OURSブログ

社会保険労務士としての日々の業務を行う中で、考えたこと、感じたこと、伝えたいことを綴る代表コラム。

治療と就労の両立支援マニュアル(脳卒中)

2017-05-29 00:35:57 | 労務管理

労働者健康安全機構から「脳卒中に罹患した労働者に対する治療と就労の両立支援マニュアル」が出ています。「脳卒中」だけではなく「がん、糖尿病、脳卒中、メンタルヘルス」の疾病4分野について作成されており、その中身も非常に社労士や人事担当者が見て役立つ内容だと思いました。

https://www.johas.go.jp/Portals/0/data0/kinrosyashien/pdf/bwt-manual_stroke.pdf

(抜粋・1部略)一般の方々は、「一旦脳卒中になってしまったら障害が残り、元の生活は望めない」といった悪いイメージをもつことが多いようです。しかし、労働者年齢の脳卒中は意外と予後が良く、データを分析すると、発症前に自立していた就労年齢890例の脳卒中患者(くも膜下出血を除く)においては、発症3ヵ月後の時点で既に約75%が自立した家庭生活を送っていました
一方で復職状況については決して良好とはいえないようです。脳卒中後の復職に関する医学論文を概観した結果、発症前有職の8,810人の復職率は平均44%であったと報告しています。また、勤労年齢脳卒中患者の復職を成功させる要因として、①復職的な方向性を持ったリハビリの提供、②雇用主の柔軟性、③社会保障、④家族や介護者からのサポートを挙げている一方で、提供すべきリハビリサービスの内容もほとんど知られていないという医療分野における復職支援の希薄さも指摘しています。

これまで厚生労働省から「事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン」が出ていましたが、「脳卒中」の予後の復職等に対して作られたものは初めてなのではないかと思います。

顧問先からもこういった病気の社員の方への配慮や雇用上の留意についてのご相談を受けることが増えてきましたので、これからはますます職場では大きなテーマになってくるのではないかと考えます。自分もスタッフを雇う身としてはこういうガイドラインがあったらよかったのにと思います。対応については、周りのご家族や産業医や主治医の意見を聞きながら復職してもらうことが大切なのだなと思いました。

毎日とても気持ちが良い季節になりました。5月もあっという間に終わりそうです。今週末は事務所の3年間の試算をしてみたのですが予測はなかなか難しいです。しかしこれまでに比べて試算項目について合理的な説明ができるようになったので、今後は毎年どのくらい売り上げを上げるかという目標も明確に立てていこうと考えています。


女性活躍推進法に係る一般事業主行動計画について

2017-05-21 23:48:54 | 労働法

平成28年4月から、300人超の労働者を雇用する事業主は「一般事業主行動計画」の策定等を行うことになっています。先日東京労働局と東京都社会保険労務士会との意見交換会で、この一般事業主行動計画の届け出状況が100%達成と説明があり、それほどまでに企業は熱心にこの取り組みを行っていたのかと少し驚きました。確かに厚生労働省の調査結果を見るとほぼ各都道府県とも100%になっています。とにかく昨年は、働き方改革・同一労働同一賃金・長時間労働のことや、育児介護休業法改正、来年4月から始まる労働契約法の無期転換の申し込みに追われており、すっかり手がついていない状況でした(言い訳です)。

ここにきて、関係している女性活躍に関する委員会の委員になることを依頼されたのでその資料を確認していたところ、近いうちに私がこのテーマで話をするという予定が書かれており、焦りを覚え週末少し厚労省のサイトを確認してみたところです。

女性活躍推進法成立については、改正時に一度セミナーを受けたことがあります。一般事業主行動計画の作成はなかなか難しそうな気がしていましたので、ポイントをつかむためにも自分でも経験してみるために、近いうちに顧問先にお声がけをして取り組んでみようと思います。

女性活躍推進法成立のチラシが簡潔で分かりやすいと思うのですが、手順としては以下の通りと書かれています。

①自社の女性活躍状況を把握し、課題分析を行う(基礎項目として採用者に占める女性比率・勤続年数の男女差・労働時間の状況・管理職に占める女性比率の4項目を把握し、課題分析を行う)

②行動計画の策定、社内周知、公表、届出を行う(行動計画については、計画期間・数値目標・取組内容・取組の実施時期の4項目を盛り込む)

③自社の女性の活躍に関する情報公開を行う(女性の活躍推進企業データベースが利用できる)

女性活躍推進法成立のチラシ
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/0000123791.pdf

そもそもの考え方はどこから来ているのか、ということですが平成28年2月に経済産業省経済産業政策局が出している「成長戦略としての女性活躍の推進」のかなり情報量のあるパワーポイント資料がありました。その中では、「勤続年数の男女格差が小さい企業、再雇用制度がある企業、女性管理職比率が高い企業の方が、利益率が高い傾向が見られる。」などの記載もあり、女性活躍を政府が中心になってかなり力入れている状況もよくわかります。

企業の「成長戦略」のための 女性活躍推進(経済産業省経済産業政策局)http://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/diversity/downloadfiles/160205joseikatsuyaku.pdf

確かに女性活躍については、外からの環境を整えて引き上げていくということは大切であると思います。それがなければ進まないとは思います。女性が役職につかず定型業務を中心に仕事をしている状況から脱して、役職の経験を重ねていくことがなければ、いきなり引き上げられても上手くいかないと考えるからです。しかし環境と目標設定による引き上げよりも、できれば自分からやってみたいと手を挙げる人が増えていけばよいなあと思います。男性も自分の意思で得ていくものであれば、女性もその過程を踏んでいかなければ結局説得力がないと思うからです。

先日読んだ本の中に、小池都知事が2013年に自民党には女性議員の少なさについて語っている内容として「(略)それもしっかりした保守の女性が必要です。フェミニズムや男女同権とか言ったアプローチではなく。権利の主張を声高に訴えるのは好きではない。取りに行け、と思っているんですよ」(阿修羅の戦い菩薩の心・徳間書店)とありました。まさに同感といったところです。議員だけでなく、企業でも様々な業界でも本格的に役職を担っていける女性たちが自分たちの意思で出てくるのが理想です。そこには男性と異なる価値観があると思いますので、きっと新たな変化が生まれてくると考えます。


兼業・副業の場合の労災給付拡充予定

2017-05-14 23:09:09 | 労働保険

5月2日付の日経新聞に、兼業している場合の労災についての保護が検討されているという記事が載りました。以下記事の抜粋です。

「厚生労働省は労働者が仕事中のケガで働けなくなった場合に生活を支援する労災保険の給付を拡充する。今の仕組みでは複数の企業で働いていても、負傷した際に働いていた1つの企業の賃金分しか補償されない。複数の企業で得ている賃金に基づいて給付できるように制度を改める。副業や兼業といった働き方の多様化にセーフティーネットを合わせる狙いだ。

厚労省は複数の企業で働いている人が労災認定された場合に、複数職場の賃金の合計額に基づいて給付額を計算する方式に改める。労働政策審議会での議論を経て関係法令を改正。早ければ来年度にも新しい仕組みを始める。」

確かに、2つの会社に勤務している場合、2か所から給与を受けているわけで、その合計がその人の月の生計費になっているのだと思いますが、今の法律では労災の適用事業としてそれぞれが労働者に支払った賃金から算定した保険料を納付しているため、本人が給付を受ける際も労災事故が発生した会社が支払っている賃金を基礎とした給付を受給することになります。

例えばA社で15万円、B社で10万円の計25万円がその人の月の生計費であるにもかかわらず、B社で労災事故にあって休業する場合は10万円を基礎とした休業補償給付等が支給されるわけです。(働けないのはB社だけではなくA社でも働けない状況になることがほとんどだと思いますので、その場合10万円ではなく25万円の給与の月額合計の逸失利益に対する補償がなされる必要があるわけです)

とはいえクリアしなければならない問題点としては、給付する際の一方の会社から支払われている賃金額の把握をどのように行うか、また事故率によりメリット制の適用があり企業が負担する保険料が変動するわけですがそのあたりの扱いも複雑そうです。

政府が副業を推進しているため、今後このような細かな点での問題点の解消が行われていく必要があり、現場にいる社労士としても気が付いた点については運用面も含めてどんどん発信していくのが重要だと思います。

5月は本当に気持ちが良い日が多いですね。夜型人間の私も最近年齢のせいか夜がめっきり弱くなり、朝も少し早く目が覚めるようになりました。頭を使う仕事は極力午前中か午後の早めに持ってこないと精度が落ちるような気がします。TACの講師時代は、毎日仕事を終え家に戻り食事を作りその後講義の予習や教材作成をしていましたので、若干情けない気持ちになりますが、朝早めに目が覚めるのは嬉しいような気もします。


リカレント教育

2017-05-07 22:58:01 | 雑感

5月の連休後半はゆっくり過ごす中でこれまで読めなかった資料や本を読む時間が取れました。3月に発表された「働き方改革実行計画」もゆっくり読んでみましたが、いま、本当にたくさんの課題があると実感しました。

その中で気になったのが女性のリカレント教育についての記述でした。「6.女性・若者の人材育成など活躍しやすい環境整備」で取り上げられています。

(1)女性のリカレント教育など個人の学び直しへの支援などの充実 我が国では正社員だった女性が育児で一旦離職すると、復職や再就職を目 指す際に、過去の経験、職業能力を活かせない職業に就かざるを得ないこと が、労働生産性の向上の点でも問題を生じさせている。大学等における職務 遂行能力向上に資するリカレント教育を受け、その後再就職支援を受けることで、一人ひとりのライフステージに合った仕事を選択しやすくする。

このため、雇用保険法を改正して受給できる期間の延長や額の増額など教育訓練給付を拡充するとともに給付を受けられる期間は、子育てによる離職後4年までだっ たものを10 年までに延長する。これまで離職後1か月以内に必要とされていた受給期間の延長手続きをしなければならない制度を、直ちに廃止する、とされています。

リカレント教育というのは実際どのようなものなのかネットで調べてみたところ、「 日本女子大学 リカレント教育課程~女性のための再就職支援プログラム~」がすぐに出てきました。

日本女子大学リカレント教育課程は、「大学卒業後に就職しても育児や進路変更などで離職した女性に1年間(2学期)のキャリア教育を通して、高い技能・知識と働く自信・責任感を養い、再就職を支援するプログラムです。」ということで、2017年度カリキュラムを見てみると、必修科目としては「キャリアマネジメント・Challenging Course for the TOEIC835・ビジネス英語 Basic・ITリテラシー(PC基礎知識 Word・Excel入門・表計算と情報倫理)・日本語コミュニケーション論 」があります。

さらに選択科目には、「企業会計入門や、初級簿記、貿易実務、消費生活アドバイザー(消費生活相談員)資格準備講座 のほか労働法と人事労務管理・労働保険法・健康保険法と国民年金法・厚生年金保険法と社会保険一般常識(社会保険労務士準備講座)」もありました。

そのほか、「女性のライフスタイルと、起業という働き方、NPOとNGO、現代ビジネスと起業、国際協力・ボランティア論、ライフステージと法」など見ていると興味がわくものや面白そうな講座もあります。目指せるスキル一覧は以下の通りとなっています。

TOEIC730~850点・ 貿易実務検定C級・記録情報管理者・ Microsoft Office Specialist Excel
消費生活アドバイザー・公認内部監査人・日商簿記3級以上 ・社会保険労務士

カリキュラムを見てみると「リカレント教育」がイメージできるような気がします。私もそうでしたが、大学を卒業して働いた経験があっても、一回専業主婦となり家庭に入って時間がたつといきなり社会に出るには自信が持てずためらいが出るのが当たり前だと思います。社労士資格を取得するのは簡単ではないと思いますが、1年間このプログラムで勉強することで社会復帰の足掛かりになると思います。

連休中は毎日お天気も良く気持ちの良い日が続きましたね。これまでTACの講師時代は横断セミナーや通常の講義がありましたし、講師を辞めてからもほとんど毎年連休中にたまった仕事を片付けていたような気がしますが、今年は比較的連休明けも余裕がありそうなので思い切って仕事はしないで過ごしてみました。その代わりにツンドク主義に陥っていた本や資料を沢山読むことができましたのでかなり机の上も気持ちもすっきりしました。明日からまた色々な意味で新たな戦略を立てながら進んでいけそうな気がしています。