OURSブログ

社会保険労務士としての日々の業務を行う中で、考えたこと、感じたこと、伝えたいことを綴る代表コラム。

小学校就学前までの短時間勤務について

2024-03-24 22:40:48 | 労働法

2025年4月改正予定の育児介護休業法改正法案のうち「子の年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置の拡充」の中に、3歳以上の小学校就学前の子を養育する労働者に関し、事業主が職場のニーズを把握した上で、柔軟な働き方を実現するための措置を講じ(※)、労働者が選択して利用できるようにすることを義務付ける、という内容があります。
(※)上記講ずる措置とは以下を言います
➀始業時刻等の変更、②テレワーク、③短時間勤務、④新たな休暇の付与、⑤その他働きながら子を養育しやすくするための措置のうち事業主が2つを選択

なお、現状の育介法第24条では、小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者等に関する措置として、a.育児休業に関する制度(育児休業に「準ずる」休業等)、b.所定外労働の制限、c.短時間勤務、d.始業時刻変更等の措置、が「努力義務」として定められています。内容を比較すると「テレワーク」「新たな休暇の付与」が目新しいところです。

法案が通れば、来年4月から上記①~⑤の措置の中で会社は2つの措置を選択し、社員はそのうちの一つを選ぶことになるのですが、おそらく③の短時間勤務はかなりの企業が選択するのではないかと思います。実際に子育てをしながら働いている社員にとっても、短時間勤務は歓迎なのかもしれません。

ここで若干私が危惧するのは「小学校就学前まで」という措置終了のタイミングです。子が小学校に入学するというイベントは、親子共に大きな生活の変化をもたらします子を取り巻く環境や行動パターンが変化する時期であること、親として子を小学校に入学させるとやらねばならないことを理解していないことから落ち着くまでは様々見通しがつきにくく、そこまで短時間勤務で働いていた社員が、子供が小学校に入学したと同時にフルタイムに切替えるということはかなり不安やストレスがあるのではないかと思うのです。むしろこれまで預けてきた保育園等にいる間(例えば5歳)がスムーズなフルタイムへの移行を可能にするのではないかと考えます。また、小学校入学時を避け3年生まで短時間勤務を続けられる措置も一つの方法であるかもしれません。ただこちらについては、約10年間短時間勤務を継続することになるので、完全に短時間勤務のペースが出来上がってしまいそうな気がします。様々な統計を見たとき、女性はパートタイマーの働き方が圧倒的に多いのですが、できればフルタイムで子育てだけでなく仕事と仕事以外の人生を楽しんでもらいたいと思うので、短時間勤務からフルタイムへの移行は上手くタイミングをとらえて、スムーズであって欲しいと思います。

子どもが小学校3年生の時に社労士試験を受験してそれ以来仕事と家庭をはじめとしてプライベートな生活と両立してきましたが、ポイントとしては「時間を買う」ことについて惜しまないということではなかったかと思います。時間を買うことにお金を使ってほとんど残らないという時期もあるかもしれませんが、その時期の経験が将来大きく花を咲かせるかもしれませんので、今はそれでよいのではないかと割切ることも必要だったと思います。といっても今も晩御飯をどうするか綱渡りの毎日ではあるのですが・・・。


オンライン保育所申請

2024-02-12 22:37:15 | 労働法

2月5日の日経新聞に、「現在は書面での手続きが中心の保育所への入所申請が2026年度からオンラインでできるようになる。」という記事が載っていました。こども家庭庁が自治体ごとに異なる申込みの内容を統一してスマホで手続きができるような仕組みを作るそうで、各自治体が導入すれば利用が可能となるそうです。

育児休業の延長や育児休業給付金の支給申請の際には保育所に入所できない場合の確認資料として「保育所入所保留通知書」の提出が必要です。これは保育所入所を希望した保護者の申込みに対して、保育所に入所ができなかった場合に交付されるもので、育児休業給付金の延長の支給要件である「保育所等における保育の利用を希望し申し込みを行っているが、当面保育が実施されない場合」に該当しているかどうかはこの通知書で判断することになっています。これは申請が適正になされていることを前提として、申請者、市町村、事業主等の負担軽減の観点から保留通知書もって判断することになっています。しかし、こちらについては様々な支障が出てきており、例えば1歳以降も育児休業の延長を希望する入所意思のない保護者から「確実に保留になるための相談に30分から1時間程度の時間を取られたり、意に反して入所内定となった場合の苦情も来てその対応に時間を取られるなど自治体の負担になっている」という現状があります。

この状況を踏まえて、地方分権改革有識者会議等で「制度そのものを、制度の趣旨に沿うように見直すことが求められる」ということとなり、見直し案として保育所に当面入所できないことの確認については、単に入所保留通知書を提出するだけではなく、ハローワークがさらに必要な書類を求めて「育児休業給付を延長しなければならない状態にあること」を認定した場合に限り延長を認めることとするということが考えられているようです。

ハローワークが個々の申し込み状況を的確に判断できるのかという点も疑問はありますが、これまでより更に確認過程が増えて利用者の負担も増すことになるため、それならいっそ延長は条件を付けなくても良いのではないかと思ってしまいます(異次元の少子化対策ということであればそれもありではないかと・・・)。

ともあれ保育所申請は2026年度までに各自治体でばらつきのある保育所申請の届出内容を全国共通としてオンライン申請が可能となり、申請以前に必要な保育所の情報収集や見学・面談予約もアプリ上で完結できるようになるそうです。申込内容が共通になれば、点数の算出や、入所調整にAIを活用して迅速に進められるというメリットもあるようです。この結果ハローワークの認定も的確に行われるということにつながると良いと思っています。

毎年この時期はセミナーの仕事がかなり入りとにかく喉を大事に、つつがなく全てのセミナーをこなせるように注意しています。先週は連合会主催のビジネスと人権の埼玉会開催のセミナーが2日にわたりありファシリテーターを務めました。昨年秋から色々な県会で開催されており、概ね全体ファシリテーター2人とグループファシリテーター2、3人という5名程度のチームで進めていきます。研修はグループに分かれディスカッションとロールプレイからなり、これまで一方通行で講義をしてきた私としては、当初ヨロヨロしていたのですが、慣れてきた今はファシリテーションを楽しんでやれるようになりました。埼玉県会の全体ファシリテーターの相棒は東京会の真見先生で、初めて組んだのですがとてもご本人の持つ優しさが出ていると感じました。ファシリテーションもそうですが講師業というのはその人の持っている個性が滲むものですね。

   


公契約条例と労働条件審査の連携について

2024-01-14 21:23:18 | 労働法

渋谷区の公契約条例は、平成24年6月第2回区議会定例会で提案され、平成25年1月1日に施行されました。当時の桑原渋谷区長が、リーマンショック後発生した働いているのにもかかわらず貧困に陥っているいわゆるワーキングプアを憂慮して、公共事業における労働者の適正な賃金の確保、過剰な競争の排除等を目的として公共事業の発注に際して報酬の下限額を定め、その支払いを入札等の条件とする「渋谷区公契約条例」を制定しました。当時東京都23区の中での初の公契約条例の制定でした。

制定された公契約条例の目的条文には、区が締結する公契約に係る業務に従事する労働者等の適正な労働条件を確保することにより、公契約に係る事業の質の向上を図り、区民が安心して暮らすことができる地域社会の実現とあり、公契約の範囲は一定の工事請負契約、業務委託契約、指定管理協定で区長が必要であると認めるものです、

この公契約の対象についての報酬下限額を区長が定めるのですが、労働報酬審議会の意見を聴くことになっており、私は施行時から労働報酬審議会の委員となっています。色々と調べてみると学術的にはいくつかに分類されており、憲法と契約の自由の関係など問題点が指摘されているようですが、東京都だけでも10を超えた自治体において公布されており、全国的に着実に広がってきました。

一方労働条件審査は、東京都板橋区で平成20年8月より指定管理者制度導入施設について、効率的な運営やサービス水準の維持・向上、利用者の安全対策など、当初の導入目的にのっとり適切に運営されているかをモニタリングし、客観的に評価・検証を行う取り組みとして社労士会に委託されました。労働条件審査も全国的に拡大をたどり、指定管理者の選定にあたって労働法令の遵守や労働条件への適切な配慮がなされるよう多くの社労士が取組んでいます。

平成15年9月に施行された改正地方自治法により、新たに「指定管理者制度」ができて、地方自治体が指定管理者制度を導入した目的には、民間企業の持つノウハウを活用することによる住民サービスの向上と経費削減の2つが主に上げられており、一定の成果を挙げている一方で、業務委託における競争入札が繰り返され、民間企業では落札コストを下げるため、委託業務に従事する労働者の人件費を低く抑える、低賃金、長時間労働などの労働条件の低下を招いたり、社会保険のみ加入問題などの法令違反が生じるなどが懸念されています。公契約において報酬額についての配慮だけでなく、労働法の違反や人権侵害が起こることは食い止める必要があり、労働報酬下限額の調査、確認と合わせて社労士の行う「労働条件審査」を導入することにより、働く人々の労働環境が確実に守られていくであろうと考えており、これを周囲に提案していくことにしています。

詳しくは全国社会保険労務士会連合会のHPに載っていますのでご参考まで。
https://www.shakaihokenroumushi.jp/organization/tabid/271/Default.aspx

年末に受けた健康診断で運動をするべしとの指摘があり、腰痛対策もあり、先日加圧トレーニングを体験してみました。これが普段使わない筋肉を使うのかなかなか終わった後爽快で、少し続けてみることにしました。もともと中学から大学までバリバリ体育会に所属していたわけで、体を動かすことは嫌いではなかったのですが、社労士になってからはとにかく仕事一途で筋肉もふやけており、ちょっとワクワクしています。

2月のBBクラブは完全リアルで行うことになっており、オンラインを行わないため参加者が減ってしまっても仕方がないと覚悟していたのですが、現時点で100名を超す申込みがあり、二次会への参加者も40名弱と久しぶりにコロナ禍前の賑わいが戻りそうです。今日は法改正と労務管理、労働社会保険の動向の取り上げるテーマを検討したのですが、こちらも今から楽しみです。


労働時間の適正な把握について

2023-12-10 22:19:56 | 労働法

「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」は平成29年1月20日に策定され、それ以来労働時間の把握方法についてはこのガイドラインの内容に沿って指導されることとなりました。このガイドラインには「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置」という項目があり、①始業・終業時刻の確認と記録、②始業・終業時刻の確認及び記録の原則的な方法、③自己申告制により確認・記録を行う場合の措置が定められています。

ガイドラインによれば、原則の方法によらず自己申告制により行わざるを得ない場合は、いわば条件付きで、③の自己申告制も認められています。条件としては、「対象労働者と管理者へ適正に自己申告を行うことなど十分な説明を行うこと」や「自己申告により把握した労働時間が実際の労働時間と合致しているか否かについて、必要に応じて実態調査を実施し、所要の労働時間の補正をすること」、また「自己申告した労働時間を超えて事業場内にいる時間について、その理由等を報告させる場合には適正に報告されているか確認すること」などが定められています。

それでは②の原則的な確認方法とはガイドラインではどのように示されているかというと、以下の2種類とされています。

ア  使用者が、自ら現認することにより確認し、適正に記録すること。
イ  タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として確認し、適正に記録すること。

上記イにある通り、パソコンの使用時間の記録等は客観的な記録とされており、特に自己申告の場合のように実際の労働時間と合致しているか、また必要に応じて実態調査をして補正をすることなどは求められていないと考えていました。ところが最近の監督署の調査では、PCのログだけではなく、入退館記録も確認され、そこに乖離があれば理由を調査分析して報告することが求められます。理由としてはPCの勤怠管理システムの記録は自己申告と同じということのようです。退館後、自宅で在宅勤務などを行ったときは当然終業時刻と退館時刻には乖離があるので、記録をかなり詳細に記載する必要が出てきます。しかし、いつからPCの勤怠が自己申告扱いになったのか、若干疑問に感じる今日この頃です。

https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000149439.pdf

今年の夏前あたりから、それまで全くなかった腰の痛みを感じるようになりました。ぎっくり腰などの経験もなく、今のところ医者や整体などに行ったこともないのですが、思い立ってエアウィーヴを購入してみました。これまでも毎晩布団を引いて寝ていましたのでエアウィーヴの布団を購入したのですが、なかなか快適です。ここのところ出張でホテルのベットに寝てみたところ、朝痛みがなくはやり寝具は影響がありそうだと思ったのがきっかけです。ベットと同じが良いと思い、(3つ折り用の)継ぎ目のない1枚物を購入したため、収納のときに結構苦労するのが玉にキズですが、寝た感じはかなり良いです。


児童労働について―国際基準との比較ー

2023-12-03 23:27:55 | 労働法
労働基準法には第6章に年少者の項目が設けられており、満15歳年度末までの児童を労働者として使用してはならないが、最低年齢の例外として、行政官庁の許可等一定の条件のもとに、いわゆる非工業的業種の事業であれば満13歳以上の児童を使用することができ、さらに満13歳未満の児童であっても映画・演劇の事業であれば使用することができるとされています。
なお、児童を使用することができる非工業的業種の事業であっても、サーカスや大道芸人、旅館・料理店・飲食店、娯楽場の業務、エレベーターの運転業務には児童の使用は認められないとされています。
その他、年少者の規定としては満18歳未満を使用する場合は年齢を証明する戸籍証明書の事業場の備え付けの義務や、最低年齢の例外については学校長の証明と親権者等の同意書の事業場への備えつけも定められています。
 
ILOの国際労働基準にはどのように定められているかというと、「就業最低年齢(1973年、第138号条約)」として就業の最低年齢を義務教育終了年齢と定め、いかなる場合も15歳を下回ってはならないものとしており、開発途上国の場合は、さし当り14歳とすることも認められています。
また、若年者の健康、安全、道徳を損なう恐れがある就業については、就業最低年齢は18歳に引き上げられ、軽易労働については、一定の条件の下に、13歳以上15歳未満の者の就業が認められ、演劇などの出演については例外が認められており、上記労基法の規定とほぼ同じといえます。
 
ただ、「児童労働問題を考える手引き」には「子ども(18歳未満)が働くこと=児童労働」ではありませんとあり、児童労働の定義が18歳未満とされているので労基法とは異なるようです。労基法でも18歳未満の就業制限はありますが、手引きでも18歳になっていないうちは危険有害業務などの「最悪の形態の児童労働から守られなくてはなりません」とあります。
小学生が家でご飯の準備を手伝うことは児童労働ではないが、学校に行けなくなるなど教育に差し支えるほどの家事や安全・健康の妨げになることは児童労働と考えてやめるべきとしています。海外で展開する事業や外国人労働者の就労の場面などでは、国際労働基準への配慮は必要です。
●児童労働問題を考える手引き
 
週末名古屋での、ILO駐日事務所の支援を受けた連合会の中部地協の「ビジネスと人権」の研修があり、これで今年の研修は終了となりました。仙台、岡山、名古屋と各2日間の研修はそれぞれ受講していただいた方が熱心にワークに取り組み、沢山笑い沢山考え沢山のディスカッションやロールプレイをして頂いて、私も一緒の時間を共有できて楽しかったです。
また、研修前後の打合せでかなり真剣に意見交換したこともあり、ファシリテーター・グループファシリテーターの連携がとてもよく、良い研修を作りあげた感がありました。やはり「ビジネスと人権」は社労士にとってとても親和性があり、かつ、夢のある仕事だと実感しています。
 
労務行政さんより育介法の一部執筆を担当させて頂いた「実務コンメンタール 均等法・パート有期労働法・育介法・パワハラ防止法」が発刊されました。各法律の逐条解説とQ&Aで構成された法律解釈と実務共に参考にできる書籍ですので手に取って頂ければ幸いです。

ILOと中核的労働基準について

2023-10-23 01:12:21 | 労働法

8月以降かなり沢山の仕事をこなしてきたのですが、おおかた予定通り進捗し、先週の愛媛出張をもって一段落した感じです。出張をはじめとして、コロナ以来久しぶりに外の空気を思いっきり吸って、かなりたくさんの刺激を受けることができました。週末の愛媛県会の研修では「ビジネスと人権」テーマにお話ししたのですが、数年前よりだいぶ自分の理解が進んだのかレジュメ作りも悩まずじっくりと作り上げることができました。まだまだこれからもさらにバージョンアップしていけるかなと思い、このテーマは大事にしていこうと思っています。ビジネスと人権をテーマに取り組んでいると、「ステークホルダーエンゲージメント」というビジネスを取り巻く利害関係者を巻き込んで労働条件や労働環境を決めていくという考え方がだんだん当然に思えてきました。労働組合がない会社は労働者の意見を聴く機会のないまま、賃金をはじめとした労働条件が決められていくことが多いと思うのですが、今後ビジネスと人権が広まっていくことにより変化していくのではないかと思います。

社労士会のビジネスと人権の取組みはILO駐日事務所に沢山の支援を受けて進んでいます。ILOは国連の専門機関として労働問題を取り扱う機関であり、政労使の三者構成となっていることが特徴です。2017年に改訂された「多国籍企業宣言」で、ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の実現を提唱しています。以前連合会の国際化特別推進委員会の委員時代から私もお付き合いがあったのですが、今回研修準備でおさらいしてILOについて初めて知ったことも多くありました。

調べてみると、2019年に創立100周年を迎えたILOと日本とのかかわりは古く、1919年10〜11月にワシントンで開催された第1回ILO総会の準備に、アメリカ、イギリス、フランス、イタリア、ベルギー、スイスに加えて日本ての7ヵ国の代表で構成された委員会によってなされたということです。この時点で日本が参加しているのは驚きでした。ただ、非常に残念なことに、1933年の国際連盟脱退に続き1938年11月ILOに脱退通告がなされたその後東京支局も閉鎖されたそうです。日本が再加盟したのは1951年、1954年に常任理事国に復帰し翌年東京支局ができたということで、その空白期間がその後に影響を及ぼしているようですが、ここはもう少し勉強しないとなりません。

ILOの定める「国際労働基準」は、条約と勧告及び議定書から構成されており、5つの分野①結社の自由及び団体交渉権、②強制労働の禁止、③児童労働の実効的な廃止、④雇用及び職業における差別の排除、⑤安全で健康的な労働条件、からなる10条約が最低限順守されるべき基準として「中核的労働基準」として定められています。この中核的労働基準のすべてを日本は批准しているわけではなく、第111号の雇用及び職業についての差別待遇に関する条約、第155号の職業上の安全及び健康並びに作業環境に関する条約、1930年の強制労働条約の2014年議定書が未批准となっています。この中核的労働基準のうち、安全衛生分野については2022年6月のILO総会で追加・発効されており、それまでの4分野8条約から5分野10条約になりました。なお、日本は「強制労働の廃止に関する条約105号」が未批准であったところ2022年通常国会で批准されました。

まだまだ理解が全く足りていないのですが、ビジネスと人権では国内法を遵守していれば良いというものではなく、中核的労働基準をはじめとして国際的な労働基準を念頭に企業も対応していかなければならないという点等、実務の経験も積み上げつつかなり勉強の必要があると思っています。

愛媛県会の研修はとても楽しく充実していました。皆さん暖かい雰囲気で迎えて頂いて、最初から笑顔笑顔で元気を頂きました(ビジネスと人権の講義中は笑顔が消えて難しい顔をされていましたが・・・)。難しいテーマだけに導入部分で身近に感じてもらえるお話が研修委員長からあり、私の話の後はディスカッション形式でグループで検討されるビジネスと人権に精通された先生からのまとめがあるという、工夫された構成であっという間に時間が過ぎた感じです。

松山はとても良い街で、かなり観光客も多く昼も夜も活気がありました。研修の翌日は、坂の上の雲ミュージアムと伊丹十三記念館に行って夕方の飛行機で戻りました。両方とも良かったのですが、坂の上の雲ミュージアムは展示もとても分かりやすく、ずいぶんと昔に司馬遼太郎の本を読んだのですが、そのころの日本の背景を認識しつつ思い起こさせる部分と新たに認識した部分がありかなりじっくりと見て回りました。例のごとく今年はこのテーマで深堀したいと思い、さっそくNHKスペシャルでドラマ化されたアマゾンプライムを見始めました。年末までこれで楽しめそうです。


雇用調整助成金の不正受給について

2023-09-24 14:08:14 | 労働法

雇用調整助成金についてはコロナ禍様々な企業の存続のための大きな役割を果たしたと思います。ただ残念なことにかなりの不正受給が発覚しているようで、令和4年6月以降毎月厚労省のHPで公表されており、直近令和5年9月にも公表されています。事務所近くの飲食店の名前があり、内容も休業させていないのに休業したとした虚偽の書類作成ということで少々ショックです。公表事案の金額はかなり大きく、今後も公表は続くものと思います。

東京商工リサーチの6月29日の公表では、不正受給公表は全国で516社(519件)、受給総額は163億円と膨大な額になっています。

厚生労働省は「雇用調整助成金等の不正受給への対応を強化します」というリーフレットによると、以下の記述があります。
・不正が疑われる場合だけではなく、雇用調整助成金等の申請をした、あるいは支給決定を受けている事業主の一部に事業所訪問・立ち入り検査を実施すること。
・調査は事前予告なしに行うことがあること。また調査は、労働局が行う事業所訪問・立入検査の他、会計検査院が訪問し、申請内容や関係書類を確認する場合があり、捜査機関など関係機関から問い合わせを行う場合があること。

その上で不正受給が判明した場合、返還請求と事案に応じて事業所名を公表する場合があり、また雇用関係助成金の5年間の不支給措置が取られます。

それでは不正受給とはどのような場合をいうのか、書類の不備による申請も不正受給というのかということですが、休業していないにもかかわらず休業したように申請したといういわゆる虚偽申請であればもちろん不正受給になります。ただこのようなケースでも故意というより事務誤りの過誤ということもあります。例えば休業予定の日に社員が仕事が終わらず出勤していたが出勤簿は休業となっていたなどはあり得るケースです。また書類の不備があってもあの混乱の中ですから労働局長の支給決定がなされてしまうことは想像できます。とにかくお金がでないという大合唱をマスコミが伝えていましたので。ただ故意ではなく過失による過誤払いということになれば、本来受給すべきでない金額を受けてしまっているということで自主返還は当然ですが、公表されることは考えにくいです。

そうなってくると受給した企業は一度適正な申請であったかどうかは確認したほうが良いと考えます。東京労働局のHPには不正受給の自主申告について記載があります。リーフレットによると、速やかに都道府県労働局長に連絡をして、要件に合致しないことがわかる書類を提出することとされています。
https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/kakushu_joseikin/_118530/_118550_00003.html

気持ちの良い季節になりました。oursは8月決算で9月新年度なので遅ればせながら事業計画を作り週明けのミーティングで発表できる準備をしました。事業計画も作り始めて5回目となり、だいぶ充実してきました。変化の大きな時代に、今年度何をするか頭の整理ができて良かったと思うと同時に、スタッフへのメッセージになると思います。今年度は、過去恒例だった社会見学を今年度はコロナ後久しぶりに再開しようと考えています。


ストがあった場合の対応について

2023-09-03 22:16:37 | 労働法

先日池袋であった百貨店のストですが、店舗を出している企業の従業員も影響を受けました。ストでお店が閉じられたため就労の場の提供がなく、休業手当を支払う場合や休日扱いにする場合など会社の判断があったと思います。「使用者の責めに帰すべき事由」に該当しないものとして、ロックアウトによる休業も該当するとされており、今回のような他社のストによる場合、休業手当を支払わない会社の判断もあろうかと思います。

ストを決行した会社の社員についてはどのように対応するかですが、最近ストがなかったのであまり話題になっていませんが、かなり古い通達等がいくつか出ています。まずは基本的な考え方としては労働組合法第2条2号にあります。

(労働組合)
第二条 この法律で「労働組合」とは、労働者が主体となつて自主的に労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的として組織する団体又はその連合団体をいう。但し、左の各号の一に該当するものは、この限りでない。
一 (略)
二 団体の運営のための経費の支出につき使用者の経理上の援助を受けるもの。但し、労働者が労働時間中に時間又は賃金を失うことなく使用者と協議し、又は交渉することを使用者が許すことを妨げるものではなく、且つ、厚生資金又は経済上の不幸若しくは災厄を防止し、若しくは救済するための支出に実際に用いられる福利その他の基金に対する使用者の寄附及び最小限の広さの事務所の供与を除くものとする。
三 (以下略)
 
要するに労働組合はその役割から金銭等の経理上の援助を受けない自律的な組織である必要があるということです。ただし書き以降が会社の援助が認められるケースであり、労働時間中の労使協議や交渉まで賃金を支払わない(欠勤控除)とする必要はなく、また最小限の広さの事務所を会社から提供してもらうことも経理上の援助にはあたらないと定められています。
 
ただ、ストライキによる労務不提供については、欠勤控除しないという特約があったとしても、賃金カットをせず給与を支払うことは経費援助にあたり、労働組合法7条3号の不当労働行為にあたることになり、賃金カット(欠勤控除)は必須となります。
また、通達では、労働組合が争議をしたことにより同一事業場の組合員以外の労働者が労働を提供し得なくなった場合はというと、その程度に応じて労働者に休業させることは差し支えない(S24.12.2基収3281号)とされており、この場合の休業は使用者の責めに帰すべき事由には該当しないとされています。
 
フレックスタイム制をとっている場合には清算期間の総労働時間を超えればよいわけで、欠勤控除という概念が持ちにくく、ストで休んだとしてもその分をほかの日でカバーすれば総労働時間に達することが出来るわけですが、経理上の援助に該当させないためにスト当日分についての欠勤控除は必ず行っておく必要があります。
 
あと、労働者が自身の所属する事業場におけるスト等に参加するため年次有給休暇を請求した場合は、年次有給休暇に名を借りた同盟罷業に他ならないので会社は拒否することが出来ます(S48.3.6基発110号)。しかし、他の事業場のストに参加するための年次有給休暇の取得は年次有給休暇の自由利用の原則により認めなければならないとされています
 
いよいよ9月に入りましたが、まだまだ暑い日が続きますね。週末は恒例の社労士会の野球大会が大宮グラウンドで行われて、午前午後2試合本当に暑さで選手は大変だったと思います。私は必ず毎年応援に行くのですがここまで暑かったことはなく、もちろん予想していたのでペットボトルを4本保冷剤と共に持って行きましたが、当然飲み切りました。
試合は、2試合とも逆転の10対9で渋谷支部の勝利となり、来週も2試合あることが確定しました。ベンチから声を出して応援し、暑い中勝利すれば、毎年のことですがストレス解消になります。

労働時間の状況把握の場合の自己申告制

2023-08-20 23:13:55 | 労働法

最近の監督署の調査では、2019年の4月から施行された「働き方改革関連法」の中でも安衛法の改正による「労働時間の状況把握」についての指摘が相次いでいます。状況把握の対象者はすべての労働者(高度プロフェッショナル制度の対象者は除く)になっています。つまり改正後は、それまで労基法の労働時間等の規定の適用除外となっているため労働時間の管理の必要がなかった管理監督者や裁量労働制などみなし労働時間制の対象者も、安衛法に定められた労働時間の状況把握については対象となりました。

この労働時間の状況把握は、医師の面接指導を行う必要があるかの判断をするために行なうものです。安衛法66条の8の3に次のように定められています。「事業者は、第六十六条の八第一項(時間外労働が1月80時間を超える労働者に対する医師による面接指導の義務)又は前条第一項の規定による面接指導(時間外労働が1月100時間を超える研究開発業務従事者に対する医師による面接指導の義務を実施するため、厚生労働省令で定める方法により、労働者(次条第一項に規定する者(高プロ対象者)を除く。)の労働時間の状況を把握しなければならない。

上記「厚生労働省令で定める方法」とは、「タイムカードによる記録、パーソナルコンピュータ等の電子計算機の使用時間の記録等の客観的な方法その他の適切な方法とする。」とされています。この「その他適切な方法」については通達(平成30.12.28基発1228第16号)で、「やむを得ず客観的な方法により把握し難い場合において、労働者の自己申告による把握が考えられる」とされています。

これまでの労働時間の把握の際に基準となってきた「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」では、「自己申告制によりこれを行わざるを得ない場合」は認めるとされています。自己申告制による場合の十分な説明等の要件についてはほぼ同じなのですが、労働時間の状況把握についての同通達では「やむを得ず客観的な方法により把握し難い場合」に自己申告が考えられるとされ、事業場外業務に直行又は直帰する場合など、労働時間の状況を客観的に把握する手段がない場合で、該当するかは当該労働者の働き方の実態や法の趣旨を踏まえ、適切な方法を個別に判断すること等、上記ガイドラインに比べてかなり細かく規定されています。

労働時間の状況把握というと、「労働者の健康確保措置を適切に実施する観点から、労働者がいかなる時間帯にどの程度の時間、労務を提供し得る状態にあったかを把握するものである。(同通達)」で定められており、労基法等で定める1分単位の労働時間の把握や休憩時間を厳密に除く労働時間に比べると緩い印象ではあったのですが、自己申告による把握については、労基法の定めるところより範囲は狭い(労基法で認められたとしても安衛法では認められないとされる場合もある)ものだと理解しました。

平成30.12.28基発1228第16号
https://www.mhlw.go.jp/content/000465070.pdf

最近、少し自分は頑張りすぎてきたのではないかという気持ちが強く、そろそろ人生を楽しんでもバチは当たらないかなとも思い、小さなことから頑張りすぎないことを自分の基準にしています。夏休みものんびり過ごし、秋に旅行を企画し、コンサートや美術展、スポーツ観戦等も色々見に行きたいと思い抽選に申し込んだりしています。そうこうしていても、秋から取組みたい新たな仕事がいくつも入ってくることが決まっており、このペースが守れるかちょっと心配ではあるのですが、やる事をできるだけ整理してゆったり楽しんでいきたいと思っています。


労働基準監督署への申告と相談

2023-08-06 21:38:47 | 労働法

労働基準法や同法の命令に違反する事実がある場合には労働者は、労働基準監督署へ申告することができるとされています(労基法104条)。ここでいう「申告」とは、行政官庁に対する一定事実の通告であり、本法の場合は、労働者が違反事実を通告して監督機関の行政上の権限の発動を促すことをいうとされています(コンメンタール)。監督署では、内容を精査して受け付けたすべての事案について調査をするわけではなく、労働基準法等の法令に違反していると推測される事案を申告事件として受理し、立ち入り調査などを実施の上、法令違反が認められる場合には、是正勧告や指導が行われることになります。

労働基準法等の法令には違反していないが、民事上の問題や他の法律上に問題があると推測される事案については、例えばパワハラに対する訴えについては、労働局のあっせん制度を紹介することになります。あっせん制度は「個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律」に基づく、①都道府県労働局長の助言・指導及び②紛争調整委員会によるあっせん制度で、比較的軽微な個別労働関係紛争の事案を簡易迅速に解決するものです。個別労働関係紛争解決促進法の2条には「個別労働関係紛争が生じたときは、当該個別労働関係紛争の当事者は、早期に、かつ、誠意をもって、自主的な解決を図るように努めなければならない。」と定められており、まずは監督署の相談窓口で自主的解決を図るためのアドバイスをもらいます。それでも上手く話し合いがつかない場合は、労働局からの助言指導を受け、それでも話し合いがつかない場合はあっせんの申し立てが紹介されることになります。

権利関係を踏まえ、訴訟手続きとの連携を図るという仕組みをとっている労働審判に比べて、あっせん制度は法律知識に多少疎い場合や事実関係の整理が出来ていない解決に援助が必要な事案に向いているとされています。

ここまで見てきた通り、法令違反ではない民事上のトラブルと判断される相談については、是正勧告や指導が行われることはないものいえます。

金曜日は、JICAと連合会の事業によるインドネシアからの視察団が事務所とうちの顧問先を訪問されました。うちの事務所に視察団が来られるのは、以前の小さな事務所時代から数えても既にかなりの回数を重ねており、社労士の仕事の説明などをさせて頂いています。インドネシアの皆さんはとても反応が良くて説明していてバンバン質問も来ていつもとても楽しい時間です。

今回訪問した顧問先は、「デコルテ」さんという靴の会社で、実は私が子育てをしているときにベビーカーを押して公園に行き仲良くなった友達の旦那様の会社です。当時まだ自宅で会社を作られたばかりでしたが、我が息子の幼馴染の今や2代目となったお嬢さんが、クラウドファンディングで資金を集めたりと頑張っている会社さんです。社長も含めたデザイナーさんや職人さん5人で日本製ハンドメイドの靴を作っており、インドネシアの視察団の皆さんも靴を作っている職人さんの手元を熱心に見ていました。家族経営、ハンドメイドと日本の中小企業モデルを見て頂けて良かったです。今売り出し中の自社ブランドJe t’emmèneはとても履きやすくておしゃれで気に入っており3足持っています。通勤にも使っている愛用品になりました。     ※来週は夏休みのためブログはお休みします。
https://decotokyo.com/


雇用保険の給付拡大について

2023-07-23 20:54:16 | 労働法

日経新聞の7月21日の記事に『雇用保険「流用」、給付対象の拡大どこまで?』という記事が載りました。記事を抜粋すると、以下の通りです。

政府が6月にまとめた少子化対策では、育児中に時短勤務をしても手取り額が減らない制度を想定しており、給付金は雇用保険の保険料を財源とする方向で調整に入ります。また、年収が一定額を超えると社会保険料が発生して逆に手取りが減る「年収の壁」対策も検討しており、この財源にも雇用保険が想定されています。

そもそも雇用保険の歴史を調べてみると以下の沿革をたどっています。
・昭和 22 年(1947 年)に「失業保険制度」として創設
・昭和 50 年(1975 年)失業の予防等雇用に関する総合的な機能を果たす「雇用保険制度」となり、労働者の雇用のセーフティネットの役割
・その後、雇用保険制度の中核的な給付は失業等給付であり、失業中の生活保障を行う機能を有するが、安定した財政運営状況を背景に様々な雇用政策的な給付を追加
・平成7年(1995 年)に育児休業給付や高年齢雇用継続給付、平成 10 年(1998 年)に教育訓練給付、平成 11 年(1999 年)に介護休業給付が創設、リーマンショック等経済情勢悪化時に失業等給付の支給期間を延長する等の暫定措置が講じられ複雑な仕組みとなっている。
・令和2年(2020 年)に新型コロナウイルス感染症が蔓延し、雇用保険制度の附帯事業である雇用調整助成金が企業の雇用維持を支える中心的な政策となり、その支出増が雇用保険財政のひっ迫を招いた。

平成7年に講師になりたてだった時期に、高年齢雇用継続給付、育児休業給付の制度ができて、失業給付に「等」が加わったことは強く記憶に残っています。つまり失業ではなく雇用継続の要素が加わったことにより失業等給付というようになったのです。その時若干の違和感はありましたが、育児休業取得後退職が一般的な流れであったことを考えると失業の予防という意味で雇用保険の役割が拡大したという感じで捉えていました。

しかし20数年後、早稲田の大学院で社会保障を学んでいた時、指導教授の菊池先生に雇用継続給付が失業給付を主たる目的とする雇用保険法に含まれていることについてどう考えるか、と授業で投げかけられたときに「ハッと」しました。法律の目的をどこまで広げていくかという問題に気付いたからでした。

2020年4月1日施行として「 育児休業給付について、失業等給付から独立させ、子を養育するために休業した労働者の生活及び雇用の安定を図るための給付と位置付ける。」「これを踏まえ、雇用保険について、育児休業給付の保険料率(1,000分の4)を設定。経理を明確化し、育児休業給付資金を創設する。」という法改正が行われました。育児休業に関する給付は失業等給付から独立させるという考え方に、当時雇用保険財政はまだコロナで痛む前で潤沢でしたし、今後どのような展開になるのかと期待感がありました。確かに雇用保険の保険料率は社会保険の料率に比べて低いので、比較的料率を上げやすいとは思います。しかし育児休業、子育て関係は今後の最重要課題であり、施策については雇用保険から独立させ明確な目的を設定した新たな社会保障制度を作る必要があるのではないでしょうか。

いよいよ暑さが凄いことになってきました。そんな中昨日はBBクラブの勉強会が開催され、リアル50数名、オンライン50数名と合計100名を超える参加があり、終了後の懇親会も30名を超える参加となりとても盛り上がりました。久しぶりに参加してくれたOBも何人もいて、懐かしく、お話もできて非常に充実した日となりました。ここまで社労士として頑張ってくることが出来たのはBBクラブのみんながいたから、改めて元気を沢山頂きました。BBクラブができてから約22年。あと3年経ったら盛大にお祝いしようと思います。


ビジネスと人権の研修終了

2023-06-11 23:01:57 | 労働法

昨年春からオンライン研修を初級編、上級編を受講し、顧問先にお願いしてヒアリングシートを使い人権DDのさせて頂いて、今年に入ってから3回にわたる合計10日間の研修を受けて、今週ファシリテーター養成研修も兼ねたILO駐日事務所の協力を得た全国社会保険労務士会連合会の「ビジネスと人権」の研修が終わりました。

ファシリテータ―の養成研修は、徹頭徹尾ディスカッションとロールプレイ中心で、従来の講義形式に慣れた私としてはかなり戸惑うことも多く、新鮮でもありました。ただ研修を終えてネットで「ビジネスと人権」を検索してザッと内容を見てみると、難しいと感じていた内容もかなり理解できるようになっていて、ちょっと自分でもびっくりしたところです。

「ビジネスと人権」について、具体的にどのように取り組んでいくかというと、まずは人権尊重についての人権方針などを策定し、その上でその方針の元、その企業や関係企業、取引先企業(サプライチェーン)に人権デューディリジェンス(人権DD)を実施し、課題を明らかにして課題についての是正や救済を行います。

簡単に言うと、これらを行い企業の責任を果たすことにより、企業の活動において人権が尊重され、持続可能な社会を形成するとともに選ばれる企業になるということです。今後の企業活動は単にコストを圧縮し利益を上げることだけを考えれば良いのではなく、上流から下流までの製造から販売までの過程における関係者すべての人権が尊重されたうえで利益を出すべきである、という考え方であり、これは最近注目度の高い人的資本の重視、非財務情報の重要性の拡大にも通じるものだと感じます。

人権DDはいわゆる労務監査やM&Aにおける労務DDとも重なる部分が多いのですが、異なる点がいくつかあります。ひとつは、グローバルな取り組みであるがゆえ、国内の労働法を遵守していれば良いのではなく、国際労働基準も守っていなければならないことです。例えば技能実習生が問題になるのは、母国で借金をした上で一定期間同じ会社で働かなければならないという仕組みです。海外からは強制労働ではないかと言われています。また、労基法では労働協約の別段の定めにより現物給与が認められていますが、金銭以外の支払いを認めない場合もあります。国内法ばかり勉強してきた身としては、視野を広げる必要があると感じます。またM&Aの労務DDはいわゆる「監査」であり簿外債務の洗い出しが中心になりますが、人権DDは、その後の改善支援も行い、その取り組みを循環的に繰り返すことになります。

研修ではエレベーターピッチというセッションがあり、エレベータ―に乗っている2分間の間に「ビジネスと人権」を社長に説明するというものがありましたが、このブログに書いてみて何とかなりそうな気がしてきました。ILO駐日事務所の研修であったためエレベーターピッチ以外にも新鮮な演習があり思えば戸惑いながらも、刺激的でした。

ILOのHPに研修のことが載りました
https://www.ilo.org/tokyo/newsroom/WCMS_867483/lang--ja/index.htm
https://www.ilo.org/tokyo/newsroom/WCMS_884669/lang--ja/index.htm

最近社労士の親しい友人が体幹トレーニングと食事でとてもすっきりした体形になりました。羨ましくなり、私もとネットで調べてピラティスの教室に通ってみようかなどと検討しています。ただ続くかどうか自信がないので、まずは、仕事の帰りに1駅手前で降りて歩くことを週2,3回実践してみようかと考えています。


同一労働同一賃金 特別休暇について

2023-06-04 21:48:03 | 労働法

ここのところ顧問先企業に同一労働同一賃金の調査票が来たとのご連絡が入っています。これは3月15日に厚生労働省から発せられた「非正規雇用労働者の賃金引き上げに向けた同一労働同一賃金の取組強化期間(3/15~5/31)」に基づくものだろうと個人的には考えているところです。令和4年賃金構造基本統計調査の結果でも正社員は賃金が上昇しているにもかかわらず短時間労働者は減少しているという傾向が出てきており、今春は特に正社員の賃上げ幅が大きいケースが多いだけに、短時間労働者との格差を懸念してのことと想像しています。

同一労働同一賃金は、賃金を中心に「不合理と認められる待遇の相違」があることが問題になりますが、休暇については令和2年の同一労働同一賃金の施行時点でかなり、正規と非正規の待遇を揃えたケースが多かった印象があります。ガイドライン(指針)では休暇についてどのように示しているかおさらいしてみたいと思います。

慶弔休暇については、その日数に差があるケースが見受けられたのですが、稀にしか起こらないことであり、コストインパクトも小さく、差をつける必要はないと判断された会社が多かったです。ガイドラインには短時間労働者(以下「短時間労働者等」)にも、通常の労働者と同一の慶弔休暇の付与及び有給の保障を行わなければならないとしています。ただし、通常の労働者とは異なり週2日の勤務の場合は勤務日の振替での対応を基本としつつ、振替が困難な場合のみ慶弔休暇を付与しているのは問題とならない例としています。

法定外の有給の休暇その他の法定の休暇(慶弔休暇を除く)であって、勤続期間に応じて取得を認めているものについては、通常の労働者と同一の勤続期間である短時間労働者等には、通常の労働者と同一の法定外の有給の休暇その他の法定外の休暇(慶弔休暇を除く。)を付与しなければならない。ただし、長期勤続者を対象とするリフレッシュ休暇について、業務に従事した時間全体を通じた貢献に対する報償という趣旨で付与していることから、通常の労働者であるXに対しては、勤続 10 年で3日、20 年で5日、30 年で7日の休暇を付与しており、短時間労働者であるYに対しては、所定労働時間に比例した日数を付与していることは問題とならない例としています。

ところで子の看護休暇や介護休暇についてはどのように考えればよいかということなのですが、まずは育児介護休業法は有給・無給は特に定めていないため無給でも問題ないのですが、上記ガイドラインの内容を考えると原則は正社員が有給であれば短時間労働者は同一の扱いとするべきだろうと考えます。ただし、上記の問題とならない例にあるように、所定労働日数等が少ない等の場合であれば、その日数に応じた日数のみ有給とするという扱いは問題にならないと考えます。

非正規雇用労働者の賃金引き上げに向けた同一労働同一賃金の取組強化期間(3/15~5/31)https://www.mhlw.go.jp/content/11909500/001072637.pdf

短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針
https://www.mhlw.go.jp/content/11650000/000469932.pdf

先週受講したビジネスと人権の研修は同時通訳を使ったZoom形式のもので、これまで経験したことのない方法だったのですが、ほとんど何の問題もなく楽しく受講しました。その中でファシリテータをするとして自分は何が一番大事と考えるか、というアンケート形式の問いかけがあったのですが、私は「楽観」を選びました。

色々な選択肢の中で講師をしている自分を考えたとき一番ぴったりくると思いました。「楽観」することで、発せられる言葉が前向きなものになることと、自分がリラックスすることで聞いている人も楽しく一緒に考えていこうといった和らいだ雰囲気で受講してもらえるのではないかというイメージだと思ったのです。その選択肢を選んだ方は少なかったようですが、先生の解説も私の考えに近いものでちょっと納得し、嬉しくもありました。


1日の空白もなく資格喪失した場合の育児休業給付

2023-05-14 22:32:25 | 労働法

昨年4月と10月に改正された育児介護休業法ですが、その改正を機に実務の取扱いが変化したり、同じ届出の際に行政で異なる対応があったりと、まだ落ち着かない部分があると感じるのが正直なところです。その中で業務取扱要領にもしっかり記載されている取扱いの変更がありましたので、標題の件を取り上げておきたいと思います。

10月の改正前は1日の空白もなく資格喪失をした場合の育児休業給付の受給資格はそのまま継続とされていました。改正後は「1日の空白もなく被保険者資格を取得し、引き続き本体育児休業を取得する場合は、喪失に係る事業所の育児休業と、取得に係る育児休業とを分割して取得したものとして取り扱うこと。・・・したがって、喪失に係る事業所において、既に育児休業を2回取得していた場合、取得に係る事業所において取得する本体育児休業は3回目の取得となり、(育児休業給付の)対象本体育児休業とはならない(行政手引59691)」と示されました。ただし、再度の育児休業を取得することができる特別の事情がある場合は除くともされています。

1歳到達前の再度の育児休業の特別の事情はかなり選択肢があり特別の事情に該当すれば3回目の育児休業給付金の対象になり得ますが、留意が必要です。また、この扱いは1歳到達後も同様なようです。1歳到達後の特別の事情はかなり限られ、該当しなければ延長期間中に1日も空白なく喪失と取得をした場合に育児休業給付金の受給ができない状況が発生することになり特に注意が必要です。すなわち1歳到達後の特別の事情は再度の育児休業を取得する直前の育児休業が「産前産後休業、新たな育児休業、介護休業が始まったことにより終了したものであること」とされており該当するケースはかなりレアケースではないかと考えます。

問題になるのはM&Aなどにより企業の吸収合併が行われ1歳到達後の育休延長期間中に転籍となり本人の意思にかかわらず雇用保険を資格喪失と取得をした場合に、特別の事情に該当せず、育児休業給付が打ち切られてしまうということです。社労士仲間でその話が出たところによると、育児休業終了を待ってもらってから転籍としてもらい手続を行うなどの工夫をしているということです。

従来から社員に不利になる可能性を消すために、できるだけ吸収合併の場合は喪失及び取得の手続ではなく「新旧実態証明」により合併前後の事業主を同一と認定してもらうという手続きを行うことにしていましたが、今後ますますその方法が有効と考えています。

改正前は1歳到達後の再度の育児休業を取得できる特別の事情は明確ではなかったため、1歳到達後の再度の育児休業の事由が明確になったことの影響もあるかと思いますが、細かい改正部分で実態に沿った手続きができないことがあることも事実です。業務取扱要領該当ページは89頁です。

業務取扱要領(育児休業給付部分)
https://www.mhlw.go.jp/content/001082072.pdf

連休には沖縄に旅行に行きリフレッシュすることができました。今日読んだ本によると、脳は何歳からでも成長するということで、脳の様々な領域をバランスよく使うことが大切だということです。そういう意味では仕事ばかりしているのも良くないなあと思い、コロナの制限も解けてきましたのでこれからはマメに旅行に行きたいです。

その本によると「めんどくさい」と感じることをすることが脳を育てるそうです。また、著者は医師なのですが病院で診療をした後論文を読むのは脳の異なる領域を使うことになるので疲労していない部分を使うことになりむしろ捗るそうです。確かに事務所で仕事をした後で、ひとりお茶をしながら原稿などを読むことが多いのですが思いのほか集中できて捗るのはそのせいかと納得しました。新たなことを取組んでみることも脳を育てることになるようなので、何か始めてみようと、その気になっています。


専門業務型裁量労働制の廃止の際の留意点

2023-04-16 23:40:30 | 労働法

労働政策審議会労働条件分科会で検討されていた①無期転換ルール及び労働契約関係の明確化についてと②裁量労働制の新たな手続きの追加の2つが、労働基準法施行規則の改正により2024年4月1日に施行されることになりました。

このうち専門業務型裁量労働制について、改正で本人の同意が必要になるという点については、会社によってはかなり大きなインパクトになると思います。来年の施行規則改正までに対応を検討する企業もあると思い調べたのですが、専門業務型裁量労働を廃止する際の留意点についてまだあまり触れている資料等はないようなので自分で考えてみました。

1つ目は働き方の急激な変化についての対策です。
専門業務型裁量労働制とは、業務遂行の手段や方法、時間配分等を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要がある業務として特に定められた業務に就かせた場合、労使であらかじめ定めた時間働いたものとみなす制度です。

裁量労働制はフレックスタイム制と違い必ずしも「始業及び終業の時刻」を労働者に委ねる必要はありません。弁護士の安西先生のご著書にもありますが「裁量労働は自由勤務と同じであり、出退勤はもとより仕事の進め方も気が向いたときに行えばよいといった全くの勝手気ままな勤務のようにも理解されがちである。しかしこれは個々の業務遂行の手段方法や時間配分について具体的な指揮命令をしないということであり・・・労働者は誠実義務があるので労働日には出勤し、職場秩序を守り、同僚等と協調して職務の自主完遂にあたらなければならない」とあります。これまでの運用次第ですが、出退勤の時刻が自由という運用であると、裁量労働を廃止する場合に労働者が大きな負担(制約)を感じる可能性があり、代替措置としてフレックスの導入などの検討が必要になるかもしれません。

2つ目はみなし労働時間と実労働時間の乖離がある場合です。
みなし労働時間と実際の労働時間(時間外労働)に乖離がある場合、割増賃金の増加が予想されます。廃止する前に、これまであまり意識せず労働時間を消費していた仕事のやり方を見直して、できるだけ効率的に働くことで労働時間の適正化を図る必要があります。ことによっては時間外労働について許可制を導入することが必要かもしれません。

3つ目は裁量労働制の問題点へのリカバリーです。
2014年に裁量労働制を廃止した企業の事例では、裁量労働の一定の効果を認めつつも、テーマの業務量や進捗管理に対する上司の管理意識の低下、時間外労働の手当反映がなくなったことによる、「時間の使い方」に対する上司・部下双方の意識の低下などの問題点があったそうです。上司のマネジメント力の低下がみられ、今後人材の多様化において様々な人材をコントロールする必要があり廃止に踏み切ったとあります。確かに裁量労働がゆえにむしろ本人任せにしなければならなかったところ、廃止となれば一定のマネジメントを意識的に行うことが必要になります。

今のところは上記3点について気が付きましたが、今後さらに留意点は増えると思います。

2024年4月1日施行 「裁量労働制の改正について」リーフです。
https://www.mhlw.go.jp/content/001080850.pdf

最近質の良い睡眠に興味があり、パジャマに凝っています。時々ショートスリーパーといわれるほどに睡眠時間が短いので、少しでも質の良い睡眠をとった方が良いかもしれないと思い、ネットで検索して快眠のためのパジャマを購入しました。2か月前ほどにまず冬用の暖かなパジャマを購入したのですが、これが予想外に良い眠りを得ることができる実感があり、先日春用のものも購入しました。これまで部屋着なのかパジャマなのかわからないようなものを適当に着て寝ていたのですが、質の良い睡眠のためにはそれに適したものがあるのですね。