OURSブログ

社会保険労務士としての日々の業務を行う中で、考えたこと、感じたこと、伝えたいことを綴る代表コラム。

平成25年度均等法、育介法等に関する紛争解決の援助、是正指導の状況取りまとめについて

2015-01-25 16:44:05 | 労務管理

厚生労働省が、平成25年度に都道府県労働局雇用均等室で取り扱った男女雇用機会均等法、育児・介護休業法等に関する相談、紛争解決の援助の申し立て・調停申請、是正指導の状況について取りまとめた結果をみると、増加しているのは「婚姻、妊娠・出産等を理由とする不利益取扱い」と「母性健康管理に関する相談」になっています。

相談件数の増加順に見ると、以下のようになっています。

①婚姻、妊娠・出産等を理由とする不利益取扱い」が2,090件で前年度に比べ269件増加(前年度比14.8ポイント増)

②「母性健康管理」が1,281件で前年度に比べ200件増加(前年度比18.5ポイント増)

雇用均等室では、平成25年度は、 積極的な事業所訪問による雇用管理の実態把握を実施し、「母性健康管理」の是正指導件数は、 前年度の1,957件に比べ4,101件と2倍強に増加したとのことです。 また、契約社員(期間雇用者)に関する育児休業についての労働者からの相談が増加しており、期間雇用者に関する育児休業の相談は、394件で前年に比べ25件増加(前年度比6.8ポイント増)しています。

労働局長による紛争解決の援助事例としては、以下のような事例が示されています。

・妊娠を報告したところ、次回の契約更新は行わないとされた事例(妊娠を理由とする不利益取扱い)

・正社員の労働者が育児休業から復帰するに当たり、非常勤職員として勤務するよう命じられた事例(育児休業の取得を理由とする不利益取扱い)

・正社員の労働者が育児短時間勤務を申し出たら、精勤手当を不支給とすると言われた事例(育児短時間勤務の申出を理由とする不利益取扱い)

出産・育児休業関係の相談を受けている団体の回答の業務を担当しており、また年末に育児休業関係の執筆を2件ご依頼頂いたこともあり、色々な事例を考えながら週末は原稿を書いていました。このところ事務所スタッフの実力がとても高くなってきたため、半分以上担当してもらうことにして私は少し楽をさせてもらっていますが、平成22年の育児休業の改正の際に労務行政さんの書籍の執筆を担当させて頂いた以降、出産・育児関係は常に身の回りにあり、法律・通達・指針など大部分が頭に入っており、かなり蓄積もできてきたと思います。この分野はできれば得意分野としたいと考えているので今回も執筆にあたり思いつくまま気になるところを調べてみました。

平成21年及び22年の育児・介護休業法の改正後、紛争解決の援助等どのような状況になっているのかを把握していなかったので、今回厚生労働省と東京労働局のHPを確認してみました。やはり予想通り「不利益取り扱い」については出産・育児休業共に増加しており、いつも回答を担当させてもらっているご相談内容とも一致します。また事例についても同様で、おおむね世間では同じような状況なのかなと感じました。人事担当者は出産・育児関係の法規制だけではなく通達や指針など細かい部分も押えておくことで、もっとトラブルを予防できるのではと思いました。

週末はある企業のグループ会社50社ほどに集まって頂いて36協定・裁量労働の話をさせて頂きました。36協定は何度も色々な場で話をさせて頂いているのですが以前作ったレジュメが幼稚に感じて、今回かなり再度研究しながらレジュメをリニューアルしました。話しながら楽しくて、やはり36協定好きだなあと思いました(変な趣味です)。また月曜日から元気に行きましょう。


年金受給期間短縮10年

2015-01-19 00:21:15 | 年金

昨日は15年間のTAC講師時代の社労士試験合格者の勉強会であるBBクラブでした。年に2回の勉強会もすでに14年間継続しており、今回は島中先生の体調がまだ万全ではなかったためテキストは次回にお渡しするということで、私の作ったレジュメでの法改正講義と、午後は会員の臨床心理士でドクターでもある関さんと休職復職支援をされている沼田先生にお願いして復職に向けての休職者本人や会社繋ぐ役割の重要性などの講義をして頂いてとても充実した一日でした。

法改正講義の中で、今後の法改正一覧を作成してみたのですが、その中に平成27年10月から、現在年金の受給資格を得るのに25年(原則保険料納付済期間+免除期間)が必要なところを10年に短縮するということがありました。これは消費税10%とセットで行われるということを恥ずかしながら知らなかったためそのまま予定通りのつもりでいたのですが、10%へアップする予定が遅れることになったためこちらの10年への短縮も遅れることになるということで会員から教えてもらいました。

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/syakaihosyou_kaikaku/dai2/siryou3.pdf

ちょっと調べたところ以下の記事がありましたので一応実施は予定通り平成27年10月からのようです。(いずれも産経ニュースより)

2014.11.27更新  消費税10%の延期…年金資格短縮、給付は巨額事業 

年金制度では、受給資格期間の10年への短縮が、消費税10%への引き上げとセットになっている。消費税の10%への引き上げ延期で、来年度の社会保障施策の見直しが迫られている。消費税が8%に維持されると、平成27年度に「社会保障の充実」に充てられる額は1兆3500億円にとどまる。うち、約7千億円は、今年度に実施した事業の継続などで使途がおおむね固まっている。残る約6500億円で、何を充実させ、何をあきらめるか-。施策の優先順位が問われている。
◇消費税が10%に引き上げになれば、年金制度で2つの低所得者向けの施策が行われる予定だった。1つは、年金を受けるのに必要な加入年数を25年から10年に短縮する「受給資格期間の短縮」。もう1つが低所得の年金受給者に月5千円(年6万円)を支給する「年金生活者支援給付金」だ。今後、新たな法改正がなければ、いずれの施策も消費税が10%になるときまで延期される。

2014.12.18 08:33更新 年金資格期間を短縮 再増税先送りでも来年10月

政府は17日、消費税率10%引き上げ時に実施するとしていた年金受給に必要な加入期間(受給資格期間)を25年から10年に短縮する措置について、予定通り平成27年10月から実施する方針を固めた。国民年金の未納保険料を過去10年分まで納付できる特例を利用し新たに年金を受給しようと計画している高齢者が少なくなく、延期した場合の影響が大きいと判断した。

現行の年金制度は25年以上の加入期間(保険料免除期間も含む)がないと年金を受け取れず、無年金者を生み出す一因と指摘されている。このため、24年8月成立の年金機能強化法で消費税率10%引き上げと同時に受給資格期間を10年に短縮することが決まった。24年10月から27年9月までは、過去2年分しか納付できない国民年金の未納保険料を10年分まで納付できる特例期間で、年金に未加入で無年金の高齢者も10年分の保険料を納付すれば、27年10月から年金が受け取れるようになっている。

また、受給資格期間短縮に必要な財源は多くても年間400億円程度に収まり、政府は財政上の問題はほとんどないと判断した。政府高官は「年金受給を前提に未納保険料を納めた高齢者の期待権を奪うことはできない」としている。消費税再増税の先送りに伴い、同時に実施予定だった低所得年金受給者に月5千円を支給する「年金生活者支援給付金」については、安倍晋三首相が先の衆院選で、年約5600億円が必要なため先送りすると表明した。

20年以上お互いに勉強したこと経験したことなどをいつもなにげなく情報交換しながらやってきた相棒がなかなか体調不良から戻ってこないので、インプットが薄くなってしまっている心配があったのですが今回やはりと実感しました。しかしまた仕事に戻ってくれることを目標に今年もあせることなく行きたいと思います。

BBクラブの会員は毎回130人から150人程度が勉強会に来てくれます。その後懇親会とさらに2次会に流れ(だいたい私はここまでで力尽きかえりますが)、その後3次会まで行っていることがほとんどです。15年間の講師生活の中で毎年クラスで飲み会なども何回かおこなっていたのでそこで同期の付き合いが始まるのですが、さらにBBクラブの勉強会で年次を超えて親しくなります。だいたい飲み会まで残るメンバーは同じなのですが勉強した時期はまちまちです。ただたまたま社労士の年に2回勉強会で一緒になるうちに色々飲みながら話をして繋がっていくものなのだなあと、感慨深いものがあります。私が会員から受けたものの大きさは計り知れないものなので、会員間でも仕事などで何か一緒にできればと思ったりしていました。しかしそういうことで何か問題が起きるのは避けたいということで、あくまで日常の利害関係から離れたしがらみのない関係でいたいとみんながとてもこの関係を大事に考えてくれているのだということを昨日聞いて理解しました。みんな大人ですね。私がまだ講師になりたての頃から20年近い付き合いの会員もいます。ありがとうございます。できる限り長くBBクラブを続けていきましょう。


時代は介護へ

2015-01-11 22:23:38 | 産前産後・育児・介護休業

育児介護休業法の大改正の大部分が施行されたのは平成22年6月30日のことです。その際、改正法条文の附則に以下の「検討」の条文がありました。

(検討)第七条  政府は、この法律の施行後五年を経過した場合において、この法律による改正後の規定の施行の状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。

施行の平成22年6月施行後5年が経過するのは今年の夏ということで、育児介護休業法の改正が検討される年になりました。今度はどのような改正なのかと楽しみにしていたところ9日付の日経新聞に以下の記事が載りました。

「介護休業 分割で取りやすく 厚労省、17年にも拡充 」
 厚生労働省は会社員が家族を介護するために取る介護休業制度を拡充する。現在は家族1人につき原則1回に限っている休みを、分割して複数回取得できるようにする。仕事と介護を両立しやすい環境を整え、企業の中核となる40~50歳代の人材が親の介護のために離職するのを防ぐ狙いだ。

 厚労省は今年6月までに介護休業制度の拡充案をまとめる。20116(平成28)年に育児・介護休業法を改正し、17(平成29)年の施行を目指す。

 介護休業は公的な制度で、企業は社員が家族のために休業の取得を申し出た場合、最長93日間まで休みを認める義務がある。休み期間中は賃金の40%相当を雇用保険から給付する。本人の両親、兄弟、祖父母や配偶者の両親などが対象となる。 現在は休業を取得できるのは原則1回だけだ。当初は親が介護を必要とする状態になったときに介護サービスの契約や準備をするために取る休みと想定したためだ。実際は、その後も親が寝たきりになったり認知症になったりと状態が悪化し、再び休む必要が出てくる場合もある。

 1回きりの休みでは対応できず、公的な介護休業ではなく有給休暇でやりくりする人が多い。介護休業制度の利用者は12年度時点で約7万6千人と、介護をしながら働く人の3%にとどまる。

 厚労省は介護休業を2~3回に分けて取ることも認め、会社員が家族の介護のために必要な休みを取りやすくする。企業の雇用管理が複雑になるのを避けるため、1回の取得で休める期間は2週間以上を目安にするとみられる。給付が増えた場合は当面、約6兆円ある雇用保険の積立金でまかなう。雇用保険料率(月給の1%、労使で折半負担)の上昇にはつながらないと厚労省は見ている。

 介護休業を拡充するのは、年間10万人にのぼる介護離職者を少なくする狙いがある。親の介護に当たるのは40~50歳代の人が多い。人口の高齢化に伴い親の介護が必要になる会社員は今後も増える見通しで、企業にとっては中核人材の流出となる。企業では管理職の退社を防ぐのが課題になっている。一部の企業は公的な休業制度に上乗せする独自の休業制度を作った。積水ハウスは休業期間を最長2年間とし、休みを何回でも分けて取れるようにした。「介護施設が不足する25年に会社の中核を担っている世代が50歳前後になるため先手を打った」と説明する。

 現在のところ介護休業は顧問先でもまだまだ取得率は低いと思います。しかし上記にもあるように低い取得率の原因は、介護休業が「通算」して93日まで取得できるのはあくまで異なる要介護状態ごとであり、原則は1要介護状態ごと1回限りの取得となっているための取得しづらさだと思います。そのため年間5日間(2人以上は10日間)の介護休暇が前回の改正では創設されましたが、逆にその程度であれば余っている年休を取得すればよいということになるのかあまり介護休暇が盛んにとられるということもないように思います。

 最近母親の病院に行く際に付き添ったりその他介護というところまではいかないまでもその前段階くらいまでのことをしなくてはならない状況が私自身にも発生しており、育児休業の保育所やベビーシッターならず家事代行サービスを自分ができない部分についてお願いしたりしながら若干綱渡りしているため、これからの時代の「介護」に対する法律がどのよう改正されていくのか非常に興味があります。女性活用ということで子育て中の短時間正社員などの活用と並行して50代の社員の介護中の短時間勤務が増えてくるようだと、各世代通じて本当に多様な働き方が当たり前になるかもしれません。時代は「介護へ」行くような気がします。なるべく情報を蓄積して行こうと思います。

順天堂大学医学部の心臓血管外科教授である天野篤先生の本を毎晩少しずつ楽しみに読んでいます。天野教授は何年か前に天皇陛下の心臓バイパス手術を執刀された方です。天皇の手術を担当された先生ならさぞかしエリート街道まっしぐらの方なのだろうと思いきや、いわゆるエリート街道を歩いてきたということではなく、医局に属さず、いくつもの病院を経験しながらひたすら手術の腕を磨いてきたという方です。そういう先生を東大病院が当時心臓手術については不得手であったため、お願いする形で天皇陛下の手術チームに入ってもらい実現したということのようです。

身近に心臓の手術などを経験して、先生達が説明して下さる内容をしっかり頭に叩き込んで、わからないところは理解できるところまで質問もさせて頂いたりもしたので、本に書かれている手術等の方法の内容までかなり理解ができるのも嬉しいところなのです。それに加えて、読んでいると実に納得できる考えが沢山出て来て自分の仕事とも重ね合わせ考え方が正しいかどうかの振り返りができるような感じがします。

「今日終わった手術は、もう過去のもの。明日行う手術が自分の新しい取り組みと変わる。そう考え直すと、成長にゴールはない。」と教授になっても常に手術に向き合い新たに見えてくるものを追っておられる部分に感激しました。やはり現場を追求していくことがその道を究めるということだなと再確認しました。

読んでいて非常にご自身に厳しい先生だということをひしひしと感じますが、同時に非常に勇気づけられることが多いです。


今後の長時間労働対策について

2015-01-04 22:42:23 | 労務管理

 あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

今回の年末年始は特に年末のお休みが長くとれたと思います。私は、年明けにセミナーの予定が多く入っているため年末は2つのセミナーのレジュメづくりと、読もうと思いながら溜まってしまった資料を読み、大掃除も例年通りの手順で行い、さっぱりとした気分の年末になりました。さらにお正月も元旦以外はお天気も良く気持ち良く過ごすことができましたし、充分休養も取れました。いよいよ2015年の仕事始め。今年も考えることを楽しみながら仕事をしていきたいと思っています。

12月22日に発出された「今後の長時間労働対策について」を見ると、厚生労働省は年明けから長時間労働対策に積極的に取り組むことになりそうです。塩崎厚生労働大臣は過重労働について重点的に取り組む姿勢を見せており、12月1日に施行となるストレスチェックの準備もありそうです。

対策のポイントは以下の通りです。

・ 都道府県労働局に「働き方改革推進本部」を設置し、地方公共団体等の協力を得つつ、各局幹部による企業経営者への働きかけを行うとともに、地域全体における働き方の見直しに向けた気運の醸成に取り組むこと。

・ 時間外労働が月100時間を超える事業場等への監督指導を徹底するとともに、厚生労働省本省がインターネットを監視して収集した、過重労働が疑われる企業等の情報を監督指導等に活用すること。

・ メンタルヘルスの一層の向上に向けてストレスチェック制度の周知等に取り組むこと。

具体的には以下をご覧ください。

http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11201000-Roudoukijunkyoku-Soumuka/0000069503.pdf

箱根駅伝が大好きなのですが、今年は青学が完全優勝ということで事務所がお隣の区画ということだけの縁ではありますがとても嬉しかったです。大学時代、青学の女子体育会テニス部はとても強くてリーグ1部でしたので2部の我々と当たることは殆どなかったのですが、知っている選手もおり身近な存在ではありました。駅伝に青学が出場するようになったときとても羨ましく、少しずつ強くなっていく様子もいつも感じていました。新聞を読むと、監督の目標管理で選手個々に合ったメニューで力をつけるという企業マネジメントを取り入れ、その指導を受けたいと良い選手が集まってくるようになり徐々に強くなってきたということです。

事務所も良い仕事、良いセミナーをしていくことで仕事を頂き、仕事の幅が広がっていくことにより良い人材が集まってくることを実感したここ2、3年でしたので、青学の強くなっていく過程は良くわかります。今年はより適材適所を心掛けスタッフの力を最大限発揮できるような場面を作ることにより、顧問先企業に対する業務や提案を充実させて、さらに良い循環を生み出していこうと思います。

社労士の仕事はとにかくひとつひとつの事案に「こだわり」「調べ」「学び」「蓄積する」これを実務に生かしていく。これが醍醐味だと思います。この一番大切なことをいつもOURSみんなの中心に置いていきたいと思います。

それでは気持ちを新たに良い1年にしましょう!