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社会保険労務士としての日々の業務を行う中で、考えたこと、感じたこと、伝えたいことを綴る代表コラム。

傷病手当金について

2023-08-27 22:48:07 | 社会保障

先日いつもお世話になっている社労士の集まりで色々と食事をしながら楽しく話をした中で「傷病手当金」のことが出ました。傷病手当金は、健康保険では法定給付ですが、国民健康保険では任意給付であり、コロナウィルスの際の特例を除いてはほぼ実施している保険者(市町村)はない状態です。

傷病手当金は、被保険者が業務外の事由による療養のため労務に服することができないときは、その労務に服することができなくなった日から起算して3日を経過した日から労務に服することができない期間、支給されるもので、支給期間は支給開始日から起算して1年6か月を限度とします。療養期間中の休業補償として、調べたところによると健康保険法施行当初からある給付の一つでした。ちなみに当初傷病手当金の支給期間は180日間でした。

なぜ気になったかというと、医療保険に生活保障ともいうべき傷病手当金が給付としてあるのか、その理由を知りたかったのですが、手持ちの書籍からは今のところ理由を拾えないでいます。ただ、傷病手当金については、令和2年3月26日の社会保障審議会医療保険部会の資料には、検討課題が載っていました。働き方改革実行計画工程表の中にある「治療と仕事の両立等の観点から、傷病手当金の支給要件等について検討し、必要な措置を講ずる。」と方向性が示されており、その結果令和4年1月1日から施行されている支給期間の通算化となったのだろうと思います。やはりそういう意味で生活保障としての役割がさらに近年大きくなっているようです。

協会けんぽの運営委員会では2年くらい前から、傷病手当金の支給事由のトップが精神障害であるという点についてよく議論されます。ちょうど同じ資料に、協会けんぽの傷病手当金の年齢別・疾病別構成割合が載っているのですが、「精神及び行動の障害」の割合は、55歳未満の階級では最も割合が高く、年齢階級が高くなるほど減少。「新生物」の割合は、年齢階級が高くなるほど増加し、55歳以上では最も割合が高い。」というグラフとなっており、傷病手当金の平均支給期間は約164日(男性172.96日、女性151.42日)だそうです。若い年代に「精神及び行動の障害」が多いという点については、課題があります。

また、協会けんぽにおける傷病手当金の支給件数のうち、資格喪失者に対する継続給付は全体の約20%とかなり大きな割合を占めており、資格喪失者の傷病別構成割合は、「精神及び行動の障害(51%、「新生物(13%)」、「循環器系の疾患(11%)の順で多くなっている、ということで圧倒的に「精神及び行動の障害」が多いということです。部会でも「職場復帰支援ではなく、むしろ退職後の所得保障として機能しているのではないか」という意見が出ており、確かに資格喪失後の継続給付については雇用保険法等に再編しても良いのかもしれないと感じました。

今日は本試験でしたが受験された方はお疲れさまでした。よい結果となることを祈っています。

いよいよ今週から9月ということで、少し秋風のような空気も感じられるますが、夏風邪から完全に復活して体調も良く、秋からの色々なご依頼や仕事にワクワクしているところです。夏休みの自分に課した課題である「会社が選ぶ施策のトータルなご提案」のレジュメはほぼ完成し、今は秋に目白押しのセミナーや執筆をできるだけ前倒しで取り組んでいるところです。休みの日に仕事をする生活からは脱したいと思うのですが、ご依頼を頂けるのは有難いとも思い、相変わらずの生活を送っています。


労働時間の状況把握の場合の自己申告制

2023-08-20 23:13:55 | 労働法

最近の監督署の調査では、2019年の4月から施行された「働き方改革関連法」の中でも安衛法の改正による「労働時間の状況把握」についての指摘が相次いでいます。状況把握の対象者はすべての労働者(高度プロフェッショナル制度の対象者は除く)になっています。つまり改正後は、それまで労基法の労働時間等の規定の適用除外となっているため労働時間の管理の必要がなかった管理監督者や裁量労働制などみなし労働時間制の対象者も、安衛法に定められた労働時間の状況把握については対象となりました。

この労働時間の状況把握は、医師の面接指導を行う必要があるかの判断をするために行なうものです。安衛法66条の8の3に次のように定められています。「事業者は、第六十六条の八第一項(時間外労働が1月80時間を超える労働者に対する医師による面接指導の義務)又は前条第一項の規定による面接指導(時間外労働が1月100時間を超える研究開発業務従事者に対する医師による面接指導の義務を実施するため、厚生労働省令で定める方法により、労働者(次条第一項に規定する者(高プロ対象者)を除く。)の労働時間の状況を把握しなければならない。

上記「厚生労働省令で定める方法」とは、「タイムカードによる記録、パーソナルコンピュータ等の電子計算機の使用時間の記録等の客観的な方法その他の適切な方法とする。」とされています。この「その他適切な方法」については通達(平成30.12.28基発1228第16号)で、「やむを得ず客観的な方法により把握し難い場合において、労働者の自己申告による把握が考えられる」とされています。

これまでの労働時間の把握の際に基準となってきた「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」では、「自己申告制によりこれを行わざるを得ない場合」は認めるとされています。自己申告制による場合の十分な説明等の要件についてはほぼ同じなのですが、労働時間の状況把握についての同通達では「やむを得ず客観的な方法により把握し難い場合」に自己申告が考えられるとされ、事業場外業務に直行又は直帰する場合など、労働時間の状況を客観的に把握する手段がない場合で、該当するかは当該労働者の働き方の実態や法の趣旨を踏まえ、適切な方法を個別に判断すること等、上記ガイドラインに比べてかなり細かく規定されています。

労働時間の状況把握というと、「労働者の健康確保措置を適切に実施する観点から、労働者がいかなる時間帯にどの程度の時間、労務を提供し得る状態にあったかを把握するものである。(同通達)」で定められており、労基法等で定める1分単位の労働時間の把握や休憩時間を厳密に除く労働時間に比べると緩い印象ではあったのですが、自己申告による把握については、労基法の定めるところより範囲は狭い(労基法で認められたとしても安衛法では認められないとされる場合もある)ものだと理解しました。

平成30.12.28基発1228第16号
https://www.mhlw.go.jp/content/000465070.pdf

最近、少し自分は頑張りすぎてきたのではないかという気持ちが強く、そろそろ人生を楽しんでもバチは当たらないかなとも思い、小さなことから頑張りすぎないことを自分の基準にしています。夏休みものんびり過ごし、秋に旅行を企画し、コンサートや美術展、スポーツ観戦等も色々見に行きたいと思い抽選に申し込んだりしています。そうこうしていても、秋から取組みたい新たな仕事がいくつも入ってくることが決まっており、このペースが守れるかちょっと心配ではあるのですが、やる事をできるだけ整理してゆったり楽しんでいきたいと思っています。


労働基準監督署への申告と相談

2023-08-06 21:38:47 | 労働法

労働基準法や同法の命令に違反する事実がある場合には労働者は、労働基準監督署へ申告することができるとされています(労基法104条)。ここでいう「申告」とは、行政官庁に対する一定事実の通告であり、本法の場合は、労働者が違反事実を通告して監督機関の行政上の権限の発動を促すことをいうとされています(コンメンタール)。監督署では、内容を精査して受け付けたすべての事案について調査をするわけではなく、労働基準法等の法令に違反していると推測される事案を申告事件として受理し、立ち入り調査などを実施の上、法令違反が認められる場合には、是正勧告や指導が行われることになります。

労働基準法等の法令には違反していないが、民事上の問題や他の法律上に問題があると推測される事案については、例えばパワハラに対する訴えについては、労働局のあっせん制度を紹介することになります。あっせん制度は「個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律」に基づく、①都道府県労働局長の助言・指導及び②紛争調整委員会によるあっせん制度で、比較的軽微な個別労働関係紛争の事案を簡易迅速に解決するものです。個別労働関係紛争解決促進法の2条には「個別労働関係紛争が生じたときは、当該個別労働関係紛争の当事者は、早期に、かつ、誠意をもって、自主的な解決を図るように努めなければならない。」と定められており、まずは監督署の相談窓口で自主的解決を図るためのアドバイスをもらいます。それでも上手く話し合いがつかない場合は、労働局からの助言指導を受け、それでも話し合いがつかない場合はあっせんの申し立てが紹介されることになります。

権利関係を踏まえ、訴訟手続きとの連携を図るという仕組みをとっている労働審判に比べて、あっせん制度は法律知識に多少疎い場合や事実関係の整理が出来ていない解決に援助が必要な事案に向いているとされています。

ここまで見てきた通り、法令違反ではない民事上のトラブルと判断される相談については、是正勧告や指導が行われることはないものいえます。

金曜日は、JICAと連合会の事業によるインドネシアからの視察団が事務所とうちの顧問先を訪問されました。うちの事務所に視察団が来られるのは、以前の小さな事務所時代から数えても既にかなりの回数を重ねており、社労士の仕事の説明などをさせて頂いています。インドネシアの皆さんはとても反応が良くて説明していてバンバン質問も来ていつもとても楽しい時間です。

今回訪問した顧問先は、「デコルテ」さんという靴の会社で、実は私が子育てをしているときにベビーカーを押して公園に行き仲良くなった友達の旦那様の会社です。当時まだ自宅で会社を作られたばかりでしたが、我が息子の幼馴染の今や2代目となったお嬢さんが、クラウドファンディングで資金を集めたりと頑張っている会社さんです。社長も含めたデザイナーさんや職人さん5人で日本製ハンドメイドの靴を作っており、インドネシアの視察団の皆さんも靴を作っている職人さんの手元を熱心に見ていました。家族経営、ハンドメイドと日本の中小企業モデルを見て頂けて良かったです。今売り出し中の自社ブランドJe t’emmèneはとても履きやすくておしゃれで気に入っており3足持っています。通勤にも使っている愛用品になりました。     ※来週は夏休みのためブログはお休みします。
https://decotokyo.com/