OURSブログ

社会保険労務士としての日々の業務を行う中で、考えたこと、感じたこと、伝えたいことを綴る代表コラム。

労基法改正 特別条項時間外労働の上限720時間

2018-08-27 00:30:49 | 法改正

9月12日のOURSセミナーに向けて労基法の改正を勉強中なのですが、実務対応を考えると、いくつか細かな点が出てきています。ひとつは特別条項の時間外労働の上限720時間の効果についてです。

大企業にとっては来年(2019年)4月から施行される時間外労働の上限規制については以下の通りとされています。

・原則の時間外労働の上限の法定化(告示で定められている事項の法定化)

1か月45時間・1年360時間(1年単位の変形労働時間制の場合1か月42時間と1年320時間)

・特別条項の上限時間(6か月以内に限る)

①1年間に延長できる時間外労働720時間以内(休日労働含まず)

②1か月に延長できる時間外労働100時間未満(休日労働含む)

③2,3,4,5,6か月の各時間外労働の平均時間80時間以内(休日労働含む)

上記の説明として、これまで③の運用が非常に難しいと考え「時間管理が複雑にならないためには、休日労働を含んで80時間以内に時間外労働等を収めることが良いと思います」と説明していました。しかし、80時間全てを時間外とした場合どうなるかというと、45時間×6か月+80時間×6か月=750時間となってしまうため、①の1年間720時間を超えてしまうことになります。通常休日労働はそれほど頻繁に行われずやはり時間外労働が多く発生しているのではないかと考えます。そうだとすると、時間管理をできるだけシンプルにするには、時間外労働のみを考えた場合、毎月75時間に収めることが良い」(45時間×6か月+75時間×6か月=720時間)ということも説明に加える必要があります。

できるだけ各社員に対して、今月何時間時間外労働が可能なのかということを知らせるシステムを準備することが良いと思います。その際、休日労働を含み80時間という考え方だけではひょっとして時間外労働が年間720時間を超えてしまう可能性もあります。システムを構築する際、年間720時間を十分考慮しながら検討することになると思われます。

今日は本当に暑い一日でした。社労士試験の受験生は本当にお疲れさまでした。資格取得校の解答速報も選択・択一の解答は早くも出たようですが、とにかくまずはゆっくり休んで欲しいと思います。年に1回しかない本試験なので受験生の緊張感は本当に大きいと思います。この日に向けて本当に頑張った!とねぎらってあげたいと思います。


働き方改革法案関連の通達・指針など

2018-08-19 19:19:51 | 法改正

今週末は、9月のOURSセミナーに向けて「労基法改正」と「働き方改革」関連のレジュメを作る予定でいたところ、非常に良いタイミングで通達が出てくれました。

通達と第145回労働政策審議会労働条件分科会の資料にある指針案・政省令案は以下の通りです。

(通達)働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律について(平成30.7.6職発0706第2号、雇均発0706第1号)https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T180813K0010.pdf

(関連法案)働き方改革関連法案などについては以下のサイトをご覧ください。https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000148322.html

第145回労働政策審議会労働条件分科会(平成30.8.9開催)資料(とても有用です)

https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/0000024580_00003.html

「労働時間に関する制度見直し」についてはかなり詳しい資料となっており、年次有給休暇についても基準日制をとっている場合の「使用者の時季指定年休5日付与」について細かく述べられています。36協定の新書式案も載っており、詳しい内容の上、政省令案も出ているの時間をかけてレジュメの更新ができる状況になってきました。

今回は取り急ぎ情報提供ということでお知らせしておきます。

夏休みはフィンランドのヘルシンキまで行ってきました。昔から「アラビア社」の陶器製品が好きで憧れの国であり、今回は思い切って3泊5日で行きました。街中トラムや地下鉄が走っており4日間使えるICカードを使えば乗り放題で色々なところに行くことができました。アラビア社の工場では古い型の食器などを購入することができました。

福祉の国ということをイメージしていたのですが、フィンランドも高齢化が進んでいる様子で高齢者が多く少し寂しそうな様子であったので、社会保障はどのような状況なのかと調べたところ、1990年代の経済不況で社会保障サービスは切下げられている状況のようです。日本と同様高齢化により社会保障についての状況は厳しいようです。

2017年から2年間「ベーシックインカム」を一定の範囲で試行的に実施したようなのですが、2018年末で終了し、本格的な導入とはいかなかったようです。大学院でベーシックインカムを勉強しましたので、なぜ試行だけで終わってしまうのか興味深いところで今後も注目していこうと思います。やはり実際に行ってみる色々と思うところがあります。

トラム   最初のムーミン


働き方改革のヒント①生産性向上

2018-08-05 21:30:15 | 法改正

育児介護休業法の書籍を事務所のスタッフと出すことができることになり、ここ数日はその仕事にかかり切っています。その次に控えているのが9月のOURSセミナーを皮切りにたぶん何度かセミナーでお話しすることになるであろう『労基法改正と働き方改革』かなと考えてその準備をお盆明けに行おうと思っています。思いついた時にこちらもシリーズでブログで取り上げていこうと思います。

本当は労基法改正の政省令が出てくれるとより細かな点がわかるので実務対応も考えられるのですが、どうも夏に出てくる感じがしないため、色々とアンテナを張って資料集めをする必要がありそうです。お盆は旅行に行く予定なのでその空き時間に「働き方改革」の本を色々読んでみようと4冊購入してみました。

連合会の働き方改革実務会議の委員になったこともあり、最近「働き方改革」のことを考えていることが多いのですが、気になるのが求められている「生産性の向上」のことです。

生産性の向上については、無駄に手をかけないなどが大事といわれることが多いのですが、細部までの丁寧さは日本人の良さではなかったのか?という疑問が付いて回るのです。

日本人の丁寧さを残しつつ生産性を上げるにはどうしたらよいかという答えの一つはアウトソースの活用ではないかと考えます。「餅は餅屋」だと思うのです。日本の社会は色々な意味で成熟したので全ての点で複雑になっています。仕事も昔より複雑になってきており時間がかかるような気がします。

日本のきめ細かな仕事を維持するためにはどうしても生産性が悪くなってしまっているのではないかと考えるのです。それはそんなに恥じるべきことではないのではないかということがいつも頭にあります。その解決策はアウトソーシングではないかということなのです。

総合的な判断ができる人は確かに必要なのですが、日本人の中でその適正を持った人の割合はそれほど多くないような気がします。むしろ専門職に向いている人が多いのではないかと思われます。企業は本業に注力するため業種を特化した分社化をして、専門性が高いものについては下請けに出したりアウトソーシングをする時代です。これをもっと進めることが肝要ではないかということです。もっと細かく専門家にアウトソースしていくことで生産性はぐっと上がってくるのではないかという気がします。

事務所の中もある程度スタッフに専門性を持ってもらおうと考えて仕事を担当してもらっています。そうすると調べることの範囲が限られその代わり深く勉強して考えられるのではないかと思うのです。ただあまり分業化してしまったり専門性に特化することで仕事が面白くなくなってしまうのは避けたいところです。その点が難しいところではあります。

いよいよ今週末からお盆休みに入ります。本試験を控えている場合大事な時期になってきます。最後の2週間と1週間はとにかく焦らず一つでも知識が定着するために繰り返す大事な時期です。受験する皆さんは頑張って欲しいと思います。

私はというと夏休みに読もうと思っていた大学院用の書籍が10冊くらいあるのですが、今のところ仕事に追われて手がついていません。でもこれも焦らずお盆明け「働き方改革のレジュメ」ができたら、9月下旬までの時間を利用してコツコツ取り組んでいこうと思っています。

来週は旅行に行きますのでブログはお休みします。皆様の夏休みが充実したものになりますように。