OURSブログ

社会保険労務士としての日々の業務を行う中で、考えたこと、感じたこと、伝えたいことを綴る代表コラム。

後継者問題について

2023-01-29 17:24:50 | 雑感

ゆえあって、しばらくの間ブログはいつもより軽めになるかもしれませんが、よろしくお願いします。

先日東商新聞に、企業の後継者不在率のことが載っていました。帝国データバンクの「全国企業『後継者不在率』動向調査(2022)」を元に書かれた記事ですが、全国・全業種約27万社の後継者不在率は57.2%ということです。かなり大きな数字と思いますが、調査開始2011年以降初めて60%を下回ったということです。

この改善は、M&Aや事業譲渡などの事業承継のメニューが整ってきたことと、地域金融機関等事業承継相談窓口が普及したことが影響したのではとされています。

事業承継の動向について、代表者の就任経緯としては34.0%の企業が同族承継とあり、前年比で急減だそうです。一方血縁関係のない役員などの内部昇格33.9%、M&Aほかが20.3%と増加したそうです。

具体的な後継者候補の属性としては、「非同族」が36.1%で最多、調査開始以来首位であった「子供」が今回初めて「非同族」がトップとなり、脱ファミリー化へ舵を切る動きが見て取れるということです。

新聞などでカリスマ経営者がどのように事業承継していくのかとても興味を持って見ています。後継者問題はこれまで日本を支えてきたベビーブーム世代の大きな課題ですから。

今年の新年会は久しぶりに立食パーティーがいくつかありました。やはりパーテーションをはさみ着席でのパーティーよりは、立食の方が色々な方とお話ができ、また着席でも座がばらけると色々な席へ行って交流を図るという状況で、久しぶりに楽しいものだと感じました。

ほかのパーティーに出て飾られていたお花をホテルから勧められて持ち帰ってくれた方から頂いた花束がとても見事で、勢いがあり、これも久しぶりに懐かしい習慣だと思い写真に残しました。元気が出ます。

 


永年褒章の社会保険の取扱いについて

2023-01-23 00:41:22 | 社会保険

年明けから何社かからご質問があったのが社会保険料の算定基礎となる「報酬」と「賞与」についてです。厚生年金保険法では「報酬」と「賞与」は以下のように定義されています(健康保険法でもほぼ同様です)。

厚生年金保険法第3条
③報酬 賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が、労働の対償として受ける全てのものをいう。ただし、臨時に受けるもの及び3月を超える期間ごとに受けるものは、この限りでない。
④賞与 賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が労働の対償として受ける全てのもののうち、3月を超える期間ごとに受けるものをいう
 
基本的に社会保険では慶弔見舞金などの恩恵的なものか出張旅費などの実費弁償的なものを除いて、報酬、賞与に該当するケースがほとんどのように感じます。その中で年明けにかなり指摘を受けたのが「年末年始手当」です。
 
疑義照会には報酬・賞与としない例として「大入り袋」を取り上げていますが、その理由として大入袋のもつ本来の性質①発生が不定期であること、②中身が高額でなく、縁起物なので極めて恩恵的要素が強いことからすると生計にあてられる実質的収入とは言い難く、報酬及び賞与としないとしています。
 
また同じ疑義照会の回答で「労働の対償」とは、昭和 32.2.21保文発第 1515号からすると被保険者が事業所で労務に服し、その対価として事業主より受ける報酬や利益などをいい、①過去の労働と将来の労働とを含めた労働の対価 、②事業所に在籍することにより事業主(事業所)より受ける実質的収入と考えられます、としており、年末年始手当はやはり①の労働の対価に該当するため、賞与として保険料の算定基礎とすることが適切だと考えます。
 
それでは、「永年勤続表彰」はどうかということなのですが、時々年金事務所の調査の際に賞与だと指摘を受けることがあるようです。その場合は、明確に「賞与に該当しない」と以下の社会保険審査会の裁決(平成18年9月29日)が出ていることを伝えると良いようです。
 
その要旨としては、「本件表彰金は、①一定の勤続年数に達した場合に労務の内容等に関わりなく一律支払われ、②一定の勤続年数に達しない場合には、労働の実態があったとしても一律に支払われず、③心身のリフレッシュを目的とした休暇付与に伴う資金援助であり、④支払われる金額も社会通念上のいわゆるお祝い金の範囲を超えるものとはいえず、⑥誠実に勤務した労働者に対して創立記念日に恩恵的に支払われるものであり、⑥文言上も賃金や賞与ではなく表彰金と規定されている。 そうすると、本件表彰金は、労働者の労働の提供の対償として支給されるものでもなければ、労働者の通常の生計に充てられるものでもない。したがって、本件表彰金は、賞与に該当しない。」とあります。
 
昨日は久しぶりにリアルでBBクラブを開催することができました。zoomとリアル半分ずつということで会場は60名ほどが集まってくれて、法改正講義と開業体験談(とても分かりやすく、戦略も考えられた良い体験談でした)を半日ではありますが受講してもらって、その後乾きもののおつまみをつまみながらの乾杯と、今まで通りのBBクラブでした。参加頂いた会員も皆さんそれぞれにとても楽しそうでした。コロナ禍3年ぶりだったにもかかわらず、会員が忘れずにいてくれたこと、楽しみに参加頂いたことにとても嬉しかったです。zoom参加の方も次は是非リアルでお会いしましょう。

マクロ経済スライド発動について

2023-01-15 23:11:48 | 年金
昨年12月20日の日経新聞に、2023年度の年金額については「マクロ経済スライド」が3年ぶりに発動が政府で検討されているとの記事が載りました。「マクロ経済スライド」とは、そのときの社会情勢(現役世代の人口減少や平均余命の伸び(0.3%))に合わせて、年金の給付水準を自動的に調整する仕組みです(厚生労働省HPより)。

2004(平成16)年の改正前までは、5年ごとの財政再計算で都度給付設計が行われ、保険料が段階的に引き上げられ、将来が見通せなかったため年金に対しての不安感が募りがちでした。そこで平成16年にマクロ経済スライドが導入され、給付水準の調整期間が設けられ、おおむね100年間で財政の均衡を図る方式になり、積立金を活用して、財政均衡期間の終了時に給付費1年分程度の積立金を保有する仕組みになりました。財源の範囲内で給付水準を自動調整する方法がとられることになったわけです。

ただマクロ経済スライドは物価と賃金が上昇したときに、年金額の伸びを抑制するという仕組みであるため、これまで2015(平成27)年度、2019(令和元)年度、2020(令和2)年度の3回しか発動されていません。また、2016(平成28)年に「キャリーオーバー制」という累積された未調整分について、マクロ経済スライドの発動したときに解消するという仕組みが導入されています。今回政府は2023(令和5)年の年金支給額の改定で「マクロ経済スライド」を3年ぶりに発動する検討に入ったということで、キャリーオーバー分の0.3%の解消も見込まれるため、給付額は抑制され物価上昇率に追いつかないのではと予測されています。

日経新聞によると、「2022年度の厚生年金のモデルケース(夫婦2人の場合)は月あたりの支給額が21万9593円だった。今回は足元の物価や賃金の伸びを踏まえて支給水準が3年ぶりに増える見通しだ。専門家は改定のベースになる22年の物価上昇率を2.5%と試算する。公的年金は少子高齢化にあわせて年金額を徐々に減らす仕組みだ。21年度から2年連続で発動を見送り、0.3%分がツケとしてたまっている。23年度の改定では21~23年度分が一気に差し引かれる可能性が高い。」としており、どうなるか注目されます。

今週から来週にかけて法改正セミナーが3本あるため、週末はレジュメ作りに集中して何とか作り上げることができました。この春は法改正事項が少なくて、テーマごとに少し丁寧に説明をする予定でいますが、ちょっと目玉がない感じではあります。人事・労務担当者の方にとってはそういう年があっても良いのかもしれません。

とはいっても人的資本関係のものを読んでいると、これからの人事は今までのデスクワーク中心ではなく戦略型人事になっていく必要があると予測され、社労士としてもワクワクするものがります。今年も色々と新たな考え方や意識を拾って発信していきたいと思います。


副業の通勤災害(片方フリーランス)

2023-01-09 21:58:00 | 労働法

先日副業の通勤災害がどこまでカバーするかというご質問があり、確認も兼ねて調べました。副業というと2020年9月から導入された複数事業労働者に該当するかどうかをまず検討する必要があります。複数事業労働者に該当するかどうかは以下で判断することになります。

①被災(けが、病気、死亡等)時点で、事業主が同一でない複数の事業場と労働契約関係にある労働者(雇用/雇用)
②1つの会社と労働契約関係にあり、他の就業について特別加入している方(雇用/特別加入)
③複数の就業について特別加入をしている方(特別加入/特別加入)

上記の場合は複数事業労働者に該当し、複数の事業場全ての事業場等の賃金額を合算した額を基礎として給付基礎日額が算定されます。

今回ご相談のケースはこちらには該当せず、片方が業務委託ということでした。業務委託でも特別加入をしているのであれば上記複数事業労働者に該当するのですが、一人親方として特別加入するには一定の事業又は作業に該当する必要があり、なかなか該当しないというのが実感です。とすると一方が雇用で片方業務委託の場合の通勤災害はどう判断されるかということになります。そもそもの通勤災害は以下の要件が必要です。

この場合の「通勤」とは、就業に関し、次に掲げる移動を、
(1)住居と就業の場所との間の往復
(2)就業場所から他の就業の場所への移動
(3)住居と就業の場所との間の往復に先行し、又は後続する住居間の移動
上記(1)から(3)のいずれかを合理的な経路及び方法により行うことをいい、業務の性質を有するものを除くものとされていますが、移動の経路を逸脱、中断した場合は、逸脱又は中断の間及びその後の移動は「通勤」とはなりません。なお、日常生活上必要な最小限度のものは逸脱中断とはされず通勤となります。

複数事業労働者に該当しなければ上記(2)は通勤災害となりませんし、(3)は単身赴任先から家族のいる自宅に帰りその後会社に通勤というケースですので、業務委託のケースには当てはまらず、結局当てはまるとすると(1)のみということになります。

例えば、①自宅から雇用されている会社への移動、②雇用されている会社で就業後業務委託先に異動、③業務委託先で就業後自宅へ帰宅、というケースはどのようになるでしょうか。

①自宅から雇用されている会社への移動は通勤災害になります。ただし、複数事業労働者に該当しない場合の給付基礎日額は合算されないため、労災加入の雇用されている会社の賃金だけで計算されることになります。

②雇用先で就業後業務委託先への移動は自宅からの移動ではないので通勤災害には該当しないことになります。

③業務委託先から就業後自宅への移動も通勤災害にはなりません。通勤災害に該当するためには雇用されている会社又は特別加入した上での自宅への移動の必要があるためです。

分かっているつもりでも少し整理しないとすぐに正解が出にくいですね。

●通勤災害の定義
https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/rousai_hoken/tuukin.html

●複数事業労働者のパンフ
https://www.mhlw.go.jp/content/000662505.pdf

あけましておめでとうございます。お天気が良くて穏やかなお正月でしたね。withコロナの時代、これまで以上に社会や人の意識が変化し、デジタル化も進み、社労士を取り巻く様々が変化していくような気がします。ワクワク感がありつつも気を引き締めていきたいと思います。今年もよろしくお願いします。