OURSブログ

社会保険労務士としての日々の業務を行う中で、考えたこと、感じたこと、伝えたいことを綴る代表コラム。

9月からの厚生年金最高等級区分改定

2020-08-30 22:37:57 | 社会保険

9月から厚生年金保険の標準報酬月額の上限が改定されます。

8月までの最高等級は、第31級の620,000円(報酬月額は、605,000円以上)ですが、9月改定後の第31級は620,000円(報酬月額は、605,000円から635,000円未満)、最高等級は、第32級650,000円(報酬月額は635,000円以上)に変更になります。

保険料は第31級が113,460円(被保険者負担分56,730円)、第32級が118,950円(被保険者負担分59,475円)となります。

この最高等級の上限改定というのは、厚生年金保険法第20条2項で毎年3月31日における全被保険者の標準報酬月額を平均した額の100分の200に相当する額が標準報酬月額等級の最高等級の標準報酬月額を超える場合において、その状態が継続すると認められるとき、その年の9月1日から、最高等級の上に更に等級を加える改定を行うことができる、と定められています。

上記を見て頂くとわかる通り、第22級以上の標準報酬月額(報酬月額)の等級差は30,000円です。見えない等級としてさらにその上に仮の第33級665,000円(報酬月額は、665,000円以上)を設定することで、第31等級から仮の第33級に該当する場合は、実際は第31等級から第32等級への1等級の上昇であっても随時改定(月変)を行うことになる点に注意が必要です。

https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T200819T0030.pdf

また、5月等に固定的賃金の変動があっても、2等級以上のが差が生じないということで月変の対象にならない場合、申し出により9月に特例的な月変の対象とすることができるという通達も出ています。

https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T200819T0040.pdf

なお、今回健康保険法の標準報酬月額の上限の改定は行われず、また標準賞与額の最高限度額についても変更はありません。

安倍総理が辞任されました。8年弱の在任期間、本当にお疲れさまでした。安倍総理が総理大臣になられる前の日本は、民主党政権だけでなく自民党政権時代からしょっちゅう総理大臣が交替してばかりで、これで世界に信頼される国といえるのだろうかと恥ずかしいような気持ちでいました。どうなのだろうと疑問に思う総理大臣も中にはおられたと思いますが、日本人は国のトップに対して尊敬や愛情というものを持たず、批判ばかりでなぜ大切にしないのだろうと感じていました。その点安倍総理は5回の国政選挙の勝利により長きにわたり国のトップとして国民に支えられてきたと感じます。海外での総理の活躍や存在感も誇らしく感じていました。それまではサミットでもいつも日本の総理は隅っこに立っていることが多かったですから。ただコロナ後は特にマスコミはひたすら批判の嵐で残念に思います。

社労士としては「一億総活躍」「働き方改革」はやはり正しい政策だったと思っています。コロナで劇的に進んだ在宅勤務やフレックスは、今後特に女性が働くこと、また男性の育児参加や個人の生活の充実について大きな効果があると思いますが、これはコロナ前に働き方改革を進めようとしていなければできなかったと感じます。今後世の中が大きく変化していくことは確実だと思いますが、このことは将来大きく評価されると思います。働き方改革の到達点が見えてきたところで、その中でどのように最高の仕事ができるか、これからも考えていかなければならない宿題だと思っています。


女性活躍推進法改正

2020-08-23 23:51:11 | 法改正

例年8月の初旬に行っているOURSセミナーですが今年はコロナの影響で延期とさせて頂いていました。しかし次の時期であると来年の2月ということになり、来春の法改正の準備には間に合わない可能性がありやはり9月には実施したいということで、今回は半分収録を配信し、半分はソーシャルディスタンスを守りながら会場で実施ということにしました。

テキストもある程度でき上ってきたので、今週末はレジュメ作成に着手したのですが、来春だけではなくあれこれ細かく改正があります。コロナ禍の中ですでに施行されているものもあり、それもおさらいで取り上げる予定です。女性活躍推進法も既に6月に施行された分がありますのでここで取り上げておきます。ポインとは4つです。施行日がそれぞれ異なりますので注意が必要です。

①一般事業主行動計画の改正 【2020.4.1施行】

常時雇用する労働者数301人以上の事業主は、2020年4月1日以降が始期となる一般事業主行動計画を作成する際は、原則として、新たに定められた2つの区分ごとに1つ以上の項目を選択し、それぞれ関連する数値目標を定めた行動計画の策定届を、管轄の都道府県労働局まで届け出る必要があります。(電子申請、郵送、持参)

②情報公表の改正      【2020.6.1施行】

常時雇用する労働者数301人以上の事業主は、女性の活躍に関する情報公表についても、新たに定められた2つの区分から、それぞれ1項目以上選択して2項目以上情報公表する必要があります。

③プラチナえるぼし認定の創設【2020.6.1施行】

  • えるぼし認定:一般事業主行動計画の策定・届出を行った事業主のうち、女性の活躍推進に関する取組の実施状況が優良である等の一定の要件を満たした場合に3段階の認定します。
  • プラチナえるぼし認定:えるぼし認定を受けた事業主のうち、一般事業主行動計画の目標達成や女性の活躍推進に関する取組の実施状況が特に優良である等の一定の要件を満たした場合に認定します。

④情報公表の義務対象拡大  【2022.4.1施行】

一般事業主行動計画の策定・届出義務及び自社の女性活躍に関する情報公表の義務の対象が、常時雇用する労働者数が301人以上の事業主から101人以上の事業主に拡大されます。

かなり細かいですが概要は以下の通りです。

https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000594316.pdf

また、OURSの高橋が労政時報で特集記事を書いています(会員の方はご覧ください)。

https://www.rosei.jp/readers/article.php?entry_no=78540

夏休み明けの1週間でちょっと辛いかもしれないなあと思っていたのですが、かなり忙しくあっという間に終わってしまいました。週末は自粛の2日間でしたが、早稲田の同期とオンライン飲み会をしてみました。オンライン飲み会は初めてでしたのでどうなることやらと思ったのですが、あっという間に2時間、大学院を修了するまでの2年間は毎日とは言わないまでもしょっちゅう顔を合わせていたメンバーであり、試験や発表、修士論文を一緒に乗り越えた同志なので、久しぶりに顔を見ながら話ができて楽しかったです。年齢もかなり幅があり、また仕事の内容も様々なのですが、オンライン授業の話や、今年の1年生が優秀だという話だけでなく、コロナウイルスに対する医療体制の話や、在宅勤務の話など流石に社会保障について専門性を持つメンバーばかりというだけに情報交換ができた感じでした。

さて、今年の本試験が今日終わりました。受験生はお疲れさまでした。運営側もなかなか会場の確保が難しく、ということは受験生も大変な年になったことと思います。でも、ともかく年に1回の試験に受験生は人生をかけてくるので本当に中止にならなくてよかったと思います。しばらくは試験のことは忘れてのんびりできる時間を味わってもらいたいと思います。お疲れさまでした。


2020年の最低賃金

2020-08-10 20:57:07 | 労働法

6月28日付のブログで今年の最低賃金の行方を書いています。その後専門部会で、労働者側の「物価上昇を踏まえ、非正規雇用の方々などの賃金水準を確保するため譲れない」と主張もあり、労使の攻防の上で採決の結果、賛成5人、反対4人で据え置きが決まり、それを受けて厚生労働大臣の諮問機関である厚生労働省の中央最低賃金審議会は、20年度の最低賃金について全国平均の目安を示さないと決めました。最低賃金が決まる仕組みとして、厚生労働省の中央最低賃金審議会が上げ幅の目安を示し、都道府県ごとに地方最低賃 金審議会が8月下旬までに実際の改定額を決定することになっていますが、ほぼその結果も出そろったようで、「各県の審議会は経済情勢を鑑みて、(据え置き又は)小幅引き上げを判断した」という結果になったようです。

日経新聞8月5日付で、「東京地方最低賃金審議会は、最低賃金を改正せず、現行の1013円に据え置くことを東京労働局長に答申した。据え置きは2003年以来、17年ぶり。新型コロナウイルス感染拡大による景気の冷え込みを踏まえ、事業の継続性や雇用の維持を優先した。東京の審議会では経営者側と労働者側の意見が激しく対立。賃上げを求める労働者側の委員が審議会の採決を退席する場面もあった」とありこれまでにない厳しい攻防であったようです。

8月7日付で、「北関東3県の最低賃金引き上げ幅、8年ぶり1桁台」が伝えられています。「群馬地方最低賃金審議会は7日、2020年度の群馬県内の最低賃金を2円引き上げ、1時間あたり837円とするよう群馬労働局長に答申した。茨城の審議会は2円引き上げの851円、栃木の審議会は1円引き上げの854円とするよう各労働局にそれぞれ答申済み。1桁台の引き上げは3県いずれも12年度以来8年ぶりとなる。」とあります。

中央最低賃金審議会が示す目安は地方最低賃 金審議会が決定する引き上げ額を拘束するものではなく、各地方最低賃金審議会は提示され た引き上げ額を参考に, 都道府県の最低賃金額を決定または改定するという方式の中で、示された目安に対してどの程度地方最低賃金審議会がそれに沿った額を決定するのか、先日詳しく調べてみました。

地方ごとにランクが4つに区分されており、令和元年度はAランク・Bランクでは目安通り、Cランクが若干、Dランクがかなりの地域で目安より2円程度上げており、平成30年度の状況も概ね同じような状況です。東京は平成25年~令和は元年まで目安通り、それ以前の平成22年(10円目安→30円)、平成23年(4円→16円)、平成24年(5円→13円)と目安額を大きく上回る額を引き上げています。Aランク及びBランクについては、7年間順調に目安通り最低賃金を上げており、目安通りに落ち着くのではないか、Dランクについては引き上げの可能性はあるが引き上げ額はそれほどの額にはならないのではないかというのが今年の予想でした。

気になるのが今回と同様目安額が示されなかったリーマンショックの年の引き上げ額です。平成21年度地域別最低賃金額改定の目安については、その金額に関し意見の一致をみるに至らなかったという中央最低賃金審議会の答申でしたが、平成21年度の地域別最低賃金を東京で見ると25円引き上げています。引き上げ額が高いところでは、神奈川23円、埼玉13円、京都12円、大阪14円、北海道11円が2桁の引き上げで、引き上げを行わなかったのは、岐阜と新潟の2件のみです。しかしその時期は、生活保護と比較して最低賃金額が低いという状況からかなり真剣に引き上げの必要があったようで今年とはだいぶ状況が異なったようです。ちなみに当時の平成20年の東京の最低賃金額は766円(前年比較27円UP)、平成21年は791円(同25円UP)と今となってはかなり低いです。生活保護との乖離が解消されたのは、平成23年度であったようです。

7月11日付日経新聞では、「ドイツは6月30日、労使が集まる会議で21~22年の2年間の最低賃金の水準を決めた。世界的なコロナの感染拡大後に水準を決定したのは主要国で初めてだ。21年1月は20年の9.35ユーロから1.6%増にとどめるものの、22年7月には11.8%引き上げる。まずはコロナ禍の企業への影響を考慮して小幅増にとどめ、コロナの収束を見据えて22年に大幅に上げる。」と伝えています。日本の最低賃金の引き上げの停滞も今年だけになるよう、経済活動が戻るための国民の結束が必要かと思います。

気に入っているコーヒー屋さんが近所にあり散歩のついでにときどき立ち寄るのですが、自粛やとても小さな店だということもあり3月に行ったきり行っていませんでした。どうしているかなと気になり週末見に行ってみたところ、定休日だったのですがオーナーがコーヒー豆を寂しそうに挽いていました。立ち寄った時は必ず個別包装されたドリップバックを購入して家でも楽しんでいたのですが、オンラインで購入できないのかと思いつき調べたところありました。さっそく注文して届いたのでしばらくは、一緒に頂くチーズケーキのおいしさは辛抱して、その方法で我慢しようと思います。

いよいよコロナ禍の中、社労士の本試験が近づいてきました。あと少しの期間ですが集中することでだいぶ得点は伸びるはずなので受験生は頑張って頂きたいと思います。今年のお盆はおとなしく私も論文に取り組もうと思っています。そういうことで来週の日曜日のブログはお休みさせて頂きますのでよろしくお願いします。


妊娠中における母性保護について

2020-08-02 23:21:52 | 産前産後・育児・介護休業

産後4週間までを「パパ産後休業期間」ということで、男性育休の特別期間とする育児介護休業法の改正が検討されるようです。「少子化社会対策大綱~新しい令和の時代にふさわしい少子化対策へ~(2020年5月29日)」にも、配偶者の出産直後の休業促進の枠組みを検討することが書かれています。

厚生労働省が発表した2019年の統計によると、合計特殊出生率は1.36となり、4年連続の低下で2007年以来12年ぶりの低水準になったということです。フランスやスウェーデンでは長期的な取り組みで一時1.5~1.6台になった出生率が2.0前後まで回復したということなので、取組み方次第なのだと希望が湧きます。

以前から気になっているのが、育児休業等については育児介護休業法の改正をかなり行って対策をとってきていると思うのですが、妊娠から出産までの法律はほとんど改正がないことです。仕事で育児介護休業規程を見ることが多いのですが、その前の妊娠・出産については、労働基準法及び男女雇用機会均等法に定められている関係上就業規則に定められていることがほぼ100%です。分断されている点については一連のこととして扱っていかないとわかりにくいと感じています。わかりにくいだけではなく、一連のこととして扱っていかなければ「安心して子を産み育てる」という目標に行く道筋に欠けたところがあるのではないだろうかと最近気が付きました。

そもそも出産前の母性保護については、均等法で保健指導・健康診査を受けるための時間の確保が定められていますが、これは有給が義務付けられてはいませんし、妊娠中の通勤緩和(時差通勤や短時間勤務)は医師等から指導を受けた場合が原則で、こちらについては母健カード(母性健康管理指導事項連絡カード)があるのですが、労使ともに認知度は低いです。

労基法では、産前産後の休業期間の他軽易な業務への転換や変形労働時間制、時間外・休日・深夜労働の禁止などの定めがあります。平成10年に均等法が義務規定を設けたことに合わせて女子保護規定が撤廃され、妊産婦の保護のみ残りましたが妊産婦の保護については30年以上改正されていません。

妊娠中またはその前にいわゆる妊活についても休暇制度を法律改正により設けるなど国で支援する体制があれば、少子化に対しても効果があるのではないかと考えて、今後この辺りについては、沿革も含めて調べてみたいと思います。

いよいよ8月に入り、本来であれば夏休みには毎年旅行を計画してワクワクしているところなのですが、今年は無念のキャンセルで何となく気分的には淡々としています。いつも駅ビルにあるスーパーに食材を買いに行くのですが、週末は比較的時間があるので上の階の無印良品や本屋さんなどのぞいて気分転換をしていました。これが4月から6月初旬までスーパー以外は休業をしていたため、その間に行かないことに慣れてしまい、6月に再開してからもほとんどのぞくことがなくなってしまいました。人間の行動パターンは結構凄いものがありますね。やっと先週、特別定額給付金も入金されたことですし、消費喚起のためにもお買い物したいと思います。