OURSブログ

社会保険労務士としての日々の業務を行う中で、考えたこと、感じたこと、伝えたいことを綴る代表コラム。

雇用対策法の改正

2017-12-25 00:31:19 | 労働法

雇用対策法は実務的にはあまり目立たない法律ですが、国の基本方針を決める重要な法律だと思っています。「働き方改革の推進」という方針に沿って、この雇用対策法の大幅な改正について国会で審議される予定です。改正の内容についての一部ですが以下簡単に取り上げてみます。

【法律名の改正】
法律名を、「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」とする。

【目的規定等の改正】

国が、労働に関し、必要な施策を総合的に講ずることにより、経済社会情勢の変化の中で、労働者がその多様な事情に応じた就業ができるようにすることを通じてその有する能力を有効に発揮することができるようにするとともに、労働生産性の向上を図り、もって労働者の職業の安定及び職業生活の充実並びに経済的社会的地位の向上を図るとともに、経済及び社会の発展並びに完全雇用の達成に資することを法の目的とする。(第1条の目的規定を改正)

この法律名と目的条文の改正は大きな意味を持つと思います。これまで雇用対策法は「雇用」についての国の政策に対して必要な施策を総合的に講ずる、という目的を持っていたのですが、「労働」に代わっています。今後の展開をしっかり見ていく必要はあるかと思いますが、働き方改革一色になってしまうという点で若干違和感がないわけではないのですが、それくらい国が「働き方改革」に本気で取り組むということのように思えます。

第3条の基本理念に追加されるのは、労働者に対して、職務の内容及び必要な能力等の内容が明らかにされ、それらについて公正な評価と処遇等が効果的に実施されることにより、その職業の安定及び職業生活の充実が図られるように配慮される、とされています。

その他国の講ずべき施策には、ワークライフバランス、多様な就業形態の普及、異なる雇用形態等の労働者間の均衡待遇の確保、育児・介護の両立支援、母子家庭の母等の就業促進、治療を受ける労働者の就労支援等まさに働き方改革実行計画の内容と言っても良い内容が追加されることになっています。

国会の審議ではあまり目立たない可能性がありますが、注意してみていく必要があると思っています。

今日は顧問先のご担当者からいただいた第九のコンサートに行きクリスマスイブらしい一日でしたが、先週から昨日にかけて年明けのBBクラブとOURSセミナーの勉強会の法改正のレジュメの作成をしていたのですが、思いがけず改正内容が多くかなり時間がかかりました。今後国会で審議される労基法の内容だけではなく、かなり働き方改革関係で労働法関係の改正が予定されていることに気が付いた感じです。来春の無期転換のための就業規則の改定に最後の追い込みをかけている状態ですが、いよいよ年明けからは同一労働同一賃金だけではなく働き方改革ついての実務対応を考えていく必要がありそうです。

今年もあと残すところ1週間となりました。今年は万事順調とは言えませんでしたが来年以降に向けてコツコツと下ごしらえして根っこに栄養が行くように考えていたような気がします。来年は花が咲き実りある年になるよう、最後の1週間を締めくくっていきたいと思っています。

来週は日曜日が大晦日ですのでブログをお休みさせて頂きます。ブログをお読みいただいている皆様もすがすがしい年末年始をお過ごしください。


社会支出の対国民所得比の国際比較

2017-12-17 23:07:49 | 社会保障

最近面白いなと思うのが政府の社会保障政策の成り立ちについてです。国際比較の統計等を見ていると、日本は昭和30年代に完成度が高い年金制度を作ったほか、高齢化を見越して作られた介護保険制度など、常に将来の人口推計等に基づき手を打ってきたことがわかります。想定外に速い速度で進む高齢化についての対策はまだまだ様々な面で課題が山積しており社会保障制度の方向性、財源等をどうするか安定政権の中でしっかりした政策を打ち出す必要があります。広い視点でものを見たいと思い勉強のために受講してみる研修会では、年金についてはある程度給付抑制の仕組みも導入できてある程度の見通しは立つようになったという説明が多いです。問題は医療・介護の今後の方向性だと思うのですが、保障をどこに持っていくかは項目だけではなく、世代に対する振り分けも重要であり、今政府の打ち出しているのは全世代型の社会保障制度ということになります。

安倍政権としては、高齢者に対する社会保障よりも若い世代にもっと社会保障を手厚くするべきだということで打ち出しているため、ネットを見ているとかなり批判があるようです。しかし日本の社会保障は高齢者に偏ってかなり手厚く、若い世代へ社会保障の財源を振り分けるということは国際比較から見ても必要なことなのだと感じます。

国立社会保障・人口問題研究所「社会保障費用統計(平成26年度)」で社会支出の対国民所得比の国際比較が示されています。高齢、遺族、障害・業務災害・傷病、保健、家族、積極的労働政策、失業、住宅、生活保護その他の9項目を日本とフランス・スウェーデン・ドイツ・イギリス・アメリカの6か国で比較しています。この中で一番特徴的なのは日本の「高齢」に対する支出の高さです。日本47.3%に対して、アメリカ32.9%、イギリス31.9%、ドイツ31.4%、フランス39.7%、スウェーデン34.4%です。それに対して「家族」に対する保障は日本5.4%、アメリカ3.6%、イギリス16.7%、ドイツ8.5%、スウェーデン13.1%、フランス2.7%となっており、高齢者への保障が手厚く、バランスとしては家族(子ども・子育て)へ社会保障を振り分けるという必要があると認識することができます。

国立社会保障・人口問題研究所「社会保障費用統計(平成26年度)」

 http://www.ipss.go.jp/ss-cost/j/fsss-h27/H27.pdf

ここのところ「労務監査」的な仕事が多く、とにかく運用を中心にローラー的に検証してどのように問題点を解消するかをご提案するのですが、だいぶ形になってきました。もう少し安定させて労務監査のパッケージをご提案できるようにする予定です。

週末ゆっくり起きたりしてやっと風邪が抜けた感じです。12月は毎日夜に予定が入り忙しいので体調管理をして気持ちよく年末年始を迎えたいなあと思っています(まだインフルエンザの注射ができていないのでちょっと心配です。昔TACの講師時代に40度近い熱がありながら隠して授業をして懲りたので毎年注射はしています)。


情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン(案)

2017-12-10 22:55:56 | 労務管理

厚生労働省のHPに「情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン(案)」が発表されています。

趣旨の中にはテレワークの定義が示されているほか労働基準関係法令の適用及び留意点等がかなり詳細に示されています。その中でも印象的なのが「就業規則等で時間外労働等を事前許可制としている場合の扱いです。事前の申告がなかった又は許可されなかった場合で事後報告もなかった場合に条件付きで「労働時間に該当しない」として明示されています。時間外・休日労働は本来所定労働時間に終わらずやむを得ず行うという位置づけであるはずですが、今後時間外・休日労働は許可制が普通になっていくきっかけになりそうです。以下抜粋です。

労働者が時間外や深夜、休日(以下「時間外等」という。)に業務を行った場合であっても、少なくとも、就業規則等により時間外等に業務を行う場合には事前に申告し使用者の許可を得なければならず、かつ、時間外等に業務を行った実績について事後に使用者に報告しなければならないとされている事業場において、時間外等の労働について労働者からの事前申告がなかったか又は事前に申告されたが許可を与えなかった場合であって、かつ、労働者から事後報告がなかった場合について、次のすべてに該当する場合には、当該労働者の時間外等の労働は、使用者のいかなる関与もなしに行われたものであると評価できるため、労働基準法上の労働時間に該当しないものである。
① 時間外等に労働することについて、使用者から強制されたり、義務付けられたりした事実がないこと。
② 当該労働者の当日の業務量が過大である場合や期限の設定が不適切である場合など、時間外等に労働せざるを得ないような使用者からの黙示の指揮命令があったと解し得る事情がないこと。
③ 時間外等に当該労働者からメールが送信されていたり、時間外等に労働しなければ生み出し得ないような成果物が提出されたりしている等、時間外等に労働を行ったことが客観的に推測できるような事実がなく、使用者が時間外等の労働を知り得なかったこと。
ただし、上記の事業場における事前許可制及び事後報告制については、以下の点をいずれも満たしていなければならない。
① 労働者からの事前の申告に上限時間が設けられていたり、労働者が実績どおりに申告しないよう使用者から働きかけや圧力があったりするなど、当該事業場における事前許可制が実態を反映していないと解し得る事情がないこと。
② 時間外等に業務を行った実績について、当該労働者からの事後の報告に上限時間が設けられていたり、労働者が実績どおりに報告しないように使用者から働きかけや圧力があったりするなど、当該事業場における事後報告制が実態を反映していないと解し得る事情がないこと。

本文全体は以下でご確認ください。

http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000185340.html

7年間乗った車を買い替えることになりました。7年の歳月で車の世界でも驚くほど機能が進化しており、セーフティー機能はただただ目を見張るばかりでした。現在の車に何も不満はないものの、ここ数年、以前より運転していても少し注意力が落ちたような気がしていたので、セーフティー機能は必要だと感じての買い替えです。仕事でも今後AIの進化に合わせて効率化を図り、できることを増やすことを目標にしているので、その考えと同じこととは思うのですが、7年間お世話になってきた車とさよならをするのはとても寂しいです。写真も撮り名残惜しいですが、新しい車も大事にしようと思います。


高年齢者の活用について

2017-12-03 22:17:25 | 労務管理

先週高齢者の活用についてのセミナーをさせて頂きました。お話を頂いた時テーマは任せて頂けるということでしたので、今後課題になりそうな「高齢者活用」について研究するのも一つかなと考えたことと、高齢者を多く雇い入れている業種でもあったため選びました。それがなかなか調べていくと深いテーマでした。例えば高齢者を雇い入れる際の留意点などについても取りまとめることができて、今後の高齢者活用が自分なりに見えてきた気がしました。

現在60歳以上のうち65歳を超えて働きたい人の割合は約65%、実際に65歳以降で働いている人の割合は20%強です。人口が減少をしていく中で就業希望がありながら無業である人数を「平成27年9月25日高齢者雇用の現状について」で出しているグラフで見ると25歳から64歳までの女性と65歳以上79歳までの男女が多いことがわかります。

65歳以上70歳未満で仕事をしている高年齢者の就業理由は、その半数が「経済上の理由」ではありますが、「いきがい、社会参加のため」も15%あります。周りの60歳以上の大企業を定年退職した方たちを見ると、フットワーク軽く、一定の期間働き、その後辞めた後1カ月間にフランス滞在するとか、様々な国へ旅行をするなど、時々働きその後楽しみまた働くことを繰り返している方がいます。定年までより人生を楽しまれているような気がします。何の仕事をしているかというと、朝早く荷だしだけ手伝うとかアルバイト的な仕事をして、家に戻って、少し寝てからゴルフの練習に行くなどワークライフバランスとはこのことか、という感じさえしてしまいます。

1月に改正になった雇用保険法の高年齢被保険者は、65歳以上で新たに雇用された場合であっても週20時間以上働く等の被保険者としての要件を満たせば、雇用保険の被保険者になることができ、6か月以上働き離職した場合高年齢求職者給付金を受給することができます。一定期間働きその後充電したら、雇用保険の高年齢求職者給付金を受けながら新たな仕事を探し、また一定期間働くということで、高年齢被保険者は年齢制限はないので、たとえ80歳を超えてもそのパターンを続けることが可能だということになります。

健康面では、雇用する側の注意点として、「短時間勤務・無理のないシフト・再雇用時の説明・繰り返しの指示・身体負荷への配慮」が留意点になります。部分的な仕事を切り出すなど職務再設計をすることは必要かと思います。

それらを総合的に考えると、細切れの働き方を提示できるかということが高齢者活用のポイントになるような気がします。今後人の採用がますます厳しくなる中で一つのヒントになるかと思います。

この1週間は風邪をひいて散々でした。久しぶりにのどをやられすぐに医者に行ったのですが薬が合わずひどくなるばかりでした。やはり合わないと思ったらすぐ変えてもらうべきですね。週末やっと体調が整ってきました。「判断はスピーディーに」仕事と同じことです。