OURSブログ

社会保険労務士としての日々の業務を行う中で、考えたこと、感じたこと、伝えたいことを綴る代表コラム。

傷病手当金の支給調整について

2013-08-25 22:16:41 | 社会保険

 

今日は社会保険労務士本試験の日でした。講師時代の15年間は朝から講師室に詰め解答づくりに汗をかいていました。講師を卒業してから何年も経つと緊迫感も薄れてきていたところ、今年は事務所の若手男子3人が受験ということで1日なんとなく落ち着かない気分で過ごしていました。

昨年秋から勉強が進めばいくらでも質問に答えようと結構楽しみにしていたのですが最後までほとんど質問もなく本番に突入したので心配ではあります。しかし、自分の今の力を十二分に出し切れればあとは結果を待つのみということをよく講師時代に受講生に言っていたことを思い出します。

試験前最後の出勤日にひとつ質問がありまして、それが傷病手当金と老齢退職年金との調整の話でした。この傷病手当金と老齢退職年金の調整のポイントは、あくまで退職後に継続給付として受けている傷病手当金について老齢退職年金が受けられる場合は支給調整があるということです。要するに退職後も傷病手当金を受けている場合に老齢基礎年金や老齢厚生年金が受けられることになった場合は、休業補償としての傷病手当金を受けずとも年金があるので生活には困らないであろうということで傷病手当金が支給停止されるということです。もし退職していない場合は、老齢厚生年金は在職老齢で支給停止されていることもあり、傷病手当金の受給は保険料を支払っている者の権利でもあるので支給停止になることはない、と自分流に私は解釈しています。

質問されたときにさくっと答えられなかった自分に少しがっかりしましたが、またスタッフの誰かがこれからも勉強することがあれば、今度はたくさん質問してもらって自分の知識も一緒にブラッシュアップして行けるのを楽しみにしようと思いました(まあ全員受かってもらうのが一番良いことは良いのですが、長年受講生の苦労を見ている私としてはそう楽観的にもなれないのが正直なところです)。

以下、傷病手当金が支給停止される場合です。

①出産手当金を受けられるとき

傷病手当金と出産手当金を同時に受けられるときは、出産手当金を優先して支給し、その間、傷病手当金は支給されません。ただし、すでに傷病手当金を受けているときは、その支給額分だけ出産手当金から差し引いて支給されます。

②資格喪失後に老齢退職年金が受けられるとき

資格喪失後に傷病手当金の継続給付を受けている方が老齢(退職)年金を受けているときは、傷病手当金は支給されません。ただし、老齢(退職)年金の額の360分の1が傷病手当金の日額より低いときは、その差額が支給されます。

③障害厚生年金または障害手当金が受けられるとき

傷病手当金を受ける期間が残っていた場合でも、同じ病気やケガで障害厚生年金を受けることになったときは、傷病手当金は支給されません。ただし、障害厚生年金の額(同時に障害基礎年金を受けられるときはその合計額)の360分の1が傷病手当金の日額より低いときは、その差額が支給されます。また、厚生年金保険法による障害手当金が受けられる場合は、傷病手当金の額の合計額が、障害手当金の額に達する日まで傷病手当金は支給されません。

④労災保険の休業補償給付が受けられるとき

労災保険から休業補償給付を受けている期間に、業務外の病気やケガで仕事に就けなくなった場合は、その期間中、傷病手当金は支給されません。ただし、休業補償給付の日額が傷病手当金の日額より低いときは、その差額が支給されます。

 今回受験生を事務所に抱えて後半に気が付いたのは、やはり15年間の講師生活の中で受験に対しての勉強テクニックや考え方などいろいろなものを自分の中でしっかり確立してきていたんだなということ。色々と思いだしてきました。それは今はもうアウトプットすることがなく少しもったいないような気がしましたので、今後少し何かできることがあるか考えてみようと思います。やはり受講生OBが時々言ってくれるように「講師が天職」とまでは思いませんが色々な点で「講師業が大好き!」なんですね。


M字カーブ もうひとつの女性の労働力率

2013-08-10 23:16:04 | 雑感

女性の労働力率をグラフにするとM字カーブを描くことは良く知られていると思います。社会保険労務士の本試験でもよく出題されるので講師時代は講義の中でもよく取り上げていました。

●「平成23年版 働く女性の実情」(概要版より抜粋)では以下の通りに書かれています。

年齢階級別の労働力率は、「25~29歳」(77.2%)と「45~49歳」(75.7%)を左右のピークとし、「35~39歳」を底とするM字型カーブを描いているが、M字型の底の値は0.9ポイント上昇し67.0%となった

●「平成22年版 働く女性の実情」の特集「女性のM字型カーブの解消に向けて」では以下の通りの記載です。

平成2年、12年においては、M字型カーブの左側のピークは20歳~24歳であったが、平成22年には25歳~29歳へ移っている。また、平成2年、12年では30歳~34歳がM字のボトムであったが平成22年は「35歳~39歳」へ移っている。

http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/josei-jitsujo/dl/10d-all.pdf

確かにボトムは20年間で年齢区分が5歳上がり、労働力率の上昇によりカーブの底は浅くなっています。やはり均等法と育介法の力の大きさが伺えるというものです。

しかし、もう一つのピークである「45歳~49歳」(平成2年69.8%→12年70.6%→22年72.7%)は、平成23年版でも変わらずです。50歳~54歳」(平成2年64.5%→12年66.1%→22年70.2%)から下降し始め、55歳~59歳(平成2年52.9%→12年56.7%→22年61.2%)に至っては急降下です。
男性の労働力のカーブを見たことがありますか?60歳で下降が開始するきれいな台形なのです。これは当然定年年齢が60歳だから、とすると今後は65歳が下降の開始になっていくと思われます。
 
以前から女性の労働力率はなぜ60歳を待たずして下降するのか不思議だったのですが、最近周りを見て実感しています。フルタイムで大学を卒業してからずっと働いてきた友人も親の介護や自分の身体の不調などで50代でリタイアーを決心したというケースがとても多いのです。むしろ週2日、3日程度のパートタイマーの友人の方が仕事を辞めていないような気がします。この50代からの女性労働力率のカーブが今後上がっていくことはないのでしょうか。70代でも毎日会合の予定のある支部の先輩社労士を身近で拝見している私としては、自分もその計画で新しいことに取り組んで少しずつでも成長できればと思うのですが。色々な意味で努力が必要なのだと思います。
 
最近本を読む時間がだいぶとれるようになりました。今日も本屋さんに行ってみていたら、40代のおしゃれはこうだ!のような本や、60代を素敵に生きる!というような本がとても沢山出ているのに驚きました。あれこれ見て結局自分の感性で行くしかないなという結論で購入はしませんでしたが(かわりに「不格好経営」南場智子さん」を購入)、各年代別にいかに魅力的に生きるかというところにニーズがあることにある意味勇気づけられました。ちなみに今までの服が似合わないと感じた時に読む本!(ウ~ン実感)というような本もありました。
 
金曜日に事務所のスタッフの受験生3名と顧問先企業の担当者の方をゲストに社労士本試験対策勉強会を1日かけて行いました。島中先生の横断講義がほとんどだったのですが、聞いていてとても懐かしく、「内払は同一人、充当は別人で遺族がらみ」とか「手続きの原則は社会保険5日、雇用保険10日、国民年金14日」など、「今だったらまた違った教え方ができたかも」などとあれこれ考えながら私も受講できて楽しかったです。
 
来週は事務所も夏休みを頂きますのでブログもお休みさせて頂きます。
 

特例子会社について

2013-08-04 23:28:57 | 労務管理

OURSセミナーが2日(金)に終了しました。今回は労働法の動向2013年度前期ということで今年度の法改正がテーマでした。

2013年度は春に労働契約法や高年齢雇用安定法など大きな改正がありましたが、そちらについては前回のOURSセミナーで取り上げており、また春に実務対応もされている会社が多いと考えましたので、今回はメインテーマとして障害者雇用促進法の改正を取り上げました。と言いますのも平成22年に障害者雇用納付金対象企業の拡大等の改正以後あれこれと改正があったのですが、自分の中でも施行日など整理がされておらず気になっていました。そのあたりを整理して障害者雇用について今後企業がどのように取り組んでいくべきなのかを考えてみたいと思っていたからです。内容についてはご興味がある方についてはCDも準備しておりますのでOURS人研のHPからご購入いただくことにして、今回勉強してみて特例子会社がかなり障害者雇用を促進していることを認識しましたので、その点を少しとりあげてみます。

特例子会社は平成21年以降急増したようですが、これは、平成14年に施行された雇用促進法の改定によって、特例子会社の制度の一部が変更され「特例子会社の認定要件の緩和」と「企業グループでの障害者雇用率制度の適用」が可能となったためと考えられています。それにより大企業が特例子会社をより設立しやすくなり、障害者の雇用が促進されたということになります。少し古いですが厚生労働省の以下の資料を見てもそれは顕著で、平成14年度に1,000人以上規模の企業と100人未満の企業の障害者の実雇用率が逆転してその後その差が広がっています(P2)。

http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2012/06/19/1322317_6.pdf

障害者雇用について、大企業ばかりが有利になっていくということについては問題がないわけではないと思いますが、障害者の方が働く場を得られることはやはり重要なことだと思います。そういう意味で法律が改正されることにより大きく世の中は変わっていくのだと実感します。いつも法律改正があってしばらくしてその影響の大きさを実感することが多く、そのたびに法律に関わる仕事をすることができてそういうことを実感できてよかった、と思います。

特例子会社の業務内容はどのようなものなのかをネットで調べましたが、「清掃」「シーツ交換」「クリーニング」「ベーカリー」「名刺印刷」「電話受付」「書類データ化・保管、口座照会」「書類点検・保管」「PC入力」など軽作業が中心のようです。セミナーでは以前よく立ち寄っていたヤマトホールディングスの特例子会社「スワン」というパンとカフェの事業をご紹介しましたが、これからも色々な特例子会社に注目して行こうと思います。

いよいよ8月になりました。社労士試験まで1カ月を切り受験生にとっては精神的に厳しい時期ですね。そういうときこそ「まだあと半月ある」、「1週間ある」とまずは前向きに捉えて、冷静にその期間にできることを考えて、できるだけ繰り返すことを中心にとにかく頭に入れていくということが大切だと思います。それとともに、当日最大限に頭がフル回転できるように自分のペースを徐々に上げていくというようなことも必要です。まずは残り少ない日数を戦略的に。