OURSブログ

社会保険労務士としての日々の業務を行う中で、考えたこと、感じたこと、伝えたいことを綴る代表コラム。

特別加入申請書内容の重要性について

2019-05-26 21:57:12 | 労働保険

特別加入制度は、労働基準法の適用労働者に準じて保護するにふさわしい者に対し労災保険を適用しようとするものです。その場合の業務上外の認定基準は、以下の通達に定められています。

特別加入者の業務上外の認定基準について(昭和50.11.14基発671号、平成14.3.29基発0329008、)

特別加入に関係する裁判例を調べているのですがこの業務上外の認定はかなり厳しいものがあります。業務上と認定されるためには特別加入申請書に記載された内容が基礎となりますので、記載内容については慎重に記載する必要があります。実務では意外に簡単に記載していることが多いと思われますが、社労士としてはその点のアドバイスはきちんとしていく必要があります。

まず、中小事業主等における特別加入の場合、申請書別紙の業務の内容欄に記載された所定労働時間(休憩時間を含むものとする。)内において、事業主の立場において行う事業主本来の業務を除いた特別加入の申請に係る事業のためにする行為及びこれに直接附帯する行為(生理的行為、反射的行為、準備・後始末行為、必要行為、合理的行為及び緊急業務行為をいう。)を行う場合が前提となります。

その上で、労働していた時間について以下の要件が定められています。

1)特別加入申請書に記載した労働者の所定労働時間内において業務行為を行っている場合は、労働者を伴っていたか否かにかかわりなく、業務遂行性を認めるものである。

2)労働者の時間外労働又は休日労働に応じて就業する場合。

3)1)又は2)に接続して行われる業務(準備・後始末行為を含む。)を特別加入者のみ行う場合。

申請書別紙の記載内容の問題ではないですが、3)の「接続して行われる業務」についてはかなり厳しく、中小事業主が従業員の出社前に準備作業をしている最中に誤った機械操作をして死亡した事故については、始業時刻には取引先への訪問事業主としての業務)を予定していたということで「接続」の要件を満たさず、業務上と認定されなかったという裁判例があります(「所沢労基署長〈田中製作所〉事件、浦和地判昭58.4.20」)

申請書に記載した所定労働時間等から間隔があくと業務上の認定がなされない場合があることは、中小事業主等の特別加入申請をする際には説明しておく必要があると思います。

また、業務内容についても漏れのないように丁寧に記載することも大切ですので、そういう意味で申請書は慎重に作成する必要があります。

先週は支部で「同一労働同一賃金」の研修を受講しました。そろそろ夏のBBクラブやOURSセミナーのためにも少しずつ整理をして何をすべきか特定していきたいところですが、もう少し勉強してみたいところです。

法改正に対しての勉強については、TACの講師時代の一般常識セミナーの準備と同じような方法で行っています。一般常識セミナーの準備では数カ月間あれこれと資料を集めておき、頭の中で少しずつ熟成しておいて、集中して講義内容を考える、ということをしていました。いまはパワーポイントがありますので準備もしやすくなりましたので、整理していく楽しみもないわけではありません。頑張ります。


技能実習生の労災について

2019-05-19 22:14:56 | 労働保険
新たな在留資格の導入で、外国人労働者のこれまでにない増加が見込まれています。社労士として企業にアドバイスするするためにどのようなことを準備しておけばよいか気になっていましたが、連合会の委員会に参加させて頂くことになり、先日の初回の打ち合わせは大変勉強になりました。今後も研究を進めていきたいと思っています。外国人労働者であっても日本で雇用されて働く以上もちろん労災は適用されるのですが、技能実習生の労災適用状況が先日新聞に載っていました。今後新たな在留資格の受入れについては、現在日本で働いている外国人労働者に起こる課題から推察していくことができますが、技能実習生の労災事故が全体の労災事故と比較してどのような状況になっているかは今後の労務管理上有効な情報だと思われます。まずは働く場所の安全対策の徹底と雇用した労働者については外国人であっても、たとえ1時間しか働かない場合であっても、労災保険の適用対象であることを企業に認識してもらうことからでしょうか。

外国人の労災事故2847人 最多更新、技能実習生も増加 (2019.5日経新聞記事)
厚労省によると、18年の外国人の死傷者数は前年の2494人から14.2%増えた。10年前(1443人)と比較するとほぼ倍増した。
この間、外国人労働者数は3倍に膨らみ、約146万人となっている。
死傷者のうち技能実習生が784人(27.5%)で、過去最多を更新。
外国人労働者における技能実習生の割合(18年は21.1%)を上回る状態が続いている。
4月に改正出入国管理法が施行され、新たな在留資格制度「特定技能」が始まった。
外食業や宿泊業など対象14業種について、技能と日本語の試験に受かるなどすれば、通算5年在留可能なビザを取得できる。
外国人の受け入れ拡大が加速する中、安全対策が課題だ。
日本人も含めた国内全体の労災事故では、死傷者数は前年比5.7%増の12万7329人。3年連続で増えた。
一方、死亡事故に限れば同7.1%減の909人で過去最少だった。

昨年1月の日経新聞にも以下の記事が載っています。

労災による死亡と認定された外国人技能実習生が2014~16年度の3年間で計22人に上ることが14日、厚生労働省のまとめで分かった。
大半が事故とみられるが、過労死も1人いた。
政府統計で実習生の労災死の実態が明らかになったのは初めて。
労災保険の給付対象となる休業4日以上の労災件数は3年間の平均で年475件だった。(2018/1/14日経新聞記事)
政府統計で実習生の労災死の実態が明らかになったのは初めて(東京・霞が関の厚労省)
実習生は職種が限られており、労災死比率が日本の雇用者全体の労災死比率を大きく上回っている。
実習の名の下に日本人より危険で過酷な労働を負担している現実が示された。
厚労省によると、死亡した実習生のうち労災認定されたのは14年度が8人、15年度が9人、16年度が5人。
労働基準監督署に報告があった実習生の死亡事案の中で、労災認定されたものを集計した。
実習生の国籍や都道府県別の人数は不明。

法務省によると、実習生の数は14年16万7641人、15年19万2655人、16年22万8589人。
集計が年と年度で違うが、単純計算すると3年間の労災死は10万人当たり3.7人になる。
一方、日本全体では厚労省の集計で14~16年の労災死は計2957人。
総務省統計局による雇用者数の3年間合計(1億6964万人)で計算すると、労災死は10万人当たり1.7人。

実習生の仕事は農業、機械加工など70余りの職種だけという違いはあるものの、差が大きい。
実習生に詳しい自由人権協会の旗手明理事は「慣れない日本の労働現場、
しかも労働安全衛生への意識が低い中小企業で働くことが多い上、実習生は日本語での意思疎通がうまくできない」と労災が多い背景を分析。
「けがで働けなくなった実習生を強制帰国させるケースもあり、労災隠しは横行している」と話す。
 
今の事務所に引っ越してから、とても嬉しいのはパン屋さんの移動販売車が週2回来てくれることです。昨年夏まで青学西門付近に15年くらい事務所を構えており、そのあたりも結構ランチができるお店や隠れ家的お店もあったので楽しかったのですが、今の事務所はヒカリエのお隣なのでヒカリエの美味しそうなお弁当を購入してくるスタッフもいますし、宮益坂にもたくさんランチをできるお店があるのでその点はとても恵まれた環境ではあります。ただ外出から戻ってきたばかりであったり、またお客様のご相談が午前中いっぱいあった場合などは移動販売のパン屋さんはとても助かります。かなりたくさんの種類が並んでおり、美味しいパンです。
昔(私が子供時代)は、お魚屋さんや八百屋さんが家の近所に移動販売できていたことを思い出します。母や近所のお母さんたちが家から出てきて買っていたのをよく覚えています。今後高齢化社会であまり遠くに買い物が行けない、また車の運転も免許返上、という人たちが増えたときのヒントにならないでしょうか。

健康情報の取扱規程の作成について

2019-05-12 20:52:32 | 法改正

先週週末ある勉強会で、働き方改革推進法関連の改正の中であまり目立たない部分についての解説を行いました。時間外労働の上限規制と年休5日取得義務について、そろそろ対応ができた企業が多いかと思うので、少し周辺も整えて欲しいと考えたからです。

今気になっているのは、安衛法の改正のうち「産業医・産業保健機能の強化」の中で人事担当者等が健康情報を取り扱う場面において、その取扱いの在り方を「規程」として策定し、労働者に周知するなどの環境整備が必要であるとされています。

条文でいうと労働安全衛生法104条2項に「事業者は、労働者の心身の状態に関する情報を適正に管理するために必要な措置を講じなければならない。」と定められており、3項には必要な指針を定め公表するとされています。

その指針については、平成30年9月7日付「労働者の心身の状態に関する情報の適正な取扱い指針公示第1号」の中で取扱規程に定める事項が示されており、さらに今年3月に「事業場における労働者の健康情報等の取扱規程を策定するための手引き」(パンフレット)が発表されて、その中で「健康情報の取扱規程」のひな型が載っています。

この規程のひな型はかなり詳しく、かつ、細かく決めることが多いと感じますが、健康情報の取扱いについてはやはり規程化しておく必要はあると思います。以下のサイトで確認頂ければと思います。

https://www.mhlw.go.jp/content/000497966.pdf

先週は全国社会保険労務士会連合会の国際化推進特別委員会の委員としてルーマニアに出張しておりました。

昨年12月に行われた連合会の50周年記念式典の翌日、連合会とILOの共催で「国際社労士シンポジウム」開催されました。そこに参加してくれた社労士の類似制度をもつイタリア・スペイン・ルーマニア・韓国と今回新たにカナダが招かれ、日本と併せて6か国がブカレストで意見交換を行いました。

各国のこれまでの沿革や現状の課題などの発表がなされたのですが、共通しているのは「AI」の影響の懸念があり、また移民に対する労働条件などのテーマもあり、国際的なこの会議の重要性を再認識するものでした。

またこの国際化の事業は今後世界的に「社労士」の役割の重要性を広めていこうという目的があり、制度の価値を高めるために必要な事業であることを強く感じました。

ブカレストは歴史的建造物が街のいたるところにあり、また教会の壁画や石畳の道などヨーロッパを実感しました。また行きの飛行機でルーマニアの歴史の本を読みある程度知識ができた上で、チャウシェスクが造った「国民の館」という豪華な建造物に案内してもらったり、独裁体制の崩壊が始まった建物を見学できて良い経験になりました。社労士になりこのような経験ができるとは考えてもみなかったのですが、今後もお役に立てるよう少しずつでも英語を勉強しようと思います(ポケトークは大活躍でした)。

国民の館

6か国参加者


時間外・休日労働が1か月80時間を超えた場合の本人への通知ついて

2019-05-03 00:43:03 | 法改正

事業者は、時間外・休日労働時間の算定を行ったときは、当該超えた時間が1月当たり80時間を超えた労働者本人に対して、速やかに当該超えた時間に関する情報を通知しなければなりません。

当該通知については、高度プロフェッショナル制度の対象労働者を除き、管理監督者、事業場外労働のみなし労働時間制の適用者を含めた全ての労働者に適用されます。(改正安衛則第52条の2第3項)

通知については、疲労の蓄積が認められる労働者の面接指導の申出を促すためのものであり、労働時間に関する情報のほか、面接指導の実施方法・時期等の案内を併せて行うことが望まれる、とされています。 

また、研究開発業務従事者については、時間外・休日労働時間が1月当たり100時間を超えたものに対して、申出なしに面接指導を行わなければならないため、事業者は、対象労働者に対して、労働時間に関する情報を面接指導の案内と併せて通知する必要があります。

労働者に対する労働時間に関する情報の通知の方法については、事業者は、1月当たりの時間外・休日労働時間の算定を毎月1回以上、一定の期日を定めて行う必要があり、時間が1月当たり80時間を超えた労働者に対して、その超えた時間を書面や電子メール等により通知 する方法が適当、とされています(給与明細への記載も差し支えないとされています)。

労働者に対する労働時間に関する情報の通知の時期としては、時間外・休日労働時間の算定後、速やかに 通知する必要があるとされています。

連休明け、4月の勤務時間を算定して月80時間を超えているようであれば、該当の社員にその旨を伝えて頂ければと思います。

10連休の真っ最中にブログを書いています。明日から出張でしばらく日本を離れ9日に戻ってまいります。従って5日(日)の更新はお休みさせて頂きます。

皆様連休後半もそれぞれの形で、ゆっくりお過ごしください。