OURSブログ

社会保険労務士としての日々の業務を行う中で、考えたこと、感じたこと、伝えたいことを綴る代表コラム。

衛生推進者の選任について

2022-05-29 20:12:10 | 労働法

労働安全衛生法に定められた安全衛生管理体制は50人以上になると様々留意しなければなりませんが、50人未満であっても10人以上の規模の場合も注意が必要です。50人以上の規模であれば「安全衛生管理者又は衛生管理者」を選任しなければならない「業種」であって10人以上50人未満であれば「安全衛生推進者又は衛生推進者」を選任しなければならないと定められています。これはあまり知られていないかもしれず、また監督署の調査でも確認されることもほとんどないと思いますが、以前1回だけ衛生推進者を選任していないということで是正勧告を受けた経験がありますし、やはりきちんと体制を整える必要があります。

先日衛生推進者の選任について監督署への届出が必要かというお問い合わせを顧問先から受けたのですが、衛生推進者の選任については届出や報告義務はありません。ただし社内の見やすい箇所に掲示する等社員に周知させなければなりません。

衛生推進者の担当する業務は、労働者の安全や健康確保などに係わる業務のうち「衛生」に係る業務を担当することになります。簡略すると①危険・健康障害防止措置、②安全・衛生教育の実施、③健康診断の実施等健康保持増進措置、④労働災害の原因調査・再発防止(衛生関係)ということになります。

労働衛生コンサルタントを除き、事業場に専属の者(つまり社員)から選任することになりますが、専任(衛生推進者の業務だけを担当すること)の必要はありません。

また、衛生推進者を選任する場合は、次の経験等いずれかの資格を有する社員から行ないます。
(経験・経歴)大学、高等専門学校卒業者で1年以上衛生の実務に従事している者
(経験・経歴)高等学校、中等教育学校卒業者で3年以上衛生の実務に従事している者
(経験・経歴)衛生の実務経験5年以上の者
(有資格者)労働安全コンサルタント、労働衛生コンサルタント等の資格を有する者
(講習修了者)都道府県労働局長の登録を受けたものが行う講習修了者

経験・経歴で選任することが多いかと思いますが講習を受けてみるとより良いと考えます。いつもお世話になっている渋谷労働基準協会さんの共同主催で行われる「衛生推進者」養成講習もあるようですので、衛生推進者を選任する際は受講されても良いのではないでしょうか?
http://mita-roukikyo.or.jp/workshop/pdf/2022.06.22oo.pdf

衣替えの季節になりました。衣替えが苦手という話を雑誌か何かで見たことがありますが、私は衣替えは好きな方です。毎年衣替えをしたところでサイズが合わなくなっているかもとドキドキすることが最近は多いのですが、それでも季節の変わり目にお世話になった服達をクリーニングに出して、新たな季節の服達を箪笥の手前に掛け直すととても気分転換になります。少し変な趣味かもしれません。

クローゼットルームに1年中全ての服を収納しておくことができるのは夢ですが、今のところ2か所に分けて衣替えの際の入れ替えを楽しんでいるという感じです。今週末は洋服も掛け布団も衣替えが終了し夏を迎える準備が整いました。新たな季節を迎えてまた頑張ろうという気持ちになります。


事実婚等の定義について

2022-05-22 21:17:26 | 労務管理

顧問先企業の中でも最近ジェンダーについて取り組み始められたところがあり、「同性パートナー」について配偶者と同じ扱いとすることを規程に盛り込むことがあります。「同性パートナー」については、2015年に渋谷区と世田谷区からパートナーシップ制度が導入された後広がりをみせ、現在200以上自治体で制度が導入されているそうです。

渋谷区のHPに記載されている「パートナーシップ証明」を見ると、「パートナーシップ証明は、法律上の婚姻とは異なるものとして、男女の婚姻関係と異ならない程度の実質を備えた、戸籍上の性別が同じ二者間の社会生活における関係を『パートナーシップ』と定義し、一定の条件を満たした場合にパートナーの関係であることを証明するものです。」とあります。「同性パートナー」を定義するのであればこちらは参考になるかと思います。

同性パートナーを定義するのであれば「事実婚」も定義しておかなければならないということになり、これまできちんと定義されていないケースも多かったかと思いますが、探しているうちに思い浮かんだのが遺族年金の「事実婚」でした。事実婚についても申し立てが認められれば遺族年金の受給資格は認められます。日本年金機構のHP にある申立書にあるその条件を見ると以下を記載して申し立てることとしており、この3点が条件となっていることがわかります。
①婚姻の意思、②夫婦として共同生活を営んでいること、③生計同一関係にあること

・事実婚関係及び生計同一関係に関する申立書
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/todokesho/kyotsu/20140425.files/E.pdf
会社でも上記申立書を参考にして事実婚についても申立てをしてもらうと良いのではないでしょうか?

・日本のパートナーシップ制度(参考)
https://www.marriageforall.jp/marriage-equality/japan/

今日は本当に夏のようでした。街を歩いていると半袖を着ている人も多くいたので、週末衣替えをして良かったと思いました。もう少ししたら私も半袖にしたいと思いますが、まだ若干朝晩は寒いですね。4月は比較的忙しさが一段落していたのですが5月連休明けから色々な案件が入ってきて、withコロナの中世間が動き出したような気がしていますので、ここ2年以上風邪一つひいていないだけに油断せずいきたいと思います。

先日渋谷駅の事務所と反対側にある100円ショップに行ってみて、その商品の豊富さに心底驚いてしまいました。TACの講師時代渋谷校を担当しているときによく帰りに立ち寄ったビルの可愛い雑貨や、キッチン用品の安価なお店やカフェなどがあったフロアがすべて100円ショップになっていました。こんなに何でも100円で手に入るのであれば生活は昔に比べて格段に満足度が高いだろうなと思いました。物の価値というものはどうなのかなと心配にはなりますが・・・。


時間外労働上限規制猶予後の取扱いについて

2022-05-15 20:50:48 | 労働法

時間外労働の上限規制についてのセミナーのご依頼があり、今週末はその準備をしました。大企業は2019年4月、中小企業は2020年の4月から新たな上限規制が適用されていますので、今後新たに勉強することとしては、適用猶予になっている事業等の猶予後の取り扱いについてということになります。

適用猶予となっている業務等は、①建設事業、②自動車運転の業務、③医師、④鹿児島県及び沖縄県における砂糖製造業です。いずれも猶予は2024年3月までということで、4月以降新たに上限規制が適用されますが、一般の事業と同じ上限規制が適用されるのは④のみです。①~③については各業務等の特質を考慮した上での上限規制が適用になります。簡単にまとめると以下のようになります。

①建設事業 災害復旧等の事業を除き(一般と同じ)上限規制が適用されます。つまり原則の時間外労働時間数は月45時間・年360時間、特別条項で時間外労働は年720時間、休日含む月100時間未満・2~6か月(複数月)平均80時間以内が適用になります。ただし、災害の復旧・復興の事業については時間外・休日労働の合計について、月100時間未満・複数月平均80時間以内は適用されません

②自動車運転の業務 原則の時間数を超える特別条項の上限時間は年960時間、平均特別条項は年6か月までとなります。ただし時間外労働と休日労働の合計である月100時・複数月平均80時間以内は適用されないということです。

③医師 医師については以下の通り複雑です。

・医療機関に適用する水準が大きくA~Cに区分されて、更に5区分に分類されます。まず年の上限時間としてA(一般の労働者と同等程度)については960時間連携B(医師を派遣する病院)・B(救急病院等)は1860時間ただし2035年度末を目標に終了しAと同様になり、C-1(臨床・専門研修)、C-2(高度技能の習得研修)は1860時間です。

・月の上限を超える場合の面接指導と就業上の措置はどの区分にも適用されます。

・連続勤務時間制限28時間・勤務インターバル9時間の確保、代償休息のセットはAが努力義務、B及びC区分は義務となっています(C-1の臨床・専門研修は代償休息は適用せず)。

根拠条文 

〇働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律 (労働基準法の一部改正)附則139条・140条
https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_housei.nsf/html/housei/19620180706071.htm

○医療法第百二十八条の規定により読み替えて適用する労働基準法第百四十一条第二項の厚生労働省令で定める時間等を定める省令
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=73ab8541&dataType=0&pageNo=1

医師の時間外労働の長さは極端だと感じますが、働き方改革に取り組んでおられる医師の先生に依頼されて以前試しに1か月単位の変形労働時間制を組んでみたところ、全くお話にならないということになった経緯からいっても現状これが仕方のないことなのかと感じてしまいます。

この2年間、顧問先に訪問することもめっきり減ってしまい事務所でひたすらzoomに明け暮れる日々でしたが、ここに来てだいぶ外出が増えてきました。やはりオンラインではなく、実際にお会いして話をすることで理解いただくことができることも多く、また信頼関係が作られていくような気がしますので、リアルでの打ち合わせができることは嬉しく感じます。かたや急ぎで30分だけ意見を聴きたいというご要望に対して、zoomで特に地方の顧問先様に対してもさっと対応できることについてはこれまた有難いと思います。リアルとオンラインの上手な使い分けがポイントだとつくづく感じています。

コロナ禍テレワークによる生産性の向上はどうなのかということが取り上げられることがありますが、テレワークにオンライン会議を含んでも良いのであれば、最大の生産性向上は在宅勤務よりオンライン会議なのではと思っています。


帝王切開の場合の産前休業について

2022-05-01 23:08:55 | 産前産後・育児・介護休業

顧問先のお問い合わせをスタッフと一緒に調べていて、産前休業についての考え方に疑問を持ってしまいました。というのも、「産前休業は自然分娩予定日を基準として計算」するものであり、帝王切開した場合は自然分娩ではないため、自然分娩予定日の前に帝王切開した場合には労基法上の産前休業は発生しないという考え方をとる場合があるということなのです。この根拠になるのは、昭和26年に発せられた以下の通達です。これは「妊娠中絶と産前産後休業」についての通達です。

妊娠中絶とは、胎児が母体外において生存を続けることのできない時期に胎児及びその附属物を人工的に母体外に排出させることであり、産前6週間の休業の問題は発生しない。なお、産前6週間の期間は自然分娩予定日を基準として計算するものであり、産後8週間の期間は現実の出産日を基準として計算するものである(昭和26.4.2婦発113号)。

確かに「産前6週間の期間は自然分娩予定日を基準として計算するもの」とされていますが、昭和26年当時は今のように母体や胎児のことを考えて「帝王切開」を選択する頻度は高くなかったと思われ、またこの通達は人工妊娠中絶に関する通達でもあり、それを現在の「帝王切開」にあてはめてよいのだろうかと疑問を持ちました。昭和26年といえば70年前の通達ですから、その文言を今にあてはめるのはあまりに無理があると考えます。

一般的には帝王切開の場合であっても常識として産前休業を認める会社が多いとは思いますが、もし会社が認めたとして自然分娩ではないため上記通達により産前休業は発生しておらず、ゆえに産前の保険料免除を認めないという健康保険組合も稀にあるようです。ちなみに協会けんぽやお問い合わせした健保組合は例え帝王切開であったとしても産前休業の保険料免除は認めているとのことです。

自然分娩予定日に「帝王切開による出産(分娩)をした日を含む」とする通達の改正を是非望みたいところです。

ちなみに健康保険法では以前「出産育児一時金」を「分娩費」といっていた記憶があり調べてみたところ、1994年(平成6年)に分娩費と育児手当金を統合して「出産育児一時金」とした改正があったようです。その年はTAC社労士講座の講師になった年なのですが、労基法関係の文言もその年に改正されたのかどうかは悲しいかな記憶に残っていないのです。

連休に入り3日目です。OURSはカレンダー通りなので明日は出勤ですが、5月3日以降が本格的な連休といってよいと思います。4月は比較的仕事も楽だったのですが、連休明けにしましょうとお伝えしてある打合せや労務監査、セミナー準備がいくつかあり忙しくなりそうなので、ここはまとめて研修をオンライン受講したり本を読んだりしつつ少しゆっくり過ごしたいと思っています。旅行をはじめとしてお出かけの方も多いと思いますので、晴れると良いですね。

※来週はブログもお休みさせて頂きます。

ベランダの花もここに来て満開状態で毎日楽しんでいますが、昨年秋に購入したバラがかなり綺麗に咲いてくれて感激です。まだ1つだけですが蕾がいくつかありまだまだ楽しめそうです。昔は息子に「花、よく枯らすよね」といわれたもんですが、年のせいか花の育て方も少しわかってきたような気がします。