以前は5月の連休前に年度更新(労働保険の概算保険料と確定保険料の申告納付)を終わらせようと必死でやっていましたが、平成21年度の改正後は社会保険の算定と同じ7月10日が期限となり、事務所では東京SR(事務組合)委託企業分のみ以前と同じような時期に行っています。
そんな中で在籍出向者の労働保険料の支払い方でこれまでにはなかった質問を受けて新しい発見がありました。
在籍出向者の場合は、出向先で働き、出向元から給与が支払われるという形態が一般的だと思います。その場合、一般的には労災保険は出向先で、雇用保険は出向元で保険料を支払うことになります。
その場合の雇用保険における根拠は、主たる賃金を受ける一の雇用関係(行政手引20351)である出向元で被保険者となっているため出向元で労働保険料の基礎となる賃金総額に含めます。労災保険については出向先で負担するという根拠は「出向労働者に対する労働者災害補償保険法の適用についてS35.11.2基発932号」の以下の通達にあります。
出向労働者が、出向先事業の組織に組み入れられ、出向先事業場の他の労働者と同様の立場(ただし、身分関係及び賃金関係を除く。)で、出向先事業主の指揮監督を受けて労働に従事している場合には、たとえ、当該出向労働者が、出向元事業主と出向先事業主とが行なつた契約等により、出向元事業主から賃金名目の金銭給付を受けている場合であつても、出向先事業主が、当該金銭給付を出向先事業の支払う賃金として、労災保険法第二五条〔現行徴収法第一一条第二項。以下同じ〕に規定する事業の賃金総額に含め、保険料を納付する旨を申し出た場合には当該金銭給付を出向先事業から受ける賃金とみなし、当該出向労働者を出向先事業に係る保険関係によるものとして取り扱うこと。
つまり出向元から受ける賃金を出向先から受ける賃金とみなして出向先の算定基礎である賃金総額に含めて計算するということです。労働保険料の計算をする際出向先は出向元から出向できている労働者の賃金額の数字をもらうことになります。
それでは出向先と出向元両方から賃金を受けている場合は?…この場合出向先賃金に出向元からの賃金を含めて賃金総額とするということになります。要するに出向元A社で30万円、出向先B社で10万円の賃金を受けている場合は出向先のB社で40万円を算定基礎に算入することになります。これは上記通達アンダーライン部分から読み取れます。
企業からのご質問はさらに応用編です。2つ以上の企業に出向している場合で出向元だけでなくそれぞれ出向先から賃金が出ている場合①それぞれの出向先から支払われる賃金額をそれぞれの出向先の算定基礎に入れておけばよいのか、②それともその人が他の出向先で受けている賃金をすべて合計した額をそれぞれの算定基礎に含めるのか、というご質問です。要するに出向元A社で30万円、出向先B社で10万円、C社で10万円の賃金を受けている場合です。これは労働局に確認しました。答えは②でした。そのようなケースは初めてだが上記通達からすれば合計額をそれぞれの出向先の賃金総額に含めて欲しいとのこと。要するに出向先のB社で50万円、C社で50万円を算定基礎に算入するということになります。確かにその人の稼ぎを補償するという労災の目的からすれば、他の出向先で働いている分も合算しておかなければ補償額が少なくなってしまうことになりますので、そうしておく必要がありますよね。
働き方が多様化すると手続は非常に複雑になりますね。ここが社労士の腕の見せ所と思います。役所に聞く前に必ず法趣旨に立ち返り仮説を立ててみると業務が格段に面白くなります。
連休に入りいきなり暖かくなりましたね。週末に支部の総会が終わりホッとしました。連休前半は予定していた衣替えを実施して、連休明けのOURSセミナーの準備をするつもりです。後半は小淵沢に行きこれから色々な客人を迎えられるように準備してからまた母を連れて山を見に行く予定です。ということで来週はブログをお休みさせて頂きます。良い写真が取れればその次の週にアップしたいと思います。