OURSブログ

社会保険労務士としての日々の業務を行う中で、考えたこと、感じたこと、伝えたいことを綴る代表コラム。

出向者の年度更新について

2012-04-29 21:51:02 | 労働保険

以前は5月の連休前に年度更新(労働保険の概算保険料と確定保険料の申告納付)を終わらせようと必死でやっていましたが、平成21年度の改正後は社会保険の算定と同じ7月10日が期限となり、事務所では東京SR(事務組合)委託企業分のみ以前と同じような時期に行っています。

そんな中で在籍出向者の労働保険料の支払い方でこれまでにはなかった質問を受けて新しい発見がありました。

在籍出向者の場合は、出向先で働き、出向元から給与が支払われるという形態が一般的だと思います。その場合、一般的には労災保険は出向先で、雇用保険は出向元で保険料を支払うことになります。

その場合の雇用保険における根拠は、主たる賃金を受ける一の雇用関係(行政手引20351)である出向元で被保険者となっているため出向元で労働保険料の基礎となる賃金総額に含めます。労災保険については出向先で負担するという根拠は「出向労働者に対する労働者災害補償保険法の適用についてS35.11.2基発932号」の以下の通達にあります。

出向労働者が、出向先事業の組織に組み入れられ、出向先事業場の他の労働者と同様の立場(ただし、身分関係及び賃金関係を除く。)で、出向先事業主の指揮監督を受けて労働に従事している場合には、たとえ、当該出向労働者が、出向元事業主と出向先事業主とが行なつた契約等により、出向元事業主から賃金名目の金銭給付を受けている場合であつても、出向先事業主が、当該金銭給付を出向先事業の支払う賃金として労災保険法第二五条〔現行徴収法第一一条第二項。以下同じ〕に規定する事業の賃金総額に含め、保険料を納付する旨を申し出た場合には当該金銭給付を出向先事業から受ける賃金とみなし、当該出向労働者を出向先事業に係る保険関係によるものとして取り扱うこと。

つまり出向元から受ける賃金を出向先から受ける賃金とみなして出向先の算定基礎である賃金総額に含めて計算するということです。労働保険料の計算をする際出向先は出向元から出向できている労働者の賃金額の数字をもらうことになります。

それでは出向先と出向元両方から賃金を受けている場合は?…この場合出向先賃金に出向元からの賃金を含めて賃金総額とするということになります。要するに出向元A社で30万円、出向先B社で10万円の賃金を受けている場合は出向先のB社で40万円を算定基礎に算入することになります。これは上記通達アンダーライン部分から読み取れます。

企業からのご質問はさらに応用編です。2つ以上の企業に出向している場合で出向元だけでなくそれぞれ出向先から賃金が出ている場合①それぞれの出向先から支払われる賃金額をそれぞれの出向先の算定基礎に入れておけばよいのか、②それともその人が他の出向先で受けている賃金をすべて合計した額をそれぞれの算定基礎に含めるのか、というご質問です。要するに出向元A社で30万円、出向先B社で10万円、C社で10万円の賃金を受けている場合です。これは労働局に確認しました。答えは②でした。そのようなケースは初めてだが上記通達からすれば合計額をそれぞれの出向先の賃金総額に含めて欲しいとのこと。要するに出向先のB社で50万円、C社で50万円を算定基礎に算入するということになります。確かにその人の稼ぎを補償するという労災の目的からすれば、他の出向先で働いている分も合算しておかなければ補償額が少なくなってしまうことになりますので、そうしておく必要がありますよね。

働き方が多様化すると手続は非常に複雑になりますね。ここが社労士の腕の見せ所と思います。役所に聞く前に必ず法趣旨に立ち返り仮説を立ててみると業務が格段に面白くなります。

連休に入りいきなり暖かくなりましたね。週末に支部の総会が終わりホッとしました。連休前半は予定していた衣替えを実施して、連休明けのOURSセミナーの準備をするつもりです。後半は小淵沢に行きこれから色々な客人を迎えられるように準備してからまた母を連れて山を見に行く予定です。ということで来週はブログをお休みさせて頂きます。良い写真が取れればその次の週にアップしたいと思います。


開業記24 事務所経営について

2012-04-22 23:54:00 | 開業記

開業記24 事務所経営について

事務所はとうとう満20年を超えて21年目に入ったところです。一人で自宅開業をしたときはよもやこのような規模になるとは思いもかけませんでした。そもそも経営とかマネジメントということについて真剣に考えたことは最近までなく、また事務所の運営については自分を含めて5名くらいのスタッフで行っていたときは考える必要もそれほどなかったように思います。

社労士の場合、開業当初一人で始めることが多いと思います。しばらくすると仕事も入り忙しくなり、自分が顧問先に行っている間に、書類等を作成してもらえるとよいなと考え、まずはパートタイマーを雇うということになります。多くの社労士が話されるようにそのくらいの時というのは、意外に人件費もそれほどかかりませんから、収入はの多くは自身に入り、結構それなりに稼げるようになったなという感じになります。

ある程度自分の目の届く範囲の仕事をしていたいという考え方であればそれ以上事務所を大きくしないということで、さらに1人くらいはスタッフを雇うとしても、その規模で運営していくという社労士事務所は多くあります。しかし「たまたま大きな仕事を依頼された」とか時には「法人化して戦略的に規模を大きくしていく」というケースもあります。そのラインを超えるか超えないか?超えると結構事務所は大きくなっていくものだと思います。

私の場合開業間もなくから15年間tacの講師をしており、事務所はその間に少しずつ大きくはなっていましたが、講師と事務所の代表とどちらかと言えば講師のイメージが強かったのではないかと思います。私の業務の中心は講師と教材と実務のコンサル、事務所のスタッフの業務は実務の手続とそれに伴う相談業務という体制が長年できていました。しかし講師を卒業とほとんど同時に大きな仕事の機会に恵まれスタッフがまず増えたこと、そこでマネジメントとか経営というものを考えるようになりました。マネジメントや経営についての私はまだ試行錯誤期間中、「つかむ」ところまでは来ていないという感じです。

その大きな案件は本当に良い経験となりました。事務所はごたつきましたが事務所経営ということについて私は多くのものをその経験で知ることになったと思います。もちろん自分の至らなさもとても認識しました。苦しいと言えば苦しい1年ちょっとだったと思います。スタッフにとってもそれまでの事務所の居心地がずいぶん変わったのではないかと思います。その時事務所に助っ人として入ってくれたSさんのマネジメントは目からウロコでした。非常に勉強になり、ある意味新たなことを得た嬉しさも私は感じることができた気がします。

やっと落ち着いたかと思った矢先、今年になりさらに大きな案件を頂いたことでスタッフが増えました。今も事務所経営とはこれだとつかんではおらず、どちらかというとますます日々事務所をどのように運営して行けばよいか考え続けているという感じですが、以前よりはいろいろなものが見えているような気がします。前回の経験を踏まえて自分としては少し慎重に、あせらないように言い聞かせて進めているという感じです。

しかし規模が大きくなるとこれまでの事務所の業務の内容はまた変わってきました。そこは面白いなと思います。コンサルばかりやっていた私ですが、3号届の仕分けをしてみたり書類のチェックをしたりでここのところかなり新鮮です。色々な業務が経験できることに感謝しつつ、スタッフがこの事務所で働けてよかったと感じてもらえるように頑張ります。

社労士の業務に比べると、事務所経営は正直言って難しいなと感じています。社労士の業務は相変わらずワクワクしながら取り組んでいるのですが、事務所経営はそんな具合にはいきません。自分の不徳だとも思います。週末は稲盛和夫さんの経営塾での回答が書かれている「人を生かす」を読んでみました。「現場」「率先垂範」「無私の心」「事務所の拡大の時」など今だから理解できるものも多く、社労士事務所もある規模になれば会社経営と同じ部分が多いのだと感じます。その本のまえがきに、「一人で生きていくのも厳しい世の中で、従業員とその家族の生活を必死で守ろうとする経営者というものは立派であり、私はそのような経営者の育成に少しでも役立ちたいと考えた」とあった言葉にジンときました。


年金確保支援法 第3号被保険者期間

2012-04-15 23:19:44 | 年金
 
このところ大きな規模の手続の体制づくりに取り組んでいるのですが、やはり件数が多いと、事務所では少ししかお目にかからない昨年施行された年金確保支援法の第3号被保険者の届出の事務処理がかなり来るのです。しかしこの年金確保支援法の3号該当届と、従来から行ってきた3号特例届の違いをよく理解できなかったため調べてみました。
 
毎月請求書と一緒に社会保険加入事業所に送られてくる「社会保険新法」という広報用リーフレットには以下の図が載っていました(…後のコメントは加筆しました)。
 
●国民年金の第3号被保険者期間と重複する第3号被保険者以外の期間が新たに判明した場合、それに引き続く第3号被保険者期間について、届出により保険料納付済期間のままとして取り扱うこととなりました。(社会保険新法2011年12月号より転載)

例1届出が2年以上遅延した場合、以前は3号特例届を提出していただき、届出日以降、3号納付済期間として認定していました。年金確保支援法では、3号該当届(年金確保支援法用)を提出することにより、当初から3号納付済期間となります。…例えば3号期間の途中に自分で会社を作って1号被保険者になった期間があったというような場合はその期間については1号期間に訂正し、その後の期間については年金確保支援法の届け出により3号期間とするということです。

図:第3号被保険者期間の取り扱い(例)1


例23号期間として管理されていた期間で、法施行前に記録訂正したものについても、3号該当届(年金確保支援法用)を提出することにより、当初から3号期間として認定されます(経過措置)…これにより届出から2年を超える期間は届出以後しか保険料納付済期間を認められなかったため、老齢基礎年金の受給権者が届出た場合には当初からの3号期間として認められず、これまで受給した年金が減額される必要があるところを、年金確保支援法の届け出により減額されないことになりました。

図:第3号被保険者期間の取り扱い(例)2


例3当初から3号期間として管理されていなかった期間または3号特例期間として管理されていた期間は、年金確保支援法が適用されないため、2年を超えた期間については、これまでと同様に3 号特例期間として管理されます。…年金確保支援法の対象はあくまで3号期間として当初記録されていた期間に限るのでこの場合は3号特例届の対象になります。3号期間以外の期間(1号期間や2号期間)がある場合は年金確保支援法の3号該当届を出しますが、それがない場合は3号特例届ということになります。

図:第3号被保険者期間の取り扱い(例)3

従って3号特例の期間は3号期間として一度も管理してこなかった期間についてのみ必要になります。

また、年金確保支援法の3号該当届と3号特例届を両方提出するというケースはないということになります。

年金確保支援法は3号以外の期間(1号期間や2号期間)が3号期間の途中にあったという場合の3号期間としての扱いを決めたということと、従来の3号特例期間というのは届出したところから保険料納付期間となるのに対して年金確保支援法の3号該当届による期間は当初から保険料納付済み期間になるというところがポイントですね。

昨日は事務所にBBクラブの幹事が集まり次回の勉強会の打ち合わせをしました。その前の週は昨年の合格者の集まり、金曜日は受講生の一人が事務所に相談がてら遊びに来てくれましたし、来週は一昨年の合格者が特定社労士にめでたくなることのお祝いとなんだかんだ言ってしょっちゅうクラスのOBと会っているのです。合格して何年たっても受講生OBと会って話が弾むのはうれしいことです。幹事会を終わってから1時間半くらい雑談をしながら懇親をして心からリラックスできた週末でした。


 


高年齢雇用確保措置設計

2012-04-08 23:59:45 | 法改正

高年齢等雇用安定法の改正法案が3月9日に国会に提出されて、いよいよ改正対応に向けた高年齢雇用確保措置の制度設計の見直しに取り掛かっている企業が多くなってきました。

2013年度から、年金支給開始年齢が65歳になる2025年度までの12年をかけて、事業主に「希望者全員に対しての65歳までの雇用義務」を課す(労使協定に定める基準によって継続雇用の対象者を限定できる、現在の仕組みを廃止する)内容となっています。

その中でも55歳時点で60歳まで雇用と65歳まで雇用の2つのメニューを用意して本人に選んでもらうという制度設計のご質問が多いような気がします。今回厚生労働省のQandAでもNEWということでQが増えていました。

Q5-2:  55歳の時点で、
 従前と同等の労働条件で60歳定年で退職
 55歳以降の雇用形態を、65歳を上限とする1年更新の有期雇用契約に変更し、55歳以降の労働条件を変更した上で、最大65歳まで働き続ける
のいずれかを労働者本人の自由意思により選択するという制度を導入した場合、継続雇用制度を導入したということでよいのでしょうか。

 

A:  高年齢者が希望すれば、65歳まで安定した雇用が確保される仕組みであれば、継続雇用制度を導入していると解釈されるので差し支えありません。
 なお、1年ごとに雇用契約を更新する形態については、改正高年齢者雇用安定法の趣旨にかんがみれば、65歳(男性の年金支給開始年齢に合わせ男女とも同一の年齢)までは、高年齢者が希望すれば、原則として契約が更新されることが必要です。個々のケースにおいて、改正高年齢者雇用安定法の趣旨に合致しているか否かは、更新条件がいかなる内容であるかなど個別の事例に応じて具体的に判断されることとなります。

http://www.mhlw.go.jp/general/seido/anteikyoku/kourei2/qa/

上記の場合は60歳定年で退職のケースが従前と同等の労働条件ということになりますが、この①も多少の賃金の減額がある、しかし65歳まで雇用確保される②のケースよりは減額が少なく、合計賃金額においては①の60歳までのケースの方が多くなる、という設計は問題があるか?というご質問がありました。

厚生労働省に問い合わせたところ、これは通常の不利益変更と同様ということで①を選ぶ場合本人の同意が必要とのことです(①に同意せず②も同意しないという従前どおりとなる)。賃金原資は限りがあると思いますが、選択肢が示され65歳まで雇用確保される場合より賃金総額が多いと言っても、60歳までの雇用の場合に従前の賃金を下げるのは原則としてはできないと考えてよいようです。

昨日は仕事で仙台まで日帰りで出張に行って参りました。青葉城跡では鷲の像が 地震でぽっきりと落ちてしまったということで青いシートでくるまれていました。また海岸に近いところの松は3メートルくらいのところでやはりぽっきりと折れているようで無残でした。スクラップされた車が雇用開発機構の敷地に山積みになったりとまだまだ震災の傷跡がそこここに残っていて、震災当時の被災者の方の苦労が忍ばれました。一方1階部分ががらんどうだった建物はほとんど復旧しており、3か月前と比較にならないくらいと案内していただいた顧問先の方のお話に人間のたくましさも感じました。これからは季節もよくなりますしどんどん復興が進んでいくことを願っています。東京は満開の桜ですが、仙台ももう少ししたら町が桜で華やかになり、ますます元気になれると思います。


雇入れ時の健康診断

2012-04-01 23:35:51 | 労務管理

今日4月1日が日曜日であったために、平成24年度は明日の2日からスタートします。

会社としては新入社員を受け入れるためにいろいろと準備に追われるところですが、そのひとつに雇入れ時の健康診断があります。雇入れ時の健康診断は安衛法66条を根拠として安衛則43条に定められています。

(雇入時の健康診断)
安衛則第四十三条  事業者は、常時使用する労働者を雇い入れるときは、当該労働者に対し、次の項目(省略)について医師による健康診断を行わなければならない。ただし、医師による健康診断を受けた後、三月を経過しない者を雇い入れる場合において、その者が当該健康診断の結果を証明する書面を提出したときは、当該健康診断の項目に相当する項目については、この限りでない。

定期健康診断などについては省略についていくつか定められていますが、雇入れ時の健康診断は上記アンダーラインにある3か月以内の健康診断結果証明の提出があった場合のみ省略が認められています。ということは原則としては社員を雇い入れた時には省略はできないと考えたほうがよいということになります。

以前4月に新入社員を雇い入れた場合、いつまでに雇入れ時の健康診断を実施なければならないかというご質問を受けたことがあります。その会社は5月に定期健康診断を実施するのでその時に受けてもらうのではいけないか?ということでした。その時調べたのですが以下の通達がありました。

「雇入れるとき」とは、雇入れの直前又は直後をいう(昭和33.2.13基発90号)。大分古い通達ですが、労働局に問い合わせたところ、この「直後については」明確に〇週間以内など定められてはいないということです。従ってつまり常識的な事務処理上の遅延は許容されるとのことでした。5月の定期健康診断をできるだけ早い時期に実施できれば雇入れ時の健康診断としても許容されるのではないかと私は考えているのですが(あくまで私見です)。

大学を出て2年間務めたカネボウディオール時代私は人事労務の担当でしたが、健康診断の担当もしていました。中途採用が主でしたので新入社員が年度の途中に入社するということになると、当時赤坂にあったカネボウ東京事務所の診療室に新入社員をタクシーで連れて行き雇入れ時の健康診断を受診してもらっていました。タクシーに乗るのは結構珍しいことでしたし、ちょっと先輩づらしてなんとなく楽しみな仕事でありました。

今日は大学の桜祭りに行きテニス部の先輩・後輩の懐かしいお顔を拝顔した後、同期の女子?5人で美味しい南欧料理を食べて中国茶を飲んでリラックスしました。やっぱり吉祥寺は楽しい街ですし、大学時代の仲間は良いものですね。また1週間頑張れそうです。