OURSブログ

社会保険労務士としての日々の業務を行う中で、考えたこと、感じたこと、伝えたいことを綴る代表コラム。

ILOの国際労働基準について

2017-06-25 22:33:21 | 労働法

1年半前から連合会の国際化推進特別委員会の委員を務めさせて頂いており、その関係でILOの代表や事務局の担当者の方にお会いする機会が比較的頻繁にあります。何かの折に「国際労働基準 ILO条約・勧告の手引き」を頂いたのですが、最近少しゆとりができてゆっくり読んでみました。

これまで労働基準法をはじめとして国内の労働法についてはほとんど国内の事情で成立したり改正になったりしている頭しかなかったのですが、国際労働基準としてのILOの条約と勧告があり、この条約の批准がベースになっているということをもっと知っておくべきだと、読んでみて痛感しました。

ILOの条約と勧告は、狭義の国際労働基準を構成しています。

条約は国際的な最低の労働基準を定め、加盟国の批准という手続きによって効果が生じます。条約の発行には、通常2か国の批准が必要とされます。批准国は、条約を実施するために必要な措置を執るという国際的義務を負うことになり、廃棄の手続をとらない限り、たとえILOを脱退しても一定期間はその条約に拘束されることになります。

勧告は、批准を前提とせず拘束力はありません。勧告は、加盟国の事情が相当に異なることを配慮し、各国に適した方法で適用できる国際基準で、各国の法律や労働協約の作成にとって一つの有効な指針として役立つものになります。

条約を批准した場合の義務としては、「その条約の諸規定を自国の法令の中に取り入れるため必要なあらゆる措置をとらなければならないとされています。したがって、もし現行の国内法又は行政措置が条約の規定に抵触する場合は、これを廃止または改正しなければならず、必要に応じて新たに法令を制定したり行政措置を講じなければならないとされています。

ILOの駐日事務所のHPを見ると条約の批准状況がわかります。

 http://www.ilo.org/tokyo/standards/list-of-conventions/lang--ja/index.htm

例えば「2000年の母性保護条約(第183号)」は日本は未批准です。内容を見てみるとおおむね法律でカバーされていると思われますが、「第8条2 女性は、母性休暇の終了時に、原職又は当該休暇の直前と同一の額が支払われる同等の職に復帰する権利を保証される。」とあり、これについては法定化はされていません。しかしこの条約全体を見てみると、労働基準法の定めのどの部分であるかを確認してみたり、これまでの改正を思い出したりと、根拠を確認できて非常に面白いです。

http://www.ilo.org/tokyo/standards/list-of-conventions/WCMS_239185/lang--ja/index.htm

 ちなみに日本の条約批准数は49、一加盟国当たりの平均批准条約数は約43だということです。

週末までに日常的な相談業務や規程の改定の作業を行いながら、10月の育児休業の改正の原稿を順調に仕上げることができましたので、今週末はBBクラブのレジュメに取り掛かりました。ここ数年、原稿やレジュメ作りもだんだん慣れてきたのか、作り上げるのにかなりスピードが出てきたような気がします。人間やはり時間をかけて繰り返していけば習熟してくるということですね。

連合会の委員会では今インドネシアに社労士制度を普及させる活動を熱心にやっていて、私もその末席でジタバタしているのですが、いかんせん英語が話せないのが歯がゆい限りです。それでも懇親会の際などは、通訳・翻訳アプリをスマホ入れて持ち歩き、画面のマイクに日本語で語り掛けると、指定の言語で翻訳して音声を発してくれ、文章も小さく出てくるものを活用しながら少しでも話をすることにしています。なかなか便利です。

昨日実家に久しぶりに行って庭に降りてみたところ色々な木々や花が咲いていて、それほど広い庭ではないのですがそこここの植物を見ているととても癒されるような気がしました。最近自宅もベランダに鉢植えが増えてきて、季節も良いことから朝起きるとすぐにベランダに出てみるのが楽しみになっています。


役員専属自動車運転手の断続的労働について

2017-06-18 23:59:19 | 労働時間

役員専属運転手さんの労働時間は役員が朝出社してから夜のお付き合いが終わり帰宅するまでとかなり長くなることが多いのかと思います。以前はいわゆる「お抱え運転手さん」というのは比較的大きな企業では一般的だったかと思いますが、昨今ハイヤー会社と契約をしていることが多いかと思います。

そもそもお抱え運転手さんというのは手待ち時間が長く実質運転している時間は短いのではないかと想像できるので、労働基準法第41条で定める労働時間・休憩・休日の適用除外の一つである監視断続労働に当たるのではなかったかと調べたところ、通達が出ていました。

まず、労働基準法第41条の労働時間等の適用除外については以下の人たちが該当します。

(労働時間等に関する規定の適用除外)
第41条 この章、第六章及び第六章の二で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。
一 別表第一第六号(農業。林業を除く)又は第七号(水産業)に掲げる事業に従事する者
二 事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者(いわゆる管理監督者)三 監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの

上記にある通り、監視又は断続的労働が適用除外される場合は労働基準監督署長の許可が必要になります。それではその許可はどのような場合に行われるかということになりますが、許可基準も通達で示されています。

労働基準法第条の「断続的労働に従事する者」の許可基準(昭和22年9月13日発基17号、昭和23年4月5日基発535号、昭和63年3月14日基発150号、婦発47号)

 断続的労働に従事する者とは、休憩時間は少ないが手待時間が多い者の意であり、その許可は概ね次の基準によって取り扱うこと。

(一) 修繕係等通常は業務閑散であるが、事故発生に備えて待機するものは許可すること。

(二) 寄宿舎の賄人等については、その者の勤務時間を基礎として作業時間と手待時間折半の程度まで許可すること。ただし、実労働時間の合計が8時間を超えるときは許可すべき限りではない。

(三) 鉄道踏切番等については、1日交通量10往復程度まで許可すること。

(四) その他特に危険な業務に従事する者については許可しないこと。

 上記基準に加えて役員専属自動車運転手についても昭和23年7月20日基収2483号で以下の通り示されています。
(問)
 事業場等の高級職員専用自動車の運転手は勤務時間としては長時間に及ぶこともあるが、その半分以上は詰所において用務の生ずる迄全然仕事がなく待っている場合、これを断続的労働として取扱えないか。
(答)
 設例の如き場合には断続的労働として取扱って差支えない。

役員専属自動車運転手の断続的労働が認められるのは「半分以上は詰所において仕事がなく待っている場合」ということになるでしょうか。

今週は無期転換の準備のため契約社員就業規則を加筆修正したり、7月のセミナーのレジュメの準備をしたり、10月の育児介護休業法の改正の原稿を書くための準備をしたりしていました。無期転換については労働条件を「従前と同一」とした場合であっても、契約社員就業規則など加筆修正する箇所が結構あり、頭を使う必要がありました。また10月の育児休業の改正原稿については、いつも通りまだ政省令や指針が要綱までしか出ていない段階でのとりかかりであるため、労働政策審議会雇用均等分科会の資料等を読み込む必要があり、なかなか掘り起こしが楽しいです。

時間ができそうなので労働政策審議会の傍聴にも行きたいと考えているのですが、これがなかなかあれこれ予定が入ってしまい忙しくもう少し先の計画になりそうです。 


雇用保険の基本手当 受給期間の延長について

2017-06-11 17:50:10 | 労働保険

失業した際に受給できる雇用保険の基本手当の受給期間の延長申請の期限が、平成29年4月1日から変わりました。もともと基本手当の受給期間は、原則として、離職した日の翌日から1年間ですが、その間に病気、けが、妊娠、出産、育児等の理由により引き続き30日以上働くことができなくなったときは、その働くことのできなくなった日数だけ、受給期間を延長することができます。延長できる期間は最長で3年間(本来の受給期間と合計すると受給期間は4年間)となっています。

これまで、この場合手続きとしては、引き続き30日以上職業に就くことができなくなった日の翌日から起算して「1カ月以内」にしなければならないことになっていました。

その手続きが今年の4月1日以降、「延長後の受給期間の最後の日までの間」であれば、申請は可能とされました。なお、住所の管轄するハローワークに申請しますが、代理人又は郵送の申請も認められます。また、延長後の受給期間の最後の日前までに延長申請をしたとしても、以下のリーフレットにある通り延長される受給期間の中でしか基本手当は受給できないので、申請した時点で延長される受給期間が基本手当の日数分より短い場合はその日数分しか受給することはできませんので注意が必要です。

うっかり受給期間の延長申請をし忘れて失業給付をもらうことができなかった方でも、この改正により受給できるようになるかもしれないので確認してみるとよいと思います。

http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000163256.pdf

ところで受給期間の延長はどのような場合認められるかということになりますが、以下の理由が認められます。
イ 妊娠  産前6 週間以内に限らず、本人が、妊娠のために職業に就き得ない旨を申し出た場合。

ロ 出産  出産は妊娠4 か月以上(1 か月は28 日として計算する。4 か月以上というのは85日以上のこと。)の分娩とし、生産、死産、早産を問わない。また、出産は本人の出産に限られます。

ハ 育児  育児とは、3 歳未満の乳幼児の育児とし、社会通念上やむを得ないと認められる理由により親族が3 歳未満の乳幼児を預かり、育児を行う場合にも、受給
期間の延長を認められます。

ニ 疾病又は負傷 なお、傷病手当の支給を受ける期間については受給期間の延長の措置の対象とはなりません。

ホ イからニまでの理由に準ずる理由で管轄安定所長がやむを得ないと認めるもの
(イ) 次の場合はこれに該当します。
a 常時本人の介護を必要とする場合の親族の疾病、負傷若しくは老衰又は障害者の看護内縁の配偶者及びその親若しくは子はここにいう「親族」に該当すると解し、親族の配偶者についてはこれに準じるものと取り扱うことになります。
b 小学校就学の始期に達するまでの子を養育する場合の負傷し、又は病気にかかったその子の看護(aに該当するものを除く。)
c 知的障害者更生施設又は機能回復訓練施設への入所
d 配偶者の海外勤務に本人が同行する場合
e 青年海外協力隊その他公的機関が行う海外技術指導等に応募し、海外へ派遣される場合(派遺前の訓練(研修)を含む。)
ただし、青年海外協力隊以外の公的機関が行う海外技術指導等の中には、ボランティア(自発的に専門的技術や時間、労力を提供する行為)ではなく就職とされるため該当しません。
f eに準ずる公的機関が募集し、実費相当額を超える報酬を得ないで社会に貢献する次に掲げる活動(被災地の支援活動や身体障害者療護施設などでの支援活動等をいい、専ら親族に対する支援となる活動を除く。)を行う場合。
また、逮捕、勾留及び刑の執行や上記dのケースを除いた海外旅行は該当するとは認められません。

雇用保険事務取扱要領に詳しく書かれています。50271(1)受給期間の延長が認められる理由
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000160152.pdf

最近塩分控えめの料理を研究しています。色々とみると食塩が入っているものは多いですし、なかなか大変なのですがちょっとチャレンジ精神を刺激されて減塩のしょうゆをはじめ減塩の調味料を使い、お味噌汁の味噌もぐっと控えてみたりしています。味は、ちょっと物足りない時もありますが意外においしいと思う時もあります。

この頃朝も以前より早く目が覚めるようになりいよいよそういうお年頃かなと思うのですが、まだまだ仕事や勉強がしたいので健康には気を付けようと思っています。


研究することについて

2017-06-05 00:13:45 | 雑感

社労士に限らず日常的な仕事をしていると、一つ気になることがあり調べてみたいと考えたとしても、なかなかそこで立ち止まり時間をかけて調べたり感じたりはできないものだと思います。週末「研究」についてのガイダンスを聞く機会がありなるほどと感じたのですが、確かに日常の相談業務に追われているとなかなか一つのことに対して徹底的に調べることができないもどかしさがあります。ガイダンスでは、裁判官が一つの判決を出すには期限があり、気になることがあったときに研究者のように時間をとることができないという点で研究者は満たされるものがあるということでした。それは社労士の相談業務をやっていても同じようなことが言えるように思いました。

TACの教材を担当していた時は、著者の島中先生が毎年新標準テキスト全11巻それぞれについて膨大な原稿を追加をするため、そのチェックをする中であちこちひっくり返しながら確認する作業を担当させてもらったおかげで非常に力がついたと思います。あの頃は、一つの文章の根拠はどこにあるのか書籍やネットを探し回って2時間くらいあっという間に時間が過ぎていたなどということもしばしばだったのですが、研究というのはそういう一見無為とも見える時間を積み重ねた結果一つの結論ともいえるものに行きつくのかもしれません。

研究というのは、発明といえるものは少し別物なのかもしれませんが、既存の研究水準の確認としての勉強を多く積み上げてその上に少しだけでも良いので独自の視点・知見を付け加えられるのが最終目的ではないかという話を聞いてなるほどと思いました。

社労士としての年月も25年となり、少し本腰を入れて自分の専門になりうるテーマを見つけて研究していきたいと思いました。

先週金曜日は東京都社労士会の総会がありました。2年間副会長として地元の統括支部長と兼務したこともあり非常に忙しかったのですが、とても貴重な経験もさせて頂くことができたと思います。この2年間はこれまで支部で親しくしていた仲間だけでなく東京会の中で接したことがなかった方たちとも委員会活動を通じて親しくなることができたのは本当に財産になりました。今回副会長を退任することになりましたが、これまでお話したことがなかった重鎮の先生がわざわざ声をかけに来て頂いたり励まして頂いたり、支部の後輩たちや一緒にこの2年間苦楽を共にした周りの方たちにまだまだやることはあるから頑張るようにという言葉をかけて頂きましたので、これから自分が経験させてもらったことベースにできることは何なのかを考えていこうと思います。