OURSブログ

社会保険労務士としての日々の業務を行う中で、考えたこと、感じたこと、伝えたいことを綴る代表コラム。

短時間労働者に対する社会保険の適用拡大

2023-07-30 21:21:45 | 社会保険

社会保険の加入対象者は平成28年9月までは、適用事業所との間に「常用的使用関係にあるかどうか」、1日又は1週の所定労働時間」及び「1月の所定労働日数」が、同一の事業所に使用される通常の労働者の所定労働時間及び所定労働日数の4分の3以上であることという4分の3基準で判断していました。

平成28年10月1日以降社会保険(厚生年金・健康保険)の加入が適用拡大されることにより、「適用事業所に使用される者」を明確化することとなり、簡便な基準とするために「1週の所定労働時間」のみでみることになりました。

また平成28年10月1日以降、4分の3基準を満たさない場合であっても、5要件に該当する短時間労働者については社会保険の資格を取得する必要がある、といういわゆる適用拡大が行われました。5要件とは①1週の所定労働時間が20時間以上、②雇用期間が継続1年以上見込まれる、③月額賃金8.8万円以上、④学生ではない、⑤この時点では常時500人を超える被保険者を使用する企業に勤務している、とされてしている

さらに令和4年10月1日以降、①1週の所定労働時間が20時間以上、②2か月を超える雇用見込がある、③月額賃金8.8万円以上、④学生ではない、⑤常時100人を超える被保険者を使用する企業に勤務している、とされました。

※令和6年10月からは⑤は常時51人を超える被保険者を使用する企業に勤務しているとされます。

最近この適用拡大により適切に資格取得をしているかの年金事務所の調査が多いようです。顧問先では昨年10月前にパートさんの希望を聴いて20時間以上働いて資格取得するか、20時間以内の働き方で被扶養者のままいるか、という決断をしてもらっていました。会社によっては半分以上の方が資格取得をした会社もあります。

それでは雇用契約書では20時間未満であったが、意外に労働時間数が20時間以上になってしまったというケースはどのように扱うかですが、Q&A集に載っています。

問 32 就業規則や雇用契約書等で定められた所定労働時間が週 20 時間未満である者が、業務の都合等により恒常的に実際の労働時間が週 20 時間以上となった場合は、どのように取り扱うのか。

(答)実際の労働時間が連続する2月において週20時間以上となった場合で、引き続き同様の状態が続いている又は続くことが見込まれる場合は、実際の労働時間が週20時間以上となった月の3月目の初日に被保険者の資格を取得します。

このQ&Aは実務的なことが比較的詳しく載っているので便利かと思います。

https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/tekiyo/jigyosho/tanjikan.files/QA0410.pdf

いよいよ来週は8月ですね。なんだかあっという間に今年も半分を超えてしまいました。テレビを見ていると世の中花火を見に行く人が多く、この暑いのに凄い人出だと感心します。コロナ自粛の反動でしょうか。私は先週末かなり忙しかったので今週末はおとなしくネットフリックスを見たり、やり残した仕事をしたりしていました。

先輩と行ってみる約束をしたので宝塚のチケットの入手方法を調べてみたところ、宝塚友の会に入会しないとなかなか先行販売のものが購入できないということらしく、宝塚友の会のカードを作りました。まだチケットの購入はできていないのですが、ちょっと楽しみにしています。


雇用保険の給付拡大について

2023-07-23 20:54:16 | 労働法

日経新聞の7月21日の記事に『雇用保険「流用」、給付対象の拡大どこまで?』という記事が載りました。記事を抜粋すると、以下の通りです。

政府が6月にまとめた少子化対策では、育児中に時短勤務をしても手取り額が減らない制度を想定しており、給付金は雇用保険の保険料を財源とする方向で調整に入ります。また、年収が一定額を超えると社会保険料が発生して逆に手取りが減る「年収の壁」対策も検討しており、この財源にも雇用保険が想定されています。

そもそも雇用保険の歴史を調べてみると以下の沿革をたどっています。
・昭和 22 年(1947 年)に「失業保険制度」として創設
・昭和 50 年(1975 年)失業の予防等雇用に関する総合的な機能を果たす「雇用保険制度」となり、労働者の雇用のセーフティネットの役割
・その後、雇用保険制度の中核的な給付は失業等給付であり、失業中の生活保障を行う機能を有するが、安定した財政運営状況を背景に様々な雇用政策的な給付を追加
・平成7年(1995 年)に育児休業給付や高年齢雇用継続給付、平成 10 年(1998 年)に教育訓練給付、平成 11 年(1999 年)に介護休業給付が創設、リーマンショック等経済情勢悪化時に失業等給付の支給期間を延長する等の暫定措置が講じられ複雑な仕組みとなっている。
・令和2年(2020 年)に新型コロナウイルス感染症が蔓延し、雇用保険制度の附帯事業である雇用調整助成金が企業の雇用維持を支える中心的な政策となり、その支出増が雇用保険財政のひっ迫を招いた。

平成7年に講師になりたてだった時期に、高年齢雇用継続給付、育児休業給付の制度ができて、失業給付に「等」が加わったことは強く記憶に残っています。つまり失業ではなく雇用継続の要素が加わったことにより失業等給付というようになったのです。その時若干の違和感はありましたが、育児休業取得後退職が一般的な流れであったことを考えると失業の予防という意味で雇用保険の役割が拡大したという感じで捉えていました。

しかし20数年後、早稲田の大学院で社会保障を学んでいた時、指導教授の菊池先生に雇用継続給付が失業給付を主たる目的とする雇用保険法に含まれていることについてどう考えるか、と授業で投げかけられたときに「ハッと」しました。法律の目的をどこまで広げていくかという問題に気付いたからでした。

2020年4月1日施行として「 育児休業給付について、失業等給付から独立させ、子を養育するために休業した労働者の生活及び雇用の安定を図るための給付と位置付ける。」「これを踏まえ、雇用保険について、育児休業給付の保険料率(1,000分の4)を設定。経理を明確化し、育児休業給付資金を創設する。」という法改正が行われました。育児休業に関する給付は失業等給付から独立させるという考え方に、当時雇用保険財政はまだコロナで痛む前で潤沢でしたし、今後どのような展開になるのかと期待感がありました。確かに雇用保険の保険料率は社会保険の料率に比べて低いので、比較的料率を上げやすいとは思います。しかし育児休業、子育て関係は今後の最重要課題であり、施策については雇用保険から独立させ明確な目的を設定した新たな社会保障制度を作る必要があるのではないでしょうか。

いよいよ暑さが凄いことになってきました。そんな中昨日はBBクラブの勉強会が開催され、リアル50数名、オンライン50数名と合計100名を超える参加があり、終了後の懇親会も30名を超える参加となりとても盛り上がりました。久しぶりに参加してくれたOBも何人もいて、懐かしく、お話もできて非常に充実した日となりました。ここまで社労士として頑張ってくることが出来たのはBBクラブのみんながいたから、改めて元気を沢山頂きました。BBクラブができてから約22年。あと3年経ったら盛大にお祝いしようと思います。


骨太方針2023

2023-07-17 23:23:29 | 雑感

今週末は3連休ということで比較的ゆっくり過ごすことができました。次の週末にBBクラブの勉強会があるので法改正のレジュメを作り上げるのが目標だったのですが、何とか全ページ作ることが出来てホッとしました。セミナーのレジュメを作るのはいつも週末なのですが、少し週末の仕事を減らした方が良いと思い、Googleカレンダーにまとまった時間がある日はあらかじめ「セミナーレジュメ作成」という予定を入れておきなるべくその時間を確保することにしました。結果としては全く時間が取れなかった日もありましたが、2、3時間集中して取り組めた時間の積み重ねが何回かあり、かなり週末を前にしてできている部分もあり、やはり効果はあったと思います。

ところで今回は来年春に向けていくつかの改正があり、また通達などの解説もするのですが、将来に向けてという意味でこの春から6月にかけて首相(政府)が打ち出した方針が今後の法改正の内容として具体化されていくため、「骨太方針」「新しい資本主義」「女性版骨太の方針」「こども未来戦略方針」を取り上げてみました。というのも色々と新聞等で出てくるのですが、どこに何が書かれているのかが全く分からなくなってしまっていたので、整理する必要性も感じていました。

国レベルのことなので、取組むべき課題が多いので仕方がないのかもしれませんが、正直色々なところに厚労省関連のテーマが顔を出し、はっきりした目標・方針についての具体策の連携が見えにくい、全体イメージが捉えにくいような気がしました。それぞれ正式名称は次の通りになっており、どちらかというと「骨太の方針」に書かれている内容が中心になるとは思いました。

①骨太方針2023=「経済財政運営と改革の基本方針 2023 加速する新しい資本主義~未来への投資の拡大と構造的賃上げ の実現~(経済財政諮問会議の答申を経て令和5年6月16日閣議決定)[内閣府HPより] 

②新しい資本主義=「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2023改訂版」(内閣に新しい資本主義実現本部を設置・検討を経て令和5年6月16日閣議決定)[内閣官房HPより]

③女性版骨太の方針=「女性活躍・男女共同参画の重点方針 2023(女性版骨太の方針 2023)」(すべての女性が輝く社会づくり本部 男女共同参画推進本部の検討を経て令和5年6月13日閣議決定)[内閣府男女共同参画局HPより]

④こども未来戦略方針=『「こども未来戦略方針」~ 次元の異なる少子化対策の実現のための  「こども未来戦略」の策定に向けて ~』(全世代型社会保障構築本部「こども未来戦略会議」で検討を経て令和5年6月13日閣議決定[内閣官房HPより]

これらを受けて厚生労働省保険局で『「経済財政運営と改革の基本方針2023」、「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2023改訂版」及び「規制改革実施計画」等について』と題した資料を作成し、社会保障審議会医療保険部会で報告をしています。厚生労働省が国の方向性の元に情報を分析して法律を作り上げるという方法ではなく、完全に主導権が内閣にあることが見えてしまい、懸念を持ちますが、今後、厚生労働省ではこれを受けて、年末の令和6年度予算編成過程や関係審議会等で社会保障改革の具体化に向けた検討が進められるということになるのだと思います。

それぞれ書かれていることまで触れると膨大になるので触れられませんが、今後社会保障としての具体策がどのように決まっていくかを抑えるためにも関係する部分は目を通すと良いと思います。

毎日暑いですね。7月の中旬でこれだと8月になるとどうなってしまうのか不安になります。最近は事務所から帰宅するとすぐにシャワーを浴びたい状況なので、それに合わせて早めに色々なことが片付き助かります。脳(記憶力)の状況をよく保つには5時間以上は眠る必要があると本で読んだので最近は睡眠もできるだけ6時間取るようにしています。夜更かしの癖を直して良い習慣になると良いと思っています。


永年勤続褒章金決着

2023-07-10 00:52:02 | 社会保険

2023.1.23のブログで取り上げていますが永年勤続褒章金が賞与にあたるか否かについて、先日「標準報酬月額の提示決定及び随時改定の事務取扱に関する事例集の一部改正について」という6月27日付事務連絡で、一定の要件を満たしている場合には賞与にはあたらないという結論が出されています。

というのも、平成18年に「賞与に該当しない」と社会保険審査会の裁決(平成18年9月29日)が出ているにもかかわらず、昨年の秋ころから上記裁決は「審査請求に対する個別の判断であり、報酬に該当するか否かを判断するうえで参考にはなるものの、通常の報酬及び範囲の考え方に照らせば、その支給事由、金額等が就業規則等に定められ、就業規則等に基づき支給されることから経常的(定期的)に支払われるものとして報酬(賞与)に該当すると判断される。」という回答が内部で出ていたようで、社会保険の調査の際にそのように指摘され、事務所でも、かなり社労士の間でもそれはおかしくないか、どうしようかという話が出ていました。

永年勤続褒章金を経常的(定期的)に支払われるものと考えるのは明らかに無理があり、業務に関連したお金でもなくあくまで恩恵的なものであるものがほとんどであるため、賞与には該当しないという今回の判断でホッとしたというのが正直なところです。以下示された内容です。

問3(答) 永年勤続表彰金については、企業により様々な形態で支給されるため、その取扱いについては、名称等で判断するのではなく、その内容に基づき判断を行う必要があるが、少なくとも以下の要件を全て満たすような支給形態であれば、恩恵的に支給されるものとして、原則として「報酬等」に該当しない。ただし、当該要件を一つでも満たさないことをもって、直ちに「報酬等」と判断するのではなく、事業所に対し、当該永年勤続表彰金の性質について十分確認した上で、総合的に判断すること。
≪永年勤続表彰金における判断要件≫
① 表彰の目的
企業の福利厚生施策又は長期勤続の奨励策として実施するもの。なお、支給に併せてリフレッシュ休暇が付与されるような場合は、より福利厚生としての側面が強いと判断される。
② 表彰の基準
勤続年数のみを要件として一律に支給されるもの。
③ 支給の形態
社会通念上いわゆるお祝い金の範囲を超えていないものであって、表彰の間隔が概ね5年以上のもの。

https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T230629T0010.pdf

最近無理のない範囲で一駅前で降りて歩く活動をしているせいか、少しスリムになりました。1か月前に今年の夏は着れないかもと考えていた服がすんなり入ったので嬉しくなりました。今日は歩けそうだなという日はスニーカーを履いて出勤し、事務所でヒールに履き替えています。社労士バッチとヒールを履かないと気持ちがシャキッとしないんですね。でも、スニーカーの出勤はやはりとても楽です。それほど苦ではなく、むしろ楽しく、意外にこれは続きそうです。

少し新しいことを始めてみようとインドネシア語のCD付の本を購入してみました。長年連合会の国際化特別委員会のお手伝いをして、インドネシアの政府の方などが毎年事務所見学に来られているのですが、英語が苦手なのでコミュ二ケーションがなかなか取れず残念だったので、また今年8月に来られるとき二言、三言でよいので話してみようと思っています。


労働条件の明示事項改正

2023-07-03 00:11:11 | 法改正

7月22日に開催するBBクラブの勉強会に使う法改正のレジュメを作り始めたところですが、それほど難しくないと考えていた、1つ目の改正である労基法の改正でかなり時間がかかってしまいました(このペースで行くとピンチです!)。

今回の改正は、労基法15条の労働条件の明示に基づく則5条改正です。改正内容は、労働契約の締結・更新時の労働条件の明示事項の追加で、①従事すべき業務の変更の範囲、②就業場所の変更の範囲、③有期労働契約を更新する場合の基準、が追加されることになります。

当初この改正の説明をすると、業務の変更の範囲や就業場所の変更の範囲をどのように契約書に記載するのかというご質問がほぼ必ずといってよいほどあったのですが、そのうちモデルが出るであろうと思ってそれを待ちましょうとお話ししていたところ、先ごろ記載モデルのリーフが出たところです。その記載モデルによると予想通り、「(雇入れ直後)法人営業 (変更の範囲)製造業務を除く 当社業務全般」、「(雇入れ直後)渋谷営業所(変更の範囲)都内 23区内の営業所」など変更の範囲はある程度ザクっとしたものでした。

さらに、有期契約の場合の労働条件の明示事項には、無期転換ルールに基づく無期転換申込権が発生する契約更新時に、①無期転換申込機会、②無期転換後の労働条件、が加わります。これは労基則5条だけでなく「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」の改正にもつながっていました。

この「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」は平成15年厚生労働省告示として定められたのですが、労働基準法施行規則の改正に伴い、平成25年4月1日から、「契約締結時の明示事項等(第1条)」が削除され、その部分は労基法施行規則第5条に規定(法定化)されることになり、私の中ではちょっとわかりにくくなっていました。この平成25年の改正の際に「雇止めの予告」、「雇止めの理由の明示」、「契約期間についての配慮」に変更はなく3条からなる基準になっていますが、今回の改正で令和6年4月1日からは1条(有期労働契約の変更等に際して更新上限を定める場合等の理由の説明)と5条(無期転換後の労働条件に関する説明)に新たな条文が加わることになりました。

そもそも今回の労働条件の明示の改正の背景としては、「労働契約法に基づく無期転換ルールについて、労使間の紛争を防止し、またその適切な運用を図る」ため令和4年3月にとりまとめられた「多様化する労働契約のルールに関する検討会」の報告書を踏まえ、労働政策審議会労働条件分科会において議論を行い、令和4年 12 月に「今後の労働契約法制及び労働時間法制の在り方について(報告)」が取りまとめられ、その報告に基づくものであるためそれを考えれば雇止め基準だけでなく無期転換に関するルールが労基則に追加されるのはうなずけるところではあります。

改正リーフレット
https://www.mhlw.go.jp/content/001114110.pdf

最近第9波が来るということで、まわりでも感染する人が出てきたのでワクチン接種をしました。副反応としては前回より腕の腫れは少なかったですが、やはり接種翌日の午後若干熱っぽく(といってもいつもだいたい37度行くか行かないかですが)ちゃんと布団を引いて数時間寝たらだいたい戻っていたという感じです。今年は4月後半から6月末まで、各会合で立食が多くヒヤヒヤでしたが何とか感染せずここまで来ました。来週は楽天を応援にドームに行く予定なので、これで安心かなと思っています。