OURSブログ

社会保険労務士としての日々の業務を行う中で、考えたこと、感じたこと、伝えたいことを綴る代表コラム。

労災を受けている場合の打切補償について

2012-09-30 22:40:21 | 労務管理

 昨日、日経新聞を読んでいたら以下の記事がありました(WEB版より・一部加筆)。

労災認定されて療養中に解雇したのは不当だとして、専修大元職員の男性(37)が地位確認などを求めた訴訟で、東京地裁は28日、解雇を無効とする判決を言い渡した。

労働基準法は業務上のけがや病気などで療養中に解雇することを原則禁じる一方、療養開始後、3年たっても治らない場合、賃金1200日分の「打切補償」を支払えば解雇できると規定。

専修大は昨年10月に打ち切り補償約1630万円を支払って解雇したが、伊良原恵吾裁判官は、打切補償の適用は使用者による(労基法の定めに基づく)療養補償を受けている場合に限られ、労災保険の(療養補償給付の)受給者は含まれないと指摘。解雇を違法と判断した。

判決などによると、男性は2002年ごろから首や腕に痛みが生じ、「頸肩腕(けいけんわん)症候群」と診断され、07年11月に労災認定を受けた。〔共同〕http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG28061_Y2A920C1CR8000/

今回の判決は、打切補償の支払いにより解雇制限の例外として解雇ができるという対象を厳格にとらえる判断となりました。

実は同じ支部の会員に数年前この問題についてどう思うか質問がありました。労政時報にその件が載っていたことによるご質問であったと記憶しています。その時は労基法の第84条(他の法律との関係)の規定により、労災法の補償を受けている場合は労基法の災害補償の責は免れるという規定があるのだから、労基法の規定による補償ではなく労災法の補償を受けているとしても打切補償の支払いにより解雇制限は解除されると考えました。労基法の災害補償の規定を実現できるための労災保険という考え方であると思いますのでそれは当然だと思うのですが。その時は判決等は出ておらずそのような解釈となるということであったと思います。

今回は地裁とはいえ裁判の判決ですし、労災保険制度の位置づけにおいて大きな意味を持つと思います。専修大学は、判決について「判決内容を確認したうえで今後の対応を検討しますとしているようですがこのままで終わって欲しくはないです。もしこのままであれば会社が労災申請をせず労基法で補償する方がよいということも選択肢としては考えざるを得ず、その場合労災保険の制度の崩壊や業務災害の補償についての確実性が損なわれるのではないかと思います。やはり業務災害の場合は(労働基準法の使用者が行う災害補償ではなく)労災申請をして確実に労働者が補償を受けられることは大切です。また会社にとっては、打切補償というかなりの額を払って一定の責任を果たしたら解雇はやむを得ないのではないでしょうか?そのために労災保険法の第12条の5の1項に「保険給付を受ける権利は、労働者の退職によって変更されることはない。」と規定されているのだと思います。 

ここ2か月間の間に2度プロダクションの人に声をかけられました。「今明るい感じの方にお声をかけさせていただいています。」とかその前は「雰囲気の良い方に…」だったと思います。確かに2度とも「なんか今日は気持ちがよいなあ~」と気分よく歩いていた時でした。これまでの人生の中でそのようなことは一度もなかったので「なんでかな~」という気がするのですが、家族には「健康食品の宣伝かなんかじゃないの」などと言われています。歳をとってもそれなりに色々なことがあるもんですね。


健康保険・厚生年金保険の一括適用取扱要領の改正について

2012-09-23 23:36:07 | 法改正

9月7日付で「健康保険・厚生年金保険一括適用承認基準及び全国健康保険協会管掌健康保険・厚生年金保険一括適用取扱要領の改正について」という、厚生労働省保険局長の通達が出ました。

その通達によると、今般、事業主が一括適用制度を利用しやすい環境を整えるため、一括適用に係る届出の際の「添付書類の簡素化」を図ることとし、「健康保険・厚生年金保険一括適用承認基準」を別添1のとおり、「全国健康保険協会管掌健康保険・厚生年金保険一括適用取扱要領」を別添2のとおりそれぞれ定め、平成24年10月1日から適用することとしたので通知する。別添その他詳細は→http://wwwhourei.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T120913S0010.pdf

一括適用の承認が行われる基準としては、二以上の事業所のうち一の事業所において、承認申請にかかる適用事業所に使用されるすべての者の人事、労務及び給与に関する事務が電子計算組織により集中的に管理されており、これらの者にかかる健康保険又は厚生年金保険の適用事業所の事業主が行うべき事務が、所定の期間内に適正に行われることなどがあげられています。

今は企業の本社で一括して人事労務管理及び給与計算が行われるところが多いため、社会保険事務の一括処理は効率の面から言っても事務処理の正確性の面から言っても必要なことだと思います。

労働保険はというと、社会保険とは異なり一括という考え方は労働保険料の一括申請(労働保険継続事業一括認可)受けられるという部分のみになります。

労災事故が起これば上記の労働保険の一括申請をしてあっても、事業場管轄の労働基準監督署に療養補償給付の請求書に始まり各請求書等を届出ることになります。

また雇用保険については、一括という考え方は法律上ありませんが、適用事業所非該当承認申請という扱いがあります。これは、事業所の規模が小さく、労働保険料の計算・徴収や労働・社会保険の取り扱い、労働者名簿・賃金台帳など法定帳簿の備え付け状況からみて、雇用保険事務処理能力のがない場合にその事業場は例えば本社等申請された適用事業所の一部として雇用保険事務を取り扱われることになります。

この非該当承認申請は以前は30人未満が目安または50人未満が目安などハローワークによって回答が異なっていましたが、最近ハローワークの方に聞いたところによると人数はあまり問題にならないとのこと。むしろハローワーク同士の話し合いによるようなことでした。いずれにしてもある程度の規模になると非該当承認は受けられないということになります。新たに適用事業所を設立した際は、本社でどんどん入社手続きをして雇用保険の被保険者が増えていくことになりますが、もともと適用事業としてあった事業所は規模が大きい場合一括という制度もなく各事業所ごとに手続をし続けるということになります。

厚生労働省として中央省庁再編が行われ厚生省と労働省が1つの省庁になってから10年以上経ちますが、各保険制度の持つ役割により致し方ないのかもしれませんが、雇用保険の適用については「一括」の考え方を法律で規定してもよいように思います。

OURSは法人化後4回目の決算を迎え、小磯社会保険労務士事務所時代から数えるとちょうど満20年となりました。2012年度の事業計画をパワーポイントで作成し先週末の法人会議で発表しました。

①経営基盤のさらなる強化と②業務の効率化を行うことにより顧問先企業様への質の高い相談・コンサル等のサービスの提供を行うことを柱にしました。

また、スタッフが仕事をしていく中で顧問先企業等の社長や人事担当者から「ありがとう」「とても助かっています」と言って頂くことが1番の仕事のやりがいとなると思いますので、スタッフの実力をさらにつけてもらえるよう皆で情報を共有する仕組みや勉強する機会をこれまで同様できるだけ確保して行こうと思います。

事務所は最近平均年齢がだいぶ下がったのですが、さらに若いスタッフを増やしていき、これまでと異なった発想をどんどん取り入れていくことを考えています。20年前に開業した時、今のような顧問先とおつきあいできる事務所になれるとは想像してもいませんでした。それと同様に社会保険労務士という仕事のまだまだある伸び代を既存の考え方だけではなく新しい考え方で展開していくことが、これからは必要でありまた面白いことではないかと思うからです。


年金機能強化法について

2012-09-16 22:25:25 | 法改正

8月22日に公布された年金機能強化法の正式名称は、「公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律」です。概要は以下の通り。

(1) 納付した保険料に応じた給付を行い、将来の無年金者の発生を抑えるという観点から、受給資格期間の短縮(25年→10年)を行う。(税制抜本改革の施行時期にあわせ、平成27年10月から施行)

(2) 基礎年金国庫負担1/2が恒久化される特定年度(平成16年改正法で「別に法律で定める年度」と規定)を平成26年度と定める。(税制抜本改革の施行時期にあわせ、平成26年4月から施行)

(3) 短時間労働者に対する厚生年金・健康保険の適用拡大(週所定労働時間20時間以上、継続1年以上使用見込、報酬月額8万8千円以上)を行う。(平成28年10月から施行)(※)

(4) 厚生年金、健康保険等について、次世代育成支援のため、産休期間中の保険料免除を行う。(2年を超えない範囲内で政令で定める日から施行)

(5) 遺族基礎年金の父子家庭への支給を行う。(税制抜本改革の施行時期にあわせ、平成26年4月から施行)

(6) 低所得高齢者・障害者等への福祉的な給付措置を講ずる。高所得者の年金額調整、国民年金第1号被保険者に対する産前産後の保険料免除措置について検討する。 (※)

注) (1)、(2)、(5)については、税制抜本改革により得られる税収(消費税収)を充てる。

(※)は衆議院の修正・追加のあった項目。原案にあった、低所得者の年金額の加算、高所得者の年金の調整、交付国債償還に関する規定は削除されました。

詳しくは→http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/soumu/houritu/dl/180-49.pdf

この中で(5)遺族基礎年金の父子家庭への支給は「とうとう」という気がします。昭和61年の改正の際に夫を亡くした「子のある妻」または「子」に支給される遺族基礎年金は創設されました。それと同時に、旧法の①母子福祉年金、②準母子福祉年金、③遺児年金の3つの年金は遺族基礎年金に切り替えられています。旧法のこの三つの年金は以下が受給者となっていました。

①母子福祉年金    死亡した夫に生計維持されていたが18歳年度末未満の子(20歳未満の子を含む)と生計を一にしていた場合

②準母子福祉年金  生計の中心である男子(夫・父・祖父または子)と死別した女子(祖母または姉)が18歳年度末未満の孫・弟妹(20歳未満の孫及び弟妹を含む)と生計を一にしていた場合

③遺児年金       死亡した父または母に生計維持されていた18歳の年度末未満の(20歳未満の子を含む)が孤児になった場合

①と②は生計を維持していたり生計の中心は男子ということで受給者は女子、また③は子が受給者であり、そこには成人男子が遺族年金を受給するという発想はありません。それらがもとになった遺族基礎年金でしたから妻か子が受給権者であったわけですが今回その考え方が崩れ、「父」が受給者になることになりました。

東京都社会保険労務士会の支部対抗野球は昨日準決勝と決勝が行われ、我が渋谷支部は見事に優勝を飾りました。4試合とも観戦しましたがいずれも安定した力を発揮し、投打にメンバー全員が活躍し、また昨年よりさらにチームワークがとてもよくなってきた感じで、ベンチの中も和気あいあいの中での優勝となりました。2日間の応援の間に私の腕はこんがりとよい色に焼け、また選手と一緒に昼の弁当を食べ、試合が終わると唐揚げやフライドポテトを食べてしまったため、今日から素麺の日が続くことになりましたが、本当に楽しい2日間でした。

30周年記念大会のため優勝カップのレプリカを贈呈されました。優勝カップは毎年優勝チームのところに行くのですが、この小さな優勝カップは頂戴できるそうですのでOURS事務所に飾る予定にしています。     


労働契約法改正 5年の起算日

2012-09-09 21:41:48 | 法改正

改正労働契約法が8月3日に成立しました。この改正については3月18日にもブログに載せましたが、企業にとっては大きな影響を及ぼす内容となっています。対応を検討しなければなりません。

ところでこの改正の件で今のところ一番ご質問が多いのが、「有期労働契約の期間の定めのない労働契約への転換」についてです。

同一の使用者との間で締結された2以上の有期労働契約が5年を超える労働者が、当該使用者に対し、現に締結している有期労働契約の契約期間が満了する日までの間に、期間の定めのない労働契約の締結の申し込みをしたときは、使用者は当該申込みを承諾したものとみなすものとする。」という規定についてです。

この中で「有期労働契約5年の起算日はどこからカウントするのか」という部分のご質問が多くあります。

既に10年以上契約している契約社員がたくさんいる、という状況の場合いきなり施行日に期間の定めのない労働契約に転換するという状態になるのか危惧されるところでしたが、これは改正法附則2項に記載があります。

改正法附則
2 経過措置
法第18条(有期労働契約の期間の定めのない労働契約への転換)の規定は、同条の施行の日以後の日を契約期間の初日とする期間の定めのある労働契約について適用し、当該施行の日前の日が初日である有期労働契約の契約期間は、同条第1項の通算契約期間には算入しないものとされたものであること。 

要するに施行日以後の日に契約期間の初日を迎えた労働契約から適用し、施行日前の契約期間は通算しないということになります。

施行日が、平成25年4月1日であればそれから5年後に初めて期間の定めのない労働契約への転換が実施されることになりますね。

昨日は東京都社会保険労務士会の野球大会で、我が渋谷支部は2試合を勝利し、来週の準決勝に進みました。1日ピーカンのお天気の中、ベンチで応援をして、お弁当を選手たちと食べて、アイスを差し入れして、ヒットやダブルプレイに喜び、楽しく過ごしました。なんだか毎週そんな感じで過ごしているのですが、仕事のことが頭からなかなか離れない私にとっては、すごいリフレッシュになります。オンとオフの切り替えは大切なんだなとつくづく思うこの頃です。


身元保証書について

2012-09-02 23:19:53 | 労務管理

ここ2週間くらい、春から新たに契約頂いた企業を中心に就業規則や諸規程をいくつかチェックしました。

その中で身元保証書については、就業規則に採用時の提出書類として多くの企業が載せていると思います。しかし、実際に身元保証書を提出してもらっているかというと、意外にも提出してもらっていないという会社が多くあります。また身元保証書は永遠に有効というわけではないのですが、有効期間が過ぎてもそのままになっているといった管理がきちんとされていない場合は結構多く見受けられます。

〔身元保証書〕
「身元保証書」とは、採用した本人の行為により使用者が損害を受けた場合に、身元保証人がこれを賠償することを内容とする身元保証人と使用者との契約書のことです。使用者が労働者に対して身元保証人を求めること自体に法的な制限はありませんが、身元保証人に求める賠償の範囲・期間等については「身元保証ニ関スル法律」により、以下の制限が定まっています。
(1) 身元保証契約の期間-期間の定めがない場合は3年、期間の定めがあっても最長5年が限度。【同法1条、2条】

(2) 身元保証人の賠償範囲
本人の直接、間接の労務に関連した行為により、使用者が受けた損害。【同法1条】
但し、その賠償額は使用者に生じた損害額全てではなく、使用者の監督や安全配慮等の過失、賠償請求に至った事由、被用者の任務又は身上の変化、その他一切の事情を斟酌して裁判所が決定する。【同法5条】

(3) 使用者の通知義務【同法3条】-使用者は、身元保証人に対し、次の通知義務があります
① 本人に業務上、不適任又は不誠実な行跡があって、そのため身元保証人に責任を生ずるおそれがあることを知っ
たとき。
② 本人の任務又は任地を変更したことにより、身元保証人の責任が加重となり、又はその監督が困難となるとき。

(4) 身元保証人の契約解除権【同法4条】
身元保証人は、上記(3)①②の通知を受けたときは、身元保証契約を解除することができます。


このように「誓約書」「身元保証書」には、法的な効力等に相当の制限があります。従って服務上の遵守を期待するあ
まりに、これらの書類の提出を安易に求めるのではなく、その必要性や内容について十分に検討し、提出を求める場合
であっても、労働者や身元保証人へ不要な心理的プレッシャーを与えることのないよう、配慮した対応が求められます。

上記のように労働局によっては、身元保証人のいない求職者の職業に就く機会を狭めることを懸念して、できれば身元保証書の提出を求めることをしないでほしいという考え方を示しているところもあるようです。

私の個人的な経験から、就職する際に身元保証人になってくれと依頼があれば、就職できたということを一緒に喜んであげたいですし保証人がいないと言われればなってあげたいのはやまやまですが、やはりそれほど安易に受けることはできないと思い返すわけです。身元保証人が1人なら何とか親や親せきに頼めるかもしれないですが、2人は負担が重すぎると思います。上記、身元保証書の管理についてや上記考え方なども含め、就業規則をチェックする際必要性を検討してもらっています。

昨日恒例のBBQは若洲公園で行いました。すごい雨に見舞われたりすぐに晴れたりの繰り返しで、借りたテントはとても有難かったですが、晴れてくると温室状態に。そこで木陰にテーブルを移して、近くには屋根つきの場所もあり、なかなかうまい具合に終了することができました。有志でBBQを始めてからすでに5,6回になると思います。みんなで集まって汗をかきかき機材のセットや、肉を焼いたりビールを飲んだり、作業をしてあれこれ話をして別れるだけなのですが夜の飲み会とは違った解放感というか飾りのない付き合いができるような気がする1日です。若洲公園は案外近くて広くてよかったです。