OURSブログ

社会保険労務士としての日々の業務を行う中で、考えたこと、感じたこと、伝えたいことを綴る代表コラム。

「働き方」についての考え方の転換期

2018-06-24 21:50:31 | 労働法

6月22日付の日経新聞の記事に「今春の新入社員、仕事『人並みで十分61%』」 という記事が載りました。正直60%という数字には驚きました。記事の主な内容は以下の通り。
 
「働き方は人並みで十分」。今春の新入社員を対象に実施したアンケートで、こう答えた新人が過去最高の61.6%に上ったとの結果を日本生産性本部(東京)などが21日、公表した。2013年度以降、増加傾向が続いている。「人並み以上に働きたい」は今回、31.3%にとどまり、2倍近い差がついた。

今年3~4月、生産性本部が主催した研修に参加した企業の社員を対象に実施し、1644人から回答を得た。調査担当者は「ブラック企業が問題となるなど、働くことにネガティブな意識が持たれているのではないか。意欲が後退している印象」と分析した。

アンケートで「若いうちは自ら進んで苦労する気持ちがなくてはならないか」との問いには、「進んで苦労すべきだ」が47.1%を占め、「好んで苦労することはない」(34.1%)を上回ったものの、その差は11年度から40ポイント近く縮まった。「デートの約束があった時、残業を命じられたらどうするか」を尋ねると、残業派が68.5%で、デート派は30.9%。ただ、ここでもデート派が年々増加している。

「夢中になって仕事に取り組む時期があるのは必要」「仕事に真剣に取り組むことで自分を成長させることができる」「何かを乗り越えるには自分を追い込むことも必要」以前のブログにも書いた記憶があるのですが、私は今も考え方はひとつも変わってはいません。

しかし、新人が記事のように考えているのであれば、「働く」ということについて考え方の転換期を迎えているのかもしれないと感じます。少なくとも記事の通り6割くらいの社員に対するマネジメントについてこれまで通りでは通用しなくなっているように感じます。「契約」に基づいて働く、という感覚が何となくフィットする感じがします。それはそれで価値観は違ったとしても悪いということではなく受け入れていく必要があるのだと思います。

企業のご相談にのっているときも同じようなことは感じます。企業の成長にとっては常に世代が入れ替わる必要があり、20代が魅力的と感じる業界や企業になっていかなければ、企業自体が高齢化して行く心配があります。世代や社員によって希望する働き方を提供できる多様な働き方のメニューを準備するということになるのかもしれません。高度プロフェッショナル制度は、そういう意味ではメニューの一つとして考えるのは有用だと思います。

先週は風邪をひいてしまいなかなか夏物を着ることができなかったのですが、いよいよ明日からは半袖・夏物の上着で行こうと思っています。のどが痛かったので冷やすのが良いかと思い、毎日スタバの大人のフラペチーノを飲んでいました。あれは本当に美味しいと思います。

それにしても一つの仕事に継続して真剣に取り組み「目に見える形で実績を残していく」というのは素晴らしいことだなと感じることが多いです。年金制度の5年ごとの改正を担当した官僚の書かれた書籍を読んでも、特に大改正の際の表には見えない苦労や状況を知ると、その苦労の結果が今の制度にどのような効果をもたらしたかを知り感動します。

たった一度の人生ですから、自分の中で誇れる「結果や成果」は宝物になると思うのです。そういう意味で「仕事ができる時間というのは人生の中で素晴らしいとき」なのだと思っています。


在職老齢年金の歴史②

2018-06-17 23:22:13 | 年金

先々週に続きまして在職老齢年金の歴史です。先々週は昭和61年の年金制度大改正前までの在職老齢年金のことを載せました。その時代の在職老齢年金は低賃金を補うという役割を果たしていました。そして昭和61年の年金制度大改正の際に65歳以上の在職老齢年金はいったん廃止されています。65歳以上から老齢基礎年金を受給する自営業者と揃えるという考え方だったそうです。平成12年の改正(平成14年施行)により高在老が導入されるまでは65歳未満の(要するに特別支給の)老齢厚生年金のみ在職老齢年金の支給停止がかかっていました。

その間の、平成6年の改正でそれまでの所得の補填である在職老齢年金の考え方に変化がありました。それまでの在職老齢年金は、賃金が増えてもその分在職老齢年金の減額も大きくなるため、「働いても働かなくても手取りはほとんど変わらない」という問題があり、就労促進のために、賃金が増えた場合緩やかに賃金と年金の合計額が増えていく仕組みに変更されたわけです。

ちょうどTACで講師をしてテキストを担当していたころ在職老齢年金の改正はしっかり追っていたのですが、ここまで改正が多かったとは正直ちょっとびっくりしました。

 

昭和61年

65歳以上の本来の老齢厚生年金については在職老齢年金制度は廃止

(60歳代前半の特別支給の老齢厚生年金は在職老齢年金制度の適用あり)

65歳

平成元年

60歳台前半在職老齢年金制度(8割~2割の7段階)に変更

※賃金増でも年金額の合計額が増えず減る場合も

平成6年

60歳代前半について、賃金の増加に応じて賃金と年金額の合計額がなだらかに増加する制度に改正(一律2割は支給停止)

① 在職中は、2割の年金を支給停止。賃金と年金の合計額が22万円に達するまでは、賃金と年金(8割)は併給

② ①を上回る賃金があると賃金の増加2に対し、年金額を1停止

③ 賃金が34万円を超えるとさらに、賃金が増加した分だけ年金を停止

平成12年

上記計算式中34万円→37万円

〈14.4.1実施〉

65歳~70歳未満の在職老齢年金制度「高在老」の導入(復活)

① 基礎年金は支給停止せず、全額支給

② 賃金と厚生年金との合計額が37万円に達するまでは、満額の厚生年金を支給

③ これを上回る場合には、賃金の増加2に対して、年金額1を停止(60歳台前半のような一律2割の年金の支給停止はない)

※60歳~65歳未満は「低在老」と命名

※昭和12.4.2以降生まれ(14.4.1現在65歳未満)対象

70歳

〈16.4.1実施〉

1)低在老 

標準報酬月額の37 万円を総報酬月額相当額の48 万円に

基本月額の22 万円を28 万円に

2)高在老

年金月額と標準報酬月額の合算額の37 万円を年金月額と総報酬月額相当額の合算額の48 万円に引き上げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今回はここまでにしたいと思います。興味のある方は あまり多くないかと思いますが、もう少し続きがありマイブームですのでまた次回おつきあいください。

久しぶりに小淵沢の家に行きのんびりしてきました。目の前の田んぼは田植えが終わり青々として綺麗でした。小淵沢の家に行くと日常よりは早めに寝てしまうことが多く、今回も10時間近く寝てしまいました(なんといつもの倍近く)。やはり自然に近い生活はそういう意味では人間らしいのかなと感じてしまいます。しかし明日からまた色々と予定があり、それはそれで張り切っています。

 


積立方式と賦課方式

2018-06-10 22:38:53 | 年金

年金の財政運営方式として、「積立方式」と「賦課方式」があります。厚生労働白書にもたびたび登場して、授業でも必ず取り上げて説明していました。

積立方式と賦課方式の説明については厚生労働省で作った以下のサイトがわかりやすいと思います。

http://www.mhlw.go.jp/nenkinkenshou/finance/index.html

日本の年金制度が創設時に積立方式を採用した理由は、平成23年の厚生労働白書のコラムに以下のように記述があります。

日本の年金制度の財政運営方式は、現在では修正積立方式を採用しているが、制度創設時は「積立方式」を採用していた。では、なぜ積立方式を採用したのか。『昭和34年度版厚生白書』は次のように説明している。「年金の財政運営方式としては、この(積立方式の)ほかに年年必要な給付額をその年度に徴収する『賦課方式』があるが、これによるときは、国の財政規模という観点からの影響を受けやすいため、将来において年金給付が不安定となるおそれがあり、他方、現在のわが国のように、老齢人口の占める比率が急速に高まりつつある国においは、将来の生産年齢人口の負担が重くなるという不合理も生ずるので、積立方式を採用して制度の安定と確立を期したわけである。」しかしながら、積立方式は、物価や賃金の変動への対応が困難という課題も有している。このため、高齢者の生活を保障できる実質的価値のある年金を支給するという観点から、その時代の生産活動に従事する現役世代が収入を失った高齢世代を支えるという、世代間扶養の考え方を基本に置いた賦課方式の要素の強い財政運営方式に改められた形となって現在に至っている

 これについては、講義で説明するときにいつも結局「積立方式又は修正積立方式」なのか「賦課方式なのか」または「賦課方式の要素の強い財政運営方式」というべきなのか、またいつ積立方式から賦課方式へ変わったのか、といったところで自分でも確信が持てずにいました。

結局結論としては、積立方式から以下にある段階保険料方式を採用した昭和29年の改正から乖離して行き、次第に賦課方式としての要素を強めていったということですね。確かに段階保険料方式は、本来必要とされる平準保険料率を下回る保険料率でスタートして段階的に引き上げていくという方式ですから、下回る保険料率に設定した時点で積立方式から乖離したというのは納得がいくことです。

昭和19年 制度発足当時は「積立方式」を採用

昭和29年の改正 インフレ・負担能力を考慮して平準保険料を下回る保険料の設定を行うという「段階保険料方式」を採用→この時点で純粋な積立方式からは乖離

昭和48年改正 高度成長に伴う中で、物価や賃金の変動への対応が困難という課題に対応するため、物価スライドや賃金再評価に要する原資を後代の保険料で賄うとしたことで「賦課方式」の要素が強まる

平成16年の改正 積立金を給付費の1年分程度にすることとなったため、そうなった場合は「賦課方式」を基本とする(基礎年金の財政方式は、完全賦課方式で運営している)

金曜日には、東京都社労士会の総会があり、新たな新年度がスタートしました。あっという間の一年ではありましたが色々なことがありずいぶん1年前が以前のことのようにも感じます。

今年は昨年とはまた違った環境にいますが、その環境をできるだけ楽しんで、充実させていきたいと考えています。


在職老齢年金の歴史①

2018-06-04 00:25:31 | 年金

月曜日に労働法のゼミで判例研究の発表がありその最後の検討部分に苦心していたので今日はあまり年金レポートの準備に時間が取れなかったのですが、少し在職老齢年金の歴史を取りまとめてみました。

在職老齢年金がいつ制度としてできたのかは知らなかったのですが、昭和40年に創設されていました。導入の背景としては、厚生年金制度の老齢年金は、昭和29年にほぼ現在の姿になって以来、支給開始年齢要件に加え、「退職」を支給要件としており、在職中は年金を支給しないことが原則であった。しかしながら、高齢者は低賃金の場合が多く、賃金だけでは生活が困難であったため、「 昭和40年、65歳以上の在職者にも支給される特別な年金(在職老齢年金)を新たに創設(年金を8割支給する制度)。」ということです。

 

在職老齢年金

被保険者上限年齢

昭和40年

65歳以上の在職者対象にも支給される特別な年金である在職老齢年金を新たに創設(年金を8割支給する制度)

なし

昭和44年

60歳代前半にも拡大(支給割合 8,6,4,2割の4段階)

昭和50年

60歳台前半の在職老齢年金の支給制限緩和(支給割合8,5,2割の3段階)※同じ賃金であれば、原則、支給割合が増加

 

 

 

 

 

 

 

 

昭和61年新法施行までの在職老齢年金は上記の通りであり、当初65歳以上が対象であったものが途中で60歳代前半にも拡大されています。

なぜ在職老齢年金を調べてみようと考えたかというと、年金は「老齢」を保険事故としているのか「退職」を保険事故としているのか?という疑問がわき講師の先生に質問してみたところ「退職」が支給事由であるという回答でした。そうであれば在職している場合は年金は受給しないということが筋であり、在職老齢年金というのはどういう考えで始まったのか知りたいと思ったのがきっかけです。昭和61年新法改正より以前にも存在していたということで新たな発見でした。もう少し突き詰めてみようと思っています。

ハマキョウレックスと長澤運輸事件の最高裁の判決ありましたが、特に長澤運輸事件は若干おどろきました。今回の判決はこれからの様々な特に賃金制度の施策を考えるときの指標になると思います。改正解説の研修などをいくつか受講する予定もあり自分なりに消化してみようと思っています。