OURSブログ

社会保険労務士としての日々の業務を行う中で、考えたこと、感じたこと、伝えたいことを綴る代表コラム。

高年齢雇用継続給付の今後について

2020-09-27 20:52:40 | 法改正

高年齢雇用継続給付については、昨年12月9日のブログでも取り上げましたが、春に成立した雇用保険法等の一部を改正する法律の中で今後の改正について示されています。65歳までの雇用確保措置の進展等を踏まえて、2025(令和7)年度から現在の給付率15%から10%へ縮小され、支給基準もみなし賃金月額の61%以下から64%以下に引き上げられることになりました。

高年齢雇用継続給付は、平成6年に創設された雇用保険の給付ですが、それまで失業に対する給付であったものが、雇用継続給付が導入されたことで、失業「等」給付という名称になって、当時若干異質な給付である感じがありました。職業安定分科会雇用保険部会の議論は、高年齢雇用継続給付の果たす役割の大きさから平成19年からこれまでかなりの時間をかけて来ています。そういう意味では大きな政策効果のある給付であったと思います。

平成  6年 高年齢雇用継続給付創設(創設当時はみなし賃金月額の85%未満が条件・給付率25%)平成7年施行

(平成15年改正 みなし賃金月額の75%未満が条件・給付率15%へ改正)

平成19年 平成24年度までの措置としその後段階的に廃止とする

平成21年 60 歳代前半層の雇用の状況を踏まえ、平成25年度以降の在り方を改めて検討すべき

平成24年 高年齢雇用継続給付は当分の間存置・再検証すべき

平成25 年、27 年及び28 年 今後の高齢者雇用の動向や社会経済情勢等を勘案しつつ、引き続き中長期的な
観点から議論していくべき

令和元年 令和7(2025)年度には継続雇用対象労働者の限定に関する経過措置が終了し希望者全員が継続雇用制度の対象になる。今後高年齢労働者も含め、雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保等を踏まえると、雇用継続給付としての高年齢雇用継続給付については、段階的に縮小することが適当である

「平成30年高年齢者の雇用状況」を見ると65歳までの雇用確保措置の実施企業は99.8%と完成に限りなく近づいており、今後2021年4月から努力義務ながら施行される70歳までの「高年齢者就業確保措置」に施策はシフトしていくことになります。雇用保険部会の議論でも雇用継続給付としての高年齢雇用継続給付は、段階的に縮小することが適当、同給付金の給付率の縮小後の激変緩和措置についても併せて講じていくべきであり、これらの状況も見つつ廃止も含め、更に検討を行うべきである、とあります。 65歳以上70歳までのの就業についての法の支援は、雇用保険法の雇用安定事業に位置付けるということです。

ここのところ週末は連休を除きひたすらセミナーのレジュメづくりにいそしむ日々でしたが何とか3つ作り上げることができました。今年の秋から冬までのセミナーで話せるメニューとしては「2021年1月以降の法改正」、「在宅勤務について」、「65歳超雇用を展望した働き方の動向(法律関係)」と3つに絞りたいと思います。それにしても、リアルのセミナーであるとその日ですべて終わるのであまり気にならなかったのですが、オンラインセミナーで収録となると「残るのだよな~」というのが気になり、髪をカットしに行ってしまいました。今日は若干衣替えをして、ウエストが入らなくなった洋服など思い切って処分をすることとし、新たな気分で10月が迎えられるよう準備を整えました。さわやかな季節がんばりましょう。


2ヶ月以内の雇用契約と健康保険法等の適用について

2020-09-23 00:33:52 | 法改正

健康保険法第3条(定義)1項に適用除外が定められており、2号に「2ヶ月以内の期間を定めて使用される者」が定められています。ただし、この2ヶ月以内の期間を定めて使用される者には「所定の期間を超え、引き続き使用されるに至った場合を除く。」とも定められており、これはどのような意味であるかというと、2ヶ月以内の所定の期間を超えて引き続き使用されるに至った場合は、至ったところから適用除外ではなくなるため資格取得する必要がある、ということになるわけです。

この扱いが2022年10月1日から改正されることになります。雇用契約の期間が2か月以内であっても、実態としてその雇用契約の期間を超えて使用される見込みがあると判断できる場合は、最初の雇用期間を含めて、当初から被用者保険の適用対象とする、ということになります。

この点先日のOURSセミナーでも簡単に取り上げたのですが、残り時間が少なく事務取扱のイメージまで触れることができなかったので、ブログに上げておきます。令和元年12月25日 第123回社会保障審議会医療保険部会 資料2では、改正の趣旨を「雇用の実態に即した被用者保険の適切な適用を図る観点からの見直しを行う。」としており、具体的な事務の取扱いのイメージとして、以下のとおり取り扱うとしています。
・ 雇用期間が2か月以内の場合であっても、
(ア)就業規則、雇用契約書等において、その契約が「更新される旨」、または「更新される場合がある旨」が明示されている場合
(イ)同一の事業所において、同様の雇用契約に基づき雇用されている者が更新等により最初の雇用契約の期間を超えて雇用された実績がある場合
は、当初から適用する。
・ ただし、(ア)(イ)のいずれかに該当するときであっても、労使双方により、最初の雇用契約の期間を超えて雇用しないことにつき合意しているときは、雇用契約の期間を超えることが見込まれないこととして取り扱う。
・ 事業所調査で、労働者名簿等に基づき適用されていない従業員等の雇用契約書等を確認し、上記(ア)(イ)のいずれかに該当することが事後的に判明した場合は、契約当初(保険料徴収の時効を踏まえて2年)に遡及して適用するよう指導する。

4連休は1日だけ仕事をした後、小淵沢の家に行って、軽いトレッキング(といっても今ふくらはぎが筋肉痛ですが)で体を鍛えてきました。ニュースでもやっていましたが、高速のサービスエリアは凄い人で、お店も予想外だったか食べ物が売り切れたりしており、本当に大丈夫かと心配になるくらいの混雑でした。前回8月に行ったときは自粛期間中約半年行けなかった影響で、虫とカビとの戦いでやはり家は時々空気を入れ替えたりしなければだめなのだと実感しました。今回は空気もさわやかで、夜はすでに寒くパネルヒーターを軽くつけるくらい、8月は青々とした家の前の田んぼも黄金色となっており、1か月の変化の大きさにびっくりしました。それにしてもコロナの影響で在宅勤務が可能になり、小淵沢に移住を検討する人が増えたということで不動産屋さんは大繁盛だそうです。確かに、今後は地方に住む選択肢はありだと思いますし、渋谷の事務所の家賃相場もかなり下がるようです。今後の在宅勤務やオンライン会議の割合、セミナーのリアルとオンラインの配分、事務所スペースのことなどいろいろと思いをはせるのですが今のところ予測不能という感じで様子見です。

 


テレワーク時の労働時間の把握について

2020-09-13 15:24:54 | 労働基準法

テレワークについてのオンラインセミナーを依頼されたので、この週末はレジュメを作成していたのですが、「情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」を読み込んでいる中で時間外労働の取扱いについて若干合点がいった記載があったので、取り上げてみたいと思います。

2 労働基準関係法令の適用及び留意点等の(2)労働基準法の適用に関する留意点 エ時間外・休日労働の労働時間管理について」一部省略

 労働者が時間外、深夜又は休日(「時間外等」といいます。)に業務を行った場合であっても、事前に申告し使用者の許可を得なければならず、かつ、時間外等労働の実績について事後に使用者に報告しなければならないとされている事業場において、労働者からの事前申告がなかった又は事前に申告されたが許可を与えなかった場合で、かつ、労働者から事後報告がなかった場合について、以下の 全てに該当する場合には、当該労働者の時間外等の労働は、使用者のいかなる関与もなしに行われたものであると評価できるため、労働基準法上の労働時間に該当しない、とされています。

①時間外等に労働することについて、使用者から強制されたり、義務付けられたりした事実がないこと

②当該労働者の当日の業務量が過大である場合や期限の設定が不適切である場合等、 時間外労働等に労働せざるを得ないような使用者からの黙示の指揮命令があったと解し得る事情がないこと

③時間外等に当該労働者からメールが送信されていたり、時間外等に労働しなければ生み出しえないような成果物が提出されたりしている等、時間外等に労働を行ったことが客観的に推測できるような事実がなく、使用者が時間外等の労働を知り得なかったこと

※ただし、事前許可制及び事後報告制については、使用者から労働者が実績通り申告・報告しないよう働きかけや圧力がないことなどが記載されており、留意が必要です。

企業からのご相談において、出張先で仕事を終えシャワーを浴びた後メールを確認するとその時間は労働時間になるから注意してくださいというお話をよくしていたのですが、メールを送信はせず確認する程度であれば労働時間と判断されないということもあり得るのだろうかということで覚えておこうと思いました。なお、省略して書いてありますただし書きにもあるのですが、細かな点で留意が必要なので以下でご確認ください。

●テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドライン(厚生労働省)より

https://www.mhlw.go.jp/content/000553510.pdf

最近とみに細かな字が見えなくなり、先日人間ドックで検眼したところ、唯一の自慢だった視力も1.0になってしまいました。これまではおおむね視力は1.2、勘が働くと1.5ということでした。これは合わないメガネで仕事をしているせいであろうと勝手に自己診断をして、真剣に対応しないとならないと考え先日これまでになくしっかりとしたメガネを購入しました。今のところその効果はまだ実感できていませんが、できれば根を詰めて仕事をしたときに夕方になると目がしょぼくれるのが収まってくれるとよいなあと思っています。

だいぶ夜などは秋っぽい涼しさとなりました。今年はコロナウイルスのせいで何となく実感の乏しい日々のように感じますが、季節の変わり目でもあり体調に気を付けて、さわやかな秋を迎えたいと思っています。


2つ以上の会社で働く場合の労災保険の補償について

2020-09-06 21:48:50 | 法改正

3月15日のブログで取り上げましたがその時点では詳しい内容は書けませんでしたので、9月から改正施行されている労災保険の「複数事業労働者に対する新たな保険給付の創設」についてポイントを取り上げてみたいと思います。

この保険給付の新たなキーワードは、「複数事業労働者」と「複数業務要因災害」です。

「複数事業労働者」とは、①被災した時点で、複数の会社(事業主は同一でない)と労働契約関係にある労働者、②1つの会社と労働契約関係にあり、他の就業について特別加入している者③複数の就業について特別加入をしている者、をいいます。

要するに2以上の会社と労働契約を締結しているか、1つの会社との労働契約の他に特別加入しているか、特別加入を複数しているか、ということになります。なお、被災時点では複数の労働契約がなくても、その原因・要因事由が発生した時点で複数の労働契約があれば改正制度の対象となります。

「複数業務要因災害」とは、労災保険給付の対象となる複数の事業の業務を要因とする傷病等(負傷、疾病、障害又は死亡)をいい、対象となる傷病等は、脳・心臓疾患や精神障害等です。

給付基礎日額の計算は、複数事業労働者の場合も、これまでと原則は変わりません。傷病等の発生日が算定事由発生日となり、その前3ヶ月間に支払われた各事業場の賃金額を基礎に給付基礎日額が算定され、労災保険給付額が決定されます。複数の会社の賃金締切日が異なれば、異なった賃金締切日を起点として算定した賃金額を合算して給付基礎日額を算定します。

制度改正については、事故率等が高ければ上がる等の業種の保険料率の算定及びメリット制については、業務災害が発生した事業場の賃金に相当する保険給付額のみが業種の保険料率の算定及びメリット制に影響することになります。また、特別支給金についても、非災害発生事業場の賃金額や特別給与額を合算して給付額を算定します。

複数業務要因災害が新設されたことに伴い、「業務災害用」の様式が、「業務災害用・
複数業務要因災害用」の様式に改正される等様式が変更され、新たに複数事業労働者のための欄が新設されています。(以下厚生労働省のHPからダウンロードできます)

https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/rousaihoken06/03.html

なお、2020年9月1日(改正法の施行日)以後に発生した傷病等についてのみ、改正制度の対象となります。

以下、「複数事業労働者への労災保険給付わかりやすい解説」に詳しい事例が載っています。

https://www.mhlw.go.jp/content/000662505.pdf

9月に入り、コロナでかなり止まっていた仕事を皆さん開始したらしく、セミナーや人事制度の見直し等怒涛のようにといってもよいくらいご依頼が来て、打合せの日程調整に追われダブルブッキングをしてしまうわ、準備に追われるわで、週末も休日というより在宅勤務という状況になっています。ただ、お仕事を頂けるということはやはり有難いことであり、また幸い仕事が大好きなので、全く苦ではなく、充実して過ごしています。

自宅の日経新聞に「花いっぱいプロジェクト」の折り込みチラシが入っており、以前から興味があったので申し込んでみたところ、とても綺麗な花が届きました。茎がしっかりシャンとしており産地直送とはこんなに新鮮なのかと驚くほどでした。とにかく少しでも経済を回すことを意識していこうと思っているので、これからも機会があれば購入しようと思います。