OURSブログ

社会保険労務士としての日々の業務を行う中で、考えたこと、感じたこと、伝えたいことを綴る代表コラム。

無期転換ルールの特例における「特殊関係事業主」について

2014-09-27 22:35:26 | 法改正

今週は労働契約法の無期転換の申込みを中心としたセミナーを2つ行いました。2つとも重いセミナーであったため大分肩の荷が下りた感じです。

以前も書いた労働契約法に定める無期転換ルールの「特例」の対象者(まだ国会で通っていないため予定)は以下の通りです。特例に該当する場合は以下の2つです。

(1) 一定の期間内に完了する業務に従事する高収入かつ高度な専門的知識、技術または経験を有する有期契約労働者
(2) 定年後に同一の事業主またはこの事業主と一体となって高齢者の雇用の機会を確保する事業主(高年齢者等の雇用の安定等に関する法律における「特殊関係事業主」)に引き続いて雇用される高齢者

(2)について、定年後の継続雇用については無期転換の対象外という特例ですが、定年後「子会社」で65歳まで継続雇用制度された場合も特例として認められるのかが準備の段階で気になりました。大きな企業であれば当然子会社で継続雇用されるケースが多いと推測されます。

上記にあるように、特例に該当するためには同一事業主に継続雇用される場合以外については、高齢者の雇用の機会を確保する事業主(高年齢者等の雇用の安定等に関する法律における「特殊関係事業主」)に引き続いて雇用されることを(2)の要件としています。

要するに、無期転換の特例として認められる継続雇用先の子会社はこの高年齢雇用安定法の「特殊関係事業主」と同じ範囲ということです。経団連では特例についてその範囲を高年法より広くとってくれるように国に要望したようですが認められなかったということです。

高年法で高年齢雇用確保措置の対象と認められる子会社に継続雇用された場合には、労契法の無期転換の対象外と考えればよいわけです。

毎日暑くなく寒くなく気持ち良い季節になりました。行事の多い秋ですので体調に気を付けて楽しめればよいと思います。支部の行事もとても多くかなり追われている感じです。ちょっと先の話になりますが、11月2日と3日には代々木公園で開催される渋谷くみん祭で社労士のテントを出します。毎年恒例の「骨密度測定器」を置きますので是非遊びに来てください。なかなか盛大なくみん祭でどなたでも楽しめると思います。(その頃には「蚊」もいなくなってしまっているという情報です)。


育児休業給付金延長(保育所入所不承諾をもらうタイミング)

2014-09-21 21:01:22 | 産前産後・育児・介護休業

育児休業についてはとかく人事担当者や社労士は細かな対応を求められると思いますが、1歳6か月まで育児休業を延長し育児休業給付金を受ける場合の申請についてはことさら神経を使う必要があります。


延長理由の代表的なものは、「育児休業の申出に係る子について、保育所における保育の実施を希望し、申込みを行っているが、その子が1歳に達する日(パパママ育休プラスの場合は1歳2か月に達する日)後の期間について、当面その実施が行われない場合」です。要するに簡単に言えば認可保育園に1歳到達日後の入所を申し込んだのに空きがなく入所ができなかった場合ということです。育児休業給付金を受給するためには入所ができなかったことを証明する必要があり、その確認をする書類は①不承諾通知(保留通知)と②入所申込書(入所申込み日及び入所希望日の確認のあため)の写しとなります。


この不承諾通知なのですが1歳到達時点で入所できないことを証明する必要があります。しかしこの不承諾通知は前月末で申込みを締切り毎月1日付で発行される仕組みのようです。そこで例えば9月21日に誕生日である子の場合、9月1日付の不承諾通知を提出することにより1歳に達する日後の期間について入所できないことが証明できるということになりますが9月になってから申し込んだのでは遅く、8月中に申し込んで9月1日付の不承諾通知をもらう必要があるということになります。


育児休業を取得する場合は、色々な手続きを人事担当者も育休取得者もよく調べて細かく対応していることがほとんどなのだと思いますが、そこまでフォローがない会社もあるでしょうし、私などおっちょこちょいですから事前であればギリギリに保育所には申し込めば大丈夫かなと思ってしまいそうなところです。


雇用保険法施行規則第101条の11の2第1項に「厚生労働省令で定める場合」は次のとおりとする定めています。


「育児休業の申出に係る子について、保育所における保育の実施を希望し、申込みを行っているが、当該子が一歳に達する日後の期間について、当面その実施が行われない場合。」

(以下略)

確かに規定には、「子が1歳に達する日前において保育所に入所できないという決定がなされていること」、とは書いていません。しかし、6か月の延長は1歳の誕生日と引き続いていなければならないわけですし、たとえ1歳到達前に申し込みを行っていたとしても誕生日前に入所不承認が決定されていなければ「1歳に達する日後の期間について入所できない」という事由による1歳以後の延長の可否の判断ができない、ということになります。



そこから考えると雇用保険では「1歳に達する前に保育園に入れないという決定があること」をルールとせざるを得ないかなと思います。

詳しくは以下を参照して下さい。




今週もなかなか忙しく肩がバリバリになっていますが、今日は美容院に行きカットして大分スッキリしました。長い間髪型についてはなんとなく迷いがありましたが今の美容院に行くようになり良い担当者に巡り合えて迷いがなくなりました。


その担当者の女性はお客様がお店に来店した時にどのような髪型になっているかを見るそうです。その姿を見てもう少しあそこをカットした方が自分できれいにセットできるのではなど考えるということです。確かに朝起きた時はバラバラであってもしばらくしてくるときれいに決まってくる形にカットしてくれているので助かっています。


私たち社労士の仕事もそうかなと思いました。顧問先企業の就業規則を拝見したり事案についてアドバイスしたりした後で何か事件が起こると、就業規則のこの文言は加筆した方が良いとかこの会社にはこういうアドバイスの方が効果的かなとか色々と考えていきます。そうして信頼関係を徐々に気づいていけるのだと思います。そういう意味でいつも研究熱心でありたいと思います。





契約社員の就業規則③有期契約社員の適用に制限等があるもの

2014-09-15 22:44:55 | 就業規則

今月末、労働契約法の有期労働契約の無期転換と雇止め法理の法定化について2つセミナーがある関係で、今週末はセミナーレジュメを集中して作りました。何とか終わりましたのでかなり心の重荷が軽くなりました。先週は、毎日のように就業規則改定のご依頼があったのでこなせるかなと少し心配になっていたのですが、このレジュメが出来上がったので落ち着いて取り組むことができそうです。

今日は有期契約社員向け就業規則の作成ができるよう、東京労働局のモデル就業規則をどのように加筆し、検討し、削除していくかコメント入りの提案モデルを作ってみました。この作業はもう少し実際には各社の担当者と打ち合わせて煮詰めたいところですが、なかなか使えるツールが出来上がったような気がします。

レジュメを作成する中で、有期契約の場合で法律上適用が制限されてるものがあるか考えてみたのですが、思いついたのは2点でした。この2点については無期転換されたら完全に適用されるということになります。

1つめは、育児介護休業法において、期間雇用者は育児介護休業を取得する場合は3つの条件をクリアする必要があるという部分です。育介法第5条で期間を定めて雇用される者については以下のいずれにも該当するものに限り申出ができるとされています。

①同一の事業主に引き続き雇用された期間が1年以上であること

②子が1歳到達日を超えて雇用が継続することが見込まれること(子が1歳に達する日から1年を経過する日までに雇用関係が終了することが明らかである者を除く

育児介護休業等の関係では、期間雇用者が適用を制限されているのは「休業」のみで例えば「短時間勤務制度」など他のものはすべて適用対象になっています。

2つめは、高年齢雇用安定法の高年齢者雇用確保措置です。一応有期労働契約については高年齢者雇用確保措置とは別問題としています

高年齢者雇用安定法第9条は、主として期間の定めのない労働者に対する継続雇用制度の導入等を求めているため、有期労働契約のように、本来、年齢とは関係なく、一定の期間の経過により契約終了となるものは、別の問題であると考えられます(Q&A、平成16.11.4職高発1104001号)。

ただし、期間の定めのない契約とみなされた場合は高年齢雇用確保措置を講じなければならないとされています。

土曜日東京都社会保険労務士会の野球大会2日目があり、渋谷支部は3連覇しました。千代田支部との決勝戦はとても緊張感のある試合で良かったと思います。野球を見に行くのは大好きで、選手として活躍している後継ぎとして事務所で働いている息子さんたちがまだ子供と言ってもよい頃から応援に行っており、私もすっかりチームの一員になっている感じでいます。お天気も良くこんがりと腕がいい色になり健康になった気がします。

   


転籍の際の社員の同意

2014-09-07 22:22:34 | 労務管理

出向には在籍出向と移籍出向(転籍)とがあります。在籍出向は籍がもともと所属していた出向元企業に残り、給与も出向元から支払われ、雇用保険も出向元での被保険者となりますので、雇用関係の根幹は安定しています。従って、在籍出向については、就業規則に出向させることが規定されていれば包括的合意を得ているとされ、個別の同意は必要がないとされています。

しかし移籍出向(「以下転籍と言います」)の場合は、籍が移ることになりますので、労働者にとっては重大事にだと思います。この場合は子会社やグループ会社への転籍であっても、労働者の個別の同意が必要となります。転籍の場合は移籍する会社等に新たに採用されることになりますが、その「新たな採用を条件に」、現在の所属している会社を「退職」することになるわけです。この「退職」は自己都合というわけではなく、あくまで事業縮小や人員体制のバランスによるものなど会社側の都合ということになりますので、本来は「解雇」としてもよいところです。

「新たな採用を条件に」もともと所属していた企業を退職(解雇)となるわけですから、この退職には本人の同意が必要となるということです。単に人生の重大事だからということではなく、ロジックがあるわけです。「退職への同意」が得られなければ、転籍拒否となり転籍させることはできません。状況によっては、整理解雇の4要件を満たしているかを検討することになります。満たせば解雇という流れになる場合もあります。

錦織選手凄いですね。一試合ごとに上手くなっている感じがします。勝ち方を掴んだということなのではないかと思います。しばらく怪我でコートに立てなかった時期があったとのこと、それをどう生かすかというのも大選手の条件なのでしょうね。人間いつも良い時ばかりではないということになりますが、そういう時をどのように生かせるかが大切で、その時がさらに一回り大きくなるチャンスなのだと思います。

昨日は東京都社労士会の野球大会でした。8時過ぎには家を出て、自分で運転して大宮の健康保険組合のグランドまで毎年行くのですが、大宮の道路行政はもう少し何とかならないのかなという気がします。高速に乗っている時間とほぼ等しいくらいの時間出口から一般道、一般道からグランドに行くまでにかかってしまいます。お蔭で購入したにもかかわらずじっくり聞けていなかった森山良子さんの2枚組のCDを何回も聞くことができましたが。

試合の方は、2連覇したメンバーが今年は3人抜けた渋谷支部でしたが、あまりそれは問題なかったようで午前と午後共に2桁得点で勝利を手にしました。OURSからも2名参加してくれて、私としては鼻高々と言ったところで、1日楽しんで応援することができました。来週も全員野球で頑張って欲しいと思います。

 


契約社員の就業規則②契約期間満了

2014-09-01 00:19:24 | 就業規則

今日まで8月だということも忘れてしまいそうに秋めいてきましたが、外に出た時楽なのには助かります。

今週末も大分仕事の積み残しがあり、ご相談メールの回答作り、週末は就業規則のチェックやセミナーの構想を練ったりしていました。9月に入るとまわりも動き出すので段取りだけは上手くつけておく必要があり、また、来週の土曜日は東京会の野球大会もあり大宮のグランドまで渋谷支部の応援に行きますし翌日曜日は地元目黒のさんま祭りなので、今週の週末は貴重な時間といった感じでした。

9月の3つのセミナーのうち2つは有期労働契約についての知識と動向がテーマであり、就業規則の整備もさることながら、まずは契約社員についての基礎知識を知っていただくためのレジュメを作ろうと考えています。ある程度契約社員について体系的に知ってからでないと、有期労働契約の無期転換への対応についても正しい方向性の選択ができないかもしれないと考えるからです。

沢山のポイントが考えられると思いますが今日頭で思い浮かべたことを少しここで挙げることで、併せて今日の復習にしようと思います。

期間の定めのある契約社員の契約期間が満了した場合に更新しないことになれば退職ということになります。ちなみに就業規則の退職の事由の中に「契約期間満了」が定められていることが多いですが、期間の定めがない正社員のみ対象とする就業規則の退職事由に「契約期間満了」が定められるのは矛盾があります。細かいことですが、今後期間の定めがある契約社員と期間の定めのない正社員や無期転換社員を明確に区分して労務管理を行う必要があるので、要チェックと考えています。

契約期間満了については単に期間が来たら満了で退職ということにはもちろんならず、有効な雇止めである必要があります。労働契約法第19条の定めにあるような、「有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるもの」であれば雇止めが無効になってしまう場合もあります。この雇止めが有効かどうかは、期間の長さが全く関係がないわけではありませんが、やはり「期待権があったかどうか」が重要なポイントになります。そのあたりは人事担当者はよく知っておられるわけですが、いわゆる現場の管理職は契約社員は期間満了で退職もあるのは当然と考えている場合が多いと思います。その点はセミナーで強調しようと思います。

また、契約期間の途中で契約を解除するということになると、これは解雇と同じことになり30日前の予告又は30日以上の解雇予告手当の支払いが必要になりますし、解雇制限期間中であれば契約解除はできないということになります。しかし契約期間満了での退職であればこれは解雇ではないので、解雇制限期間中であっても退職になります。契約期間の途中解除については労働契約法17条「使用者は、期間の定めのある労働契約について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない。 」と定められてからは正社員の解雇より難しくなった(法律上解雇の不可について定められたため)と言われていますので、契約期間途中の解除はあまり行われていないようです。こういうことも現場で知識として持っておいてもらいたいと思います。

契約期間満了の場合、雇用保険はどうかというと3年未満と3年以上の契約期間満了では同じ契約期間満了が離職理由であっても受給資格が異なってきます。これはかなり複雑なのですが、一番のポイントは契約期間3年以上の場合には直前の契約時又は実務上では1カ月以上前に雇止め通知をしていない場合で本人の都合ではなく会社の都合で契約期間満了の退職とした場合は、喪失原因も他と同じ「契約期間満了」ではなく解雇と同じ「事業主都合」ということになります。特定求職者給付金などの助成金を受給している場合は打切りになってしまうので注意が必要です。

その他思いつくのは、以下の通りです。

①育児休業・介護休業は 期間の定めのある労働契約の場合は一定の条件をクリアしている必要がある。

②労働契約法と新たにパート労働法の改正で、期間の定めがあることにより労働条件が不合理な差異があってはならない。

③パート労働法は通常の労働者と比較して所定労働時間が短い短時間労働者が対象ではあるが、正社員と同じだけフルタイムで働いているパートタイマーに対しても、パート労働法の趣旨が考慮されるべきであることを留意することと指針で定められている。

④平成28年10月から、社会保険(健保・厚年)の加入義務は拡大する条件は、以下の通りであること。1.1週間の所定労働時間20時間以上 2.月額賃金88,000円以上(年収106万円以上) 3.当該事業所に継続1年以上使用見込み 4.労働者等総数が常時500人を超える事業所であること 

まだまだ頭が整理されていないことを自覚しましたが、頑張って組み立てていきたいと思います。