令和3年4月1日から36協定の押印が廃止されることになりました。以下「労基法施行規則等の一部を改正する省令について」のサイトにリーフレット、Q&A、通達、条文等が掲載されています。
労働基準法施行規則等の一部を改正する省令について |厚生労働省 (mhlw.go.jp)
令和2年8月27日に開催された第163回労働政策審議会労働条件分科会の議論での了承を受けた改正ですが、委員から以下のような意見がありました。
(仁平委員発言)今回の改正に当たりまして、協定書自体の押印が廃止されるかのような誤解が広まって、使用者の一存で記入された協定届が提出される懸念があるのではないかと指摘させていただいたところです。実際、そういった誤報もございまして、現場では実際に混乱が生じたという報告も受けているところでございます。・・・特に重要と思われる点として36協定等の協定に関しては協定届を届けるという手続と、協定を締結するということは別の問題であってしっかり区別されるべきで、協定の締結部分についてはこれまでどおり代表者をしっかり適切に選んで、適切に書面による合意を結ぶということが重要であり、そこの点についての周知の重要性を含め徹底することが改めて必要ということが強調されているという点など踏まえて、適切なものだろうと思います。
そもそも労使協定については、協定書と協定届の2種類があるべきところ、36協定については協定届のみの届出が以下の通達で認められています。
「労働基準法施行規則様式第9号による届け出は、時間外・休日労働協定(36協定)と同視してよいか(昭和53.11.20基発642号、昭和63.3.14基発150号、婦発47号、平成11.3.31基発168号)
施行規則第17条第1項の規定により、法第36条第1項の届出は様式第9号によって行えば足り、必ずしも三六協定の協定書そのものを提出する必要はないが、当該協定書は当該事業場に保存しておく必要があること。また、三六協定を書面で結ばずに様式第9号のみを届け出たとしても、時間外労働等を行わせることができないことはいうまでもないこと。
なお、様式第9号に労働者代表の押印等を加えることにより、これを三六協定の協定書とすることは差し支えなく、これを届け出ることも差し支えないが、この場合には、当該協定書の写しを当該事業場に保存しておく必要があること。
一般的には、上記アンダーラインにある通り36協定届(様式第9号)に労使の押印をして届け出ているケースがほとんどであり、協定書を別途作成しているケースはこれまでとても少なかったと思われます。今回の改正により、協定届の押印廃止を受けて押印をせずチェックボックスのチェックをするということにしたとしても、協定書を別途作成してこれまで通り署名・押印が必要となればかえって手間になってしまうのでは、と疑問がありました。今回、新たな36協定届の記載例を見ると、協定書を兼ねる場合には労働者代表及び使用者の「署名又は記名・押印などが必要です」とあり、兼ねる場合であっても労使ともに署名のみで可能であることがわかりました。
要するにこれまで通り、協定届により協定書を兼ねることが可能であり、また、これまで使用者については記名のみならず署名の場合であっても必ず押印が必要とされていたので、その部分の押印が廃止されたということです。
なお今回の改正により、労働者の過半数代表者の適正な選出及び電子申請の利便性の向上に向けた恒久的な制度的対応の一環として、労使協定・決議の届出様式に協定当事者の適格性を確認するチェックボックスを設けられたほか、電子申請時に、電子署名及び電子証明書の添付等のほか、利用者の氏名を電磁的記録に記録することをもって代えることができることとされました。また、所要の改正を行う協定当事者が労働者の過半数で組織する労働組合である場合は、労働者の過半数を代表する者が管理監督者ではなく、かつ適正に選出されたかを確認するチェックボックスにチェックがなされていなくても、形式上の要件に適合するものであるとされています。
〈参考〉第163回労働政策審議会労働条件分科会(資料)|厚生労働省 (mhlw.go.jp)
さて、今年は本当にほとんど1年間コロナウイルスに振り回されたといってよいと思います。在宅勤務やオンライン会議など今や当然となった感がありますが、昨年までは全く予想をしていなかった働き方でした。今年は同一労働同一賃金と働き方改革がメインテーマと考えていましたが、意外なことに劇的な働き方改革が起こった感じです。ここにきて感染者数が東京は1,000人に近づきこれは本当に心配な状況ですので、年末年始で自粛して、年明けは少し収束してくれると良いと願っています。