OURSの顧問先企業は大規模な会社から起業したばかりの小さな会社まで様々です。年に数件ずつですが起業してまだ数年の会社からも新適や顧問契約のご依頼があります。OURSはスタッフ担当制になっていますので、まだ立ち上げたばかりの企業の手続を私が担当することはありません。ただ、だいたいは就業規則を作るという作業の中で私も一緒にアドバイスをさせて頂きます。
守られていない法律についてご説明をして、また時には踏み込んで経営方針ともいえる部分についてご相談にのる機会が多くあります。私も個人事務所を立ち上げてからこれまで人を雇い、お給料を払い、高い社会保険料を支払い、資金繰りに気を遣い、働く環境を考えて来たので、事業を立ち上げた社長の気持ちはよくわかる部分もあります。しかし、最近思うのは、起業して社員を雇おうと考えたときに事業主が知っておく必要があることが沢山あるのにあまりにもそれを知らな過ぎる、ということです。法律を知らず法律を守っていないということは結局あとから大きなリスクを抱えることになるということを、もっと社労士として事業主に周知する義務があるのではないか、と最近つくづく思うのです。
やはり大きなネックは残業した場合の割増賃金の支払いです。数年前「未払い残業問題」であれだけ世間が騒いでいても、残業代が支払われていない会社は特に立ち上げて数年の場合多くあります。時間単価に25%を割り増した賃金を払うことは大きな出費になっていきますから、払いたくないという気持ちは理解できないわけではありません。また会社が回っていくことが一番大事なことですからできればすべて固定費として支払うものは見通しがつく状況であって欲しいということもあります。さらに会社が立ち上がったばかりでこれから事業として成り立っていくのかどうかわからないという状況であれば、雇われている人たちもよくそれを理解して「残業代はいりません 」と健気にも言ってくれる場合も多いのです。
しかしある程度の規模になったらそれは大きなリスクへと変化していきます。人が増え事業としても継続性が見えて来てから入社してきた人は、ちゃんとした会社だと思ったのに残業代が出ないのはおかしいと思っているでしょうし、今はインターネットで法律上どこが正しくどこが誤りか勉強しようとすれば簡単に勉強できる環境です。会社を辞めた社員から未払い賃金を請求する手紙が来たという場合に見せてもらうと、社長より辞めた社員の方がずっと法律をよく調べ、よく知っているような気がします。しかも、残業代は払っていないのに賞与を支払っているとか、半日で仕事がない日は手当を出しているとか、社長に悪気があるわけではないケースが多いように思います。理解していただきたいことは以下のようなことです。
賞与は法律上払う義務があるわけではないわけですから、まずはそれより法律上の支払い義務がある残業代を払うこと。賞与は残業代を払ってなお利益が出たらにして下さい。
社会保険は会社に余裕ができたら入るものではなく、法人として人を雇うならその費用も考えていくらお給料を払えるか考えて下さい。それを費用として考えておかないと社会保険に入ろうかと考えた時に保険料のハードルがとても高いものになってしまいますので。
労働時間が8時間で終わらないのであれば8時間超える仕事分は時給制のアルバイトでもよいので人を雇ってこなしてもらうなどのアイディアで工夫して下さい。
例えば変形労働時間制で無駄な時間外労働を抑制する方法や時間外労働分を含めた賃金の決め方(これは何時間分が含まれているかの明示が必要で、さらにそれを超えた場合の残業代の支払いは必要ですが)、時間外労働の削減のために時間外労働などを許可制にすることなどいろいろな方法もないわけではありません。
与えてなかった年休を精算することになったなど、早い段階で法律を守っていればそこまで大変にはならないかったものが、年数が経ち人数が増えてから挽回しようと思うととても大きなエネルギーを要します。
ぜひ起業して人を雇おうと考えた時には、社労士にご相談をしていただいたり、労働者に負けないくらい法律を調べてみるということをお願いしたいと思います。人を雇うということはとても重いことだということを是非認識していただきたいと思います。
まだ暑くなく湿気がない日は本当に気持ちいい風が吹いてくれますね。1日1日を大切に過ごしていきましょう。