進国は通常の業務は15歳年度末未満、軽易な業務は13歳未満が就業禁止とされており日本と同じですが、開発途上国においては通常の業務が14歳未満、軽易な業務は12歳未満が就業禁止になっています。

その他年齢制限以外について、以下の通りです。

・18歳未満の年少者は年齢証明を事業場に備え付ける義務があり、15歳未満の児童の場合は加えて学校長の証明と親権者等の同意書を事業場に備え付ける義務がある。

・18歳未満の年少者については、変形労働時間制、時間外・休日労働・深夜業に使用してはならない。また15歳未満の児童については、就学時間を通算して1週間40時間を超えてはならず、1日については就学時間を通算して7時間を超えて労働させてはならない。

・15歳未満の児童については原則午後8時から午前5時に使用してはならず、演劇の事業については午後9時から午前6時までが就業禁止とされている。映画の事業は13歳未満も許可受けて使用することが可能ですが、働く時間は原則午後8時から禁止となります。そういえば映画の事業は原則と同様午後8時までとなっています(収録ができるため演劇の事業とは違うとよく講義の際に言っていたことを思い出しました)。

・18歳未満の年少者については一定の危険有害業務の就業について制限がある。

なお、特定非営利活動法人の2019年の報告では、年少者に関する労基法の違反状況の中で、最も多いのは深夜業ということです。また年齢証明の備えつけについても忘れないようにしたいところです。

通勤の際に周りを観察すると、最近女性もヒールを履いている割合は非常に少なく、だいたいパンツスタイルにスニーカーが圧倒的です。私も昨年から基本はスニーカーで通勤することにして、愛用品は昨年9月のブログにも載せた「デコルテ」さんの「Je t'emmène」。これは顧問先、かつ親友の家族経営の会社のスニーカーで、既に3足目になりました。さらにワイドパンツだと厚底でないと裾を引きずるので、先日厚底のものを購入してみました。こちらも非常に歩きやすく、少し底の先端が傾斜しているため足が自然と前に出る感じで、毎日の通勤が楽しみに感じます。お正月以来体重が戻らないので、少し絞る必要もあり、スニーカー通勤で、できるだけ遠回りして歩いてみたいと思います。


60歳以上の処遇再検討のススメ

2025-04-07 00:48:56 | 労務管理

60歳以上の処遇については、再検討を模索する企業がとても増えてきていると思います。というのも1994年に創設された高年齢雇用継続給付ですが2025年4月から給付率が15%から10%に縮小されることとなり、将来的には廃止も視野に入ってきたというタイミングがあると思います。また人手不足が明らかになってきて、60歳定年後の社員も補助的な仕事ではなくそれまでの役割を担う必要が出てきたこと、また60歳以上であっても健康面、能力面で特にそれまでの仕事をするのに問題がないことなどいくつかの要素があると思います。最近ちょっとした就業規則の改定の依頼で多いのは65歳の再雇用上限年齢に達しても問題がなければさらに継続して雇用する場合があるという文言を追加したいというものです。

高年齢雇用継続給付の創設当初はまだ老齢厚生年金が60歳から65歳まで特別支給として支給された時代だったので、賃金と賃金との合計により上限がある高年齢雇用継続給付と高年齢雇用継続給付を受給することにより一部支給停止される年金額(賃金+高年齢雇用継続給付+年金)の合計額をにらみつつ賃金を決めることが当たり前でした。要するに60歳以上で働くことに対する賃金の考え方が、担当する仕事や役割に対してではなく、定年後緩やかに仕事をしつつ本格的に年金が支給されるまでのの補償額のようなものだったと思います。従って賃金額も今よりずいぶんと低い額が一般的でした。その後60歳以上の賃金は徐々に上がってきたのを実感しています。肌感覚ではその頃から比べると10万円近く上がったのではないかと感じます。

60代の一般労働者の平均賃金の推移(第8階社会保障審議会年金部会2023.10.24資料)をみると、男性2006年の30.3万円が2022年は34.2万円、女性は同年比較で20.8万円~24.8万円と約4万円の上昇です。年金の支給停止基準額の上昇も影響していると思いますが、60歳代の社員が担当する役割や仕事の内容が変化してきていることもあるであろうと推察されます。

「60歳以降の社員に関する人事管理に関する調査(高齢・障害・求職者雇用支援機構)」2017年の調査の「高齢社員の人事管理の制度進化の方向性-60歳第前半層と65歳以降の人事管理の継続性に注目して-」は非常に興味深くしっかり読んでみようと思います。その中で高齢社員全体の管理施策の適用状況という観点から、現役社員との継続性を意識した人事管理整備の転換点を捉えると「教育訓練」と「就労条件(労働時間」が戦力活用の初期段階から整備され、その後活用が進むと「福利厚生」と「評価制度」、更に現役に近い活用を志向する段階では「配置・異動」や「報酬管理」が整備されるようになるということです。

また65歳以降の人事管理に注目し、人材活用上の課題や60歳代前半層の人事管理との類似性を捉えるというテーマを扱っています。それによると、現役社員と60歳代前半層の人事管理の継続性が高い場合、65歳以降の活用評価が高まる関係にあり、また特に教育訓練管理において現役社員との継続性を意識する必要があること、65歳超の雇用を積極的に考える場合、定年を機に活用戦略や報酬の支払方法を変えるのも良いが、60歳代前半層も教育訓練投資の回収期間と捉えず、成長機会を提供して活躍を希求するニーズを充足させることが重要な対策、としています。これはなかなか面白いテーマだと思いますので、少し自分の中で意識しておこうと思います。

高齢・障害・求職者雇用支援機構「60歳以降の社員に関する人事管理に関する調査(2017.10.1(時点)」
https://www.jeed.go.jp/elderly/research/report/document/q2k4vk000002ru8u-att/q2k4vk000002ruc4.pdf

このブログも平成21年の法人化を機に基本的にお正月、5月の連休、夏休みを除き毎週日曜日を基本に脈絡なく書いてきたわけですが、よく15年以上続いてきたものだと思います。どのくらいの記事の数になるかみてみたところ800件弱となっていました。テーマは本当に思いつきの時もあり、前週に頂いたご相談や経験に関連したものもあり、又は翌週ご質問の回答を作るための準備という場合もあります。大学院に通学していた時期はレポートに追われていたこともあり、レポートから引用したこともあります。時々顧問先の方や同業の社労士に「読んでます!」と言われるとやはり励みになり、「よく続きますね」と言われて「なかば意地です」と答えて笑われたこともあります。またこのテーマの後の雑感だけ見ているという方も結構多く、生存確認になっているのかなと思うこともあります。

ただひたすら「継続は力なり」を信じて、これからも続けていこうと思っております。まずは目指せ1000件ですね。


出向元と出向先の休日日数差等への調整

2025-03-23 22:12:40 | 労務管理

ここのところご質問が多いので、前回と同様出向について取り上げてみたいと思います。在籍出向の場合の賃金の負担については、少し古い統計ですが労政時報の記事(2009.12.11「労務行政」)では、出向元の賃金規程を適用するのが一般的で、統計でも9割以上が出向元の賃金規程を適用となっています。ただし賃金が出向元から支給されていても出向元が出向先に負担を求めている場合があるということで、「出向先が最終的に全額負担」が60.0%と最も多く、実際に労務提供を受ける出向先が賃金を負担するケースが多いということです。ただし、この負担割合は企業規模により差があり、出向先が最終的に全額負担が65.6%に対して300人未満の企業では50.0%となっており、出向先との関係や出向目的でも負担状況は違ってくるという結果です。これらは実際の感覚としてもしっくりきます。

労働時間や休日日数の差についてはどのように対応しているかも調査がされており、その調整では出向手当が充てられていることが多いようです。例えば「年間休日数が出向先の方が少ない場合の調整(68.3%)」や「所定労働時間が出向先が長くなる場合の調整(66.7%)」といった補填の意味合いに出向手当が使われているということです。

在籍出向者の勤務は、一般的には出向先の所定労働時間、所定休日によることが9割となっていますが、出向元より出向先の労働時間が長くなる場合は、「時間外扱いとして時間外手当を支給(37.0%)」、「出向手当で対応(33.1%)」また「特に何も手当をしない(26.8%)」という状況です。年間所定休日日数が出向元より出向先の方が少ない場合は、「出向手当で対応(34.1%)」、「時間外(休日出勤)手当を支給(25.4%)」また「特に何も手当をしていない(34.9%)」と約6割の企業が休日差の補填を行っているようです。ただしこれらは企業規模によっては状況が異なり、「特に何もしていない」は、所定労働時間の補填については1000人以上では16.7%に対し、300~1000人未満では36.4%、300人未満は31.0%、所定休日日数の補填については、1000人以上は23.1%に対して300人~1000人未満では40.9%、300人未満は46.7%ということです。

今日は久しぶりにのんびりして家で本を読んだりベランダに咲いた花の手入れなどもできました。花粉症や咽頭炎もだいぶ良くなってきましたので、明日からまた気分を一新して頑張ります。

今さらといわれながら、最近スターバックスのモバイルオーダーを愛用しています。だいたい12時半ころまでデスクで仕事をしておき、目途がついたときにモバイルオーダーで注文、5分後くらいたってからビル1階のお店に行くと既にできている、という段取りです。お昼のお弁当を探すのも日比谷は渋谷より豊富でお値段もちょっと驚くくらい安いので楽しいですが、忙しいときはモバイルオーダーは有難いです。


出向命令の有効性について

2025-03-17 00:53:03 | 労務管理

出向も様々な論点がありご相談が多いテーマです。出向は在籍型出向と転籍と一般的にはよばれている移籍型出向があります。転籍は転籍元企業と本人との間の雇用契約が終了するため、本人の合意が必要とされていますが在籍出向の場合は転籍と異なり出向元企業の従業員の地位を確保したまま他の企業の業務に就く形態になり、出向元及び出向先両方の二重の労働契約関係の上に成立していることになります。在籍出向についても以前は本人の個別的な同意が必要とされていたようですが、安西弁護士の書籍を読むと、昭和56年東京高裁の判決等に始まり平成4年の最高裁の判決により包括的合意という考え方が定着するに至ったようです。

最高裁の判決では、「出向に関する改正就業規則及び出向規定の各規定はいずれも有効なものというべきであり、その運用が規定の趣旨に即した合理的なものである限り、従業員の個別の承諾がなくても、控訴人の命令によって従業員に出向義務が生じ、正当な理由がなくこれを拒否することは許されないものと解するのが相当である(平成4.1.25最高裁(ニ小)判決、ゴールド・マリタイム事件)」として、原審である大阪高裁の判決を正当として是認することができるとしました。

従って、在籍出向については、就業規則において人事異動の一つとして定められていれば、配転と同じように包括的合意がされていると考えるのが一般的です。また出向の有効性については以下の判決(昭和52.8.10東京地裁判決、東京エンジニアリング事件)があります。

三 本件出向及び配転命令の効力
(一)出向命令、配転命令が有効であるためには、出向又は配転につき業務上の必要性の存在及び当該労働者を出向者、配転者として選択したことの妥当性の存在が認められなければならず、もとよりこれに便乗して思想、信条等を理由とする差別的取扱をしたり、出向等を命じることにより従業員を生活上著しく不利な立場に追込むことは許されないが、出向命令、配転命令が使用者の人事権(労務指揮権)の行使の一環としてなされるものである以上右に述べた業務上の必要性及び人選の妥当性(以下出向等の合理性という)の判断に際しては使用者の裁量権を無視することはできない。そして、使用者が使用者としての立場において出向等の合理性を立証し得たならば、労働者の側においてその合理性を直接にくつがえすに足るか又はその存在を疑わしめるに足る事情を立証しない限り、使用者には当該出向等に関しては前記のような不法な差別意思はなかったものと推認すべきであり、また、右合理性を犠牲にしてでも出向等の拒否を正当ならしめる事由(例えば病弱のため通勤が著しく困難となる、出向業務に耐えられない等)を労働者の側において立証しない限り出向命令等を無効であるということはできない。

上記から考えると、在籍出向(及び包括的合意)が有効となるには、業務上の必要性、出向者選定の妥当性、差別的な取扱又は著しく不利にな立場に追い込むものではないこと、使用者の人事権の行使として包括的合意が行われるための就業規則等の規程が必要ということになります。

確定申告終わりましたか?私はぎりぎり土曜日にオンラインで申告を終えてホッとしています。例年3月は年度末ということで法改正対応の規程の確認や、セミナーが多くその中で確定申告も行わなければならずなかなか忙しい月ですが、ここを乗り越えれば桜をはじめとして5月の気持ちの良い季節が来るということで気持ちは軽いです。花粉症で喉をやられ、鼻をかみながら仕事をしているとやはり頭がすっきりしないのは困りますが、もう少しの辛抱と思ってます。


社員旅行について

2025-03-12 01:59:25 | 労務管理

毎週日曜日にブログを更新しているのですが、先日の土曜日例年のごとく花粉症から咽頭炎を起こして寝込んでしまい翌日曜日と月曜日は下関に顧問先企業の船を作る現場と資料館見学のための社員研修旅行に行ったため更新が遅れました。

ということで無理をしたため本調子とはいえない状況なので手短な記事になりますことお許しください。社員旅行はコロナ前は日帰りから始まり1泊で主に顧問先の工場見学など、25周年記念の際は台湾へも行ったのですが、コロナ以降は泊りは初めてでした。造船の現場などは東京にいる我々にとっては一生に1度見ることができるかどうかという体験で、そのスケールの大きさや製造工程のご説明に感動しました。

ところで社員旅行はどの程度実施されているのか調べてみたのですが、『賃金事情』で執筆のお世話になっている産労総合研究所さんの2020年の調査では、「実施率は27.8%。前回調査から9.1%ポイントの下落となった。旅行の実施頻度は「毎年1回」が最も多く社員旅行実施企業の52.3%」だということです。実施率が3割弱ということで、今回参加したOURSスタッフ総勢27名の中でも多くが社員旅行は初めてだったのも当然だったようです。前回2014年の調査では36.9%で比較すると大幅下落ということですが、調査期間に2020年1月~3月が含まれておりコロナの影響があったかもしれない、とありOURSもその時期企画した1泊の社員旅行を中止しており今後の数字が待たれるところです。

感想としては、幹事さんの企画から段取り、運営がとても良かったことが大きな要因ですが、地方の顧問先を見学することで社労士業務がどういった会社に繋がっているのかを体感してもらえたこと、参加者がとても楽しんでくれていると感じられたこと、またなかなか行くことのない下関の歴史を満喫できたこと、フグの夕食では日頃育児に忙しい男子が心置きなく飲んでリフレッシュできたようだったことなど、それぞれ大きな収穫を得たのではないかと思うので、やはり重い腰を上げて社員旅行やイベントを行うことは価値があることだと思いました。

「2020年 社内イベント・社員旅行等に関する調査」(産労総合研究所)
https://www.e-sanro.net/share/pdf/research/pr_2101.pdf

  

2日間お世話になった貸し切りバス  壇の浦古戦場址  乗ったことのあるヴァンテアン号模型


休職期間中の定年到達

2025-02-24 23:14:09 | 労務管理

休職期間中に契約期間が満了になった場合には「契約期間満了と同時に休職期間も満了とする」「休職期間が満了した場合には退職とする」等と有期契約社員就業規則に規定されている場合は多いかと思います。それでは休職期間中に定年が到来した場合は、契約期間満了と同様に休職期間が終了し再雇用なく定年退職になるのかという点ですが、こちらについては休職が法律上の定義でないためある程度会社の考え方に任されるものと考えます。

個人的な考え方としては、休職期間中に定年が到来した場合には、契約社員の契約期間満了とは異なり休職期間を打ち切ることは控えた方が良いと考えます。高年法では高年齢雇用確保措置として65歳までの雇用義務を定めており、定年到来の際に休職期間中であったとしても65歳までの高年齢雇用確保措置の義務が消滅するわけではないと考えるからです(ここでは高年齢雇用確保措置は継続雇用制度を選択したとします)。もし定年到来時点で休職をしていたとしても再雇用契約を締結して、その契約期間中に休職期間が満了となる又は(例えば1年後の)更新の際にまだ休職期間中ということであれば、冒頭の規定により契約期間満了と同時に休職期間も終了=休職期間終了時点で退職とするという規定を適用する、ということになります。

なぜ定年退職時に休職中であっても再雇用する方が良いと考えるかというと、休職も様々であり、例えば休職期間が最長1年6か月であった場合に、たまたま定年退職前に病気やけがをして定年到達時には3か月程度の休職期間中だったということであれば、定年再雇用をすべきと考えるからです。もし定年前から休職期間に入り定年到達時点で1年間の休職期間が経過し残り6か月という場合、再雇用した上で6か月経過時復職できなければその時点で休職期間満了として退職とすることになります。そういう意味では定年到達時点で休職を打ち切ることは、休職理由及び期間だけでなく休職に入るタイミングによって不公平が生じるためと、やはり65歳までの継続雇用義務が休職により消滅するわけではないという考え方であるため避けたいところです。

ただ高年法の65歳までの継続雇用義務は「就業規則に定める退職事由(年齢に係るものを除く)又は解雇事由に該当する場合を除く」と就業規則に定めることを認めており、退職事由の中に定年年齢到達(定年年齢到達時点で休職期間中で復職ができない場合を含む)などと規定している場合は、定年到達時点で休職期間満了により再雇用しないとすることも考えられなくはないと思います。ただやはり定年到達時点で休職中だからといって再雇用はしないというのはかなり長い休職期間を経て復職の見込がない場合に限るとする方が良いと考えます。

毎日お天気は良いですが、空気が冷たくまた風が吹くと本当に寒いですね。乾燥もしており草木にとってもなかなか厳しいのかもしれません。いつも母とランチに行く散歩道で椿がまだ花をつけた状態で枯れていました。家の近くの河津桜は少し蕾がついていますが、まだまだという感じです。


同性パートナーシップ制度社内規程について

2025-02-16 23:29:25 | 労務管理

同性パートナーを認めようと考えているという顧問先からのご相談を受けたのは今回で3回目であったと思います。まだまだ勉強中ですが、どのようなことがポイントになるのか、勉強を兼ねてまとめてみたいと思います。おそらく今後も色々な検討課題なども出てくると思いますがあくまで現時点でということでご承知おきください。

まずパートナーシップ制度社内規程をなぜ作るのかということですが、「社員のパートナーの性別を問わず、事実上婚姻関係の事情にあるものとして法律上の配偶者と同等の権利を付与する」ためといえます。しかしこれはあくまで会社内のルールを適用する場合に法律上の配偶者と同様に権利があるというだけで、法律上の権利まで付与されるわけではないという点に留意が必要です。また法律上の配偶者がいる場合は対象から除くことになります。

まずは、社内でパートナーシップ制度を導入しても、以下の法的権利については適用がないという点については誤解がないように社員にも説明が必要です。①健康保険の被扶養者、②国民年金第3号被保険者、③厚生年金保険の遺族年金、④労災保険の遺族給付、⑤育児休業給付・介護休業給付、⑥所得税の配偶者控除

それでは社内では法律上の配偶者と同等の権利を持つとして、どのようなことが認められるかという点ですが、社内で任意に持つルールを認めることになります。例えば以下の権利について付与されることにになるかと思います。①配偶者出産休暇や育児休暇、②慶弔休暇、慶弔見舞金、③その他法律で定められた給付は受けられませんが法律上の配偶者と同様に育児休業、介護休業又は子の看護休暇や介護休暇を認めることも可能です。退職金についても「「性別を問わず、事実上婚姻関係と同様の者を含む」と規定することは可能ですが、遺言や相続の問題などが絡むことも考えられるので慎重に決める必要があります。

パートナーであることを確認するためにはどのような方法で証明するかですが、一般的には自治体の発行しているパートナーシップ証明書だと思います。日本で初めて条例でパートナーシップ証明を導入することにしたのは我が渋谷区で2015年のことです。渋谷区・虹色ダイバーシティ 全国パートナーシップ制度共同調査をみると2024年6月28日時点で459自治体が導入しており、なんと人口カバー率は85.1%となっています。ちなみに交付件数は同年5月末時点で7351組だそうです。もしパートナーシップ証明書が出ない場合は、社員とパートナー2人の住民票、結婚式の案内状なども証明書としては考えられます。

またパートナーシップ制度を規程化する場合には、制度を利用する場合の申請書と利用を停止する場合の届書も準備する必要があります。以下ご参考まで。

渋谷区・虹色ダイバーシティ 全国パートナーシップ制度共同調査
https://nijibridge.jp/wp-content/uploads/2024/08/20240628_infographic2_ND.pdf

先日、そういえば愛知県会の研修に伺った際に久しぶりにカラオケをしました。喉や声に負担をかけるためすっかりご無沙汰していたのですが、この頃喉のケアの方法をだいぶマスターしたので(今さらですが)大丈夫かなと思い、昔よく歌っていた中山美穂など結構気分よく歌いました。講師時代にはよく講師室の親しい仲間とカラオケに行ったのでちょっと歌が古かったのが課題ですが、新しい歌を覚える気力も能力もなく、仕方ないですね。


小1の壁について

2024-09-24 01:27:31 | 労務管理

先週東京テレワーク推進センターのセミナーでお話しさせて頂いた改正育介法とテレワークのテーマでは質問に答えるコーナーがあり、その中で「小1の壁」については育介法の改正内容にはないようだがどう考えるかというものがありました。

確かに今回の改正で小1の壁に対する施策について表立って謳われてはいませんが、子の看護休暇が小学校3年生修了までに延長されたのは、施策の一つになっているでしょうか。ただ育介法は子の年齢のどこまでを支援するかというと、育介法の成立当初の1歳から3歳へ、3歳から小学校就学前までに改正を重ねてはいますが、小学校に入学すると一段落といった感じはあると思います。

そこで小1の壁とはどのようなことを言いその対策を調べてみたのですが、まずは厚生労働省は「小1の壁」打破するとともに、次代を担う人材育成のために「放課後子ども総合プラン」を策定していました。この中で児童の放課後等を安全・安心に、多様な体験・活動を行うことができる「放課後児童クラブ」「放課後子ども教室」の整備を進めるとしています。ただ調べてみると小1の壁は放課後だけではなく、朝の時間帯の問題が大きいようです。

小学校に上がるまで、保育園に通っている場合は午前7時から7時半の間に預かりを開始することが一般的のようです。かたや小学校の登校時間は午前7時半から8時までがほとんどで、30分のずれがあります。この30分のずれにより共働きの親が先に自宅を出て、小学校に上がった子供が鍵を閉めて登校するという状況になるということです。

特に小学校に入学したばかりというこれまでの環境に変化があるにもかかわらず「いってらっしゃい」が言えない、見送れないのは不安もあろうかと思います。柔軟な働き方ができない企業であれば、フルリモートの会社への転職をするなどを選択するケースもあるようで「小1の壁」は大きな問題だと感じました。

かたや教師の働き方改革のコンサルをさせて頂いていると、朝子供たちを迎える時間帯については労働時間になるため、校門の開門時刻を遅らせる、または朝の時間帯はボランティアなどにお願いするというご提案もしており、教師と子どもともに助かると思える施策はなかなか難しいものがあります。

ご質問の回答としては、法律の規定がない場合でも、会社で独自の施策を設けることにより人の採用・定着において効果を出すこともできるということでOURSで導入した2人目の子の送り迎えのための出産前時短勤務をお話ししましたが、「小1の壁」対応の施策としては何ができるか考えてみました。平凡なものしか思いつかないのですが、小学校3年生になればかなり子供も小学校生活に慣れてくることと自分でかなりのことが判断できるという点では小学校入学時から小学校2年生までの2年間の短時間勤務なども良いように思います。
1.フレックスタイム制
2.始業・終業時刻の繰り下げ(時差出勤)
3.小学校2年生までの2年間の短時間勤務
4.部分休暇
(NHKで事例を紹介、部分休暇は1日最大2時間まで申請が可能・休暇部分は無給)

いずれにしても「小1の壁」に限らず柔軟な働き方が選べるというのは今後の事業経営においては必要な考え方であり、特に中小企業であれば個別対応も可能なので、アイディア次第で導入は可能だろうとは思います。

来春育介法と一緒に改正になる雇用保険法の新給付「育児時短就業給付」は2歳未満の子を養育するため時短勤務をしている場合の賃金への加算です。2歳未満というのはあまり長く短時間勤務を続けていくとフルタイムの復帰が難しくなるからという理由と言われています。確かに小学校就学前まで短時間勤務をしていると、小1の壁にぶち当たり、結局子が小学校に入学しても短時間勤務を継続となりがちという面もあり、できれば小学校入学前にいったんフルタイムに復帰した後、小学校入学時に期限を決めて使える施策がある方が良いように思います。小学校の入学は、子にとっても親にとっても生活面での新たな局面であり、そこで働き方も変化するのはかなり負担が重いものだと想像しますので。


育介法改正と在宅勤務

2024-09-01 19:31:47 | 労務管理

2025年4月の育介法の改正は、まだ施行規則や指針が案しか出ていない段階ですがだいぶ全貌が見えてきたと思います。前回の改正は男性の育児休業取得促進を主眼としたものでしたが、今回は男女に分けることなく、育児と仕事の両立支援に加えて介護についても支援を補強する改正になっていると感じます。特に団塊の世代が全員後期高齢者になる2025年に向けて、介護と仕事の両立も重要なテーマになってくると思われますので適切なタイミングと感じます。

今回特に育児休業法の改正の中に「在宅勤務」がいくつか盛り込まれています。確かに在宅勤務は育児と仕事との両立支援については使える制度だろうと思いますが、どのような経緯で在宅勤務が盛り込まれたのか、労働政策審議会雇用環境・均等分科会の議論をザッと確認してみました。

その中で令和5年6月19日に「今後の仕事と育児・介護の両立支援に関する研究会報告書」が資料として掲載されており、子が3歳になるまでの両立支援の拡充」で以下の考え方が示されています。

テレワークは、通勤時間が削減されることなどにより仕事と育児の両立のためにも有用なものとして位置付けられてきた。また、コロナ禍を機に柔軟な働き方の一つとして、育児・介護との両立目的だけでなく一般的な働き方としての広がりも見られる。さらに、企業に対するヒアリング等においても、テレワークを育児との両立のために活用する事例が確認された。
ⅱ 育児との両立に活用するためには、就業時間中は保育サービス等を利用して業務に集中できる環境が整備されていることが必要である。こうした条件が整えばテレワークは、フルタイムで勤務できる日を増やせることも含めて仕事と育児の両立に資するものである。

上記具体的な措置として、「ⅲ 現在、努力義務となっている出社・退社時間の調整などに加えて、テレワークを事業主の努力義務として位置付けることが必要である。」とあり、これが3歳未満の育児休業をしていないものに対する在宅勤務等の措置の努力義務規定に繋がっているようです。

その他小学校就学前までの両立支援の拡充においてもテレワークが登場してきており、在宅勤務は両立支援のカギとみていると感じます。在宅勤務は確かに両立支援のカギになる施策だと思いますが、コロナ禍緊急事態宣言の時のことや、今回の台風などの場合など事業継続(BCP)対策としても重要な役割を果たすことになるため、企業はいつでも社員が在宅勤務ができるように準備しておくことが必要だと感じます。

8月お盆明けから、セミナーやらその前のセミナーレジュメの準備やらでかなり切羽詰まっていたのですが、今週末で概ね今後のセミナーレジュメの完成をみたので少しホッとしています。と言っても明日は連合会の研修で大阪に出張なのですが、この大雨で新幹線がどうなるか全くわからず、空路に変更していくことにしました。せっかくなので少し奮発して優雅に行ってこようと思います


退職代行サービスについて

2024-07-07 21:25:56 | 労務管理

退職代行サービスがだいぶ一般的になってきているようです。この退職代行サービスを利用して退職を申出られた際に会社はどのように対応すればよいのかということについては、まだご相談数が少なくそれほど知見・経験があるとは言えないのですが、少し考え方を整理しておく必要もあろうかと思い取りあげてみたいと思います。

まず退職代行というサービスですが、日本特有のものであり、外国では「なぜ退職するのに自分で言い出せないのか?」と不思議がられる、ということを読んだことがあります。これまでの常識からいえば「退職は本人からの申し出を上司や人事が受ける」というのが当たり前であり、まだまだ退職代行サービスを利用してきたということで会社としては「もやもやした感じ」があるかと思います。会社が引き止めたい人材であればそれもわかりますが、利用すること自体日本的なのだと考え、退職代行サービスの利用があった場合でも、ドライに割切ることも必要なのかもしれないと思います。

退職代行サービスを行うのは3つの形態があるということです。①弁護士(法人)、②ユニオン(労働組合)、③事業会社です。法律的に問題はないのかという点ですが、弁護士が本人から委任を受けて代理人になっていれば条件の交渉も可能ですし、ユニオンの場合は団体交渉権により要求をしてくることは法律上の要件を満たした労働組合であれば法の抵触はないといえます事業会社が本人の意思を伝達するということであれば法的に問題ないとネットでは示されているようですが、こちらについては非弁行為に該当する可能性が高いという考えもあり、また、報酬を得て「条件交渉」をすることは確実に非弁行為として弁護士法72条違反になります。

退職代行サービスの利用により退職の申し出があったときは以下が留意点となります。

➀代行業者を確認・・・上記の適法性などを確認したいところです。

②就業規則の退職の申出を確認・・・1か月前に申出ることと規定されている場合でも、おそらく退職代行サービスから来た文面では即日退職の申し出が多いと思います。就業規則に「申出は退職日1か月前」と規定していても、民法の定めにより、申出より2週間経過日が最短の契約解除=退職日となりますので、即日退職を認めるか、又は2週間経過日とするか判断する必要があります(ただ、2週間後とした場合でも、体調不良などで出勤不可と言ってくる可能性は高いようです)。

③退職届を求める・・・就業規則に義務として「退職の際は退職届を提出すること」と規定しておき、本人からの退職届を受理することが良いと考えます。退職届は本人の意思表示であり退職代行サービスを利用する場合でも、病気などの理由がない場合以外は他人が作成できないものとされており、退職届を受理することにより本人の意思を確認することができます。

④手続等について・・・法定期限のあるものは法定期限を守って手続きをする必要があります。

雇用保険被保険者資格喪失届等の法定期限は、離職した翌々日から10日以内です。資格喪失届に離職証明書を添えて公共職業安定所に提出し離職票を交付してもらいます。早めに欲しいという要望があっても法定期限内に手続すれば問題ありません。

給与については就業規則等で定めた給与支給日に支払うことが原則ですが、労基法23条の規定により退職者から請求があった場合には7日以内に支払う必要があります。賃金額などについて争いがある場合は、異議のない部分を7日以内に支払うことになります。

逆に健康保険証や会社で貸与していたもの等は、だれがいつまでに返却等するのかを、退職代行サービスに確認するのは良いと思います。

週末2日間は、7月27日(土)に行われるBBクラブの勉強会のレジュメを作っていました。昨日はいきなりすごい雨やヒョウまで降って、うちのベランダにも氷の塊が転がりビックリしましたし、今日は都知事選挙で外に出たところ凄い暑さでしたので、あまり遠出する気も起きずレジュメ作りにはピッタリの週末でした。今回の勉強会では改正のあった雇用保険法、育介法、子ども子育て支援法、フリーランス保護法に加えて、最近ご相談の多い、リファラル採用、副業・兼業、時間単位年休のおさらい等取り上げる予定です。レジュメはだいたい6~7割程度できたかなというところですので、あと少し頑張ります。


就業規則に規定のない懲戒処分

2024-06-16 23:31:16 | 労務管理

就業規則に規定されていない懲戒処分は可能かという点を調べてみました。懲戒に関する事項は、労働基準89条において、定めをする場合には必ず就業規則に記載しなければならないとされる相対的必要記載事項とされており、「表彰及び制裁の定めをする場合においては、その種類及び程度の関する事項」を定めることとされています。

従って①懲戒処分の種類と②懲戒処分の事由を就業規則に定めた上で、懲戒処分を行う際は、③行為と処分が整合性のとれたものであること、④判断にあたっては軽い処分から重い処分へ段階的に検討する必要があること、⑤処分にあたり懲罰委員会の決定など手続きが決められている場合手続きを厳守すること、⑥二重処分にならないように注意すること、が留意点としてあげられます。

労働契約法15条には、「使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする(日本郵便事件、最一小判令和4.6.23)。」と定められており、例えば上記③にある行為に対して処分が整合性が取れておらず処分が重すぎる場合は権利濫用とされる判決が出ることになります。

それでは、就業規則にない事由による懲戒処分は権利濫用とされるか否かですが、最高裁判決(フジ興産事件、最二小判平成15.10.10)において、「使用者が労働者を懲戒するには、あらかじめ就業規則において懲戒の種別及び事由を定めておくことを要し、就業規則が拘束力を生ずるためには、その内容を、適用を受ける労働者に周知させる手続が採られていることを要するものというべきである。」としています。その他の判決を見ても、就業規則に定めのない事由による懲戒処分は懲戒権の濫用と判断されるものと考えられます。

これは労働者が守るべき事由が示されていないにもかかわらず、いきなり懲戒処分だとされるのは理不尽なケースが起こりうるということから、就業規則に処分の種類とその事由を定めておく必要があるということです。

ただし、古い判決ですが「被申請人会社のような企業に於て、明らかに企業の秩序をみだし、企業目的遂行に害を及ぼす労働者の行為に対しては、使用者はたとえ準拠すべき明示の規範のない場合でも企業にとつて必要やむを得ないときは、その行為に応じて適当な制裁を加え得ることは、企業並に労働契約の本質上当然であるから、被申請人会社は右の固有の懲戒権を根拠として従業員に対し懲戒をなし得るものといわねばならぬ(北辰精密工業事件、東京地判昭和26.7.18)。」という判決もあります。

個人的には、上記判決について本質的に納得できないわけではないのですが、やはり懲戒処分を行う際は就業規則の定めを根拠とすることが原則だと考えます。

開業当初の頃は、「うちの会社に懲戒処分をしなければならないような社員はいない」ということで就業規則に制裁の規定がないというケースもありました。会社は一家、社員は家族、という感覚だったのだろうと思いますが、流石にそういう会社は当時から少なかったです。ただ、今でも懲戒処分の規定については、就業規則のリーガルチェックの際に指摘事項が多い箇所ではあります。トラブルを避けるためにはかなりきちんと整備しておく必要があることは間違いなく、かなり広く適用できる規定ぶりもありますが、やはり今は具体的に服務規律とつながる形で処分の事由を規定しておくことが肝要だと思います。


労働生産性の国際比較

2024-04-29 22:29:35 | 労務管理

顧問先のご担当者からのご依頼で、労働生産性に関する資料を探したところ、2023年12月22日に日本生産性本部が発表した「労働生産性の国際比較2023」がとても興味深いものでした。その資料によると、2022年の日本の時間当たりの労働生産性は52.3ドル(5,099円/購買力平価(PPP)換算)OECD加盟38ヵ国中30位。日本より後順位はスロバキア、ハンガリー、韓国、ギリシャ、チリ、コスタリカ、メキシコ、コロンビアとなっており、昨年から順位を2つ下げ、データ取得可能な1970年以降最低ということです。主要先進7か国の時間当たりのグラフを見ると2018年を境に移行極端に順位が下がっていることが分かります。※OECDの2022年の円ドル換算レートは1ドル=97.57円・・・もちょっと驚きですが。

さらに1人当たりの労働生産性は85,329ドル(833万円/購買力平価(PPP)換算)、OECD加盟38か国中31位ということで、やはり主要先進7か国で最も低い水準です。日本の製造業の労働生産性は、94,155ドル(1,078円/為替レート換算)。OECD加盟主要34ヵ国中18位で、主要先進7か国で比較するとイタリアより上位につけたため6位となっています。ただこれも驚くことに、2000年にはOECD加盟主要国でトップだったが、2005・2010年に9位、2015年に17位と後退して、以降16~19位で推移しているということなのです。ここの約20年間に国際的に後れを取ってしまったことがよくわかります。

労働生産性がなぜ日本は低いのか、という点についてはネットで検索してみるといくつも分析が上がっていますが、総じて「年間労働時間の長さ」が原因の一つとしてあげられています。ドイツでは、労働者が所定労働時間内で業務を終わらせる文化が根付いているということで、日本の残業は当然という考え方とは全く異なっていることが分かります。日本の場合時間に追われず納得できるところまで仕事に取り組みたいというある意味仕事熱心な国民性があるように思います。しかし、女性も働き夫婦で家庭を支え、またプライベートを大切にするという考え方から行けば、所定労働時間内で仕事を終わらせるという習慣は大切だと感じます。これは今後変わっていく兆しはあると思いますが長年の習慣はかなり強く意識改革をしないと短期間では変わらないかもしれません。

またICT(情報通信技術)が長時間労働解消をはじめとして効率化には当然欠かせないこと、あと65歳以上の就業率が高いことにより短時間労働であるのも要因になっていると考えられるとしている分析もあります。

令和5年労働経済の分析の中で「労働生産性向上の取組み」が取り上げられていますが、1位営業力・販売力の強化、2位業務プロセスの見直しによる効率化、3位働き方改革による労働時間短縮となっています。働き方改革ということで、フレックスやテレワークを導入してある意味形から入ることはもちろん大切なのですが、並行して業務分析をすることで必要のない会議や作業をやめたり統合することや、IT化をすべての作業において推進することなど個々人の細かな業務改革が非常に重要なように感じます。

[参考] 労働生産性の国際比較2023(公益財団法人日本生産性本部)
https://www.jpc-net.jp/research/list/comparison.html

連休前半はどのように過ごされたでしょうか。私は応援している相模原ダイナボアーズ(ラグビー)の試合を見に行ったり(特に後半は盛り上がり、1部残留も決めてとても楽しかったです!)、この春引退される顧問先第1号の会社の社長ご夫妻をランチにご招待したり、衣替えのついでに着れなくなった洋服は寄付できることを聴き、またよく購入するメーカーがリサイクルで買い取りをしてくれるとのことなので服の仕分けしたり、読みたい本を3冊読み終えたりとかなり充実した連休前半でした。後半は少しのんびりしたいと思います。よって5月5日(日)のブログはお休みさせて頂きます。


厚生労働省の履歴書モデル

2024-01-21 21:38:21 | 労務管理

令和2年7月に日本規格協会がJIS規格の解説の様式例から履歴書の様式例を削除したため、厚生労働省で新たな履歴書の様式について検討を行い、新たな様式例(厚生労働省履歴書様式例)を作成し示しています。令和3年4月16日の労働政策審議会の資料には新たな履歴書様式例を作成に至った背景について以下の通りの記載があります。
・ 厚生労働省では、これまで公正な採用選考を確保する観点から、一般財団法人日本規格協会(JIS)が示していたJIS規格の履歴書の様式例の使用を推奨していた。
・令和2年7月に、LGBT当事者を支援する団体から、厚生労働省、日本規格協会等に対して履歴書様式の検討(性別欄の削除等)を求める要請が行われた。
・当該要請を契機に、JIS規格の履歴書の様式例全体が削除された。
・このため、公正な採用選考を進める上で参考となる様式を厚労省において定めることとした。

JIS規格の履歴書と厚労省が作成した履歴書様式例の相違点のポイントは以下の通りです。
1.性別欄を「男・女」の選択ではなく任意記載欄に変更。なお、未記載とすることも可能とする。
2.「配偶者」「扶養家族数」「配偶者の扶養義務」「通勤時間」の各欄を様式内に設けない(各欄を削除する)こととする。

以下のリーフに様式例の作成に至る状況や、変更点、新旧を比較した具体的な記載例も載っています。
https://jsite.mhlw.go.jp/aomori-roudoukyoku/content/contents/R3_jigyonusi_rirekisyo.pdf

 確かに「公正な採用選考の基本」という厚労省のHPには、公正な採用選考を行うためには「公正な採用選考を行うことは、家族や生活環境に関することなどといった、応募者の適性・能力とは関係のない事項で採否を決定しないということです。
 そのため、応募者の適性・能力に関係のない事項について、応募用紙に記入させたり、面接で質問することなどによって把握しないようにすることが重要です。」とあります。女性か男性かという点については能力には関係がない事項かもしれませんが、適性には関係がない、また採用をする場合に考慮すべきでないということについては良く考えてみたいと思います。厚生労働省の履歴書様式は、男・女いずれかを選択する方法ではなくて任意記載欄になっており、未記載も可能ということなので、どのように記載するのかということについてがある意味意思表示になるような気がします。

コロナでここ4年間中断していた、事務所の社外研修に横浜に行ってきました。コロナ前は1泊で主に顧問先の博物館や工場見学に行くことが多かったのですが、今回は久しぶりなので日帰りで行ってきました。やはり顧問先のお仕事の一端に触れることは、事務所の方向性を振り返り、またそれぞれが担当している日常的な業務についても新たな気持ちで取り組めるようになるように感じ、中華街でのランチでもみんな楽しそうでしたので、とても実りある1日になったのではないかと感じました。

   


福祉業界の賃上げについて

2023-12-24 23:36:37 | 労務管理

「令和5年賃金引上げ等の実態に関する調査の概況(以下URL)」が11月28日に発表されました。令和5年の春闘は労組側は5%、企業側は3パーセント代と、団体交渉では攻防が繰り広げられたと思います。調査でどのような結果が出たかというと、P5の改定額及び改定率の調査結果一覧を見てみると一番高い鉱業、採石業、砂利採取業の5.2%(前年2.5%)の他、4%台もいくつかあり、3%台が一番多い状況となりました。1人平均賃金の改定額もおおよそ7,000円代から最高は18,000円代と例年の倍近くとなった業種が多いです。

この調査をお見せしながら顧問先の定例会議でご説明するのですが、先日社会福祉法人の人事の責任者の方が業界の厳しい状況をお話しされ、これは何とかしなければいけないのでは、と感じました。上記にあげた改定額及び改定率の調査結果一覧を見ると確かに令和5年には「医療・福祉」以外のすべての産業で賃金がアップしているにもかかわらず、医療・福祉だけ6,403円から3,616円と下がっているのです。なぜそうなるのかということなのですが、コロナウィルス期間中は補助金などが出ており、それを従業員に還元できたのが、その補助がなくなってしまい令和5年は他の産業のように昇給ができなかったということなのです。

社会福祉法人は、社会福祉事業を行うことを目的とした非営利法人であり、法律により税制や補助などの優遇措置はあるものの、一般企業のように利益を目的とした事業の展開はできないことになっています。従って利益よりも社会貢献的な活動が重視され、地域に密着して運営されており、地域の福祉ニーズに応えるという役割も担っています。顧問先の社会福祉法人も地域で郊外の立地を生かした素敵なイベントを行っており、地域住民の憩いの場になっていると感じています。

コロナ禍補助が出ており令和4年の昇給額は良かったといっても他の産業に比較して特に良いというわけでもありません。また医療と福祉が同じ産業のカテゴリーにくくられていますが、これは分けて考えてみる方がよさそうです。いずれにしても、社会にとって非常に大事な仕事をしており人手不足では困る福祉関連の産業の昇給額が、他の産業に比べあまりに低いという状況は改善されなければならないと感じました。

https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/jittai/23/dl/10.pdf

今日はクリスマスイブということで、街は凄い人出でした。今年は5月にコロナが5類に移行してから徐々に人出が増えてきて、11月あたりからは電車もラッシュがひどく、やはり人は人と接して生きていくことが幸せなのだなと再認識した年でもありました。とにかく今年も健康で色々な仕事を経験できたこと本当に有り難いことと思っております。来年は事務所の組織体制をさらに工夫して、よりアクティブかつ安定的な事務所運営ができるように頑張っていこうと思っています

※来週の日曜日のブログは年末年始のためにお休みさせて頂きます。良いお年をお迎えください。


求められ始めた65歳以上の労働力

2023-12-18 00:32:28 | 労務管理

最近のご相談で、65歳で高年齢雇用確保措置が終わっても引き続き雇いたい場合どうすればよいか、というものが増えてきたように思います。これまで大きな規模の企業については、60歳定年、定年後再雇用ののち65歳で退職のルールをかなり厳格に運用していたと思います。稀に余人に代えがたい人のために65歳の再雇用上限年齢後も個別の契約を結び働いてもらうということはありましたし、警備業などの一定業種においては第二定年を70代の半ばに設定する必要があるということで70代の契約社員も普通に働いているというケースもありました。しかし規模が大きければ大きいほど、後に続く人たちに役職や仕事を引き継いでいく必要があることが大きな要因となり65歳で再雇用がキッパリ終了という状況であったと思います。

しかしこのところそのような企業であっても、今の規程で65歳以上も契約することは可能か、または規定を改定したいというお話がやや増えてきました。これは人手不足が大きな要因なのだと思いますが、もう少し分析してみても良いような気がしています。考えられるのは、人口減少の影響が出るには少し早いような気がするので、人口減少は少し置いておいて、むしろ人手不足については、これまでの産業から新たな産業への業種移動が始まっているのではないかという点です。もう一つは、65歳以上でも全く問題なく元気に働くことができる人の増加でしょうか。さらに、40代半ばから50代半ばまでの就職氷河期で採用を控えたため各社ともその層の社員が少ないという事情がありそれを補う必要があることも影響しているように思います。これらを考えると、みすみす年齢が来たからと言って会社内で培ってきたスキルを失うのは残念という企業側の考えも理解できるような気がします。

 

現状2022年の総務省労働力調査の結果を見ると65歳以上の就業率は、男34.2%、男女計25.2%、女18.3%となっています。ちなみにいわゆる生産年齢人口といわれる15~64歳までは、男84.2%、男女計78.4%、女72.4%となっていますが、60歳から64歳だけを見ても男83.9%、男女計73.0%、女62.7%とほぼ変わらない状況です。この結果からするとやはり65歳以上はまだまだ労働市場から退出している状況であることがわかります。

高年齢雇用継続給付は、令和2年の雇用保険法改正により一定の役割を終えたということで令和7年4月から給付率が各月賃金の15%から10%に引き下げられることになり、その後廃止も含めて検討とされています。確かに定年退職後の賃金も、定年前よりは減るものの、65歳までの雇用確保措置が義務化された時期に比較すると水準もだいぶ上がってきていますし、65歳までは働くことが当たり前の時代になったと思います。今後70歳まで働くことが当たり前の時代になる可能性は高いと思われるので、65歳の再雇用後の働き方をその企業に合わせてどのようにデザインするか、試行段階に入ったと感じます。まだ努力義務ではありますが、高年法の70歳までの就業機会確保措置を上手く取り入れられるよう考えていきたいと思います。

12月は研修の予定が入っておらず、仕事が一段落したこともあり、かなり学生時代や会社に勤務していた時代の友人その他プライベートなお付き合いの友人と会う機会が沢山ありました。友人といってもほぼ先輩が多いのですが、久しぶりに会っても話が尽きず(この年齢になるとほぼ健康の話)、忘れたことを思い出すこともあり楽しい時間です。今年も残りあと2週間となりましたが、仕事、執筆、新たな業務への取組みとプライベートなお付き合いも含めて様々満足感がある1年だったような気がします。