OURSブログ

社会保険労務士としての日々の業務を行う中で、考えたこと、感じたこと、伝えたいことを綴る代表コラム。

妊娠中に定められている労働基準法の保護規定

2013-11-24 00:09:17 | 労務管理

 

関連団体からご依頼頂いて、だいたい毎週1回程度で労働者からの妊娠・出産・育児に関する労働相談の回答を作成しています。スタートして2年ほどたっているのではないかと思いますが、驚くほど会社が法律を知らないのではというケースが多いのです。社労士に労務相談をしようと考えられる企業はもちろん意識の高い企業だと思います。何かうまい話がないかと相談されるケースは以前はありましたが、今はとてもまれになりました。しかし、まだまだそのような意識の高い企業は少ないのかもしれないと思います。企業を守るためにも法律は知っておかないといけません。もっと社労士としてそういう企業に対して法律を知ってもらう、又どのように法律を守るかを一緒に考えるということをして行かなければならないと思います。

先日医療関係に勤務の労働者の質問で、変形労働時間制のもと毎日10時間以上妊娠中であるにもかかわらず働いているとのこと。希望をすれば勤務時間の短縮が受けられるのか?とのご質問がありました。このケースの場合は、妊娠中の女性労働者の「請求があった場合」に変形労働時間制で働かせることはできないことになっていますので、違法というわけではありません。この質問の女性労働者が変形労働時間制のもとであっても法定労働時間の範囲内で働きたいと会社に請求することで、12時間労働は避けることができる(12時間から8時間に勤務時間を短縮してもらうことができるともいえます)ことになります。労働者が勉強して「請求」するか、企業の方でそのような場合にはどんな権利があるかを労働者に話しておくということがなければ、労基法の保護規定は効果を発揮しないということになります。

また、妊娠中の勤務時間の短縮という義務規定が労働基準法やそれ以外の法律に定められているわけではありません。育介法には子が3歳未満の場合の短時間勤務が義務規定とされていますが、それと混同してしまっているのかもしれません。色々な法律が色々な規定を持っているのでなかなか一般的にはわかりにくいかもしれませんね。

念のため、労働基準法における母性保護規定に何があるかあげておきます(このほか男女雇用機会均等法にも妊娠中の保護規定が定められています)。

(1)産前・産後休業(法第65条第1項及び第2項)
産前6週間(多胎妊娠の場合は14週間)<いずれも女性が請求した場合に限ります>
産後は8週間
女性を就業させることはできません。

(ただし、産後6週間を経過後に、女性本人が請求し、医師が支障ないと認めた業務については、就業させることはさしつかえありません。)

(2)妊婦の軽易業務転換(法第65条第3項)
妊娠中の女性が請求した場合には、他の軽易な業務に転換させなければなりません。

(3)妊産婦等の危険有害業務の就業制限(法第64条の3)
妊産婦等を妊娠、出産、哺育等に有害な業務に就かせることはできません。

(4)妊産婦に対する変形労働時間制の適用制限(法第66条第1項)
変形労働時間制がとられる場合であっても、妊産婦が請求した場合には、1日及び1週間の法定時間を超えて労働させることはできません。

(5)妊産婦の時間外労働、休日労働、深夜業の制限(法第66条第2項及び第3項)
妊産婦が請求した場合には、時間外労働、休日労働、又は深夜業をさせることはできません。

(6)育児時間(法第67条)
生後満1年に達しない生児を育てる女性は、1日2回各々少なくとも30分の育児時間を請求することができます。

上記の規定に違反した者は、6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処せられると規定されています。

8月のお盆が終わってから、本当に毎日仕事と支部の事業で忙しくここまであっという間に来てしまいました。もうすぐ1年が終わろうとしていることに驚いてしまいます。明日は東京都社労士会の講演旅行で鬼怒川に行き翌日山に登って来る予定ですが、それが終わるとやっとだいたいの事業が終了し年末までのしばらくの間は、仕事と支部の残った課題に取り組めるかなと思います。また1月になると各士業の新年会が毎日のようにありますので、来週から年末までである程度きれいに色々なことが片付けられるとよいなあと思っています。この忙しさを考えると、ただただ健康な身体に産んでくれた両親に感謝です。


開業記28 組織力について

2013-11-17 23:56:32 | 開業記

開業記28 組織力について


開業社労士として登録した時に20年後にまさかここまで事務所が大きくなっているとは正直考えていませんでした。法人化をしたこと、それにより大きな企業からのご依頼を頂いたこと、それによりスタッフの数が必要になったことに尽きるのですが、事務所がしっかりしてくるとそれに伴い人材も増えてきたと思います。2年前から取り組んできている大企業からの受託も、当初は私と手伝ってくれた受講生OBで手さぐりで立ち上げたのですが、今は更に派生した新規の立ち上げをスタッフが何人かで担当してくれているので、私はとても楽になりました。


ある程度の規模になったら、代表社員のすることは次の一手は何かを考えて資金面だけでなく事務所の体制等必要な手を打っていくこと、まんべんなく法人内を見渡しながら仕事の偏りや担当の状況を把握し調整をしていくこと、顧問先企業の状況をそれぞれポイントを押さえながら掴んでいくこと、スタッフの得手不得手を見極めながら仕事の中で必要なキャリアを積んでもらい人材として伸びて行ってもらうこと、などと考えながらやっています。


今法人組織として目指そうとしているのは、とにかく仕組みづくりです。前にもブログに書きましたが人数が少ない時に人事制度についてはプロジェクト制を引こうとミーティングで私が提案したところスタッフの中で「失笑」という雰囲気がありましたが(プロジェクトを組むのはこのメンバーしかいないのだからほぼ全員でしょう、ということだと思います)、今は当然のようにプロジェクトを組んで取り組むようになりました。そういう意味ではまずは私が具体的なイメージを持つ必要があり、それをうまくスタッフに伝えることも大切なのだと思います。組織力の重要性については私の中でのイメージがやっとできたところだということもあり、まだまだ伝え方が足りないかなと思っていますが、これは今後OURSにとっては非常に大事になってくると思います。


例えばミスについてはもちろん一人一人が細心の注意を払い手続等を行っていく必要がありますが、やはり人のやることですから絶対にミスが発生しないということはなかなか難しいことなのだと思います。また特に新しい事業を手探りでやっていく中でミスが発生することは可能性としては高いと思います。


その時に、何が一番大事かというといかに「ミスをしない仕組みを作れるか」というところだと考えています。その時に「もう二度とミスはしないようにしよう」という気持ちは大切です。しかし、そのような個人の問題よりもっと大事なことは、組織としてどのようなチェック体制を作れば、チェックポイントをいかに洗い出せばミスがなくなるのかまたはどのような作業工程にすればミスが出ないようにできるのか、というところを徹底的に考えて実行していくことだと思います。その分析と実行ができれば、組織として手続業務を行っていく上での安定感が出ると思います。誰でもミスなく作業ができるというところを持てるようになれば、急なお休みの穴埋めも問題ないはずですし、新たに担当したスタッフもその業務を行うことがすぐに可能であるということになるのだと思います。それこそが組織力だといえます。


個人個人の頑張りは確かに必要なのですが、組織で仕事をしていく以上個人の頑張りに頼るのではなく、組織としての業務フローやチェック体制をきちんと持てることが目指すところだと思っています。労務相談の業務については、毎週事務所内でミーティングをして情報共有を図り、人事管理研究所というブレーンを持ち、研修も積極的に参加してもらう等勉強の機会はできるだけ持ってもらっていますので事務所のスタッフのレベルは自信があります。法人組織として、手続も組織力を高めるやり方を意識していき、その上でさらに臨機応変の対応も可能になるのが目指すところです。


最近、政治家などに「二代目」がなぜ多いのか少しわかってきました。社労士も二代目が多いのですが、やはり基盤があったところからのスタートはとても大きいような気がします。継続は力なりと頑張ってみても、一代限りでは急成長しなければなりません。急成長というのはいろいろな企業のご相談を受けていても思うのですが、やはりどこかでひずみが出ていることが多いです。そのひずみの修正が大変なことがあります。その点二代目は先代からじっくり時間をかけて歩いてきた安定感があります。やはり人脈も蓄積・経験も簡単には作り上げることはできませんから、それらを継承できるというのは大きなことなのだと思います。良い回転はさらに良い回転を生んでいきます。そこまで持っていくのには時間と労力とお金が必要だと思います。既に良い回転をしているところからさらに良い回転を生み出して大きな回転にすることができるというのが二代目の役割であり醍醐味なのだと思います。



戦略特区 有期雇用の特例について

2013-11-11 01:07:02 | 労務管理

国家戦略特区の話は雇用関係の規制緩和についてなので話題にも出ますし、気になるのですが分かりにくいように思います。

まず、国家戦略特区とは、地域を絞って雇用や農業分野を含む岩盤規制を緩め、経済を活性化する構想で、外国企業の誘致などに不都合な規制を外すねらいがあるものとされています。当初案では、(1)解雇ルール(2)労働時間法制(3)有期雇用制度が見直し対象とされていました。しかし、10月18日「国家戦略特区における規制改革事項等の検討方針」が出されて、以下のように臨時国会に提出する特区関連法案に盛り込む内容が決まったようです。

(1)解雇ルールについては、労働側と企業側がともに反対しており、政府が雇用契約の指針をつくり、企業に助言するという妥協案となりました。

これは「雇用労働相談センター(仮称)を設置することで新記事開業直後の企業やグローバル企業等が日本の雇用ルールを的確に理解し、予見性を高めることにより、紛争を生じることなく事業展開することが容易になるためとされています。企業からの要請に応じて雇用管理や労働契約事項が、裁判例の分析・類型化による「雇用ガイドライン」に沿っているかどうかなど、具体的事例に即した相談、助言サービスを事前段階から実施するものとされています。

(2)週40時間が上限という労働時間の規制を適用しない「労働時間法制(ホワイトカラー・エグゼンプション)」については、不当な残業を強いられるなどと厚労省が強く反発したこともあり、見送られました。

(3)非正規社員の「有期契約」については、専門職に限り、全国一律で5年から10年に延長する案を政府は出してきました。

検討方針では以下のように書かれています。

・例えば、これからオリンピックまでのプロジェクトを実施する企業が、7年間限定で更新する代わりに無期転換権を発生させることなく高い待遇を提示し優秀な人材を集めることは、現行制度上はできない。

・したがって、新規開業直後の企業やグローバル企業をはじめとする企業等の中で重要かつ時限的な事業に従事している有期労働者であって、「高度な専門的知識等を有している者」で「比較的高収入を得ている者」などを対象に、無期転換申込権発生までの期間の在り方、その際に労働契約が適切に行われるための必要な措置等について、全国規模の規制改革として労働政策審議会において早急に検討を行い、その結果を踏まえ、平成26年通常国会に所要の法案を提出する。

「高度な専門的知識等を有している者+高収入を得ている者」に限定して4月の労契法改正により導入された無期転換の申し込み権発生が、5年ではなく10年とするということなのかと思いますが、どうもオリンピックまでのプロジェクトに高度な専門的知識等を有する者を非正規労働者と表現している新聞もあり、ピンと来ない気がします。今後範囲が広がることになる可能性もあるというようなことを書いている新聞もあるようです。労働基準法の労働契約期間の上限のことにも見えなくもなく、今後の展開を見て勉強していく必要がありそうです。

金曜日はOURSセミナーでした。内容は退職・解雇・雇止めという重要案件だったからと思いますが、今回は60人の方の申し込みがありとても有難かったです。私の講義内容としては今回は60点くらいのできで、不満が残りました。もう少しご参加いただいた方を惹きつける話ができればよかったのですが、インプットの際の熟成不足という気がしました。もっと頭の中でいっぱいにテーマを考えておかないとダメだったと反省です。しかしアンケートはまたもあたたかいメッセージばかり。本当にありがたく感謝の気持ちでいっぱいになります。まだまだだなあと実感し、もう少し良い講義ができることをじっくり目指そうと思います。未完成と感じることこそ成長の糧と自分を慰めた週末でした。


労働契約の終了 希望退職

2013-11-04 20:19:47 | 労働保険
今週末、11月8日(金)に行われるOURSセミナーのテーマは「労働契約の終了」です。
労務管理セミナーということで「採用から労働契約の終了」まで、法改正セミナーをはさみ約3年間7回にわたり開催してきました。
 
今回は退職や解雇、雇い止め・定年とトラブルになりやすいテーマを取り扱うほか、4月の労働契約法改正で加わった無期転換や雇止め法理における雇止めなどの具体的な規定の方法なども取り上げる予定です。労働契約法改正は、まだ実務でそれほど多くのケースを取り扱っているわけではないのですが、少しずつ契約社員就業規則を見直したり、社内セミナーで講師をさせて頂いたので、イメージが少しずつできてきた感じがします。
 
今回のセミナーの中では、例えば早期退職優遇制度と希望退職の違いなども整理します。人件費を削減するために高い給与が支給されている50歳以上の社員に退職金の上積みなどの優遇措置を提示して退職者を募るある程度余裕がある中での早期退職優遇制度に対して、希望退職は経営状態が厳しく人員削減を目的としたものという位置づけになります。この希望退職の離職した場合に受ける基本手当の資格は、特定受給資格者になります。
 
特定受給資格者の範囲では以下のように整理されています。
(10) 事業主から直接若しくは間接に退職するよう勧奨を受けたことにより離職した者(従来から恒常的に設けられている 「早期退職優遇制度」等に応募して離職した場合は、 これに該当しない。)
 
具体的には、
①企業整備における人員整理等に伴う退職勧奨。なお退職勧奨が事業主(又は人事担当者)より行われ離職した場合が該当

②希望退職募集(希望退職募集の名称を問わず、人員整理を目的とし、措置が導入された時期が離職者の離職前1年以内であり、かつ、当該希望退職の募集期間が3か月以内であるものに限る)への応募に伴い離職した場合が該当

人員整理を目的として、募集期間が限定されていることがポイントになります。

そんな感じで、退職関連の色々な考え方を整理してセミナー準備をしてみようと思います。

11月2日・3日は渋谷くみん祭でした。今年も社会保険労務士会渋谷支部ではブースを出して、労働相談・年金相談・骨密度測定を行いました。昨年に10年ぶりにブースを出してだいたい要領分かっていたつもりだったのですが、今年も骨密度測定は大盛況だったため、並んでいただく方法とか測定時間帯の決め方など色々と上手く行かない点もありました。長い待ち時間でも私が「すみません~。不慣れなもんですから」などとお声をかけると、「一度測定してみたかったので待ってるわ」などお年寄りの方が皆さんとても優しく(可愛らしく)、こちらが楽しい気持ちにさせられました。

2日間ほとんど立ちづめだったので疲れてしまうかも、と思っていましたが今日はOURSセミナーの準備もある程度終わらせることができたので、また明日から気持ちを新たに頑張れそうです。