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社会保険労務士としての日々の業務を行う中で、考えたこと、感じたこと、伝えたいことを綴る代表コラム。

就業前の着替え時間の扱いについて

2023-11-26 21:56:24 | 労務管理

就業前の着替え時間について、最近動向が変化していることを感じます。今年の10月にイケア・ジャパンが制服を着替える時間について1日10分を労働時間に含めることに変更したという報道がありました。この件については多くの弁護士・社労士がブログなどで取り上げているので詳しくはそちらに譲るとして、感想を書いてみたいと思います。

元々制服の着替え時間については、平成12年の最高裁判決である三菱重工長崎造船所事件が考え方の基本になっています。判決では、「実作業に当たり、作業服及び保護具等の装着を義務付けられ、装着を事業所内の所定の更衣所等において行うものとされていたことについては、使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができ、実作業の終了後も、更衣所等において作業服及び保護具等の脱離等を終えるまでは、いまだ使用者の指揮命令下に置かれているものと評価することができる。」とされました。

これまで研修や顧問先企業より相談があった場合、考え方としては上記判決の作業服、保護具等の装着というと『簡単な着替えではない』と考えて、その場合は労働時間であるが、就業規則で「始業時刻には就業できるよう準備を整えておくこと」という条文により常識的に対応していただければとアドバイスしてきました。

労働時間と判断されるのは、「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」であり、業務関連性が強くなればなるほど、また、使用者からの強制の度合いが強ければ強いほど、労働時間と評価されるというのが基本的な考え方です。

従って、制服着用が任意である場合や、自宅で制服を着てから出社するなどの場合は労働時間ではないと判断されます。さらに単に上着を制服に着替える程度であれば労働時間とはならないという考え方が通常であったと思います。ただし、就業規則や社内規定などで義務付けている場合には実労働時間として取り扱われる場合が多いとされています。

イケア・ジャパンの場合、シャツ、パンツ、靴を会社指定のものに着替えることとなっていたということで、労働組合「東京管理職ユニオン」に所属して訴えを開始し、さらに「イケア・ジャパン・ユニオン」が東京乖離職ユニオンの支部として結成され、過去分の支払も求めるということです。イケアの場合着替え時間を一律5分として出勤時と終業時合計10分を着替え時間として賃金を支払うこととしたとのことです。今後イケアのように必要な時間を加算していくケースは増えてくるものと思いますし、実際ご相談もあります。要検討事項であることは間違いがないです。

1分単位での労働時間の把握が義務とされているわけですから、数分の時間も塵も積もれば山となるで、曖昧な時間であればカウントすべきなのだろうと思いますが、正直若干せちがらさを感じてしまうのは私だけでしょうか。

先日、社労士稲門会のラグビー早慶戦の観戦に参加しました。建て替えられた国立競技場に初めて行ったのですが、まだまだとても綺麗で、座席の前のスペースもゆったりとっており(傾斜が急なので前の人が気にならない)とても良い競技場だと思いました。天井部分に覆いがないのは気持ちが良いのですがとてもお天気が良かったので、かなり日焼けしそうな感じがしました。サングラスと日焼け止めは持って行く方が良いようです。座席部分は天井が張り出しているので雨が降っても濡れない(何年か前の早慶戦は秩父宮でずぶ濡れになりましたので)濡れないようにできているのはとても嬉しいです

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