東日本大震災は、平成23年3月11日14時46分に起こりました。たいがいの人はその時仕事をしていた時刻ではないかと思います。先日ある会合での労基署の署長のお話では「今回の震災については死亡した方もまた行方不明の方もたくさんおられますが、その中の相当数の方が仕事中であったと考えられ、今後労災申請が今まで経験がないくらい増えるのではないかと思います」とのことでした。
労災法の死亡給付の適用についてはあくまで法的に「死亡」が確認できなければ支給されないのですが、「東日本大震災特別財政援助法」が成立し、その関連通達で労災保険法等の死亡給付適用がスピーディーになされるための特例が示されました。確かに今回のように行方不明になった場合、死亡が確定していなくても一定のルールの元に死亡に関する給付である遺族補償年金などができるだけ早く受けられることが必要です。
労災法にはそもそも、死亡の推定(労災法10条、法附58条4項)」の規定があります。船舶や航空機の事故の時に行方不明になった労働者の生死が3か月わからない、また死亡は3か月以内に明らかになったが死亡の時期が分からないといった場合には、その船舶等の沈没等の日に死亡したものと推定されることになっています。ただこれはあくまで「船舶や航空機の事故」の際のみに適用される規定です。
それなら今回のような震災の場合はどうなるのかといえば、特別法としての労災に規定がないため一般法の民法30条2項を適用することになります。民法30条2項の特別失踪は「失踪期間は危難が去ってから1年間」と定められています(下記参考を見ていただくと分かるように普通失踪は7年間を要します)。特別失踪(危難失踪)である行方不明の場合は1年後に失踪宣告が行われるまで法的に死亡が確定しない状態となるわけです。それでは残された家族にとって遺族給付を受けるのに時間がかかりすぎるということで、今回特例が設けられました。
東日本大震災の発生日から3か月間生死がわからない場合、または死亡が3か月以内に明らかになったが死亡の時期が特定できない場合についての労災保険法等の死亡にかかる給付の適用については、地震発生日に死亡したものと推定することになりました。3月11日から3か月経過の6月11日以降に3月11日をさかのぼり死亡日として推定し、労災申請をすることができるということになります。
とうとう小淵沢の家を購入しました。何人くらい泊まれるか工夫して、みんなが集まれる場所にしようと思っています。小さい家ですができるだけ大勢が泊まれるように、少し手を入れて8月には使えるようになりそうです。
(参考)
1 失踪期間は民法30条に定められており、1項が普通失踪、2項が特別失踪(危難失踪)の規定である。
- 普通失踪 - 失踪期間は不在者の生死が明らかでなくなってから7年間(30条1項)
- 特別失踪 - 失踪期間は危難が去ってから1年間(30条2項)。
2 失踪宣告を受けた者は以下の時期に死亡したものとみなされる。
- 普通失踪 - 失踪期間7年が満了した時(31条前段)
- 特別失踪 - 危難が去った時(31条後段)