OURSブログ

社会保険労務士としての日々の業務を行う中で、考えたこと、感じたこと、伝えたいことを綴る代表コラム。

妊娠中の傷病手当金

2013-03-25 00:50:46 | 社会保険

妊娠中につわり(妊娠悪阻)や切迫流産のため休業が必要と医師の診断があった場合に、傷病手当金が受けられるかというご質問を受けました。答えは「受けられる」です。

傷病手当金とは、健康保険の被保険者が業務外の病気やケガのため休業し、給与等が支払われない期間について、生活を保障するための給付ですが以下の4つの要件を満たす必要があります。
1. 業務外の病気やケガで療養中の場合
2. 療養のため仕事につくことができなかった場合(労務不能)
(入院・通院を問わず、医師等による労務不能の証明が必要となります)
3. 休んでいる期間に対し、会社から給与等の支払いがないか、または支払われた金額が傷病手当金より少ない場合
4. 4 日以上仕事を休んだ場合(療養のため仕事を休み始めた日から、連続した3 日間は待期期間となり、4 日目から支給の対象になります)

この傷病手当金の受給条件を満たしていれば、理由が妊娠を理由にした症状であっても傷病手当金が支給されるということになります。

なお、支給額は、1 日につき、標準報酬日額の3分の2に相当する額です。

傷病手当金と出産手当金は、ともに生活保障のための保険給付なので、これらの保険給付が競合するときは、傷病手当金に優先して出産手当金が支給されます。

もし出産手当金の対象となる産前42日(多胎妊娠であれば98日)より前に、医師から切迫流産などで安静が必要ということで休業を指示されて診断書が出た場合は、その期間については傷病手当金を受けられます。そのままお産まで安静となれば、出産手当金を引き続きうけて、出産については出産育児一時金を受けるということになります。

社労士講座で講義をしていた時に、傷病手当金と出産手当金が競合した場合は出産手当金が優先支給という話は毎年していましたが、ご質問を受けて具体的なイメージができました。やはり質問はお宝ですね。

土曜日、今年初めて山に登りました。頂上でお湯を沸かしてコーヒーを飲んだら美味しかったです。いつも登っている時は「もう山に登りたいと思わなくなるかも」と思うのですが、翌日登山靴を陰干ししたりしている時はまた行きたいなあと思います。


改正高年法 退職・解雇事由に該当する場合

2013-03-17 23:32:46 | 法改正

先週で昨年11月以降いくつかご依頼を頂いていた「改正労契法・高年法」のセミナー講師の仕事が終了して、ほっとしたところです。また顧問先企業様の労使協定の締結・再雇用規程の整備も着々と進んでいます。その中で一番理解が進んでいない部分が、「就業規則の退職または解雇に規定する事由を、継続雇用しない事由として定めることができる」という部分のような気がします。

厚生労働省から出ている改正高年齢者雇用安定法のQ&Aでは以下の通り示されています(…以降は加筆)。

①事業主が高年齢者雇用確保措置として継続雇用制度を導入する場合には、希望者全員を対象とするものにしなければなりませんので、事業主が制度を運用する上で、労働者の意思が確認されることになると考えられます。・・・・65歳までの雇用確保について継続雇用制度を導入する場合は、原則として希望者全員を継続雇用の対象とするということになります。

②ただし、改正高年齢者雇用安定法が施行されるまで(平成25年3月31日)に労使協定により継続雇用制度の対象者を限定する基準を定めていた事業主については、経過措置として、老齢厚生年金の報酬比例部分の支給開始年齢以上の年齢の者について継続雇用制度の対象者を限定する基準を定めることが認められています。・・・・経過措置により対象者を限定する基準を定めることが一定年齢以後について認められます。

なお、心身の故障のため業務に堪えられないと認められること、勤務状況が著しく不良で引き続き従業員としての職責を果たし得ないこと等就業規則に定める解雇事由又は退職事由(年齢に係るものを除く。)に該当する場合には、継続雇用しないことができます。ただし、継続雇用しないことについては、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であることが求められると考えられることに留意が必要です。・・・基準とは別に、就業規則の退職または解雇事由に該当する場合には継続雇用しないことが可能であり、この退職または解雇事由を継続雇用しない事由として別途定めることも可能です。

 この、「心身の故障のため業務に堪えられないと認められること、勤務状況が著しく不良で引き続き従業員としての職責を果たし得ないこと等」はあくまで就業規則に定める退職または解雇事由に定めているものである必要があります。再雇用規程の改定などをチェックしていると、上記のQ&Aの言い回しをそのまま持ってきてしまっている改定案が多いのですが、これはあくまでも各企業の就業規則に定められた言い回しを持って来なければおかしなことになります。ちなみにOURSの再雇用規程のモデルについては、解雇事由の1号に「従業員が身体又は精神の障害により、業務に耐えられないと認められる場合」がありますので、この言い回しを上記赤字部分に持ってきてあります。

④解雇事由又は退職事由と別の事由を追加することは、継続雇用しない特別な事由を設けることになるため、認められません。…退職または解雇事由以外の事由を追加して継続雇用しない事由として定めることはできません。もし追加したい場合は、退職または解雇事由を改定した上で継続雇用しない事由とする必要があります。

改正高年齢者雇用安定法Q&A

http://www.mhlw.go.jp/general/seido/anteikyoku/kourei2/qa/

山菜の様子が気になり小淵沢に週末行ってきました。家の周りに少しふきのとうが芽を出していました。満天の星も見てリフレッシュになりました。


受給資格期間短縮の特例

2013-03-09 21:01:31 | 年金

老齢年金を受給するためには、簡単に言ってしまえば公的年金制度の加入期間が25年以上必要です。しかし、25年の受給資格期間は昭和60年の改正の際に附則に経過措置として短縮の特例が定められ、該当すれば25年の受給資格期間に不足しても老齢基礎年金の受給資格を満たすことになりました。この受給資格期間短縮の特例は、3つの種類があります。

①公的年金制度加入期間の特例→これは国民年金・厚生年金・共済組合等の加入期間を合算して21年~24年で受給資格が得られます。対象者は、大正15年4月2日~昭和5年4月1日生まれの方です。

②被用者年金制度加入期間の特例→厚生年金・共済組合等の期間を合算して20年~24年で受給資格期間が得られます。対象者は、昭和27年4月1日以前生まれ~昭和31年4月1日生まれの方です。

③厚生年金保険の中高齢の特例→厚生年金保険の被保険者期間が15年~19年で受給資格期間が得られます。ただし、男子は40歳以上、女子は35歳以上の期間に限ります。対象は昭和22年4月1日以前生まれ~昭和26年4月1日生まれの方です。

社労士であるにもかかわらず、年金の仕事をすることはあまりないのですが、それでもたまには裁定請求や年金相談に乗らせていただくことがあります。また顧問先の定年退職者向け説明会などで年金の話をすることもあるのですが、これまで受給資格期間短縮の特例に該当するケースはほんの少しか遭遇しませんでした。ましてや②の被用者年金制度加入期間の特例についてはこれまで実績ゼロでした。

しかし今回初めて巡り会えました。顧問先の昭和28年4月2日以後生まれの方が今年度60歳になります。その方は今年60歳になる女性です。厚生年金の被保険者期間が20年で60歳の定年を迎え、厚生年金以外の期間に保険料納付済期間はないので今のところ受給資格が得られていないそうです。しかし、あと2年で受給資格期間短縮の特例の22年を満たすため(昭和28年4月2日~昭和29年4月1日生まれは短縮特例期間は22年です)、定年後の継続雇用で働くことにしたという話でした。

②の被用者年金制度加入期間の特例は、昭和27年4月1日以前生まれも該当するのですが今までは話を聞いたことがなかったので「オヤ、珍しいなあ」と思いました。それで考えをめぐらせてみたのですが、私も平成5年に開業して約21年、個人事務所時代は厚生年金の被保険者になれなかったのでそこまで厚生年金の被保険者期間はないのですが、もしあの時企業に再就職していたらと考えると、あり得るなあと思いました。

均等法が施行されたのが昭和61年、世間ではコース別雇用管理が花盛りで、女性の総合職が誕生し、これからは女性も社会で活躍できる時代が来たという雰囲気は確かにありました。今は考えられないことですが女性は残業を制限されていました(女性の年間残業上限150時間、深夜 ・休日労働の禁止を定めた労働基準法の「女子保護」規定の撤廃は平成11年4月1日施行)。その方は平成6年ごろ再就職したとすればちょうど現時点で20年になります。約20年前の世の中の状況を考えると、今後数年はこの受給資格期間短縮の特例②の該当の女性はかなりの数が出るのではないかという気がします。

そういえば開業した頃は、これからは女性がバリバリ働く時代が来る、とイメージして自分も頑張ろうと思っていました。あれから20年過ぎてやはりそういう世の中になったような、思ったほどでもないような・・・。しかし自分自身ここまで働いているとは思わなかったというのが正直な感想です。でも仕事は面白い!ですから、良かったと思っています。

 


フレックスタイム制の場合の休日の振替について

2013-03-03 21:23:14 | 労務管理

※一部正確ではない記述がありましたので当初の内容を若干修正してあります。申し訳ありませんでした。

フレックスタイム制をとっている場合に休日の振替を行うことはできるかというご質問を受けました。フレックスタイム制の場合において休日の振替を行うことは可能であると考えます。

フレックスの場合は、年次有給休暇の時間数をカウントするために「1日の標準労働時間」を定めることになります。しかしこれはあくまで年次有給休暇を取得した際に労働したとカウントする時間数を明確にするためであり、もちろん毎日その時間数を労働しなければならないわけではありません。フレックスタイムはあくまでも始業・終業の時刻を本人に委ね、清算期間ごとに定められた総労働時間を労働することになる制度です。

フレックスタイムの場合、コアタイムに遅刻した場合遅刻した時間数の欠勤控除はできないことになっています。これはフレックスタイムが1日の労働時間の考え方を持たないからです。それではどうするかというと、コアタイムの遅刻については人事考課など査定の対象にすることにより初めて賃金の減額等が可能になるということになります。コアタイムの開始時刻はあくまで始業時刻ではなく、会議などで社内の皆がそろうために便宜上設けられた労働しなければならない時間帯の開始時刻ということなのだと思います。

上記から考えると、フレックスタイムの場合の振替休日は、コアタイムの時間数以上労働した場合に限るということにしておくのがよいと思います。フレックスタイム制をとっていない場合の振替休日の場合も、8時間の所定労働時間の会社で日曜日に4時間しか出勤しなくても振替休日ということで平日1日休むことになるのは不公平にならないかというご質問を受けることがあります。それはその通りと思いますので、日曜日に8時間以上出勤するときのみ休日の振替ができると規定することもあります。また8時間では厳しいと考え例えば6時間以上出勤するときに休日の振替ができると決める場合もあります。その程度が限度かなという気がします。それ以上短い時間数を休日と振替えるのは不合理な気がします。確かにちょこっと休日出勤して色々と片づけたいというのは希望としてあると思います。その場合は振替休日にはせずにその時間分を休日出勤の割増賃金を支払うのが妥当だと思います。

少し花粉が飛んでいる気配を感じます。週末耳鼻科に行って鼻用スプレーと点眼薬をもらってきました。花粉症は軽い方だとは思いますが、鼻が苦しくなるとのどがやられるので困りものです。社労士の仕事はセミナーだけではなく相談業務もそうですが、喉をやられがちで同業者にも悩んでいる方が結構います。私の愛用しているのは漢方薬の「響声破笛丸」で、これを飲んで喉がふわっとした感じで寝るととても良い感じです。良くお勧めしています。