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OURSブログ

社会保険労務士としての日々の業務を行う中で、考えたこと、感じたこと、伝えたいことを綴る代表コラム。

育児休業給付金延長審査について

2025-03-30 23:20:27 | 労働法

今年もあと1日で4月に入りますが、既に1年の1/4が過ぎ、本当に時間の経過の早さに驚きます。4月施行分の法改正は育児介護休業法、雇用保険法の改正が中心になりますが、その中で育児休業給付金の延長申請の際の審査をハローワークで行うこととなり、これまでより厳しくなるというものがあります。育児休業は1年が原則とされており、1年6か月又は2年までは(認可)保育所に入所できない等の理由があれば延長ができることが育児介護休業法で定められており、法定の育児休業であれば延長も含め、雇用保険法の要件に該当することにより育児休業給付金が支給されます。

保育所に入所できないための延長による育児休業給付金の申請には、市区町村が発行する「不承諾通知書」が必要ということで、これまで市区町村の窓口へのクレームやトラブルがかなり多かったようです。そこで今回本来の給付をする主体であるハローワークが審査を厳格化して延長の可否を判定するということにしたわけです。

4月からは申請の際に「不承諾通知書」等に加えて「延長事由認定申告書」と「保育所等の利用申込書の写し」が必要になるのですが、延長事由認定申告書には、入所保留を希望するなどの意思表示をしていないか、合理的な理由なく遠い保育所に申し込んでいないか、内定を辞退したことがないか、などをチェックする欄があります。要するに育児休業を延長するため恣意的に保育所の落選を狙っていないかをチェックするということになります。これは原則としての育児休業延長の考え方としては特におかしなことではなく、詳細が決まる前に、ハローワークが最終的に判断することになると聞いた時点で果たしてそれができるのかと感じたことを考えると、かなり今回の審査の厳格化の項目は納得できるものと思いました。

ただ、3月13日付の日経新聞の記事によると、これまで市区町村が本当に保育所に入所を希望する人に優先的に枠を割り当てる等役所の負担を減らすということもあったようです(確実に落選するための相談などもあったということです)。今回の審査の厳格化後も、100自治体の運用についての調査では71自治体が育休延長の可否を確認し、延長可能なら保育の優先度を下げると回答したそうです。延長希望を直接的には聞けなくなったものの、延長が許容できるかという確認を行う(ほとんど変わらない印象ですが)ということで、確認しない自治体は15%にとどまるということです。この記事にはちょっと驚いてしまいました。やはり育児休業が1年では短いと感じる人が多いということなのでしょうか。それであればいっそ最長2年までの任意の期間(子の誕生月にかかわらず1歳以降に必ず保育所に入所しやすい4月が来るわけですし)として育児休業給付に対する保険料率を上げる(これはおそらくそれほどの率にはならないと思われ)ということを検討して、むしろ変な手間をかけない方が良いのではないかと考えてしまいました。

桜咲きましたね。今日はお天気も良かったので日本三大桜の一つと言われている「神代桜」を見に行きました。花見は外国人も結構来ており、屋台なども出ており、フランクフルトも美味しく、北杜市の花見は東京とは違い人出もちょうど適度で楽しめました。また宇宙に約8か月行った桜の種子が若田光一さんの手で地球に戻り118粒中2粒が発芽して咲いたという「宇宙桜」もありなかなか堪能できました。

ただ近くに郷土資料館があり、そちらも見学したのですが、我々以外1人の見学者しかいなくて、立派に色々展示がされており勉強にもなる施設だったのですが、いかんせん下関と同様に日曜日にすら人がいないのに驚きました。人口減少についての本を読んでいることもあり、地方の人口減少を実感し、危機感を強く持ちました。


男性の育児休業取得率公表の際の計算方法について

2025-01-05 22:49:44 | 労働法

2023年4月から、従業員が1000人を超える企業は、男性労働者の育児休業取得率の公表が義務になっています。また今年(2025年)4月から育介法の改正により300人超の企業にも公表が義務付けられることになっています。公表するのは、企業のHPや「両立支援の広場」、上場企業であれば「有価証券報告書」においてですが、2年前に公表が義務付けられたことにより男性の育児休業取得率は飛躍的と言っても良いほど上昇したと感じています。ちなみに、厚生労働省イクメンプロジェクトの調査によると、令和5(2023)年6月1日時点での従業員数1000人超の企業における男性の育児休業取得率は46.2%、中小企業も含んだ2023年度雇用均等基本調査における男性の育児休業取得率は37.9%です。ちなみに同調査における令和3年の男性の育児休業取得率の状況は18.9%(さらに令和2年度は15.8%)とつい最近まで10%台だったことが分かります。

ところでこの取得率の計算方法についてはリーフレットが出ていますがポイントとしては以下の通りです。
まず対象企業の常時雇用する労働者については、以下いずれかとされています。
①期間の定めがない者
②一定の期間を定めて雇用されている者等であって過去1年以上引き続き雇用されている者または雇入れの時から1年以上引き続き雇用されると見込まれる者、とされています。

計算方法としては以下の改正リーフ(URLリンクあり)に記載がある通りなので割愛しますが、①育児休業等の取得割合で計算する場合と、②育児休業等と育児目的休暇の取得割合で計算する場合、いずれかとされています。②の計算式の分子には、小学校就学前の子の育児を目的とした休暇制度を利用した男性労働者の数を含めることになっていますが、育児休業、出生時育児休業及び子の看護等休暇は除かれるものとされており、また4月改正により創設される「養育両立支援休暇」は含まないとされています。2023年当時の厚労省が出した資料では、例えば…》失効年休の育児目的での使用、現状努力規定になっているいわゆる「配偶者出産休暇」制度、「育児参加奨励休暇」制度、子の入園式、卒園式等の行事や予防接種等の通院のための勤務時間中の外出を認める制度(法に基づく子の看護休暇を上回る範囲に限る)などが該当するとされています。また改正リーフに載っているQ&Aでは、休暇の目的の中に「育児を目的とするもの」であることが就業規則等で明らかにされている休暇制度であることが示されています。

そのほか、「産後パパ育休」と「育児休業」は分けて計算する必要はなく、 育児休業を分割して2回取得した場合や、育児休業と育児目的休暇の両方を取得した場合は同一の子について取得したものである場合は1人として数えること、 事業年度をまたがって育児休業を取得した場合は育児休業を開始した日を含む事業年度の取得として計算することや、分割して複数の事業年度に育児休業を取得した場合は、最初の育児休業等の取得のみを計算の対象とすることなどQ&Aの内容がポイントになるかと思います。

2025年4月改正用リーフ(男性労働者の育児休業取得率)
https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/001029776.pdf

あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。今年のお正月はお天気も良くて初詣日和でもありました。年末はかなりハードではありましたが、大掃除、年賀状、お正月の準備をしながら例年より1日お休みが多かったこともあり、溜まっていたオンデマンドの研修3つを聴いて、説明会レジュメを作りあげることができました。また年明けはいくつかご依頼を頂いている育介セミナーのため難解な条文を解読してレジュメを作りつつ、初詣、孫のお泊りなど色々と忙しくしていました。

ただその中で94歳の母を外食に連れ出した際、転ばせてしまい顔面をかなりひどく怪我をさせてしまいました。幸い足や腕の骨折は免れたのですが、私がもう少し準備をしっかりして腕をつかんでいればよかったのに、もう一方の手で歩行器を持っていたこともあり、腕からするっと抜けて転ばせてしまったことで本当に申し訳ないことをしてしまいました。絶対に転ばせてはいけないといつも慎重に行動していたのにもかかわらず母を転ばせてしまい怪我をさせたことは、想像以上に自分がショックを受けてしまい、年明け早々からやや落ち込み気味です。

ただ、今年事務所でやりたいことの構想のいくつかの考えがまとまったので、明日の仕事始めからはまた気持ちを新たに取り組んでいこうと思っています今年が皆様にとっても良い1年になりますように!


つながらない権利

2024-12-22 23:57:03 | 労働法

先日「労働基準関係法制研究会 」の資料を見ていたところ「つながらない権利」のことが議論されており、面白いと思いました。審議会の資料をみると、情報通信技術による常時アクセス可能性からの労働者の保護の文脈で論じられるのが、いわゆる「つながらない権利」の問題である。諸外国ではフランスにおいて、2016年の労働法典改正により、法制化がなされている。 時間や場所にとらわれない働き方の拡大を踏まえ、労働者の心身の健康への影響を防ぐ観点から、勤務時間外や休日などにおける業務上の連絡等の在り方について、どのように考えるかとされ、各国の制度制定状況が整理されています。

現状制度があるのは、フランス、スペイン、イタリア、ベルギーとあり、ドイツ、EU、イギリス、アメリカは制度はないものの検討はされており、特にEUは、2021年1月の欧州議会で「つながらない権利に関する欧州委員会への勧告に係る決議を採択」しています。

つながらない権利が提唱されたのは2002年頃のようで、その理由はもちろんネットやメールなどが当たり前になってきたということで、さらにその後SNSやLINEなども一般的になり、確かにいつでもどこでも繋がっているという状況になったのですが、いつでも仕事の連絡が可能になったという状況にもなったというわけです。

ドイツがなぜ法制化していないかということが同資料には載っていますが、2つの理由から立法処置の必要性自体について懐疑的な立場とされています。1つは労働者は労働時間外の自由時間において使用者等からのアクセスに応じる義務はなく、使用者は自由時間中の労働者に労務提供を求めてはならないことについて配慮義務を負っているため「つながらない権利」はすでに法的に保障されているということです。もう一つは使用者や顧客等からの常時アクセス可能な状態から労働者をどのように保護するかは各事業所の実情に応じて決定されるべき問題であり個々の事業所レベルの判断にゆだねるのが適切という考えです。

労働基準関係法制研究会の12月10日の報告書案では、考え方を「整理し、業務方法や事業展開等を含めた総合的な社内ルールを労使で検討していくことが必要となるため、話し合いを促進していくための積極的な方策(ガイドラインの策定等)を検討することが必要と考えられる。」とされています。つながらない権利は「労働からの解放に関する規制」の中で休憩、休日、勤務間インターバル、年次有給休暇と並んで取りあげられており、今後の労務管理の新たなテーマとなると思います。

私自身の経験で恐縮ですが、今から20年以上前にまだスタッフも数名という時代に、もともと受講生で親しかったスタッフだったということもあり、休日にショートメールをしたところ、後で「休日にメールされるのは嫌だ」といっているというのが耳に入り、それからはかなり気を遣ってきたと思います。あの頃はまだ連絡できるツールもそれほど多くなかった時代ですが、確かに今はいくらでも連絡でき、また相手が確認したかどうかも既読で分かる場合もあるのですから、いつ会社から連絡があるかわからないと思えばやはり休まらないのだろうと思います。現在うちの事務所では在宅勤務の日の労働時間以外はPCを開いてはいけないことになっているので、私は翌日事務所にほとんどいないなどの場合夜かなり遅い時間でも「おはようございます」とはじまるメールをしています。これは翌日の朝見てるんだよね?というメッセージなのですがやはりだめでしょうか。チャットは緊急時以外は時間外に連絡するのは役員くらいで、時間外の連絡にならないように注意しています。しかし、このところ外出も多く、事務所に夜まで戻れないときなど、伝えようとして既にスタッフは退勤していることも多く、その時間帯にはチャットは厳禁と考えているのでなかなか伝えるチャンスがなくて困るということが結構あるのが実態です。その場合は付箋にメモをしてデスクに貼るというアナログな対応にしています。

さて、今年も残り10日を切るところまで来ました。今年は事務所移転という大仕事も無事終了し、来年は落ち着いて少しのんびりと仕事をしたいと思っています。と言っても1月から2月にかけてかなりセミナーの仕事が多く入っており、体調管理をしっかりして乗り切りたいと思います。まずは今年1年間ブログを読んでいただきまして有難うございました。来年もよろしくお願いします。来週は年末年始期間ということでブログはお休みしますのでよろしくお願いします


2025年4月からの65歳まで希望者全員雇用義務化について

2024-11-24 21:15:26 | 労働法

先週、顧問先からのご質問で、2025年4月から65歳までの雇用義務化と聞いたのだが規程等変更する必要はありますかというものがありました。現状ほとんどの企業では65歳までの雇用確保措置はしっかりとられており、来年の春からの65歳までの雇用義務とは今さら感があります。それでもネットではその文言が結構出てきているので誤解のないように取り上げてみたいと思います。

そもそも65歳までの高年齢雇用確保措置は、高年齢者雇用安定法の改正により平成25年4月から希望者全員の雇用が義務化されており、①65歳までの定年引上げ、②定年制の廃止、③65歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入のいずれかの措置を講じなければならないとされました。その際、平成25年3月31日までに労使協定により制度適用対象者の基準を定めていた場合には、令和7年3月31日までに段階的に基準適用対象者を引上げていくこととする経過措置がありました。つまり令和7年3月31日までは基準に該当しなければ65歳まで雇用をしなくても良いとするルールが生きているということになります。最近は65歳までの雇用は比較的当たり前になっていたため、既に就業規則の該当条文を削除したケースもありますが、まだ残してある会社もあります。

この労使協定による制度適用対象者の基準は、平成18年4月1日から施行されたものであり、高年齢雇用確保措置のうち継続雇用制度については労使協定により対象となる基準を定めることができるとされたものです。この基準が希望者全員65歳までの雇用義務化が施行された平成25年4月1日までに(3月31日までに)定められている場合は、その対象者がいなくなる令和7年3月31日までは有効とされたのです。基準は会社により様々定められていますが、例えば「直近の健康診断の結果で業務遂行に問題がないこと」「直近3年間の人事考課でDをとったことがないこと」「勤続〇年以上の者」など具体的かつ客観的なものである必要がありました。

令和7年3月31日までは対象者がまだ残っているということで就業規則の定年及び雇用確保措置の条文に基準や労使協定が定められているケースはまだあると思います。就業規則に定められた雇用確保措置の基準を削除するとともに、基準を定めた労使協定も廃止する必要があるので忘れないようにしたいところです。なお、令和7年4月以降は、定年後継続雇用については原則として希望があれば65歳までの雇用を確保する義務がありますが「解雇事由又は退職事由に該当しないもの」という条件を付けることは可能で、これは更新の際の条件にもすることができます。

平成18年の高年齢雇用確保措置義務化の際は、施行日前1年間、かなり会社さんが抵抗を示されており、基準を定めるのを随分とお手伝いしたものでしたが、かなり不満が多かったこの法律も、平成18年4月施行日後はピターッと収まってしまい、日本企業のコンプライアンス意識の高さに感動したのを覚えています。既にあれから20年近くが経ち、今や人手不足の時代到来で、65歳の雇用上限年齢を超えてさらに雇い入れたいので就業規則を改定したいというご希望が多くなっているのが現状です。国は人口減少の局面を見通して65歳までの雇用を目指したのでしょうか。先をさらにその先を見通して手を打つということはビジネスでも非常に大事なことといつも思っていますし、また面白さを感じています。

事務所移転は無事完了しました。新事務所は倉庫も広くとっており、席数もまだゆとりがあるためゆったりと快適なオフィスになっています。また日比谷公園のお隣りなので窓から紅葉も眺めることができ、事務所に行くのが楽しみです。ランチも昼のお弁当も渋谷よりかなり安いです。ただ毎日のように立ち寄っていたヒカリエやスクランブルスクエアに気軽に行けなくなってホームシック気味というのが正直なところでもあります。

   


衛生委員会で注意したいこと

2024-10-27 23:03:39 | 労働法

衛生委員会は、常時使用労働者50人以上の全業種で設置義務があり、労働者の健康障害を防止するための調査審議を行うことになっています。特に働き方改革以降重要なテーマとなっている労働者の健康保持、長時間労働の削減を取り扱うための委員会ですので、しっかり運営する必要があります。以下のリーフレットには、委員会の目的や委員の構成、調査審議事項、運営についてわかりやすくまとまっています。
https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/anzen/dl/0902-2a.pdf

この中の構成員である産業医がグループの他の事業場の産業医を兼務できるかという点については通達が出ています(平成9.3.31基発第214号、令和3.3.31基発0331第5号)。あくまで専属産業医が非専属事業場の産業医を兼務をすることができる場合ですが、要件は以下の通りです。なお、常時 1,000 人以上の労働者を使用する事業場と、一定の危険有害業務に常時 500人以上の労働者を従事させる事業場では、その事業場に専属の産業医を選任しなければなりません。

1 専属産業医の所属する事業場と非専属事業場とが、以下の状況であること。
 ①労働衛生に関する協議組織が設置されている等労働衛生管理が相互に密接し関連して行われていること。
 ②労働の態様が類似していること等一体として産業保健活動を行うことが効率的であること。

2 専属産業医が兼務する事業場の数、対象労働者数については、専属産業医としての趣旨及び非専属事業場への訪問頻度や事業場間の移動に必要な時間を踏まえ、その職務の遂行に支障を生じない範囲 内とし、衛生委員会等で調査審議を行うこと。
 なお、非専属事業場への訪問頻度として、労働安全衛生規則第15条に基づき、少なくとも毎月1回(一定の条件を満たした場合は少なくとも2月に1回)、産業医が定期巡視を実地で実施する必要があることに留意すること。

3 対象労働者の総数については、労働安全衛生規則第13条第1項第4号の規定に準じ、3千人を超えてはならないこと。

また、労働基準監督署の調査の際にはほとんどの場合衛生委員会の議事録は確認されると思います。最近の調査では、「長時間労働について審議していない」という指導がありました。これまで、ここまで細かく審議の内容まで確認されていなかったようにも思いますが、まずは各部門の長時間労働者の確認などのほか調査審議事項について漏らさず行っておきたいところです。

またグループ会社と親会社の衛生委員会を合同で親会社において開催できるかというご質問があり調べたところでは、合同は認められないが、親会社とグループ会社それぞれの衛生委員会を開催した上で、合同で行う方法であれば認められるということでした。

今回の選挙は自民党に非常に厳しい結果となりました。国民の信頼を失ったということなのだろうと思いますが、今後様々な政策が進んでいくか気になります。                                  

 


時間外割増賃金の算定基礎(住宅手当)

2024-10-06 21:00:35 | 労働法

割増賃金の算定基礎から除外できる賃金は労基法第37条5項と労基法施行規則第21条に以下が定められています。
➀家族手当、②通勤手当、③別居手当、④子女教育手当、④住宅手当、⑤臨時に支払われた賃金、⑥1か月を超える期間ごとに支払われる賃金

上記は限定列挙であり例示ではないため拡大解釈はできないこと、一律に支給される賃金ではないこと、また名称ではなく実質をみることが肝要です。ここで除外される賃金は、労働と直接的な関係が薄く、個人的事情に基づいて支給されているとされるため割増賃金にはなじまない趣旨で割増賃金の算定基礎から除かれています。除外賃金かどうかのご質問に回答する際は上記の考え方を元に判断しています。

この中で住宅手当については、他の除外賃金より後の平成11年10月から算定対象外とされました。調べてみると、平成11年以前から住宅手当が割増賃金の算定基礎とされているのは個人的事情に左右される場合が多いという点から批判があったようで、改正に至ったということことです。あとから除外賃金に規定されたため、除外賃金にされていない会社も時々見受けられますが、厳密にみるとやはり除外賃金には該当しないというケースもあります。平成11年の通達をみると具体的に示されていますので、確認しておくと良いと思います。(平11.3.31基発170号)

通達で示されている具体例としては、除外できるケースと除外できないケースが示されており、ポイントを絞ると以下の通りです。
➀除外できる住宅手当
・住宅に要する費用(賃貸費用や購入費用など)に定率を乗じた額の支給
・住宅に要する費用を段階的に区分し、費用の増加に応じて額を多く支給(家賃5~10万円の場合2万円、10万円超の場合3万円など)
②除外できない住宅手当
・住宅の形態ごとに一律に定額支給(賃貸の場合2万円、持ち家1万円など)
・住宅以外の要素に応じて支給(扶養家族があり2万円、扶養家族なし1万円など)
・全員に一律支給

確かに特に住宅以外の要素が含まれているケースは結構見受けられますので注意が必要だと思います。

お盆明けからかなり続いていたセミナーの仕事が一段落したので、少し研究の時間がとれそうです。読みたいと思って購入してある本も自宅の机に山積みになっている状況なので嬉しいです。ちょうど気温も下がり秋が来たので読書の秋です。

秋といえば読書だけでなく食欲の秋ですね。今年の秋は週末に自宅の周りの行ったことのないお店巡りをしてみたいと思っています。意外にいつでも行けると思い行ったことがないお店が沢山あることに気がつきました。特にとんかつの美味しいお店が多いといわれている地域なのですが、焼鳥屋さんもあり、焼肉屋さんもあり、これはわりに良く行く中華もありなかなか多様性に富んでいるのです。平日はどちらかというと特に夜はカロリーを控えめにしているので週末1食くらいは好きなものを思いっきり食べても罰は当たりませんね。


65歳定年制導入の課題

2024-09-16 22:27:16 | 労働法

定年年齢については平成10年の高年齢者等雇用安定法の改正により、下限年齢60歳が定められており、それ以後65歳までの雇用確保措置(義務)や70歳までの就業確保措置(努力義務)は設けられたものの、定年年齢の60歳下限については改正されていません。今後70歳定年年齢義務化になるときが来るかもしれませんが、今のところ予定は見えていません。高年齢者等雇用安定法の規定は以下の通りです。

(定年を定める場合の年齢)
第八条事業主がその雇用する労働者の定年(以下単に「定年」という。)の定めをする場合には、当該定年は、60歳を下回ることができない。ただし、当該事業主が雇用する労働者のうち、高年齢者が従事することが困難であると認められる業務として厚生労働省令で定める業務に従事している労働者については、この限りでない。

ただし書き以降の60歳を下限とする必要がない業務は施行規則により定められており「鉱業法第4条に規定する事業における坑内作業の業務とする。」とされています。

大企業はコロナ前までは一律65歳で継続雇用が終了=退職がかなり徹底されていたように感じますが、最近は人手不足もあり「会社が認めた場合は、65歳以後も契約を更新する場合がある。」という一文を入れたいというお話がかなり頻繁に来ている状況です。

現状定年年齢はどのような状況か、令和5年12月に厚生労働省が発表した「高年齢者雇用状況等報告」をみると、以下の通りでした。

定年制廃止企業 3.9%、60歳定年企業 66.4%、61歳から64歳定年企業2.7%、65歳定年企業23.5%、66歳から69歳定年企業1.1%、70歳定年企業2.3%

60歳定年制は前年から1.7ポイント減少、65歳定年制は1.3ポイント増加ということでジワリと65歳定年制を採用する企業が増えてきているのが分かります。

9月13日に閣議決定された高齢社会対策大綱(概要)では、生涯を通じて活躍できる環境の整備の中で年齢にかかわらない活動機会の拡大が取り上げられており、その中で現在収入のある仕事をしている60歳以上の人について、「働けるうちはいつまでも」との回答が約4割、「70歳くらいまで」又はそれ以上まで働き続けたいとの回答を合計すると約9割に上るという若干驚きの数値が出ています。

おそらく定年年齢の下限は60歳と法律が定めていても、今後は65歳定年制をとる会社が増えていくものと思います。その場合、賃金制度や退職金の扱いはどうするか、社労士としてはアドバイスをしっかりできるように準備しておきたいところです。

つい先ごろも顧問先で65歳定年制を導入した企業があったのですが1点導入する際の留意点にスタッフと話していて気がついたのが、定年退職日の決め方です。年齢に関する法律で誕生日の前日に新たな年齢に達することになっていますが、定年退職日を「65歳に達する日」「65歳の誕生日の前日」「65歳に達した日の年度末」などと規定している場合、失業給付を受給する際には離職日は65歳となり、受給資格は「高年齢求職者給付金」となります。要するに最大でも基本手当日額の50日分の給付日数になってしまいます。65歳未満で退職していた場合は、最大150日分を受給できますので、100日分の差となってしまいます。150日の失業給付を受給するのであれば定年退職日を「65歳に達する日の前日」などと規定しておくことになりますが、その場合65歳定年とはいえなくなるでしょうか。ハローワークに確認したところによると、65歳に達してからの離職は必ず「高年齢求職者給付金」の対象となるとのこと。65歳定年制導入の一つの課題だと思います。

これまで60歳定年の場合、65歳まで再雇用され、再雇用後であれば65歳到達前に退職するケースもかなりあったかと思いますが、定年となると最後まで退職しないケースがほとんどとなるかと思われ、また退職金への影響も考えると定年退職日の設定は慎重に検討すべきと考えます。

土曜日は猛暑の中社労士会の野球大会の応援に行き、真っ黒に日焼けしました。渋谷支部は3連覇ということで、新たなメンバーが加入しますます強くなってきた感じです。毎年この野球応援が終わるといよいよ秋シーズンが始まります。OURSの新年度も9月スタートなので、明日から気持ちを新たにして行きたいと思います。

 


今後の労使対話の仕組み

2024-09-09 00:08:34 | 労働法

ビジネスと人権の研修ファシリテータを務めるようになって、一番自分の中で思うところがあるのが「労使対話の重要性」です。労働組合は労働者の声を代表するものですが、現在労働組合の組織率は16.3%ということで、前年よりさらに低くなった状況です。大半の企業は労働組合がないなかで、労働者の意見の吸い上げについては困難な状況なのではないかと思われます。労使間のコミュニケーションのために社労士としてできることがあるのでは、という気付きがありました。

36協定の締結や就業規則の意見聴取について、労働基準法は「当該事業場に、過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者」と労働者代表について定めていますが、「労働者の過半数を代表する者」については労働者の代表というには実質的な面で難しい場合がほとんどであると感じます。

労働基準関係法制研究会が、2024年1月に設置され第6回に「これまでの議論の整理」が取りまとめられていますが、その中でも「4.労使コミュニケーション」についての記述があり、過半数代表者に関する課題が取り上げられています。その中では「デロゲーションにおける『過半数代表』については、これまでも様々な課題が指摘されており、過半数労働組合が過半数代表となっている場合には比較的問題は少ないと考えられるが、労働組合がない事業所で過半数代表者が交渉を担う場合は、自発的に過半数代表者となっていないことが多いと考えられる中で、その選出方法の適正性や、代表者の能力・負担などについて問題点が多いという意見があった。」とあります。

確かに過半数代表者の要件である民主的な選出などはここの所だいぶ浸透しては来ていますが、はたして過半数代表者がどの程度労働者の代表としての意見集約ができているか、また責任を負えるのかなどの点では形式的になっていることは否めません。

労働組合がある主に大企業は、賃金決定の場面でも、規程改定の場面でも労働者の意見を聴くことができますが、労働組合がない企業の場合は労働者の意見を実質的に聴くことはなかなか難しいというのが現状で、従来より特に働き方について労働者の意見や考えを尊重しなければならない時代になった今としては、労使のコミュニケーションを図れる仕組みが必要だと感じます。それは労働組合なのか、それだけではなく他の仕組みを準備するのか、今後の展開をみたいと思っています。

※「デロゲーション」という聞きなれない言葉が出てきていますが調べたところによると「法からの逸脱」「法定基準からの逸脱」という意味だそうで、「日本の場合は、36協定を例に取ると、これはデロゲーション協定なのです。」と上記研究会の議事録にはあります。要するに36協定の免罰効果の発生につながるものでしょうか。

ここに来てビジネスと人権の研修や人権DDの導入支援のお話しが来て、ここ2年弱の動きが少しずつ実を結び始めています。まだまだ自分も勉強が必要だと感じており、関連した仕事を受けていく中でアップグレードさせていきたいと思います。

昨日土曜日は、恒例の東京都社会保険労務士会の野球大会でした。今年は監督がくじ引きでシード権を獲得をしたがゆえ半日の応援でしたが、この厳し暑さの中試合に出ていないにもかかわらず思い切り汗をかきました。結果は順調に勝利を収め、来週は2試合午前中からです。

9月19日(木)東京テレワーク推進センターさんのセミナーで「育児・介護休業法の改正におけるテレワークの活用」をハイブリットでお話しさせて頂きます。まだ少し枠があるようですのでご興味があればお申し込みください。
https://tokyo-telework.metro.tokyo.lg.jp/seminarevent/detail?id=601


労働局 同一労働同一賃金の調査の留意点(続き)

2024-07-29 04:07:36 | 労働法

先週の続きで、労働局の同一労働同一賃金の調査について取り上げてみたいと思います。事前に送られてくる調査票は都道府県の局ごとに異なるかもしれませんが、東京労働局では「パートタイム労働者・有期雇用労働者の雇用管理状況ヒアリング票」というものです。これは、労働者数など企業の概要、最も賃金(時給)が低いパートタイマーや有期雇用労働者とその者に最も業務内容が近い正社員の職務内容、職務の内容・配置の変更についての違い、雇入れた際の説明についてなど、かなり細かく記載する必要があります。

調査票を記載する段階で会社としてはかなり待遇差の説明の整理は行われることになります。説明についてはガイドラインに沿ったものであれば特段本質的な指摘はないようですが、調査の結果は細かな指摘(助言)があることは多いようです。例えば労働条件通知書に「昇給」の記載がなかったなどについては法違反ということで指摘は当然ですが、労働条件通知書や規程を周知しているかどうかの証明を求められたり、派遣の同一労働同一賃金等は労使協定の統計の年号が古く修正されていないなどかなりこまかなものと感じますし、さらに派遣元が派遣先に通知する事項について通知書に不備がなくても通知をしていたか証拠を出すようになど、少し首をかしげたくなるケースもあります。

同一労働同一賃金の是正については、いわゆる労働時間など監督官(方面)の調査とは法律上の位置づけも異なりますので、是正報告書も異なります。東京労働局長あての是正報告書は形式が統一されているようで、「令和○年○月○日に助言のあった事項について、当社においては下記の通り措置を講じたので報告します。」という一文が記載されており、その下に労働条件の通知の内容の不備であった場合、「(法6条)短時間・有期雇用労働者に労働条件通知書を交付する際、別添の様式で行うこととしました。」とこれも既に記載されたものを渡されて、上記日付を入れ、あとは今後使用するモデル労働条件通知書を別途添付するということになります。今後さらに調査が増えれば指摘・助言なども様々出てくるかもしれませんが、一応流れとしては同じであろうと思われます。

BBクラブの勉強会が土曜日猛暑の中行われて100人を超える会員が集まって法改正の講義を受けてくれました。今後夏は代々木公園の駅から少し距離のあるオリンピックセンター開催を見直した方が良いという意見もあり、検討したいと思いました。参加者は大変だったと思いますが、暑さにも負けず合格後もきちんと年に2回の法改正を勉強してくれるという気持ちを心から嬉しく感じています。

なおBBの会員の方には、講義中追加でお話しした内容のURLを載せたレジュメに差替えてありますので是非BBクラブのブログで確認してください。また次回の日程をお伝えし忘れたので以下予定しておいていただければ幸いです。

次回の勉強会は以下の日程で行われます。
日 時:  2025年2月8日 13:30開講 予定
会 場:  国立オリンピック記念青少年総合センター
      センター棟 セミナールーム


労働局 同一労働同一賃金の調査の留意点

2024-07-21 15:30:18 | 労働法

先週年金事務所の調査についてブログに書いたところいつもより多くの方が見て頂いているようで、調査対応について悩まれている人事担当者等が多いと感じましたので、今週と来週で労働局の「同一労働同一賃金の調査」について、多少の経験を元に留意しておく点などを書いてみたいと思います。

同一労働同一賃金はそもそも平成30年12月に「短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針」が公布・告示され、これがいわゆる「同一労働同一賃金のガイドライン」として裁判例と共に現在まで考え方の基礎となっています。

平成30年当時、同一労働同一賃金のガイドラインに沿って各社とも特に均衡待遇について合理的な説明ができるか、又は待遇差を解消するかを検討しました。その際慶弔休暇については正社員と契約社員の差をなくした会社さんが多かったと記憶しています。令和5年12月26日の労政審、雇用環境・均等分科会(第66回)の資料を見ると、正社員100とした場合の有期雇用パートタイムに実施した内容のベスト3は通勤手当(84.7)、法定外休暇(66.8)、慶弔休暇(61.8)です。逆に住宅手当等の手当関係、退職金などは実施が10.0前後ととても少なく、ただ人事評価、賞与、昇給は(45.0前後)と、思ったより実施していると感じます。

厚生労働省は、令和4年12月から「同一労働同一賃金の遵守の徹底に向けた取組み」を行っており、労働基準監督署ルートと都道府県労働局ルートの2方向から調査等を行っています。顧問先に監督署の調査のご連絡があり、事前に送られてきた調査票が同一労働同一賃金だったので、てっきり同調査と思い会社さんと事前に準備をしたところ、実際の調査は労働時間を中心とした労働基準法の調査であったことがあります。監督官に最後に同一労働同一賃金の調査はないのでしょうかと問いかけたところ、あれは労働局の担当なのでということでサラリとかわされ、後日労働局の同一労働同一賃金の調査が別にあったという事例がありました。思えば以下の取組みの流れを考えると当然で、労働基準監督署の監督官は「事実関係の確認」を行っていたのだということが分かります。

上記資料によると、労働基準監督署の「事実関係の確認」は、令和4年から令和5年11月までに39,174件、その中で対象企業を選定して都道府県労働局が「パート・有期雇用労働法に基づく報告徴収等」として同期間に7,983件、法違反があると「都道府県労働局長による助言・指導等」から不合理な待遇差の是正につなげます。法違反のない場合も雇用管理改善を助言として「働き方改革推進支援センターにおける相談・コンサルティングにより待遇の点検・見直しにつなげるとされています。

調査があるからというだけでなく、最近もかなり同一労働同一賃金についてはご相談が多く、特に待遇差について検討されることが多くなっているように思います。悩ましいものの1つが賞与ですが、正社員は成績等評価による支給、契約社員は慰労的な根拠と賞与の支給基準が異なるとことで額の差び説明がつくということで問題ないようです。ただ実際の調査の際には、正社員のみに精勤に係る賞与が別途年2回支給されていた場合、契約社員に対しても「均等・均衡待遇」の観点から支給を検討しては如何かという「提案」がありました。(来週に続く)

いよいよ梅雨明けで、これから暑い日が続きそうです。熱中症に気を付けて過ごしましょう。来週は年に2回のBBクラブの勉強会です。100名を超える参加のご連絡を頂いており、参加頂く方達にお会いできるのを楽しみにしています。


時間単位年休の導入留意点

2024-06-23 21:37:02 | 労働法

時間単位年休は平成22年の労働基準法改正により同年4月から施行されました。当時は、仕事中に1時間や2時間抜けるのを認めるなど考えられない、といった反応の会社が非常に多かったと思います。ただ時は流れ、特にコロナ禍によりテレワークが普及した影響が大きかったと思いますが、労働時間を柔軟に考える会社が増え、最近時間単位年休を導入したいというご希望が多いと感じます。育児中のお迎えや、通院、また友人とのランチなどお昼休みの1時間では足りない場合、特にフレックスを導入していない場合は、確かに仕事とプライベートの両立には有用です。

元々導入時のリーフを見ると「仕事と生活の調和を図る観点から、年次有給休暇を有効に活用できるよう、時間単位で年次有給休暇を付与できるようになります。」とあり、時代が追い付いてきたということだと思います。

時間単位年休の導入については労使協定の締結が必要であり、労使協定には➀対象労働者の範囲、②時間単位年休の日数、③時間単位年休の1日の時間数、④1時間以外の時間を単位とする場合の時間数、を決めることで比較的簡単に導入することができます。なお労使協定の監督署への届出は不要です。また時間単位で付与するのは年5日の範囲内とされています。

上記③の意味は所定労働時間が7時間30分の会社が導入する場合は、(30分という概念が時間単位年休にはないので)切り上げて1日8時間分を付与することになるということです。また上記④の1時間以外を単位とするというのは、2時間単位等で取得するルールなどを決めておく場合です(実際はあまり見かけません)。

問題はその後の管理と翌年の繰り越しです。これはシステムで対応する方が良いと思いますが、かなり難儀する場合があります。考え方としては8時間の所定労働時間の場合で時間単位年休5日付与のうち20時間取得した場合残りが20時間(2日と4時間)になりますが、この時間を含めて翌年も最大5日までが時間単位年休として使えることになります。

その他留意点としては、年5日の範囲内と制限しているのは、やはり年次有給休暇の本来1日単位でまとまって休息をとるという本来の趣旨は変えていないということと考えます(従って労総者有利と考えたとしても付与した日数全て時間単位で取得できるとするのは法趣旨と異なる扱いになると考えます)。

また、時間単位年休の対象労働者の範囲は決めることができますが、対象外にするには正常な事業運営の必要性(班で交代作業のため中抜けができない)などから定めることができるとされており、育児を行なう社員に限る等の取得目的による制限は認められないとされています。

なお、時間単位年休は、平成31年施行の年5日の取得義務化による5日の対象外とされています。

社会の動きがとても早く、また法改正もそれにつれてあり、社労士として取り組むテーマに事欠かないことが本当に面白いと感じています。読みたい本が山積みなのでもう少し余裕が欲しいかなと思いますが・・・。


就業手当の廃止

2024-06-02 23:59:19 | 労働法

改正雇用保険法が成立して、令和6年10月1日施行の教育訓練給付金の給付率の引き上げや、令和7年4月1日施行の就業促進手当の見直し、令和10年10月1日施行の週所定労働時間10時間以上への適用拡大等について通達が出ています。特にやはり注目度が高いのは適用拡大だと思うのですが、おそらくほとんど興味を持たれていない「就業手当」がひっそり廃止になることについて感慨深いものがあるので触れてみたいと思います(ほとんどの方は関心がないものと思います。すみません)

就業手当は、平成15年に創設されたもので、完全失業率が平成14年から15年にかけては過去最高の5.5%(令和5年は2.6%)となった時期です。就業手当は就業促進手当の一つとして再就職手当と常用就職支度金に統合されたものです。目的としては多様な就業形態による早期就業を促進するために創設されたということなのですが、要件としては基本手当の支給残日数が所定給付日数の3分の1以上かつ45日以上」ということで再就職手当と同じです。異なるのは、就業手当の「職業に就くか又は事業を開始する」に対して、再就職手当は「1年を超えて引き続き雇用されること」という点です。つまり、失業期間中にちょこっとアルバイトをしたということであれば就業手当を支給するという給付なのですが、支給額が基本手当日額の30%であり額的には非常に少なく設定されています。令和5年8月1日からの1年間の基本手当の上限額は最高で8,490円ですが、就業手当の上限額は1,887円です。ちなみに再就職手当の上限額は6,290円です。就業手当の目的は基本手当を受け切ってから就職するのではなく、ちょこちょこ働きながら早めに就職を決めようということなのかと思いますが、今でもやや理解できない感じがします。

就業手当を受給すると基本手当を受給したものとみなされるため、失業期間中にアルバイトをした場合、認定の際に「就業手当」を受給するのではなく、失業した日を後ろ送りにして受給期間内に基本手当を受給したほうが受給額が多くなるということで、失業期間中アルバイトをした場合就業手当として認定されたくないというご相談が結構ありました。私も心配になりハローワークに問い合わせたのですが、結局ハローワークでは個別の事情に配慮された判断がされており、就業手当を受給するケースは少ないようでした。それでも今回、改正にあたり審議会で出た資料を見て若干驚いたのですが、令和4年度の受給者数は再就職手当の359,734人に対して、就業手当は3,486人ということでした。やはり給付の効果としては分かりにくく、廃止は自然なことであったように思います。

改正雇用保険法通達(令和6.5.17基発0517第1号、職発0517第4号)
https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T240521L0030.pdf

金曜日夕方までぎりぎり仕事をしてから1泊で京都に行ってきました。人混みを避けて動くことにして初めて川床ランチを経験してきたのですが、これはとても気持ちが良かったです。ただ午後つい街中に出てしまい、オーバーツーリズムを目の当たりにしました。バスが大混雑で停留所によっては乗れない人も出てきたりでテレビで見ていた通り地元の方は移動が大変だろうと実感しました。ほぼ1日の京都でしたが、さすがに食事もとても美味しくて、かなり満喫できました。  


小学校就学前までの短時間勤務について

2024-03-24 22:40:48 | 労働法

2025年4月改正予定の育児介護休業法改正法案のうち「子の年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置の拡充」の中に、3歳以上の小学校就学前の子を養育する労働者に関し、事業主が職場のニーズを把握した上で、柔軟な働き方を実現するための措置を講じ(※)、労働者が選択して利用できるようにすることを義務付ける、という内容があります。
(※)上記講ずる措置とは以下を言います
➀始業時刻等の変更、②テレワーク、③短時間勤務、④新たな休暇の付与、⑤その他働きながら子を養育しやすくするための措置のうち事業主が2つを選択

なお、現状の育介法第24条では、小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者等に関する措置として、a.育児休業に関する制度(育児休業に「準ずる」休業等)、b.所定外労働の制限、c.短時間勤務、d.始業時刻変更等の措置、が「努力義務」として定められています。内容を比較すると「テレワーク」「新たな休暇の付与」が目新しいところです。

法案が通れば、来年4月から上記①~⑤の措置の中で会社は2つの措置を選択し、社員はそのうちの一つを選ぶことになるのですが、おそらく③の短時間勤務はかなりの企業が選択するのではないかと思います。実際に子育てをしながら働いている社員にとっても、短時間勤務は歓迎なのかもしれません。

ここで若干私が危惧するのは「小学校就学前まで」という措置終了のタイミングです。子が小学校に入学するというイベントは、親子共に大きな生活の変化をもたらします子を取り巻く環境や行動パターンが変化する時期であること、親として子を小学校に入学させるとやらねばならないことを理解していないことから落ち着くまでは様々見通しがつきにくく、そこまで短時間勤務で働いていた社員が、子供が小学校に入学したと同時にフルタイムに切替えるということはかなり不安やストレスがあるのではないかと思うのです。むしろこれまで預けてきた保育園等にいる間(例えば5歳)がスムーズなフルタイムへの移行を可能にするのではないかと考えます。また、小学校入学時を避け3年生まで短時間勤務を続けられる措置も一つの方法であるかもしれません。ただこちらについては、約10年間短時間勤務を継続することになるので、完全に短時間勤務のペースが出来上がってしまいそうな気がします。様々な統計を見たとき、女性はパートタイマーの働き方が圧倒的に多いのですが、できればフルタイムで子育てだけでなく仕事と仕事以外の人生を楽しんでもらいたいと思うので、短時間勤務からフルタイムへの移行は上手くタイミングをとらえて、スムーズであって欲しいと思います。

子どもが小学校3年生の時に社労士試験を受験してそれ以来仕事と家庭をはじめとしてプライベートな生活と両立してきましたが、ポイントとしては「時間を買う」ことについて惜しまないということではなかったかと思います。時間を買うことにお金を使ってほとんど残らないという時期もあるかもしれませんが、その時期の経験が将来大きく花を咲かせるかもしれませんので、今はそれでよいのではないかと割切ることも必要だったと思います。といっても今も晩御飯をどうするか綱渡りの毎日ではあるのですが・・・。


オンライン保育所申請

2024-02-12 22:37:15 | 労働法

2月5日の日経新聞に、「現在は書面での手続きが中心の保育所への入所申請が2026年度からオンラインでできるようになる。」という記事が載っていました。こども家庭庁が自治体ごとに異なる申込みの内容を統一してスマホで手続きができるような仕組みを作るそうで、各自治体が導入すれば利用が可能となるそうです。

育児休業の延長や育児休業給付金の支給申請の際には保育所に入所できない場合の確認資料として「保育所入所保留通知書」の提出が必要です。これは保育所入所を希望した保護者の申込みに対して、保育所に入所ができなかった場合に交付されるもので、育児休業給付金の延長の支給要件である「保育所等における保育の利用を希望し申し込みを行っているが、当面保育が実施されない場合」に該当しているかどうかはこの通知書で判断することになっています。これは申請が適正になされていることを前提として、申請者、市町村、事業主等の負担軽減の観点から保留通知書もって判断することになっています。しかし、こちらについては様々な支障が出てきており、例えば1歳以降も育児休業の延長を希望する入所意思のない保護者から「確実に保留になるための相談に30分から1時間程度の時間を取られたり、意に反して入所内定となった場合の苦情も来てその対応に時間を取られるなど自治体の負担になっている」という現状があります。

この状況を踏まえて、地方分権改革有識者会議等で「制度そのものを、制度の趣旨に沿うように見直すことが求められる」ということとなり、見直し案として保育所に当面入所できないことの確認については、単に入所保留通知書を提出するだけではなく、ハローワークがさらに必要な書類を求めて「育児休業給付を延長しなければならない状態にあること」を認定した場合に限り延長を認めることとするということが考えられているようです。

ハローワークが個々の申し込み状況を的確に判断できるのかという点も疑問はありますが、これまでより更に確認過程が増えて利用者の負担も増すことになるため、それならいっそ延長は条件を付けなくても良いのではないかと思ってしまいます(異次元の少子化対策ということであればそれもありではないかと・・・)。

ともあれ保育所申請は2026年度までに各自治体でばらつきのある保育所申請の届出内容を全国共通としてオンライン申請が可能となり、申請以前に必要な保育所の情報収集や見学・面談予約もアプリ上で完結できるようになるそうです。申込内容が共通になれば、点数の算出や、入所調整にAIを活用して迅速に進められるというメリットもあるようです。この結果ハローワークの認定も的確に行われるということにつながると良いと思っています。

毎年この時期はセミナーの仕事がかなり入りとにかく喉を大事に、つつがなく全てのセミナーをこなせるように注意しています。先週は連合会主催のビジネスと人権の埼玉会開催のセミナーが2日にわたりありファシリテーターを務めました。昨年秋から色々な県会で開催されており、概ね全体ファシリテーター2人とグループファシリテーター2、3人という5名程度のチームで進めていきます。研修はグループに分かれディスカッションとロールプレイからなり、これまで一方通行で講義をしてきた私としては、当初ヨロヨロしていたのですが、慣れてきた今はファシリテーションを楽しんでやれるようになりました。埼玉県会の全体ファシリテーターの相棒は東京会の真見先生で、初めて組んだのですがとてもご本人の持つ優しさが出ていると感じました。ファシリテーションもそうですが講師業というのはその人の持っている個性が滲むものですね。

   


公契約条例と労働条件審査の連携について

2024-01-14 21:23:18 | 労働法

渋谷区の公契約条例は、平成24年6月第2回区議会定例会で提案され、平成25年1月1日に施行されました。当時の桑原渋谷区長が、リーマンショック後発生した働いているのにもかかわらず貧困に陥っているいわゆるワーキングプアを憂慮して、公共事業における労働者の適正な賃金の確保、過剰な競争の排除等を目的として公共事業の発注に際して報酬の下限額を定め、その支払いを入札等の条件とする「渋谷区公契約条例」を制定しました。当時東京都23区の中での初の公契約条例の制定でした。

制定された公契約条例の目的条文には、区が締結する公契約に係る業務に従事する労働者等の適正な労働条件を確保することにより、公契約に係る事業の質の向上を図り、区民が安心して暮らすことができる地域社会の実現とあり、公契約の範囲は一定の工事請負契約、業務委託契約、指定管理協定で区長が必要であると認めるものです、

この公契約の対象についての報酬下限額を区長が定めるのですが、労働報酬審議会の意見を聴くことになっており、私は施行時から労働報酬審議会の委員となっています。色々と調べてみると学術的にはいくつかに分類されており、憲法と契約の自由の関係など問題点が指摘されているようですが、東京都だけでも10を超えた自治体において公布されており、全国的に着実に広がってきました。

一方労働条件審査は、東京都板橋区で平成20年8月より指定管理者制度導入施設について、効率的な運営やサービス水準の維持・向上、利用者の安全対策など、当初の導入目的にのっとり適切に運営されているかをモニタリングし、客観的に評価・検証を行う取り組みとして社労士会に委託されました。労働条件審査も全国的に拡大をたどり、指定管理者の選定にあたって労働法令の遵守や労働条件への適切な配慮がなされるよう多くの社労士が取組んでいます。

平成15年9月に施行された改正地方自治法により、新たに「指定管理者制度」ができて、地方自治体が指定管理者制度を導入した目的には、民間企業の持つノウハウを活用することによる住民サービスの向上と経費削減の2つが主に上げられており、一定の成果を挙げている一方で、業務委託における競争入札が繰り返され、民間企業では落札コストを下げるため、委託業務に従事する労働者の人件費を低く抑える、低賃金、長時間労働などの労働条件の低下を招いたり、社会保険のみ加入問題などの法令違反が生じるなどが懸念されています。公契約において報酬額についての配慮だけでなく、労働法の違反や人権侵害が起こることは食い止める必要があり、労働報酬下限額の調査、確認と合わせて社労士の行う「労働条件審査」を導入することにより、働く人々の労働環境が確実に守られていくであろうと考えており、これを周囲に提案していくことにしています。

詳しくは全国社会保険労務士会連合会のHPに載っていますのでご参考まで。
https://www.shakaihokenroumushi.jp/organization/tabid/271/Default.aspx

年末に受けた健康診断で運動をするべしとの指摘があり、腰痛対策もあり、先日加圧トレーニングを体験してみました。これが普段使わない筋肉を使うのかなかなか終わった後爽快で、少し続けてみることにしました。もともと中学から大学までバリバリ体育会に所属していたわけで、体を動かすことは嫌いではなかったのですが、社労士になってからはとにかく仕事一途で筋肉もふやけており、ちょっとワクワクしています。

2月のBBクラブは完全リアルで行うことになっており、オンラインを行わないため参加者が減ってしまっても仕方がないと覚悟していたのですが、現時点で100名を超す申込みがあり、二次会への参加者も40名弱と久しぶりにコロナ禍前の賑わいが戻りそうです。今日は法改正と労務管理、労働社会保険の動向の取り上げるテーマを検討したのですが、こちらも今から楽しみです。