OURSブログ

社会保険労務士としての日々の業務を行う中で、考えたこと、感じたこと、伝えたいことを綴る代表コラム。

児童手当と子ども手当について

2018-09-30 23:22:06 | 社会保障

児童手当は、1971(昭和46)年に創設された社会手当の代表的なものです。児童手当のモデルになったのはフランスの制度であり、歴史的に事業主の拠出を主として発展してきたということがその理由だそうです。事業主による拠出については制度の設計当初より重要と考えられており、その理由は被用者・被用者等以外のすべての財源を無拠出制で賄うとなると、生活保護に代表される社会扶助として、資産調査を伴う救貧政策の延長とならざるを得ないという懸念があったからということです。

とにかくこれまで改正が非常に多かった児童手当なのですが、1972年の実施3年後には制度見直しの議論がされており、1978年の改正においてはその目的も改正されています。その後頻繁に改正された後、更に2009(平成21)年の政権交代によって、民主党中心の政権与党が「子ども手当」という新たな制度を創設しました。この子ども手当はその目的が「子どもの健やかな育ちを支援する」とされ、所得制限をしないという、それまでの児童手当とは異なった制度ではあったのですが、従来の児童手当を廃止したのではなく、生かしつつ財源構成がなされていました。しかし公費による財源確保が困難となり、わずか2年で廃止されています。その後「平成23年度における子ども手当の支給等に関する特別措置法(特別措置法)」等の特別措置法などでつなぎ、現在の児童手当は2012(平成24)年に新たな児童手当が施行されています。

現在の児童手当の目的は、「家庭等の生活の安定に寄与するとともに時代の社会を担う児童の健やかな成長に資する」とされており、子ども手当施行前の児童手当とほとんど変わっていません。家庭に「等」が追加されているのは、従来受給資格者が監護・生計同一の父母又は児童を養育している者であったため、親の虐待等により施設に入所している児童について受給できないという問題などがありましたが、上記特別措置法により施設の設置者等に対しても支給されることになった等の改正点を引き継ぎ追加されたものです。

支給対象は、中学校修了までの国内に住所を有する児童とされており、支給される月額は以下の通りです。(所得制限があり、夫婦と児童2人の場合年収ベースで960万円未満とされています)

○0~3歳未満一律15,000円
○3歳~小学校修了まで
・第1子、第2子:10,000円(第3子以降:15,000円)
○中学生一律10,000円
○所得制限以上一律5,000円(当分の間の特例給付)

財源については、国・地方(都道府県・市町村)、事業主拠出金で構成されていますが、事業主拠出金で賄われるのは、所得制限未満・3歳未満の児童手当だけであり、あとは公費で賄われており、受給対象が中学校修了前までと拡大されたためか、事業主の拠出はかなり児童手当全体からみると割合的には小さいものとなっていると感じます。なお、公務員については各省庁が全額負担ということにはずっと変わりありません。

児童手当も調べてみると色々な点で発見があります。勉強してみると民主党政権時代の施策により評価される部分も知ることができて興味深く感じます。

今晩はひどい雨風の台風です。山手線なども早くに運休となってしまったので、日曜日で家にいることができてよかったと思います。午前中に選挙に行き、ついでに夏枯れしてしまったベランダの花をあれこれ買ったのですが、家の中に避難させました。

いよいよ明日から10月です。本当に1年があっという間で驚きますが、事務所は秋からまた少し大きな仕事に取り組むことになりますので、できるだけうまく皆が業務を進められるように、方向性を明確にしながら、環境を整えていきたいと思います。


裁量労働の指導事項について

2018-09-24 23:57:53 | 労働基準法

最近、裁量労働における環境が厳しくなってきています。労基法改正法案の中の一つの項目であった企画業務型裁量労働制に対する首相の国会答弁での数字が問題とされたこともありますし、そもそもここ数年の長時間労働に対する取り締まりの中で、裁量労働は時間管理を労働者に委ねているためきちんとした時間把握がなされていないということを認識したこともあったのかと思います。

2019年4月からの改正には、安衛法で管理監督者及び裁量労働対象者を含むすべての労働者の労働時間の把握を、健康管理のために行う義務を事業者に科すことになりましたので、その点では今後裁量労働対象者の時間管理も行っていく必要があります。

ところで裁量労働対象者がいる会社にここの所労働基準監督署の呼び出しが来ているようなのですが、この前その指導内容に若干の疑問を感じ問い合わせてみました。というのも、指導内容としては就業規則・裁量労働制の労使協定に、労働局で定めるモデル例の以下の条文が入っていないので記載するようにというものでした。

第8条 裁量労働適用の中止
前条の措置の結果、裁量労働適用者に裁量労働を適用することがふさわしくないと認められた場合または裁量労働適用者が裁量労働の適用の中止を申し出た場合は、使用者は、当該労働者に専門業務型裁量労働制を適用しないものとする。

しかし裁量労働の採用条件については労基法38条の3で定められており、その中にはその点を就業規則又は労使協定に定めることとはしていないのです。 確かに今年の春ごろ企業に来ていたアンケートには「辞退する仕組みがあるか」というような質問があり、法律上の定めではないので「なし」と記載しても良いと思います、とアドバイスした記憶もありました。

問い合わせの結果としては、法律の定めではないため「是正勧告」ではなく、健康福祉確保措置の一環で、長時間労働の会社には「辞退することができる」旨の規定を指導事項として入れるよう内部の通達がなされている、ということでした。確かに「指導」ではありますが、就業規則や労使協定はあくまでその企業、労使で定めるものであり、違和感がないわけではありませんでした。
 
労基法38条の3において、裁量労働を導入する際労使協定に定めることとされているのは以下の通りです。
一 業務の性質上その遂行の方法を大幅に当該業務に従事する労働者の裁量にゆだねる必要があるため、当該業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をすることが困難なものとして厚生労働省令で定める業務のうち、労働者に就かせることとする業務(以下この条において「対象業務」という。)
二 対象業務に従事する労働者の労働時間として算定される時間
三 対象業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し、当該対象業務に従事する労働者に対し使用者が具体的な指示をしないこと。
四 対象業務に従事する労働者の労働時間の状況に応じた当該労働者の健康及び福祉を確保するための措置を当該協定で定めるところにより使用者が講ずること。
五 対象業務に従事する労働者からの苦情の処理に関する措置を当該協定で定めるところにより使用者が講ずること。
六 前各号に掲げるもののほか、厚生労働省令で定める事項(有効期間を定めることと3年間保存すること)
 
さていよいよ今週で大学院も夏休みが終わり秋学期が始まります。入学してから折々購入した本も15冊程度、ざっとですが目を通して入学時よりは少し社会保障について知識が付いたような気がします。また新たな勉強に取り組めるのはとても楽しみです。
 
夏休み最後の週末はBBクラブとOURSのメンバーで恒例のバーベキューでした。子供たちもかなり参加してくれて、お天気も良く開放的な気分になってとても楽しく過ごしました。参加してくれたみんなも楽しそうにしていましたので良かったです。それにしても、以前は子供たちと一緒に元気に遊べたのですが、今はそのパワーもなく、お肉から焼きそばまでみんな作ってもらって食べて、あとは私の顔をみると泣く子どもをからかっているだけというほとんど物の役に立たない私でした。
  焼き始めます。
まとまりのない集合写真
 

改正36協定記入例

2018-09-17 23:29:11 | 法改正

OURS人研ニュースに載りましたが、来春より様式変更となる36協定の記入見本が出ました。12日に行ったOURSセミナーで記入方法までトライしてみようかと思っていたのですが、まだ時間もあるので記入見本が出てからということで様子を見ましたとお伝えした直後でしたので、早めに出たことに若干驚きました。

https://www.mhlw.go.jp/content/000350329.pdf

記載されている内容をみるとこれまでと思ったほど大きく変わっているわけではないですが、以下に異なる点を挙げてみます。

①現行の延長時間については「1日、1日を超え3箇月以内の期間及び1年」について定めることになっており、3箇月の時間外労働を定めることが可能でしたが、法改正により「1日、1箇月及び1年」の時間外労働を定めることとされたため、記入欄も「1日・1箇月・1年」とされています。

②起算日と有効期間の記入欄の位置が変わりました(特にこれまで法定されていなかった起算日については36協定に定める事項として新たに法定化されました)。

③所定労働時間を超える時間数(任意)を記入する欄ができました。(これまで法定超えを書くか所定超えを書くかで悩む会社もありましたので、これですっきりしました)。

④これまで記入欄がないため欄外に記載していたことの多い特別条項は2ページ目に準備されました。

⑤特別条項を適用する場合の健康福祉確保措置のNOを記入する欄ができました。

⑥「上記で定める時間数にかかわらず、時間外労働及び休日労働を合算した時間数は、1箇月について100時間未満でなければならず、かつ2箇月から6箇月で平均して80時間を超過しないこと(チェックボックスに要チェック)」というチェックボックスができました。

気になる点としては、新たな残業時間の上限規制は、大企業は2019年4月1日施行ですが、中小企業は2020年4月1日施行ですので、2019年の4月はまだ現行の時間外上限を用いることができ、その場合もこの様式を使うとするとかなり記入しづらい(3箇月の上限を定める場合どのようにするか)ということがあります。いまのところその対応については特別何も示されていないため未定と考えてよいと思います。

また、特別条項に記入するべき割増賃金率ですが35%となっています。これは法定の割増率である25%を超える割増率であり、25%を超える割増率については努力規定であることは記載されてはいますが、その通り転記してしまうケースがないか気になります。

現行の特別条項の見本では、限度時間を超えて労働させる場合における手続については「労使で協議」とされていたかと思いますが、「労働者代表者に対する事前申し入れ」とされています。現実的には「協議」はなかなか難しく「通告」としてはとアドバイスしてきました。その場合でも「事前」がポイントになりますので、この記載については現実的な見本になっていると感じます。

現行、休日労働については「始業・終業時刻」ではなく「休日労働時間数」でも良いことになっています。こちらについては、36協定に定める事項として法に定めらているのは「休日労働の日数」のみとされており「始業・終業時刻」は定められていないため従来通り休日労働時間数(例10時間など)でよいものと考えます。

連続ハズキルーペの話で申し訳ないのですが、お蔭さまではっきり文字が見えるせいか読書に集中できて、夜布団の中で堅い本を読んでいると最近すぐ眠たくなってしまうのですがなぜかこれが眠くならず順調に読み進めることになり、非常に重宝しております(あくまで個人の感想です)。

新事務所は片付けも終わり落ち着きました。皆様から沢山のお花を頂戴しまして有難うございました。事務所入り口に飾らせて頂き、新たに頑張ろうという気持ちになりました。

BBクラブからもかわいらしい蘭を頂きましたが、なかなか御礼をお伝えする機会がないためこの場をお借りして御礼申し上げます。有難うございました。

 BBクラブからのお祝いのお花 


働き方改革法案関連 改正36協定の起算日について

2018-09-09 20:37:19 | 法改正

2019年4月より改正される36協定の様式については指針案に載っています。今回改正により特別条項がない場合1枚の届出、特別条項も締結する場合はさらに特別条項用の1枚が追加される形になっています。

その記載事項の中で「起算日」があります。現行の36協定においても「起算日」の記入欄はあるのですが、根拠は明確ではなかったかと思います。今回は省令案の中で36協定の記載事項に新たに追加されることが書かれており、これは「建議に対応」ということになっています。建議に対して労働政策審議会の労働条件分科会の報告で以下のように示されています。

現行の36 協定は、省令により「1日」及び「1日を超える一定の期間」についての延長時間が必要的記載事項とされ、「1日を超える一定の期間」は時間外限度基準告示で「1日を超え3か月以内の期間及び1年間」としなければならないと定められている。今回、月45 時間(一年単位の変形労働時間制の場合は42 時間)、かつ、年360 時間(一年単位の変形労働時間制の場合は320 時間)の原則的上限を法定する趣旨を踏まえ、「1日を超える一定の期間」は「1か月及び1年間」に限ることとし、その旨省令に規定することが適当である。併せて、省令で定める協定の様式において1年間の上限を適用する期間の起算点を明確化することが適当である。

この起算日の役割は、36協定に定める1か月又は1年の期間を明確化する必要があるということになるわけなのですが、それでは起算日を明確化したことにより、2,3,4,5,6か月の平均もその範囲内でしか見ないのかというとそういうわけでないのです。その理由としては法律条文の構成から読み取れると言えば読み取れるのですが、36協定案の裏面に「チェックボックスは労働基準法第36条6項第2号及び第3号の要件を遵守する趣旨のものであり、『2箇月から6箇月まで』とは、起算日をまたぐケースも含め、連続した2か月から6か月までの期間を指すことに留意すること。」とあります。その点は留意が必要と考えます。

そういう細かな点についてはOURSセミナーでもお話ししますし、ブログにも載せていこうと思います。

とうとうハズキルーペを購入しました。眼鏡の上からかけられる大きなタイプで1.6倍という中間の倍率のものです。そんなに効果がないという意見もありましたが、掛けてみたら私には合っているのかバッチリという感じです。これで細かい仕事も少し楽になりそうな気がしますので、自宅と事務所両方に置いておこうかなと考えています。ちなみに色はシルバーにしました。


新事務所移転

2018-09-03 00:02:51 | 雑感

今週末は新事務所移転があり、今日ほぼ作業を終わり月曜日午前中に通信網が構築されれば本格的に新しい事務所での業務が始まります。

個人事務所時代から考えると事務所は5か所目ということになります。富ヶ谷の自宅兼用の事務所が5年間、その後自宅部分を引っ越しして事務所専用にして6年間、その後ドエル青山1階に移転して、事務所を渋谷2丁目に置き、その後ドエル青山の2階に移転ののち、4年前に坂入ビルに移転しました。ほぼ5年ごとくらいでスタッフが増えて事務所を拡大する必要が出てきて移転をしてきたという感じです。

今のスタッフは、富ヶ谷時代からのメンバーが少し、ドエル青山時代に入社したメンバーが半分、坂入ビルからの入社組が半分くらいといった感じかなと思います。古くからのメンバーは引っ越しの都度皆で「いよいよ会社らしくなってきたね」というようなことを言ってここまで来たという感じだと思います。

ドエル青山に入居した際は、1階の道路に面した大きな窓に自分たちで外から見えないようなシートを貼ったのですがそれがなかなか困難な作業で大騒ぎだったのも楽しかった思い出です。坂入ビルに移転する直前は、スタッフが入社してきても座ってもらうデスクを置く場所がなく、私のデスクを譲り、半年くらいの間小さな作業台で仕事をしていたこともあり、広い事務所になってまともなデスクで仕事ができるようになって嬉しかったことも印象深いです。しかし4年たってさらに大きな事務所が必要になったのは、スタッフの頑張りのお蔭が大きく、皆で頑張ってここまで来たという感謝の気持ちが大きいです。OURSの新たな歴史の始まりをスタッフと作っていけることを幸せに思います。

新事務所の住所はやはり、渋谷2丁目なのですが、今度はヒカリエのお隣という立地であり、来ていただくお客様にもご負担をかけないのも嬉しいです。これまで住み慣れた地区とは少し違うのですが、馴染んでいるお店が全く変わったわけでもないので少しホッとします。

事務所が26年目に入った今年度、社労士の仕事も今後変化していくのは予測されているのですが、労働社会保険手続も労務管理をはじめとしたご相談業務も、「ソリューション」を中心に据えた提案型の事務所として、事務所移転を機に新たな業務展開を目指していこうと考えています。

新事務所は以下の通りです。

〒150-0002       
東京都渋谷区渋谷二丁目16番5号 マニュライフプレイス渋谷4階

※電話番号の変更はありません。どうぞよろしくお願い申し上げます。
 

ドエル青山に移転した際は、BBクラブのメンバーを中心にビールの会という事務所お披露目をした後事務所近くの「たぬ吉」というお店でみんなで盛り上がりましたし、坂入ビルの移転の際もBBクラブのメンバーにお手伝いいただいて、打ち上げをしました。今回は新事務所のお約束で土日しか移転作業ができないということとメンバーも増えたので荷造り作業などもあっという間に終わってしまい、BBクラブのメンバーに来ていただくこともなかったので事務所のメンバーだけでピザとビールで簡単に打ち上げを済ませました。

今回は特にお披露目などをする予定はないのですが、新しい事務所は駅も近いことですし、お客様も社労士会の仲間もBBクラブのメンバーも気楽に立ち寄って頂いて、活気あるにぎやかな事務所にしていきたいと思っています。 

 お世話になった青山坂入ビル入口新事務所エントランス