OURSブログ

社会保険労務士としての日々の業務を行う中で、考えたこと、感じたこと、伝えたいことを綴る代表コラム。

2022年度の雇用保険料率について

2022-01-30 23:09:08 | 労働法

2022年度の雇用保険料率については、以下の通りとなるようです。

●2022年4月から9月まで
※2事業分のみ3/1000から3.5/1000へ引上げ
失業等給付   2/1000 (事業主1/1000・労働者1/1000)
育児休業給付  4/1000 (事業主2/1000・労働者2/1000)
2事業分    3.5/1000 (事業主負担のみ3.5/1000)
     計  9.5/1000 (事業主6.5/1000・労働者3/1000)  

●2022年10月から
※失業給付分1/1000から3/1000へ引上げ
失業等給付    6/1000 (事業主3/1000・労働者3/1000)
育児休業給付  4/1000 (事業主2/1000・労働者2/1000)
2事業分    3.5/1000 (事業主負担のみ3.5/1000)
     計  13.5/1000 (事業主8.5/1000・労働者5/1000)

2022年1月7日開催の第166回労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会の資料を見ると以下(抜粋)のような話し合いがあった上で決まったようです。

「雇用保険料率は中期的な財政バランスを念頭に設定すべきであるが、雇用情勢が良好な時期と悪化した時期における受給者実人員の水準等にかんがみると、原則の保険料率8/1,000 は引き続き妥当な水準であると考えられる。

その上で、令和2年度の弾力倍率は1.85 となっており、弾力条項に基づく引下げが可能な2を下回る水準となっていることや、法律により暫定的に2/1,000 引き下げていた措置が令和3年度末で期限を迎えることから、失業等給付に係る保険料率は、原則の8/1,000 に戻ることとなる。

しかしながら、全体的に回復途上にあるものの、新型コロナウイルス感染症の経済への影響も未だ残っている状況にかんがみ、労使の負担感も踏まえた激変緩和措置として、失業等給付に係る保険料率は、令和4年4月から9月までは2/1,000、同年 10 月から令和5年3月までは6/1,000 とすべきである。

さらに育児休業給付に係る保険料率については、男性の育児休業促進策等に係る制度改正の効果等も見極め、令和4年度から検討を開始し、令和6年度までを目途に進めていくべきである。

また、雇用保険二事業に係る保険料率については、令和2年度の弾力倍率は▲7.65であり、弾力条項に基づく引き下げが可能な1.5を下回る水準となっているため原則の3.5/1000に戻すことが適当である。」

10月からの引き上げなので年度更新時への影響は小さいとは思いますが、2023年度はさらに引き上げられる可能性を考えると、2022年度の年度更新の概算保険料は特に大きな企業は検討しておく必要があるかもしれません。

「ビジネスと人権」のセミナーのご依頼を受けたので、ここ2週間はずっと「ビジネスと人権」に関連する本を読んだり、ネットで調べたりということをして、だいたいレジュメは完成させました。国連グローバルコンパクトやSDGs、ESG投資などとの関連をどのように考えればよいのか、頭が整理できたのでだいぶ理解できたような気がしています。新しいことを学ぶのは苦しいですけれどこれまた楽し!とも思います。

早稲田の大学院の友人たちと昨日は夜オンライン飲み会を開催して色々な情報交換をすることができました。さまざまな職業ではあるのですが、共通点もあり話は尽きずあっという間の2時間でした。これからもずっとこのような良い関係が続けたいなと思っています。


父親の育児休業制度について

2022-01-23 21:43:10 | 産前産後・育児・介護休業

今年の4月と10月を中心とした育児介護休業法の改正は、男性の育児休業を促進させるための仕掛けがいくつもあるといえます。厚生労働省「男性の育児休業取得促進等に関する参考資料集」で、男性の家事、育児時間が長いほど、妻の継続就業割合が高く、また第2子以降の出生割合も高い傾向にあることが示されています。

フランスでは、出生率が2010年に2.01を超え、コロナ禍第2次世界大戦後最低水準となった2020年でも1.84だそうです。方や、日本の2020年の合計特殊出生率は1.34と低水準です。しかしフランスもこれまでずっと出生率が高かったわけではないそうです。JILPTの調査研究によると「女性が高い教育を受け社会進出が進むと、仕事と子育ての二者択一を迫られた結果、女性は就労を選択し、出生率がさらに低下する。しかし、社会における女性の地位が向上するにつれて、出生率は回復することが指摘されている。」ということで、「この20年間に女性労働力率を上昇させながら出生率も回復してきている国の社会環境には、男性を含めた働き方の見直しや保育所整備等の両立支援、固定的性別役割分担意識の解消や男性の家事・育児参加、雇用機会の均等などが進んでいるという特徴がある。」と指摘する、とあります。

上記のような両立支援に取り組んだほか様々な政策を打ってきたフランスでも必ずしも男性の育児休業の取得率は芳しくないそうです。「『女性に多様な選択肢を与え』『仕事か子育ての二者択一を迫らない』家族政策をさらに一歩推進するために、父親に対して家庭責任と育児を分担することを、特に、1歳までの育児を半分分担することを求め」労働時間の短縮などは効果があったようです。今回の育児介護休業法の改正だけではなく、生産性の向上による労働時間の短縮や、在宅勤務などの導入により父親が家事・育児を担う部分が多くなることで、日本の出生率が高まることを期待しています。

【参考】

独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT)「フランスにおける父親の育児休業制度-なぜ、高い就業率と特殊合計出生率が両立したのか」
https://www.jil.go.jp/foreign/labor_system/2018/12/france.html

厚生労働省「男性の育児休業取得促進等に関する参考資料集」
https://www.mhlw.go.jp/content/11901000/000693710.pdf

昨日は年に2回開催しているBBクラブの勉強会でした。コロナ前は、10時から17時頃まで、法改正と旬なテーマで講演、その後懇親会という流れで行っていたのですが、この2年間はずっとzoomでの開催です。法改正セミナーは91名の参加があり相変わらず会員の勉強意欲を嬉しく感じました。その後のzoom懇親会はやはりリアルとは違って若干歯がゆい部分がありますが、参加してくれたみんなの近況を聴くことができて、zoomのお蔭で継続できていることについては感謝しています。きっとリアルで会える日が来たらとてもとても嬉しいのだろうなと楽しみにしようと思います。延期になっているBBクラブ創立20周年記念パーティーが新たな再開になるかもしれませんね。とにかく今はオミクロン株に気を付けて元気に毎日を過ごすことを心がけたいです。


介護保険の特定被保険者制度について

2022-01-16 22:20:04 | 社会保険

健康保険法に定める健康保険組合の規定にはいくつか規約で定めることのできる特例的な取り扱いがあります。健康保険法の法附則に定められる介護保険の特定被保険者制度もその一つです。

(特定被保険者)
法附則第七条 健康保険組合は、・・・規約で定めるところにより、介護保険第二号被保険者である被保険者以外の被保険者(介護保険第二号被保険者である被扶養者があるものに限る。以下この条及び次条において「特定被保険者」という。)に関する保険料額を一般保険料額と介護保険料額との合算額とすることができる。
 
少し読みにくい条文かもしれませんが要するに健康保険組合の規約に定めれば、40歳以上65歳未満の介護保険第2号被保険者以外(40歳未満又は65歳以上の被保険者)の被扶養者が40歳以上65歳未満である(介護保険第2号被保険者に該当する)合、被保険者の保険料と合わせて特定被保険者である被扶養者分の介護保険料も負担することになるというものです。
 
健康保険の被保険者が被扶養者の分まで保険料を負担することは原則としてないのですが、特定被保険者制度がある場合は被扶養者分の介護保険料を負担するケースがあるという仕組みになります。もう少し整理すると以下のようになります(それぞれの組合で規約に定めているため原則的なもののみ上げます)。
①本人が40歳未満の場合の介護保険料の負担
・被扶養者が40歳未満・・・本人、被扶養者の負担共になし
・被扶養者が40歳以上65歳未満・・・本人の負担なし、被扶養者分を負担し健保組合に納付
・被扶養者が65歳以上・・・本人の負担なし、被扶養者分は市区町村に納付
 
②本人が40歳以上64歳未満の場合の介護保険料の負担
・被扶養者が40歳未満・・・本人のみ負担し健保組合に納付
・本人が海外転勤等で介護保険の適用除外で被扶養者が40歳以上65歳未満
 ・・・本人は適用除外のため負担なし、被扶養者分のみ負担し健康保険組合に納付
・被扶養者が65歳以上・・・本人の負担は健康保険組合に納付し、被扶養者分は市区町村に納付
 
特定被保険者制度は健康保険組合のみに認められた制度です。それも採用している組合は少ない印象ですが拠出金の増加に伴い採用する健康保険組合は増える可能性はありそうです。
 
先週珍しくお世話になっている協会で新年会が開催されたので出席したところ、1つのテーブルに4人ずつ(通常は6人テーブルか?)、一人ひとりアクリル板で仕切られており、感染対策が完璧になされていました。少し話しにくいなあと思いましたが何とかほぼ初対面の4名で話も弾み、料理も美味しく頂きました。いつもは終了後親しい方が残り1時間程度過ごすのですが、今回はさっと解散、終了も早かったので事務所に戻りまた仕事をしてしまいました。今年の新年会はほとんどないという方ばかりで、2年間こういうイベントがなくなってしまうとなると、生活習慣もだいぶ変化して以前のように元に戻ることはないのかもしれないと思っている方は多いのかなという話になりました。仕事のやり方も、コミュニケーションの取り方も、プライベートの生活も大きな変化に合わせて新たな方法を模索することが大事だと思っています。
 
日経新聞の折り込みチラシに、メトロポリタン美術館展が入っており、先行予約をすると若干割引になるので購入したのですが、密を避けるためか予約するには日と時間帯を決める必要がありました。それよりもっと驚きだったのが、先行予約で1900円のチケットなのですが、「スペシャルプログラム」なるものもあり、こちらは何と17,000円で、40分の解説アーカイブ配信、ライブトーク、展覧会図録とオードブルセットとシャンパンが自宅に届けられるということで、シャンパンなどを楽しみながらアーカイブ配信やライブトークを自宅で見るという企画だそうです。色々工夫された企画は見るだけでも楽しいですね。
 
さて、1月22日(土)はBBクラブの勉強会です。今回もzoomになりますが準備は万端です。勉強会終了後もオンライン懇親会を行いますので、久しぶりにみんなのお顔を見たいので、ちょこっとでも参加していただけると嬉しいです。懇親会は一度ウェビナーを退出後懇親会用のURLをクリックして入りなおして頂くことになりますのでよろしくお願いします。以下ご案内です。

不妊治療の保険適用について

2022-01-10 22:50:09 | 社会保険

あけましておめでとうございます今年も毎週末のブログ更新頑張ってまいりますのでよろしくお願いします。

OURSでは平成21年の法人化した際に継続していこうと決めたのが、このブログとOURSセミナーです。今年も1月にOURSセミナ―を開催予定なので、お正月明けの3連休は法改正セミナーのレジュメ作りをしていました。色々調べていく中で、全世代型社会保障の中でこれまであまり具体的なことが出ていなかった不妊治療の保険適用について、中医協の総会の資料が出ていました。まだ最終的な結論には至っていないようですが一部新聞で報道された通り、保険適用が拡大される治療法は「体外受精、顕微授精、人工受精」とされ、対象は43歳未満の女性、回数は40歳未満が最大6回、40~43歳未満は最大3回になる可能性があります。

ただ気になるのが健康保険法の療養の給付の考え方です。健康保険の療養の給付は「疾病又は負傷」に対して行うと法63条に規定されており、それ故に正常分娩については療養の給付の範囲外とされてきました。不妊が疾病と位置付けられることになるのかという疑問があったのですが、第131回社会保障審議会医療保険部会(2020年10月14日)の議事録に以下の説明がありました。

厚生労働省からの現状の説明として「これまでの経緯を振り返りますと、健康保険法におきましては、医学的な定義に該当する疾病のうち、ある程度、また、ある範囲のものを保険事故として、疾病としてきておりまして、その範囲につきましては、時代とともに変化をしてきているという状況でございます。例えば制度施行当初、大正10年の段階では、労働能力に全く関係のない疾病は除外するというような形でございましたけれども、その後、昭和16年には労働能力との関連性を払拭して、幅広く、労働能力と関係なくても、被保険者の健康の保持増進上必要と認められれば疾病の範囲とするといった形になり、現在に続いているところでございます。・・・施行当初は疾病の範囲外とされていたものでも、現在では範囲内とされているものも相当数でございますので、その範囲は極めて広いというような記述をしているところでございます。・・・これを踏まえまして、不妊治療の保険適用という方向性について御議論を賜れれば幸いでございます。」

これに対して委員から、少子化対策の観点から、不妊治療の経済的負担の軽減を図ることは大変重要である・・・疾病に対する治療という観点からも、医療保険を適用するという考え方も理解できる・・・ただし、そのためには、しっかりと実態を調査し、医学的データ等のエビデンスも踏まえた上で、保険給付の範囲や有効性、安全性を明らかにしていただく必要がある、という意見が出て他の委員からも賛同があったようです。

不妊治療の保険適用は、少子化に苦しむ日本においては良い判断になると考えますが、健康保険の原理原則からきちんと説明できるようにして欲しいと考えます。不妊治療の保険適用についての具体的な内容が決まりましたらまたブログで紹介したいと思います。

年末からお正月にかけてはとてもゆっくりできました。いつも通り年末は家じゅうの大掃除、お正月は駅伝と初詣を無事済ませ、時間があったのでOURSセミナーのレジュメだけでなく人事制度の手順書なども作ることができましたし、本も数冊読むことができてやはり時間がたっぷりあることは良いなあとしみじみ感じました。初詣は目黒に引っ越してからは通常毎年目黒不動尊に行くのですが、そこに「銅造役の行者倚像」があり足腰健全のご利益があるということなのです。昨年はコロナの関係もあり目黒不動尊に行かなかったためこの「銅造役の行者倚像」を拝まなかったことが、5月に転んで足にひびがいった原因なのかもしれないと思っていたので、今年はしっかり拝み、内緒でけがした足をなぜてきました。これで今年は安心です!

それでは今年1年またよろしくお願いいたします。